なつぞら112話 感想あらすじ視聴率(8/8)幾重にも張り巡らされた伏線

昭和41年(1966年)、北海道・十勝――。
田辺の悲願である十勝酪農王国建設が、今、進もうとしていた。

そして今日からは、建国後の内政パートになります。
よっしゃあーーー!!

新しい家族を作ること

なつと坂場は、信哉と再会しました。

「なっちゃん、おめでとう!」

「式はまだ先だけど」

なつは、坂場家から許可をもらっていないと、ちょっと不安そうではあります。
坂場は大丈夫だと念押し。彼なりの確信があるのでしょう。そのあたりの説明をすっ飛ばしているだけで。

「なっちゃんをどうかよろしくお願いします! 本当に辛い思いをしてきた人なんで……」

そう誠実に語る信哉。
彼の場合、目線にちょっと惜しむような光もありますし、倉田と比較すると、地に足がついた常識人だとわかります。

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「ああ、きみが、あの映画の……そうか、あれを作ったきみならば、奥原なつを安心して任せられる! なつをお願いします!」

あの映画から、どういう人間か魂を掴んで、安心していた倉田。

一方で、信哉は自分が見てきたなつの過去を元にして、不安を抱いているのです。

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避難所の学校に駆けつけたものの、そこも火の海。
危機的な状況の中、なつの手をつかみ、プールに飛び込ませてくれた。
それが信哉でした。

どちらが上か、よいか、そういうことじゃない。
ただ、違うだけ。

実はそんな信哉も、昨年結婚済みでした。札幌で、二人だけの式をあげたのです。

妻の気遣いでした。
誰も親族がいない、戦災孤児である信哉のためにそうしたのです。
※ちなみに、北海道の披露宴はご祝儀を包むのではなく会費制

これも美しいですね。
信哉の妻とその家族を重ねて、坂場とその家族のことを暗示しているようにも思えるのです。

「おめでとう、ノブさん!」

「なっちゃんもこれから、新しい家族を作っていくんだな」

「うん、ノブさんもね」

新しい家族を作ること。
戦災孤児である彼らのやりとりだとふまえると、胸が詰まります。

8月に放送することにも、意義がありますね。
直接的に描かなくても、こうして戦争を描くことはできるのです。

せっかくの綺麗な思いを台無しにして申し訳ありませんが、前作****はそこがダメでしたね。
**さぁんの背景を変えて、孤独な身の上にしたこと。
国籍ルーツ変更という違反はあったものの、それを作劇上の重要な要素にすればよかった。

現に、なつの場合は、緻密にそうしている。

けれども、**さぁんには新しい家族への気遣いがろくになった。
義母を侮辱してせせら笑い、まだ幼い我が子を労働力扱いしているようにすら思えた。
家族への愛も絆もなかった。
いくら浴衣姿で寝室でベタベタしようが、そこには愛が微塵もなかったのです。

十勝の空よ、私たち二人を見ていて

十勝の空の下で、坂場はしみじみとこう言います。

「きみはすごいな、こんなにいろんな人から、恵みを受けて生きてきたんだな。その恵みを、ちゃんと返してる」

「そうだったらいいけど……」

これはまさに私も思っておりました。

前半部、なつは周囲から受け入れられて生きてきた。
それが、坂場との出逢いをきっかけに、変わったのです。

いろいろ特殊すぎて社会からはじきだされる、そんな坂場をなんとかなじませようと、恵みを返すようになってきているのです。

「きみの絵を動かすのは、何だろう? そのことを、ずっと考えてた。僕にもし、そういう力があるんだとしたら、才能があるかないかにも関わらず、またやってみたい。漫画映画……またその道を探りたい。他の就職先は考えられない! きみには苦労をかけるかもしれないけれど……それでもいいなら」

「いいに決まってるしょ」

なつがそうしみじみと言うと、二人は感極まったように抱きつきます。

感情の昂りと、仕草が自然に溶け合っている。
背後の景色に対してもそう。

「こうすれば、生きる力も、二倍になる……」

ほら、大丈夫だって。

「やるぞー! 空ー!」

「よーし、空ー!」

なんだか大自然でハイテンションになって絶叫する、ちょっとなんだかわからない二人にも思えるのですが……。
セリフと演技、演出が全部綺麗にかっちりと噛み合っているから、これはもう、ひとつの世界ですね。

すごく美しいけれど、その美しさと残酷さは表裏一体でもある。
不器用なんだ。
二人には、この道しかない。

そこがやっぱり、**さぁんと*ちゃんとは違う。
坂場となつが、しれっとCMキャラクターになって、注目を集めて、耐えられるとは思えません……。

自分の顔を看板にするホテルオーナー、自分がCMの陣頭指揮をとる某視覚矯正器具社長。
そういう器用な人に、誰でもなれるわけではないんだわ。適性の話ですよ。

ここで、ゲホゲホど咳き込むところが、坂場らしいですね。

表裏比興め……

その夜、柴田家では――。

ニュースとして放映される、十勝酪農王国建設の一報。
それを、あの場にいた柴田軍諸将が見ております。

ナレーションは信哉です。

なつぞら111話 感想あらすじ視聴率(8/6)反対派を動かした菊介の言葉に坂場の魂

明美は、これを見て戦意の刺激を受けています。こやつも軍師の姉を見てきたからのぅ。

「血湧き肉躍るよいものですなぁ、私も初陣を飾りたかったものだ……」

「たったこれだけ?」

皆がそう思うほど、ニュースは短かったようです。
次は、お天気お姉さんに切り替わります。

北海道はもう初冠雪も確認だってさ。夏のように思えても、冬は早く来るべな。

そんでもって、なんと、このお天気アナウンサーが信哉の結婚相手だって!
言われるまで気がつかなかったと、皆驚いています。確かに名字は佐々岡になってましたね。

「めんこい子だな……」

ここで、泰樹ジジイがボソリ。

「そりゃテレビに出ているんだもの」

「めんこくない子も出てる……」

げえっ、ジジイ!

ここで照男がこう言います。

「じいちゃんも、そういう目で見ているんだ……」

はい、ここで【表裏比興】観察日記。
泰樹と****教団員を比べて、彼らの特殊性を学んでみましょう。

【****教団員】
・飲食店で、男同士が女子社員ジャッジ
・ヒロイン姪を「蓼食う虫も好き好き(=あんなブスでも抱けるんだwの意)」とこき下ろしする
・別の店員のほうが美人とジャッジして盛り上がる
・美人を誰がゲットするかで盛り上がる
・女が誰のものか、まず確認しがち

【表裏比興】
・照男の言葉からすると、泰樹は日頃容姿のことを話題にしないと推察できる
・なっちゃんはじめ、女の親族がめんこいという容姿ジャッジを、泰樹はさほどしていない(開拓者魂があるかないか)
・あれだけの美貌でありながら、結婚が遅く、妻死別後も再婚なし
・とよババアはスパーリング相手。女っ気?  全くわからん!

同じ枠の仲間を紹介しますと……。

『SHERLOCK』のシャーロックさんですね。
絶世の美女であるアイリーン・アドラーをじっとみつめるわけです。

エロいから?
全裸だから?

そうではなくて、彼女を推理対象として観察していて、かつそれができないから困惑して見つめてしまう。

めんこいかめんこくないか、客観的に判断するだけ。
その結果どうこうではないんじゃあああ!
泰樹も、そういうお仲間ですね。

そんなシャーロックは、こんなことを言いよります。

「いや、僕はきみを侮辱していないんだよ。事実を指摘したまでのこと」

ここでの泰樹もそうなのでしょう。

「いや、めんこいから羨ましい、そんなことでねえ。ただ見て、めんこいからそう指摘しただけのこと」

めんこくないと言われた人の気持ちは、考えていない。
そういう発言を周囲がどう思うのかも、どうでもいい。
そういうところだぞ【表裏比興】っつのは!

これをリアル戦国時代で見ておきますと……。

【戦国時代の例】

真田昌幸「上田城は徳川の支援で作ったもの。だが、徳川を迎え撃つのに便利だから、使うまでのことよ……」

徳川家康「その結果が恩を仇で返していて、無茶苦茶あてつけがましくて、こっちにとっては屈辱的だと気が回らないのか!」

第1次上田合戦とは? 真田が勝利を掴むために仕掛けた「油断と地形、砥石城」

そこは、そういう気遣いを期待しないで……。

『明美の野望・報道』

そんなジジイを喜ばせるようなことを、明美が言い出します。

「信哉殿のような、世を切り取り仕事をしたいのう。アナウンサーでなく、女でもできるのであれば……」

坂場がここで、こう来ました。

「できます。男女差がなくなっていきますから」

ドヤァ……これも、結構面白いんですよね。

明美はこうは言わない。

「私もアナウンサーになって、信哉さんみたいな人のお嫁さんになりたいなぁ〜」

坂場も、違う。

「信哉さんみたいなジャーナリストだって? 女の子なんだから、そんなの無理無理。やっぱり女の子は、アナウンサーになって玉の輿狙いをしたらいいよ」

つい先日もビッグカップルのニュースがあったものです。
※続きは次ページへ

3 Comments

あねもね

たんぽぽの優しい黄色。
バターの優しい色 を連想させます。
なつのタートルネックの色も呼応しているようで。

剛男の詩的な発想も素敵で、伏線の妙を感じながらも、美しいシーンでした。

むんむん

懐かしい※※※※教団の様子を見て『ホモソーシャル』という単語と『日本は巨大な男子校』というウィジーの記事が頭をよぎりました。
なつぞらは共学なので、安心して見ていられます。

hiromin

お父さんが帰ってきたら自然にテレビを消すところが昭和の懐かしい光景で、ほんの数秒にそういうシーンを入れるところが丁寧だなぁと思いました。

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