なつが見せているのは、ソラの新デザインです。
おさげにしていて、赤いワンピース。どこかで見たような……。
この子の物語なら見たくなります
ここから先は、昨日のダメ出しタイムを振り返りつついきましょう。
なつぞら141話 感想あらすじ視聴率(9/11)フーテン亜矢美が超絶COOL!神っち:おー、かわいいじゃない!
→彼のこういう言い方。脳内点数はほぼ満点です
モモッチ:かわいい、たくましさもある
→神っちを補足しつつ、褒めています
モモッチ:赤いのはナゼ?
→なつ「寒いから頬がリンゴみたいに赤くなる」。理由を引き出す、いい質問です
イッキュウさん:うん、この子の物語なら、見たくなります
→合格! 文句をつけないということは、よいこと!!
イッキュウさんが見たいこと。
それは、仰々しい活躍ではない、生きる力そのものです。
その言葉を聞いて、陽平も納得しています。
「それが必要なものなんだ……」
神っちも、よいものを作る、そして新しいものにすると決意を固めています。
優しいあの子の名前は
このあと、なつはそろそろ優を迎えに行きたいと言い出す。社長のマコは寛大に許します。
本作はいいなぁ。
子供に気をとられることは、仕事に対するヤル気がないとか、そういうことは絶対に言いません。
これこそが正しいと思う。
子供のことで気もそぞろになって集中できないと、時間も効率も無駄になりますもんね。
ただ、かじりついての深夜作業自慢とか、寝ていない自慢とか、24時間戦えるからってドヤ顔する時代は終わった。
いや、始まっていたことすら、人類史においてない。
そうだと勘違いしていた人。
その勘違いが抜けない人がいるだけのことです。
※いつまでリゲインCM気分なのでしょうか
ナポレオンだって、野口英世だって、昼寝なり息抜きはしていた。
昭和のモーレツ社員だって、ルノアールでたばこプカプカしながらスポーツ新聞を読んでいたでしょ。
伝記作家の誤認か誇張を信じてどうするんだ、という話です。
なつはここで、こう返します。
それでも仕事をしたいから、戻ってくる。
マコはちょっと驚きつつ、認めます。
「それは構わないわ」
かくして、優は保育園からマコプロに来ることになりました。
優がいる中で、なつは一心不乱でカッコいいおじいちゃんを描いています。
どうしたって、泰樹を思わせるデザインです。
そしてここで、OPが始まって壮大な実験の成果が見えてきます。
そこで走る、赤いワンピースにおさげの女の子。
あの子の名前は?
そう、ソラです――。
鍛えてください、託します
そんなある日曜日。
坂場家に来客がありました。
信哉と明美です。
マコプロの話を聞きながら、明美は羨ましがっています。
イッキュウさんはしみじみと言います。
小さい会社だから、気心がしれているからこそ、やっていけるのだと。
「結婚しても好きなことができる環境を作るのが、一番難しそうだもん」
この明美のセリフからもはっきりと示されました。
マコプロのモデルは、スタジオジブリであって、そうではないのです。
女性の労働環境において一段上なのです。
それと同時に、朝ドラ最難易度に挑んだ証明でもある。
しつこすぎるくらいに指摘してきてはおりますが、朝ドラヒロインの板挟みはテンプレでした。
「仕事と家庭の間で悩まされるのぉ〜」
女性を応援しながら、ワーキングマザーの背中をガスガスと蹴り飛ばす――そういう悪しき因習がこびりついていた。
それも、もう、終わりだ。『半分、青い。』の【スパロウリズム】以来、誰かがそこに挑んできたぞ。
さて、その明美は東京に来ていました。
地方と東京では違う――このセリフも重いものがあります。
地方在住経験があればわかるかと思いますが。
地方ニュースでは、地元で起こった災害をトップで流し、被災者の苦闘が映される。
それが全国版になったら、あおり運転あたりがトップに出てくる。いや、それも大問題ですけれども。
災害は、地方の苦しみは、どこに行ったの?
これは近代以来の課題だとは思います。
二・二六事件の背景にだって、東北の貧困に中央が冷たかったことがありますし。
『ゴールデンカムイ』の鶴見は、中央が北海道を放置気味にしていることを逆手に取っている。
そんな明美は、信哉がデスクで助かっていると、しみじみと言うのです。
思い出すのは、げに憂鬱な、前作****教団のネトゲ廃人画伯。あいつと信哉は、対極にいます。
女はイケてる(と、本人は信じている)おっさんに性的目線で見られてこそウヒャハー!
という【ファイナルオヤジファンタジー】がありますが。週刊誌の見出しでよくあるやつですね。むしろそれは、逆です。
信哉は、明美に親しみはある。
なつの関係もあってか、実の妹のように見てはいる。
でも、そこにエロ目線はない。彼女の感性、聡明さに感心しているのです。
「ほんとうの妹みたいだ。甘やかさず、ビシビシ鍛える」
初の女性ディレクターにする――そんな信念を抱いて育てている。最高のおじさんになりつつあります。
ここで、秋風先生と鈴愛の関係でも。
半分、青い。78話 感想あらすじ視聴率(6/30)きみは逃げずに戦った師匠のダメ出しがゆるんだとき、鈴愛は絶望した。
もう、見限られたと察知した。
女だからと鼻の下を伸ばしてデレデレする。そういう年上の男性は尊敬されない。
中身があって、理由があって、厳しい批判をして、かつ育成する。上司たるものそうでなければ。
ハラスメントでもない。下心丸出しでもない。
そういう姿に、辿りつかないと。
だからこそ、なつはこう言います。
「ノブさん、ビシッと鍛えてやって!」
なつは知っている。
家族。
柴田牧場のひとびと。
演劇部のひとびと。
東映動画のひとびと。
ここにいる、マコプロの仲間たち。
新たな家族。
周りの人々が、自分を鍛えてきてくれたこと。
空襲の夜――信哉は自分を救い、導いてくれた。あのときみたいに、明美をそうして欲しい。
そう委ねているのかもしれません。
なつぞら1話 感想あらすじ視聴率(4/1)タンポポ食べるヒロインに期待♪物語と実体験を重ねよう
明美は、なつたちが十勝の柴田家を訪問したことを尋ねてきます。
モデルというよりも、あくまで架空の話とすること。それでも、知っている人がみれば、モデルがわかってしまうのでは? そう問われます。
「そう思われていい。そういうリアリティがある。原案に、実体験を重ねる」
イッキュウさんがそう言います。
そうすることで、千遥にも物語が届いて、なつの話だと思うかも。
ぜひ見て欲しい――そう語られます。
ついにここまで来ました。
名前のクレジットを見るだけじゃない、物語そのものを妹に見せる。
「どこかで見ているって、信じてる……」
そう信じるからこそ、素晴らしい物語にしたい!
「そうしなければ、きみと作る意味がない」
イッキュウさんは力強く、なつにそう言います。
彼は泰樹の話を聞き、その底にある悲しみまで感じ取りました。
人が結びつく、その優しさも。
「それこそが僕らの描くべき物語だ」
そうイッキュウさんは言います。
主人公は少女と少年
イッキュウさんは、プロットに一人のオリジナルキャラクターを加えると言います。
これですね。
オリジナルキャラクターとは、実は一番難易度が高い。
やりすぎると、【メアリー・スー】になる。
Mary Sue(メアリー・スー)とは、理想化されたオリジナルキャラクターを揶揄する語。(ウィキペディア「Mary Sue」より引用)
その人物は、少年時代の泰樹でもあり、なつでもある。千遥でもある。
イッキュウさんは語ります。
家族とは、血縁的に本当の家族であるかではない。
それを望む心が、あるかどうか。
「それを描き、自分の物語とすることに、抵抗がある?」
なつは微笑みます。
「私の役目は、絵に魂を吹き込むこと。信じてついていくだけ。いい作品にしましょう!」
これは、ただの夫唱婦随ではないのです。
ここだけ切り取ると、そう思えるかもしれないけれど、なつのキャラクターデザインがなければ、イッキュウさんのプロットはできない。
イッキュウさんがプロットを作らなければ、なつは絵に魂を吹きこめない。
二人でひとつ。
二人で、大草原を舞台に新しい世界をつくる。そういう関係だ。
これも『真田丸』を思い出す。
真田昌幸の子は、兄と弟でひとつになっているところがあった。役割、魂。そういうものがある。
商品名に夫婦の名前を打ち込むとか。「さすが教祖の妻だ!」と大仰に褒めるとか。
そういうことじゃないんだ。
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