モモッチ、新たな才能を見出される
このあと、なつはモモッチと休憩室で話しております。
モモッチの伊原六花さんは言うまでもなくお若い。
けれども、服装やメイクは変化しています。アップになるとわかるのですが、肌の色がちょっとくすんできました。
ご本人のせいではなく、メイクによるものとみた。こういうところで、加齢表現をしていると。
モモッチは、なつの悩みを聞きつつ、客観視しています。
「あれだけ『キックジャガー』を成功させたんだから」
会社の判断にそう理解を示します。
それでも保育園の迎えのためには、6時に帰りたい、となつは語ります。
さらには暴力的なものは好きになれないとも加えます。
『ヘンゼルとグレーテル』では、原作のグレーテルが魔女を焼き殺すプロットに反対しました。
なつぞら88話 感想あらすじ視聴率(7/11)坂場と共に徹夜作業『百獣の王子サム』でも、暴力シーンを見せたくはなかった。
なつぞら99話 感想あらすじ視聴率(7/24)桜隊の悲劇それなのに『魔界番長』はどうか。これは辛いなぁ。
「会社の都合を聞いていたら、やめられない……」
モモッチはそう言い出します。
そうそう、話題はモモッチのことだったとなつは言い出します。
聞けば、会社を辞めると彼女は言い出すのです!
トレースという仕事に、自信を持って取り組んでいたモモッチ。
けれども、仕事は減るばかり。
「機械がやるからね」
これも悩ましいことではあります。
トレースマシンが導入されていたのです。
漫画映画を描くには、それだけの枚数が必要になります。そしてその線が、うまく重なるようで微妙にずれていることで、動いているように見える。
そういう世界は終わった。
今は効率なんだ。東洋動画でもいち早く投入しているのです。
機械を使うことで、失われることはあるんです。それが実は、東洋動画にとってのモモッチなんだ!
用済みと愚痴るモモッチ、慰めるなつ。
しかし、モモッチは不敵な笑みを浮かべこう言います。
「私にとっても、会社は用済みってこと……」
合理化のせいで用済みになったモモッチは、女帝マコに相談しました。
マコは、モモッチに彩色に興味はないか? と持ちかけます。
東洋動画での仕上げは、美術の色指定に沿って塗ってゆくシステム。
背景は仕方ないにせよ、動画の色指定は仕上げがやることにしたい。マコはそう持ちかけるのです。
「モモッチなら、そういうことに興味あると思って」
さすが、マコさん、有能だ!
その目で、モモッチの色彩センスを評価していたのでしょう。見る目あるから、マコさんは。
「それが決め手ッ!」
モモッチはそう言い切ります。
塗りながら、これはちょっと違う色がいいのにな〜と思っていたのです。
「そういう才能あるかも。好きかもしれない! それでいく!」
このモモッチの歓喜よ。
自分の秘めていた才能を見出され、ウキウキルンルン、三顧の礼後の諸葛孔明状態ですよ。
『半分、青い。』で、鈴愛が秋風塾に誘われた時を思い出しました。
あれは五平餅がらみで揉めたけどさ。
なつは戸惑うしかない。
同期のモモッチまで、マコプロですもの。取り残された気分にはなります。
そういう今後の動きへの伏線がお見事です。
アニメーターとしての奥原なつの道
このあと仲がなつを廊下で呼び止めます。
「なっちゃん!」
誠実な仲は、山川と佐藤に説得してくれと泣きつかれたと言い切ります。
作画監督をどうしてもなつに任せたいようでして、昇給もあるとまた繰り返します。ちゃんと給与を言い切る本作って素敵。
なつの浮かない顔を見て、仲は子供の時間が欲しいのかと気遣います。
「やっぱり無理か……」
「すみません。それもありますけど、実は作品に乗れないんです」
「なるほど、そうか。そうだとしたら、僕が言えることは何もないな……ここからは、なっちゃんが自分で決めるしかない」
モチベーションが上がらないと言われて、仲は理解を示します。
イッキュウさんから妙な誤解を受けていた仲ですが、あれは完全にイッキュウさんのやらかしですね。理解がある人なんです。
「アニメーターとしてどこを目指すか、誰も教えてくれない。僕は、なっちゃんが決めた通りでいい。何をするにせよ、アニメーターとしての奥原なつの意思を、尊重したいと思います」
くーっ!
魂の名言レベルじゃないですか!
仲は、これまた誤解による、咲太郎噴水突き落としをされたこともありましたが。
なつぞら51話 感想あらすじ視聴率(5/29)コネなど不要、実力で勝負だあのときのセリフでもあったように、なつの才能を見出してアニメーターの道を開いたからには、責任を感じているのです。
男性が女性の人生に責任を持つということは、夫婦間だけではなくて。上司と部下でも、そういうものでしょう。
仲はその点、理想の上司感が出ています。
さて、最高の上司に認められ、なつはどうするのか。
優を迎えに行きます。
「ママありがとう、今日は来てくれてありがとう!」
「優、今日は公園で遊んで帰ろっか」
夜は遊んで帰らなかった。けれど今日はそれができる。
なつぞら129話 感想あらすじ視聴率(8/28)生々しい子供の描写が刺さるんだここで父のナレーションが語ります。
結局、作画監督は引き受けたのです。
なつよ、ともかく前を向いて歩こう――。
インスタントラーメンでも食べようか
さて、今朝出てきたラーメンとは、前期の朝ドラメインテーマであったインスタントラーメンでしょう。
ここでわざとらしく前作****ラーメンパッケージを映さないところに、NHK東京の潔さを感じると言いましょうか。
やれば話題になるとは思います。
でも、そんなセコいことで勝負しなくていいですもんねっ!
◆安藤サクラの出演シーンに「****ラーメン」がさりげなく登場! #だから私は推しました が話題
そのせいで当時の安酒を土産にして、時代考証吹っ飛んだりしかねないわけですし。
私もあのウイスキーのモデルは好きですけど。
当時ならジョニ黒(ジョニーウォーカー黒ラベル)あたりでしょ。
◆****、**の“手土産”に朝ドラファンまたも注目 ウイスキーが…/芸能/デイリースポーツ online
本作でも『半分、青い。』のタイトルは使っておりましたっけ。
朝ドラアベンジャーズ枠で永野芽郁さん来ないかな〜。
◆なつぞら:まさかの「半分、青い。」にファン歓喜 下山のせりふに「泣けてくる」「名言」の声も
ま、味にこだわりのある、なつとイッキュウさんのチョイスです。
教団印ではなくて、東洋水産あたりかもしれませんもんね。マルちゃん正麺、いいですよね。
ラーメンついでに、ちょっと補足。
朝ドラにおけるインスタントラーメンでは、問題視されていたことがありまして。
あのドラマは、テーマのインスタントラーメンの扱いすら、歴史修正的でした。モデル企業の宣伝をそのまま流用しただけではありますけどね。
◆『****』インスタント麺=「栄養豊富」喧伝への違和感…主な成分は脂質・食塩等
NHKは一体何をしているのかと不安になったものですが、本作での扱いは正しい。
インスタントラーメンは主婦層の救世主ではなく、学生、夜間の労働者、独身男性。ここでのなつのような、あくまでとりあえず作りたい時のものでした。
モデル企業があろうと、そこは真面目にやりましょうよ。
本作のような意図的な改変よりも、あれはそうではない何かだったと感じました。
本作での企業描写といえば、本作は手塚プロダクションにも好戦的でしたし。
なつぞら97話 感想あらすじ視聴率(7/22)鉄腕アトムに斬り込んでモモッチの描写を見ると、東洋動画モデルにもなかなか辛辣だと思えました。
忖度?
本作ではそこまでしているように思えません。
機械化、効率化で失われるもの
機械化でモモッチという人材を失うことになった東洋動画。これも、今に通じる話なんですよね。
本作の小道具さんも日々、使っているであろうAdobeのIllustrator。
デザインもDTPも、もうこれなしじゃできない。結果、失職した方もいることでしょう。
でも、そこに罠がある。
当時は使われていないフォントを、ついつい使っちゃうとか。そこは面倒臭がらずに、当時のフォントを探さないといけません。
無茶苦茶大変ですけどね。特別手当を払っていただきたいくらいです。
……まぁ、フォント命の篆刻を、素人がホイホイできちゃった、そういうドラマもあったっけ。
そんな現場だと、このへんはすぐ通りますよね。
脚本遅れの兆候は、そのあたりにも出ると感じます。
◆NHK大河ドラマ『花燃ゆ』に日本語学者がツッコミ「幕末の書物にパソコンの明朝体フォント?」
当時は流行していないカラーパレットやパターンを、使っちゃうとか。
線が綺麗すぎて、デジタル処理がバレバレ、当時のものに見えないとか。
本作はこの点、かなりがんばっていると思いますよ。
今朝も、モモッチの着ている服のチェック柄がいい味を出していました。
今朝も、いい仕事です。
ラストスパートの一ヶ月、見守っていきます!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
ももっちのモデル、保田道代さんはその後スタジオジブリの色彩設計として、スタジオジブリのほぼ全作品に関わることになります。
宮崎駿がジブリ内でほぼ唯一逆らえない人物として保田道代さんをあげており、彼女の鶴の一声でスタジオジブリがデジタルペイントに移行したと言われています。
機械によって仕事が奪われ、新しい仕事に挑戦し、そして機会の良さに誰よりも早く気付くというのは趣深いものがありますね。
機械化で単純作業(トレース、色塗り)が淘汰されるようになり、
よりクリエイティブな仕事(色彩)が重点化され、人材もそちらに移動する。
現在のAI技術に通じる視点ですね。
いつも当時の雰囲気の物、色々とスタッフが頑張っているのを見るのが楽しいです。
武者さんがモモッチの衣装について述べていたので衣装つながりで前から気づいていたことコメントします。
もしかしたら気づいているかも知れませんが、武者さんは男性だから触れにくい下着について。
ちゃんと女優さん達が
シミーズを着ているんです!
下着が分かる薄い服を着ていた時のなつや光子さんや他の人だけでなく、
あまり分からないセーターを着ている時もシミーズらしいのを着ていて、気を抜かず当時を再現しているところが、ここからも分かり感心します。
半分、青いと下山さんのスケッチで見つけた時などもですが、
ドラマの内容も昭和感のある懐かしい物をみるのも、また、遊び心の発見があったりで何倍も楽しめます。
ヒヨコーラーは気付かなかったので明日再放送で確認してみますね!
ありがとうございます(^^)
あさイチで言っていたのですが、メンマは中川さんのアドリブとの事です。
イッキュウさんがしそうな感じで、良かったです。
イッキュウさんのような不器用な人実際いるので、リアルで、私もスゴイ役者さんだなあと思います。
なつ宅の台所にある家庭用湯沸し器。この頃普及するようになった製品です。昭和50年代頃までよく見かけたタイプ。自宅でも友人宅でも。懐かしいです。
それから、イッキュウさんがなつに分けていたメンマ。この時代ですから、「桃屋の味付けメンマ」でしょうか。「インスタントラーメンに桃屋のメンマを入れて…」という食べ方もこの時代よくある食べ方の一つだったと思います。
気が付きましたか?みなさん!
東洋動画の休憩室に置いてある瓶コーラの自販機、
『HIYO COLA』って書いてあるんです。
『ひよっこ』へのオマージュでしょうか?
美術スタッフさんの遊びゴコロ、楽しいですね。