「いちに! いちに!」
昭和22年(1947年)、信楽の冬休み。
きみちゃんは草間流柔道を学び始めました。
照子の夢は
「先生に礼!」
「お互いに礼!」
「お願いします!」
八人の少年少女が、草間宗一郎先生のもとで柔道を習い始めます。
まずは受け身の取り方から。
皆真剣に学んでいます。信作がぺシャッとしてしまうと、宗一郎は帯をつかんで助けています。がんばれ!
悪ガキの次郎君も、お嬢様の照子様も、みんな真剣です。
「よくがんばりました!」
「ありがとうございました!」
帰り道、喜美子は腕があがらんと痛がっている。
その一方で照子は三味線と踊りで鍛えられていて、へっちゃらなのだそうです。うーん、お嬢様やね。
「うち、夢ができてん! いつか必ず叶えたいこと。将来の夢!」
照子は、こっそりと喜美子と信作にこっそり打ち明けます。
「え〜!」
信作はびっくり。
「意外でしょ? うちならきっとなれるわ」
喜美子は照子の夢が、いまいちピンときていません。
「はよう、はよう急いで!」
そこへ、照子の母である和加子が三味線のお迎えにきます。
「ふじんけいかん? なんやそれ」
喜美子はそう言います。
なんと、照子の夢は婦人警官であったのです。
大野夫妻の手袋作戦
大野家で、喜美子は信作と新聞記事を探しています。
「どこに載ってるん、ふじんけいかん」
「女の警官いうて、ニュースになってとっといた」
陽子がそう説明します。
二人が夢中になって探している間に、陽子は夫・忠信に呼ばれてしまいます。
話題は、あの赤い手袋のこと。
忠信としては喜美子に渡したい。しかし、すんなりとはいきません。
「あかん直接はわたされへん。ジョーさん、気ぃ悪くする」
「どうすんねん。このままなら春になってまう」
そこで大野夫妻が立てた作戦は、落とし物偽装でした。
店の前に落とす――そしてこうだ!
「ええもんおちてたな〜、もっていきや〜、もっていきや〜」
おっしゃこれや!
そう確信し、忠信は落とすのですが……。
そのころ喜美子と信作は、新聞記事を探しておりました。
「あった! これや」
「わぁ、これがふじんけいかん?」
「狭き門って書いてある」
「門が狭いんやなぁ」
さりげない場面ですけど、すごくいい、いいですよ!
まず、新聞記事ですよね。
当時のものを探して、それを再現するのですから一手間かかります。
そしてきみちゃんの「門が狭いんやなぁ」という受け取り方もおもろい。
センスを感じます。
「これ読みたい。借りてもええですか」
そう喜美子が言うと、陽子は快諾しつつこうです。
「それよりきみちゃん、もうそろそろ夕飯の支度ちゃうの? もう帰らなあ。気ィつけて、足元よう見て帰るんやで〜」
おっしゃ、作戦成功や!
と、思っていたら、そこへお巡りさんが登場します。手には、手袋。
ギクッ!
大野夫妻が凍りつきます。
「かわいらしい手袋やのぉ」
「落ちてたんや、きみちゃんの?」
「そんなええもん、うちが持ってるわけない」
どうしてよりにもよってこのタイミングで……その答えはありました。
重大ニュース。
なんと草津で人攫いが出たので、お子さんがいるお宅に注意喚起しているのだとか、
「ほな!」
「ほなな!」
「知らない人についてったらあかんで、気ぃつけてな」
人が良さそうで、関西弁も達者なお巡りさんは帰ってゆきます。
おお、手袋ぉ!
夢を持つこと
さて、喜美子は帰宅しており、新聞記事に興味津々です。
「さっとうって読むんよ」
「さっとう?」
「うん、婦人警官志願者志がそれだけ多かったということ」
そして柔道をしていると有利だとも母のマツは説明します。
日本の警察官は、武道が欠かせません。
初代警視総監(当時は大警視)の川路利良が、武士階級の武道素質を活かそうとした伝統があるんですね。
なるほど。照子様が柔道に飛びついたのは、信作や喜美子と交流だけではなくて、そういう理由もあると。
マツは、誤解をしたのでしょう。
喜美子本人が婦人警官志願だと思ったのか、こう告げます。
「ほんとうにやりたいなら、お父さんに話してもええよ」
「かっこいいけど悪いことできへんから、やりたないわ」
喜美子、即座に婦人警官志願を否定……って、おい! 悪いことできへんってどういう発想や? 誰に学んだ?
そんなもん、ジョーカスに決まっとるやろ……。
こういう方向性で父親に似ている朝ドラヒロインって、斬新じゃありませんか。
喜美子は、婦人警官は照子の夢だと語ります。
夢――。
世の中には夢がある人がいる。喜美子はそう学んだ。
婦人警官というのも、面白いんですよね。
女性の権利を求める際に、ありえない職業の筆頭とされたのが、女性の政治家や警察官でした。
今では当たり前でも、斬新な職業であったのです。
照子ちゃん、やるじゃないですか! ありきたりでもなく、そういう歴史的意義を持つ仕事を目指すところに、本作のセンスの良さや先進性も感じます。
そのあと、喜美子は直子の夢を絵に描いています。
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