ミルコスまんが広場『大草原の少女ソラ』。
最終回のラストシーンは、成長したレイがソラの元に戻ってくる場面でした――。
牛飼いになったソラと、夢をかなえたレイ。
「ソラー!」
「レイ、レイなの? 本当にレイなの?」
「ああ、ただいまソラ」
「おかえり、レイ」
やっと会えた。
そう喜びを語るソラに、会えなかったけれどずっと一緒にいたと語ります。だからこそ、夢を叶えたのだと。
獣医の夢が叶ったのは、ソラと家族になったから。
そうでなければ、叶わなかったとレイは感謝をしています。
でも、夢はまだこれからも続く。これから、ここから始まる。
「うん、行こう、ソラ!」
走り出す二人。背後で牛が見守っています。
『なつぞら』のタイトルが、二人を見守る上空にかかります。
夢はまだ、ここから始まるのです。
ミルコス社長がついに登場
マコプロでは、『大草原の少女ソラ』の完成記念パーティが始まっていました。
この飾り付けが、昭和らしいレトロ感が溢れるものです。
当時は100円ショップで買ってくればいい、ってわけじゃない。手作り感溢れる飾り付けです。
ささっと当人たちが書いたような、そんな完成を祝う毛筆の字の素朴さ。
黒板にチョークで描かれた文字。
ホワイトボードやプリントアウトした絵の普及はまだまだ先です。
料理も素朴です。
周辺の食堂にお願いしたのか、当人たちが作ったのか。それでも満足できればよいのです。
「お疲れ様でした!」
そんな素朴なパーティに来ているのが、スポンサーであるミルコス社長・松武博(大泉洋さん)です。
なつぞら144話 感想あらすじ視聴率(9/14)千遥となつを繋ぐ千夏マコプロが作る「大草原の少女ソラ」のスポンサー、ミルコス食品工業株式会社・社長の松武博役で、大泉洋さんが登場!!あれ?そういえば…今日は水曜日…?
セットを回っていろいろな場所で写真を撮っていたので、ご一緒させて頂きました♪#朝ドラ #なつぞら #大泉洋 #水曜日に登場 pic.twitter.com/BKHcEqK8lI— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) September 24, 2019
視聴率がそこまでよろしくない。
とはいえ、第一回だからスポンサー側も内容には納得しているそうです。話が地味すぎる。
そうも言われているそうです。
名前が出てこない理由はわかりました。
【松】浦【武】四郎+森崎【博】之
こういうことですね!
森崎博之さんの役名に大泉洋さんが入っていて、どういうことか? と疑問ではあったのですが。この二人は交換していると。
そして松浦武四郎!
【北海道】という名を付け、開拓の起点に立ち、アイヌの権利を訴え続けたあの人物です。
『永遠のニシパ』がBS4K再放送された翌々日に、その名を持つ、開拓アニメを支えた人物が出てくるという、この壮大なスケール!
参考 松潤ドラマ永遠のニシパ主人公・松浦武四郎が蝦夷地を探検→北海道と名付ける武将ジャパンその松武はこうしみじみと語ります。
「本当に素晴らしい番組です。誇りに思います!」
彼の祖父は開拓者一世。
父がその開拓者の精神を受け継いで、ミルコスを創業しました。
地味な題材と言われつつも、松武がこの作品を庇った理由もわかります。
それだけではなくて、開拓者の生活を地味だと言い張る周囲に対して、どんな気持ちであったかもわかります。
そこはもっと考えた方がいいべな。
「東京にいる社長は、開拓者のことなんてどうでもいいっすよね〜」
そう油断して世間話をしていたとしまして。
その社長は開拓者の子孫であり、その魂を引き継いでいることもあるんでないかい?
「祖父と父を代表して、お礼を言います!」
感謝の気持ちを告げたくて、彼は忙しい中やって来たのです。
多忙なのでしょう。すぐ側には、秘書か、部下か、そんなスーツ姿の男性がそわそわしております。
ここで朗報です。
マコプロには、次の作品も依頼したとか。同じ路線を提供していきたいと、考えているのだそうです。
皆喜ぶ中、神っちだけはこれです。
「また寝ずにやんのかよ〜」
彼はめんどうくさい。評価されなければされないで怒りますし、認められて次が来たら来たで、こういうかわいげゼロのことを顔をしかめつつ言う。うれしいくせにさ。
このめんどくささをどう制御するのか。そこが大変ではありますよね。
開拓とは、自分の生活を一から作ること
マコは、イッキュウさんを松武に紹介します。
「いやあ、君にも開拓者精神があるね。ミルコスに匹敵する偉業だよ」
ここで、空気を読むタイプならば照れるなり、おだてるなりするところですが、そこはイッキュウさん。
彼の考えた開拓について語ります。
開拓とは、偉業ではない。
自分の生活を一から作ること。
それが作品を作るうえでの基本でもある。みんな、その開拓精神を貫いた――。
これには松武も拍手です。一世が持っていた精神だと、納得しているのでしょう。
イッキュウさんが語り始めたときは、一瞬「うん?(何事?)」というような小さなセリフが入ってましたが、これこそ大泉洋さんの真骨頂というか。終始マジメな顔の中に、さりげなく素っ頓狂な声が、視聴者をクスッとさせますよね。
次に、作画監督のなつが紹介されます。
「いや〜、あんたがなっちゃんかい!」
松武社長、道産子が、道外で別の道産子を見つけたムーブになってる!
発音まで変わりました。ちなみに上の世代の道産子は、本州のことを内地と呼びます。
「あんたも開拓者なんだべさ?」
なつは自分はそうではないものの、この作品を手がけたのは身近にそういう人がいたからだと語ります。
みんなと出会わなかったら、みんなといなかったら、できなかった。
ソラとレイよりも幸せ。
私はただ、動画用紙を耕しただけ。
なつぞら41話 感想あらすじ視聴率(5/17)それでこそ、わしの孫じゃ!「よく言った! それでこそ、わしの孫じゃ! 行ってこい、漫画か映画か知らんが、行ってこい! 行って東京を耕して来い! 行ってこい、なつ、行ってこい!」
なつは噛みしめるようにそう言い、
「ほんとうに、ありがとうございました」
と深く礼をするのでした。
すべての開拓者に、乾杯!
このあと、マコは乾杯の音頭を取るよう、松武に頼みます。
これもマコさんスキルです。
イッキュウさんや神っちだと、ちょっとどうなるか想像できないところですからね。
あいつら、東洋動画の上司には地獄の塩対応をしていたし……。
なつぞら103話 感想あらすじ視聴率(7/29)謀反の種は蒔かれたか?坂場も、長編に戻れない、もう芸術は作れないと新年早々落ち込んでいます。
芸術家の野心あってこそ、作品はよくなるのに、って。
でも、松武はちょっと違う。
「ここはなっちゃんに任せるしかない」
なつは引き受けます。
「それでは僭越ながら……我が愛する北海道を代表して、乾杯してください! すべての開拓者に、乾杯!」
僭越ながらと添えるのがポイント。イッキュウさんと神っちだとすっ飛ばす可能性もあります。
それに、なつは傲慢でもなくて、ちゃんと謙虚だとわかります。
彼女の言動を見ていると、気が強いけれども、感謝も謙虚も気遣いもあるとわかるはずなのです。
はい、ここからはマコプロチームのご挨拶。
下山はちょっとお酒が入っているかな?
ノリノリで派手なアクションを描きたい欲求を、次にはバリバリ炸裂させたいと言います。
牛のベロンは彼のアイデアです。彼はアクションだけではなく、コミカルな作画も得意です。
茜は、アニメーションは難しいけれど、おもしろいと語ります。子供と一緒に、まだまだ成長していきたいと。
そうそう、彼女のような母であり妻でも、成長はできるのです。
陽平は、やっとこの仕事に誇りが持てるようになったと語ります。
そしてこの作品は、弟の天陽に捧げると告げるのでした。
『神っちの野望・結婚』
そして次の神っちは。
「大いなる予算と人材を備え、我らの砦を築こう!」
なんだか戦国大名じみたことを言いだしましたよ。
この【魔王】め。なんだ、砦って。『神っちの野望』かっ!
「そしたらモモッチ、ずっと側にいてくれ!」
おっ、いきなりこれか!
さあモモッチはどうする?
モモッチは、一生を色指定に捧げると言い切ります。特に神っちと一緒なら……おおっ!
神っちの戦国大名宣言からの、プロポーズからの、承諾! 怒涛の流れです。
神っちとモモッチは、『大草原の少女ソラ』主題歌にあわせて、マコプロ内で踊ります。
やったね〜、微笑ましいね〜!
いや、私だってそう言いたいけれども……ちょっと、おかしいぞ!
・仕事の完成祝いでサプライズプロポーズだと?
→お約束を全部ぶち破っていてある意味すげえ! ロマンチック……かな?
・踊るにしたって、アニメの主題歌? 自分の仕事とはいえ……
→これがこの二人にとって最高のロマンチックなんだよ!
・ファッションセンスが……
→常に派手なモモッチもかなりすごい。けれども、神っちもそうです。くしゃくしゃの髪、派手な柄シャツ、そして短パン。当時、成人男性が膝小僧を出している服は、かなりの個性がありました。
・神っちの反応も顔も変だぞ?
→こういう集合シーンだとわかりやすいのですが、落ち着きがなかったり、顔を歪めていたりします。
作画中も、結構すごい顔になって描いている。メインで撮影されてなくても、役に没入する染谷将太さんがすごい!
なんだか当人が幸せそうですし、マコプロの皆さんは慣れきって微笑ましく見ておりますが。
将来、この夫妻がこうなっても不思議はないと思いますよ。
「なんかあの二人は変わっているのよね」
「ご近所づきあいできるのか、できないのか。想像つかない」
「よく知らないのに、いきなりパーティに呼ばれたんだけど……」
思えば、モモッチもおもしろい性格でした。
腰掛けのつもりでもおかしくない仕上げ課に、技術を磨き君臨する。
話しかけているイッキュウさんが目の前で読書しても、嫌いにならない(なつすらちょっと引いていたぞ!)。
東洋動画がむしろいらなくなったと、サバサバ強気。
このくらい強くなければ、神っちと結婚できないぞ。
すごいな、モモッチ!
なつぞら131話 感想あらすじ視聴率(8/30)適材適所に巡り会え「私にとっても、会社は用済みってこと……」
咲太郎と光子の見出した道
なつは、咲太郎と光子の風車プロダクションコンビにも声を掛けます。
光子は、この作品は歴史に残るとなつに告げています。
ひとつの道を作った。何度でも見返したくなる作品になると感じているのです。
光子は、川村屋の経営を野上に譲りました。
そして結婚で内助の功路線に向かったようで、彼女なりに開拓をしています。
文化に造詣が深く、支えてきた川村屋。
アニメというかたちで、彼女なりにその道を引き継いだのです。アニメを理解していない野上には、できないことでもあります。
なつぞら116話 感想あらすじ視聴率(8/13)ルパンで全てが繋がった!!マダムはここで、野上に川村屋の経営から手を引くと告げます。
建て替えを契機に、野上に任せたいのだと。
咲太郎にも、開拓者精神はある。
声優も大活躍でした。咲太郎は、今に声だけでもスターになれる新しい世界が来ると、確信しています。
なつはそんな兄の開拓精神をたくましいと感じるのでした。
ちゃんとした母親だったから
坂場家では、富士子が明日に帰ると聞いて、優が寂しがっています。
「ひげのおじいちゃんが寂しがっているから」
富士子はそう言い、夏休みには会いに来るようにと言うのでした。
孫の世話は疲れるし、大変です。
かわいいから楽勝だと周囲が言い切ったら、ただの極悪非道ではありますが。
それでも、世話で孫に顔を覚えてもらえるメリットはあるべさ。
なつはしみじみとお礼を告げます。
ほんとうにありがとう。そう言うのです。
「なつはよくがんばっていた。ちゃんとした母親だったから。安心して帰れる。自信を持ちなさい、なつ!」
富士子はそう言います。
視聴者の見えていないところで、なつが母親として奮闘しているところを、見てきたゆえの感慨があります。
そういう親子の絆を理解しないで、なつを「丸投げ」だの「頼りすぎ」だの言い切る、そんな叩きもあるようですが、単に当人たちの言動から読み取れないだけでしょう。
なつの母親としての言動は、別に問題がないと思います。
子供の前で盗んだ電気を水に流すとか。加熱天ぷら鍋を放置するとか。そういう命の危険すら及ぼしかねない無責任言動はありません。
そういう方が、ドラマの感想だけならばよいものの。SNSの投稿や断片的な情報、一般的な家族像からずれているというだけで、他の家族や芸能人を叩いていないか?
そんな懸念は否定できません。
「何この芸能人の料理画像投稿? お里が知れるわ〜」
って、余計なお世話にも程がありましょう。
母ちゃんが帰ってきた
なつは咲太郎に呼び出され、千遥の「杉の子」に向かいます。
今の彼女は奥原千遥ですので、離婚は成立しております。よかったね!
なつぞら146話 感想あらすじ視聴率(9/17)重い扉の向こうにある世界そこにはなんと、亜矢美さんがいるではありませんか。
「母ちゃんが帰ってきたんだよ!」
感慨深いなあ。
光子が咲太郎と結婚して、亜矢美は立ち去ったと。その夫妻が『大草原の少女ソラ』で新しい世界を作ったタイミングで、彼女は戻ってきたのです。
この夫婦なら開拓ができるな! ならば、私も開拓だ。そう宣言するかのよう。
なつぞら141話 感想あらすじ視聴率(9/11)フーテン亜矢美が超絶COOL!驚くなつに、咲太郎はビールを注文するかと言います。
このあと、優の世話があるからそこはお茶だと答えるなつ。
当たり前といえばそうですが、子供の世話をなつがちゃんと考えているというセリフではあります。
いくら母親だろうと子供と一緒にいない場面では、目の前の楽しみ、悪口、夫や目上の人間に媚を売ることばかりが出てくる脚本もあります。それとは違うのです。
ここで亜矢美は、ものすごいことを言いだします。
「歌って踊れるおでん屋を、新宿御苑のあたりに作るよっ!」
ゴールデン街からは離れているかな?
茂木社長は関わったのかな?
私は関わっていないような気もします。旅の途中で、何かを得たかもしれませんし。
ここで咲太郎は、ムーランルージュ復活だと言います。
そういえば、歌って踊れるおでん屋って何ですかね。神っちとモモッチ夫妻を連れて行かなくちゃ!
思えば亜矢美も強かった。
※続きは次ページへ
なんでもかんでも「女性差別」と見なすのはどうかと思います。武者さんのレビュー全体に言えることですが、特に安室奈美恵さんを政治利用している勢力に寄せた意見を述べられた時には、少しひきました…
女性の社会進出の件は、その通りだと思います。女性が全員が全員、家庭に入る時代は、もはや過ぎ去っています。
>匿名様
ご指摘ありがとうございます!
結構、ありましたね……^^;
修正させていただきました、今後もご愛顧よろしくお願いします!
「東映」じゃないですよ。
「東洋動画」です。
ソラの完成おめでとう会には、外注先の人たちも呼ばれたら素敵だったのになぁ。モモッチとかみっちのダンス可愛かったけど、外注先の人との触れ合いみたいなのもちょっとでよいので見たかったな。
一方で、「開拓者とは」「二番だしとは」いいセリフがありましたね。私にとってなつぞらは、いろいろな事を考えさせてくれる、本当に濃い、ありがたい朝ドラです。
武者さんのレビューも毎日読ませてもらってます。自分では気付かない視点をたくさん教えてもらって、ドラマの楽しみが何倍にもなりました。ありがとうございます。
でも….武者さんのレビューの後半が、結局前クールの作品への怒りだったりアンチ派への反論だったりで、毎回毎回ちょっとシツコイかな。ドラマの余韻を楽しみたいのに、全部読むと後味が悪くなるんですよね…。(ゴメンナサイ)
なつぞらもあと3回です。ドラマに集中して一緒に楽しみませんか?