アニメの新時代を作るのだ
そのイッキュウさんは、昼間どこかを目指しておりまして。
スーツにバッグではあります。営業職になりきったつもりかな?
かつては……今もそういうところがありますかね。
成人男性が昼間にフラフラできない、そういう社会でして。人の目を気にしない彼なりに何かあったのかもしれません。
行き先は、マコ・プロダクション!
下山がそこにはいました。
東洋動画にはもう辞職を伝えたそうです。引き止められず、円満だったそうです。
それがいつまで続くんでしょう?
何か揉めそうだ。
労働運動も、そこで神っちが爆発させるかもしれない。
マコは、企画の打ち合わせとして資料を出してきます。
『3代目カポネ』
これはあれではないですか!
これに咲太郎肘いる風車プロダクション声優が声をつけるって、もうニヤニヤが止まらないんですけど。
そういえば、頭数が揃っているような気がしてきた。
動画と仕上げは外注に頼るけれども、好きなものを作ると意気込むマコ。
下山も、アニメの新時代を作ると張り切っています。
イッキュウさんは、どうするのか?
いないわけはないけれども、どうするのか?
気になってきました。
一緒に歩んでいくこと、それが結婚
その夜、なつが帰宅します。
なんと、不器用なイッキュウさんがおしめを縫っています。本で覚えたと照れ臭そうに、なつに告げます。いやいや、本と茜ですよね。
当時は、義母や母本人がすることが定番でした。
本作は、男女逆ならば当然であることを、変換することで革新性を出しています。
ここまでやったらご飯にすると、イッキュウさんは言います。
そうそう、途中でやめられないんだな。
「縫い方、教えて」
「いいよ、疲れてるのに」
なつにそうせがまれ、きっぱりと断るイッキュウさん。
それから、マコの元へ行ってきたと告げるのです。あることを決めたって。
「あ、そうなんだ」
そう納得するなつ。
これは泰樹と夕見子で鍛えられたなつならば受け止められますが、ついていけない相手もいるところです。
勝手に決めないで、相談してよ〜って思いますよね。
泰樹も、ホイホイとなつの酪農チャレンジを決めたし。
夕見子も、志望校決定、駆け落ちからの【抹殺パンチ】、そして結婚まで、即断即決の軍師だし。
そういうところがある。
雪次郎も、今頃振り回されているかもしれない。
さて、その決断内容ですが。
・一年待つ
・保育園を見つける
・それまでは、家にいる
・そこまでアニメの挑戦を待つ
そう言い切るのです。
「そこまで考えてくれたんだね……調べてくれたんだね、ありがとう」
「それじゃいいのか?」
「それはこっちのセリフだよ。いろいろ気を遣わせたよね、ごめん」
「全部それを覚悟して、結婚したんだ」
「うん、そうだね。よかった……」
そう覚悟を言い合う、そんな二人なのでした。
なつよ、イッキュウさんがうれしそうで、よかったな――。
そう語りかける父なのでした。
朝の連続テレビ小説って何?
朝の連続テレビ小説・百作目。
その存在意義を作る側だけではなくて、視聴者にまで考えさせるような、そんな巧みな作り方を感じます。
視聴者の反応まで含めて、ドラマを作っている。
そう感じたのが、イッキュウさんの父・坂場一直の場面でした。
関根勤さんが面白いとか。
朝ドラアベンジャーズの藤田三保子さんとか。
父の話を全然聞いていないイッキュウさんとか。
見所がたくさんありました。
しかし、あの一直の考古学定義は、研究者からすると型破りだそうでして。
その方々がSNSで「あれはない」と言い合っている会話を見ました。
ん?
つまりそれは、一直自身がそういう疎外感を研究者として味わっていて、メインストリームに乗れていないのかな?
視聴者の反応を通して、坂場一直の研究者としての立ち位置が見えてくるのでは?
そう気ついた瞬間、なんだかこう、新しいものが見えた気がしたのです。
研究者さんに、学問の定義を語れと言ったところで、ギャラもなしにできるわけじゃない。
けど、ああいうちょっとずれたことを言うと、頼まれてもいないのに反論をしてしまう。
そういう狙いじゃないかな? ん? ん? ん?
どうにも朝ドラって、やっぱり舐められているんだなぁ……と、思うことがあります。
大河は男のもので、歴史もの。複雑なストーリー展開で、読書を楽しむ――そう言う男性向けの看板。
一方で朝ドラは女のもの。扱うのもせいぜい近現代史まで。
主婦が家事の合間にするから、伏線なんていらないし、つまんで食べるようなお粗末なもの――そういう看板。
どうしたって、そういう切り分けはあったと思いますよね。
同じ看板でありながら、大河が上で朝ドラは下。そういう意識はあったのでは?
NHKドラマは近年いろいろありまして、私も散々突っ込んできたわけですが。
孔明の罠かもしれん……
そのうえで、言いますが。
本作は一番複雑怪奇で、舐めてかかると即座におそろしいことになると痛感しています。
「お気づきになりましたか……朝ドラだとバカにしている、あなたの知性と思想をも踏まえた上でのことです」
「げえーっ!」
こうなってませんか?
待てあわてるな、これは孔明の罠だ。
奥様のお洒落なバザー会場が、諸葛孔明の鬼門八卦陣内部にあるような。
そういうレベルの恐ろしさがあると、痛感しています。
なんということをしてくれたんだろう!
今朝だって、イッキュウさんに対して「こんな奴はいない、当時のことをふまえろ」ってツッコミ入るでしょ?
そう突っ込む側の、差別意識とアップデートできない意識をあぶりだしてしまう。
◆米・JPモルガンが育休差別で男性社員らに約5億4400万円の和解金
それに、これはフィクションだから。
モデルをそのまま再現しなくていいという、そういう仕掛けもちゃんとある。
おそろしいですよ……しかも、これは『半分、青い。』からですよね?
あのアニメスタジオはモデルでなく、聖典でもあるのか?
で、本編ですが。
あのアニメスタジオだけが、ってことじゃないですかね?
京都アニメーション要素も入っていますよね?
あの労働組合問題も、まだ終わっていない可能性は十分あるわけでして。恐ろしいことになってきたな。
だからといって、スタジオジブリを軽んじているわけでもない。
気づいた仕掛けなんですが、モデルとなったあのレジェンド要素は、プロット以外でも入れていませんか?
◆『ルパン三世 カリオストロの城』
→以下を参照ください。
なつぞら116話 感想あらすじ視聴率(8/13)ルパンで全てが繋がった!!◆『火垂るの墓』
→主人公は戦災孤児のきょうだい。
◆『もののけ姫』
→このレビューで「阿川親子はアイヌであるかどうか」の明言は避けていました。
実は『もののけ姫』のアシタカもそう。
時代設定もあり、本州であるために気づきにくいのですが、彼はそのルーツです。
彼の弓は、和弓とは形状が違う、アイヌと同じものなのです。
要素をつぶさに見ていくと、彼のルーツがわかります。
◆『千と千尋の神隠し』
→幼い少女が、労働を通して新世界を知る。
なつの児童労働ってありなのかと思っていましたが、そういうことなのかと。
イニシエーションとしての児童労働でした。
『シャーロック・ホームズ』シリーズと、『SHERLOCK』ならばわかりやすいけれども、8月まで気づく時間がかかってしまったのかもしれない。
なんてこった!
三人の芸術女神を探せ
今日のなつとイッキュウさんはえらかった。
ここで大事なのは、三者の理解がないと実現できないこと。
あの二人だけではなく、雇用主のマコがあって完成するのです。
・妻
・夫
・雇用主(社会)
東映動画は第三の要素になれなかった。
そしてこの三という要素は、非常に大事なのではないかと思います。
公式サイトの登場人物をみていて、そう閃いたのですが……。
十勝、新宿、そしてアニメ。三つの世界があって、成立するのでは?
そしてその三つの世界には、三組の女と男がいると思うのです。
本作のアニメスタジオが、ジブリと京都アニメーションである理由も、そのあたりにある。
その三組とは、
第1部 十勝:夕見子と雪次郎
→結婚は第2部とはいえ、雪次郎が夕見子のためにお菓子を作ることを目標とする設定は、第1部の段階で出てきています。
第2部 新宿:なつとイッキュウさん
→第2部で知り合い、第2部で結婚。
第3部 アニメ:マコさんと???
→マコさんと誰かさんは、第2部以前ではくっついていない。顔は合わせているけれど、恋愛そのものはこれからでは?
いや、マコさんは既婚者ですけれども。
不自然な独身男で、かつ才能持ちが一人いるじゃないですか。
どうしても、そこを考えてしまう。
外れたら妄想と受け流してくださいよ。そういうの好きなだけなんで!
ではまた明日!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
若い男が、働く女房にナイショで若い女のところに足しげく通って、さまざまな事を学ぶために家にあがりこんで日々しばらく過ごす。そのことが美談になる流れに、そんなわけあるかい、と考えてしまう私は汚れているんでしょうか。
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イッキュウさんは、マコにお茶を出していました。
しかも、なつの分はノンカフェインのものを別にちゃんと用意しています。そんな気遣いができる彼は、とても気がきくんですよ。
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「一人だけお茶が何か違うな」とは思っていたのですが、こちらのレビューを読んで腑に落ちました。己の浅慮を恥じるばかりです。
それともう一点、誤字脱字かもしれないのでご確認お願いします。
2ページ目 三人の芸術女神を探せ
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雪次郎が夕見子のために歌詞を作る
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イッキュウさんとなつの家。背後に時折響く踏切の音。鐘が「カンカン」と鳴る古いタイプの音色です。これを再現しているのは見事。
茜宅をなつが訪ねたシーン。当時も流行っていたのか、テーブルの上にも台所のほうにも、水栽培のヒヤシンス。昭和50年代初め頃にも小学校の理科の時間には定番でした。
この細かいところの仕事はやはり見事です。
それにつけてもアレは…
いや何でもありません。
いやぁ、このレビューで色々なことに気がつかされます。毎日の深い考察、恐れ入ります。今後の展開も楽しみになってきました。ありがとうございます。
しかしこのサイトに相応しくない、主人公叩きのコメントがまた出てますね。鈴愛に対して行われた理不尽なバッシングと同類です。今回もマコさんとなつの親しい関係から考えれば、全く違和感の無いセリフなのですが。本音をぶつけ合うような付き合いをしたことがない方の感じ方なのでしょうかね。
マコさんの結婚生活が円満なのが真実かどうかはさておき「別れたんですか」と訊くなつはどうかと思いますよー。