なつぞら125話 感想あらすじ視聴率(8/23)母乳信仰に終止符を

母さんみたいになりたい娘

富士子はとどまります。
そして場面は、なつと富士子の寝室へ。布団を並べて、語り合っています。優はベビーベッドです。

富士子は、仕事復帰後は粉ミルクなのかと心配しています。

「仕方ないしょ」

なつはこう言います。

「私は大丈夫。そのためのイッキュウさんがいる。迷惑をかけるわけにはいかない」

「あんたは母親なんだよ」

「うん、それはわかってるから」

なつがそう言います。
ここで、優が鳴き始めます。またお腹が空いたのかとなつが起き上がり、仕事中のイッキュウさんも隣室から顔を出します。

空腹ではなく、おしめでした。

この育児描写はうまいと思います。
育児は【赤ん坊と寝ているだけ】という誤解を打ち砕きますね。

夜中に何度も起きて、空腹や排泄を見守らなければならない。それが育児です。
産後体力低下した状態で、それをこなさねばならない。

ちなみに欧米の出産事例を持ち出して、日本の妊婦は甘えている云々おっしゃる意見もありますが、【無痛分娩】が多い欧米と比較しないでください。

実は無痛分娩の元祖はヴィクトリア女王です。
当時から、そういう技術はありました。

痛みを経験してこそ母になれるという主張は、英国王室に対して失礼ですよ。

ヴィクトリア女王ってどんな人?大英帝国全盛期の象徴 その人物像に迫る

ここで富士子は、不安そうな顔を見せます。十勝に戻らないで、そのまま東京にいようかと言い出すのです。

なつは、照男と砂良、そして夕見子の出産もあるのだから、富士子あっての十勝だと言い返します。

それでも富士子は心配なのです。一人にしておく方が不安だって。

それに対し、なつはきっぱりと言います。

「一人でないったら」

「そりゃ私がいたら、邪魔なんだろうけど」

「これ以上甘えたら、母さんみたいになれない。私は母さんみたいになりたいの。強く、たくましく、美しく」

「そりゃなるでしょ。あんたは私の娘だもの」

娘に、母はそう強く返します。

うーん、これぞあるべきエンパワメント!

このドラマですら、女優同士が対立しているだの。娘に嫉妬する母だの。そういう【女の敵は女】構図が大好物な人はいるもの。

それを真っ向否定する、女同士のエンパワメントではありませんか!

母が赤ん坊を抱いてニコニコしていれば、それがましてや経産婦女優ともなれば、母性愛だと思いたがるイージーな人もいるようですが。

そでないんだわ!

娘が母への敬愛を見せなければ、母娘の絆は見えないんですよ。
あのドラマでは、まさしくそうでしたね。
母が意見をいうだけで、娘が「もぉぉぉ〜」と気持ち悪い声でたしなめておりました。

そんな世界のどこに、母娘愛があるっていうのさ。

出かける母の決意とは

「何かあったら連絡してね。したらね。体に気をつけて」

そして一ヶ月が過ぎ、富士子が十勝へ帰ることとなりました。

このあと、両親が優にミルクを作る場面が入ります。
腕で水温を確認するちょっとした仕草が、とても細かいと思います。

脚本家の大森氏の奮闘はいうまでもありませんが、チーム一丸となっていく時に向き合っているとわかります。

脚本では一行、
「なつ、ミルクを優に与える」
だけかもしれない。

そこに、水温を測る場面を入れるとしたら、演出やチーム構成員の努力があるのです。

イッキュウさんが寝かしつけながら、寝てしまうところをスケッチするなつ。
穏やかな時間がそこにはあります。

そして、6週間目――なつは仕事復帰の朝を迎えます。

「優、ママ行ってくるからね」

そう語りかけるなつに、イッキュウさんは振り向いてこう言います。

「おいおい、大丈夫か?」

「大丈夫」

そうは言いつつも、なつの優を見つめる目は優しくも辛いもの。

「優ちゃん、ママすぐ帰ってくるからね。待っててね、ごめんね」

大丈夫、大丈夫。
そう自己暗示をかけるようにして、なつは出かけるしかありません。

「心配するな」

イッキュウさんはそう言うしかありません。

「お願いね」

そう妻に言われて、イッキュウさんは優を覗き込みます。

「ああ、はいはい、どうした、どうした?」

玄関を出たあとの、なつのこの顔。
引き裂かれるような苦悩と、前を向く決意がそこにあります。

我が子を置いて働くなんてできないという、茜の言葉。

本来子供は母が育てるという、福祉事務所・村川の言葉。

そんな言葉が矢になって刺さる中、我が子への愛が一撃となってのしかかる中、なつは出かけるしかありません。

これはなつだけの苦労じゃない。

働く親は、楽をしたくて保育所に子供を預けるって?
そんなわけないしょ。

このなつの顔には、彼女ら彼らの気持ちがつまっているのです。

あなたも、私も、ドラマと社会を構成している

素晴らしいドラマのあと、こういうことを書きたくありません。

が!

NHK東京朝ドラチームの中にも、前作****教団への怒りがあった方がいたとは思うんですよね。

◆命名地獄変

前作****における第一子命名は地獄でした。

平賀源内からだと言い張る**さぁん。
源義経の子孫だというトンデモ理論から、それでいいという武士の娘。

母の気持ちはゼロ――あれはひどかった。

**さぁんの発明。それに源義経の子孫であることとセットで語ると、説明するたびに虚偽がバレるという、命名の時点で罠としか言いようがなかった……。

◆産後の肥立ち云々という煉獄

*ちゃんの産後の栄養不足を補うとして、なんちゃらホンを作ったわけですが。

開発中に*ちゃんに怒鳴るわ、暴言まみれだった**さぁん。

それでもなんちゃらホンで、チャラにしたい気配むんむん。
作り上げたものを高値に釣り上げ、マズイまま病院食にするという外道っぷり。

ママを支援する企業をうたいあげながら、社員をマタハラ退職に追い込んだ、あの企業そっくりの姿勢を朝ドラで流していたんですね。
「ママを応援します!」は、悪事絶好の隠れ蓑じゃないですか。

◆カネカショック!その転勤必要ですか?違法性はないのかパタハラ疑惑を解説(小酒部さやか) – Y!ニュース 

まぁ、この恒例バッシングもある意味前置きではある。
『半分、青い。』叩きから****教団員へ、そしてめぐりめぐって本作叩きへ。そういう層そのものが、壮大な社会実験の結果のように思えてきます。

一年前はイライラしましたが、今はただただ、興味深い。
あの手の意見も、この社会を構成するピクセルなんだな。

「病気なのに仕事をする人は目障りだ!」

「物言う女は嫌いなんだ!」

「学歴が高くて、功績を残した女はけしからん!」

「生意気な女はいじめるべきだ!」

このような意見に対して、堂々と賛同する人はそうはいないでしょう。

でも……。
「『半分、青い。』のヒロインと女性脚本家は生意気だから、叩いていい!」
には、YESと諸手をあげちゃうんですよね。

北川氏も鈴愛も、片耳失聴というハンデがある。北川氏はその他の病気をもこらえての執筆でしたが。

そうそう。
『半分、青い。』の永野芽郁さんは『真田丸』の千姫でした。
その夫・秀頼はイッキュウさんこと中川大志さんでしたっけ。

あの演技をふまえて、起用を考えたとすれば、大いに納得できるところではあります。
鈴愛にせよ、イッキュウさんにせよ、生半可な役ではありませんからね。

今までそのことに気づかなかったなんて、私も鈍感だったなぁ。

そうそう!
*ちゃんは朝ドラアベンジャーズではなくて、こちらのようです。

◆安藤サクラら3人 NHK「いだてん」追加キャスト

そうなるとは思いましたよ。
予想通りだな。

母乳信仰はもうやめませんか?

はい、そろそろ本題へ。

なつの粉ミルク育児へ、富士子が見せる不安。
無理もない話ではある。

富士子はとても素晴らしい女性ですが、娘の夕見子やなつからすれば、保守的ではあるんですね。

なつぞら25話 感想あらすじ視聴率(4/29)北大入学後に決めるよ

粉ミルクの扱いっていうのも、難しいものがある。
母乳が一番というのは、あくまで現時点での常識でして。

母乳よりも粉ミルクの方が栄養バランスが取れている。
そういう風潮もありました。

それはナゼか?
粉ミルクを売り込みたいメーカーの広告戦略です。

結果、容量を守らない事例、汚染水による感染症が蔓延し、深刻な社会問題となりました。

◆グローバル企業はなぜ貧しい母子を見殺しにしたのか 大企業への告発を描いた映画『汚れたミルク』が日本で世界初公開

液体ミルクパッケージに「母乳は最良」と注意が入っているのは、そうした企業広告による悲劇を踏まえてのことなのです。

◆母追い詰める? 液体ミルクに「母乳は最良」表示義務、「傷つかないで」と医師(岡田有花) – Y!ニュース

そうした歴史があるものであり、母乳神話で母親を傷つけることはないよう、お願いします。

だいたい歴史上の有名人は、実母の母乳で育っていませんよ。
秀頼は数少ない実母の母乳保育でしたが、当時はむしろ軽蔑対象でした。

「実母の母乳育児とか、あの猿みたいな誰かさんって、なんかおかしいよね〜」

「普通、そこは乳母スカウトに全力注ぐはずでしょ〜」

「母乳を吸わせるなんて! そんな庶民みたいなことをするあの方が、気の毒よね〜」

こういう風潮だぞ!

授乳中は妊娠できないからそうなるのです。
戦国時代どころか、明治以降すら華族ではそうだった場合もあります。

◆「母乳出ないと母親失格」 “母乳神話”で苦しめられる女性たち

液体ミルクへのバッシングも、実にバカバカしくなってくる。

「粉を溶かす手間すら省く、そんな今の母親はけしからん!」

って?
いやいや、どこまで遡ればいいんですかね。
効率と栄養と母子の健康が、母としての自覚云々より大事なはずなんです。

いろいろ勉強になる朝ドラだなあ。

◆赤ちゃん抱いて国会議長が議事、ミルクあげながら NZ

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

10 Comments

塩ラーメン好き。

出産は女性が産むもので、
当時は今より命にかかわる
もので、
なつの北海道の家族は、
心配で、駆けつけたけど、
次男だか三男だかの
いっきゅうさんの両親は、
神戸だかどこかから、
わざわざ来なかったのでは?
長男で初孫ならすぐに駆けつけたかも知れないけど。
じいちゃんは名前を決めるのに
1週間居たのでしょ。

匿名

「夫の母が関与するのが当然」という考えを押しつけているだけに過ぎませんね。

やっぱり意味がありません。

匿名

これから起こる問題。
例えば子供がいて仕事が出来ない、そのせいで査定が落ちた、保育園がなくていっきゅうさんが復職出来ないなんてところでしょうか。
これら予想される事件もろもろ、いっきゅうさんの実母がいればある程度の解決にはなったでしょうし、通常誰かが指摘するでしょう。
その解決法が放棄されているのであればそれは考えが足りませんし、それで不平を言うのであれば覚悟が足りないと思います。

言葉足らずで申し訳ない。

匿名

「脚本の穴」だとか、一般常識がどうこうという投稿がなされていますが、作中のイッキュウさんとなつの行動はごく常識的なもの。

何を仰りたいのか意味がわかりません。

hiromin

歴史上の有名人や上流階級のお子さんたちは乳母の母乳で育てられたんですよね。母乳はやはり生き物にとってスーパー栄養剤なんだと思います。ただ、出が悪かったり何か事情があるなら粉ミルクにするのも当然だろうし他人が非難することではありませんよね。富士子の不安や疑問はとてもよくわかるし、なつの決めたことを頭ごなしに否定しないで受け入れるのは懐が深いなぁ、いい母さんだなぁと思います。

二人の行動が自然か不自然かの話なのに

「その自立心と依存性の低さから来る問題」とは一体何を指すのか説明されていないし。
どのようなことに対して「考えと覚悟が足りない」と言っているのかわかりません。
あなたの反論は相手の反論を茶化しているだけではありませんか。
言葉を弄ぶ骨髄反射的なコメントはしないほうがいいと思います。

匿名

ならば、考えと覚悟が足りないとしか言えない。

今後起こるであろう問題は、その自立心と依存性の低さから来る問題としか言えなくなるから。

匿名

イッキュウさんとなつの自立性の高さ・依存心の低さゆえ。
別に不自然ではない。

匿名

いっきゅうさんの母親の存在も少し謎。
共働きに理解があって、子供も手が離れていて、専業主婦なら一年ぐらい手を貸してあげればいいのに。
特にそのせいで一年間マコさんところいけないなら、親も手を貸すだろうに。
いっきゅうさんの所でも可愛い孫だろうに。

どれみ

富士子さんが粉ミルクのことで心配していたのって森永ヒ素ミルク中毒事件の一件があるからなのでは?

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