スカーレット104話あらすじ感想(2/4)決定的な“断絶”が生じた理由

草間宗一郎が川原家にやってきました。

喜美子は、八郎に背負われた武志の靴を脱がしてから、どうして来たのかと嬉しそうに聞いています。

「お母さんから手紙いただいたんだよ。きみちゃんが頑張っているから、見にきてやってくれって」

もうきみちゃんという歳ではないか。“さん”付けで呼ばれ、くすぐったいわとはしゃぐ喜美子。

すごいなあ。ここの戸田恵梨香さんは【きみちゃん】です。草間先生の前では、あのころのきみちゃんに戻ります。
子役時代にまで戻れるのだから、すごいことだと思う。演じ分けがやっぱりすごい。

そうそう、クレジットですが。

鮫島直子

大野百合子

表記になりました。結婚しとったんか!

穴窯が燃やすもの

鈴の音を響かせ、まずは仏壇に手を合わせる草間。
ジョーの遺影代わりに、武志の似顔絵が飾られています。そうそう、こういうところが細かくていい。

八郎は、眠ってしまった武志の枕元にいます。奥には、喜美子の絵付け火鉢も置かれています。

柔道を教わっていたと喜美子から聞いていたと八郎。年賀状とお手紙もよういただいて……と続けます。こういうやりとりが好きですし、当然だとは思います。

いや、昨年の放送事故は、恩人や親友とすらそういうやりとりをしている形跡がなくて、どうなってしまったのかとおそろしいものすらありましたからね。ヒロインの甥っ子すら途中で消えていて……ドコ行ったんや。

喜美子はお待たせでしたと言いつつ、穴窯で焼いた作品を持ってきます。背後でマツがカステラを切っているのも細かいですね。神戸のお土産かな。

八郎は不思議がっている。宗一郎は穴窯に詳しい人なのか?と思うのです。
ところが、そんなことはありません。せっかく来てくださったし、と喜美子は言う。

今は貿易で神戸にいるという草間。台湾は去年引き払い、大きな猫の「ネコちゃん」と暮らしているとか。

喜美子は猫に餌をやり過ぎちゃうの、と笑っています。このドラマの作り手は、猫が好きなんやと伝わって来ますねえ。

八郎は疎外感があるのでしょう。
武志が野球やって歯磨きもせず寝たと喜美子に告げ、「ほな失礼します」と立ち去ってゆきます。

カステラを包もうかとマツにきかれ、食べないからいいと言う。ともかく早く立ち去りたいのかもしれない。

ここの八郎が切なかった。

草間がいなければ、武志を挟み夫婦で話し合えたかもしれない。

草間がいたとしても、喜美子の態度次第だったとは思う。彼なりに草間に接近するような糸口は探っていたように思える。

でも、それができなかった。
どころか、穴窯のことを楽しそうに草間に話す喜美子とは、もう断絶が生まれてしまっている。

穴窯に賛成しなければ、喜美子に近寄れない。

三津ではなく穴釜が、夫婦や周囲を引き裂いているのです。

「あかんいうたらあかん!」

そう叫ぶジョーとも違うし。それはそれと切り離して荒木荘の面々のように「シュッとしてはる!」と盛り上がるわけでもない。

喜美子が孤高の人になりつつあるようで、八郎も寂しいのだと。

これは京都に行くやろなぁ……。

八郎が去った後、喜美子は明るいのです。

「ほな穴窯の説明しよかなぁ。長うなりますよ、ええですか。まずこれが穴窯でございますぅ!」

「いつかの紙芝居みたいだね」

そう笑う草間。
子役時代から演技をつなげ、口調までそうしている戸田恵梨香さんも、それに応じる佐藤隆太さんもすごい。

脚本と構成も抜群です。

あの紙芝居。草間は、喜美子の絵を褒め、マツはそれを見ていた。ジョーは金にならないとろくに見ることもなかった。

きっかけは、ポンせんの金がないばかりに見損ねたこと。見るだけならばええと言われても、喜美子は口を尖らせ、直子の手を引っ張って家まで戻った。

そして意地と誇りとは何かを考えたとき、あの紙芝居のことを思い出した。

喜美子は人生を遡り、自分の本質へと迫ります。信楽に来て以来、そばにあった陶芸への旅です。

慶乃川さんから引き継ぐもの

翌朝、喜美子は腰の横に両手をつけて、肩幅より少し足を開くようにして立っています。

何気ないようで、こういうのも大事ではないでしょうか。

ディズニーのポスターを例にとってみましょう。

『モアナと伝説の海』と、最新作『アナと雪の女王2』をご覧ください。

前者は、海外版と日本版のポーズや表情の違いが悪い意味で話題になっていました。

海外版では不適な笑みを浮かべ、オールを手にしている。ここの喜美子のようなポーズをしているバージョンもあります。

それが日本版ですと、ハートのようなものを作り、優しく微笑んでいるのです。

同じ女性でも、ポーズひとつで性格が違って見える。

そのためこう突っ込まれました。

「なんでや、日本版は甘っちょろくしとるやろ!」

それを踏まえたのか、『アナと雪の女王2』では日本版も海外版もビジュアルが同じ。エルサもアナもキッと前を見据え、拳を握りしめているバージョンもあります。

強く、自分の力で立ち向かう――そういうヒロインこそ現代の理想になったということです。

朝ドラも追いついたで!

喜美子はこういうところでも、前を見据えて堂々としている。
そういうポーズを取るヒロイン。メインビジュアルの時点でそれは伝わってきましたが、劇中でもそうしています。

そして堂々たるポーズで、穴窯の説明をします。

二週間焼けば、このカケラの色が出る。そういう仮説に至ったと説明。

草間は心配そうではある。二週間も大丈夫なのか、薪代もすごいことになる。この穴窯がもたないかもしれない。

それは喜美子もわかってはいます。崩れ落ちるかもしれない。それを理解して、喜美子はこう言うのです。

「そうなったらおしまいです。次が最後や。ほやけど、やってみます」

喜美子の穴窯は、ジョーの血だとは言われている。

確かにそういうところはあるでしょう。

ただ、喜美子とジョーは明確に違う。

・理論
・計算
・経験

きっちりと理詰めで戦っている。

幾度かの経験から導きだされた仮説があり、どこにコインを置くのか決めるのは、どんな仕事でも多かれ少なかれ直面することでしょう。

その判断に必要な、様々な数値を喜美子は持っている。『信長の野望』シリーズのパラメータにしたら、トップクラスの武将やで。ほんとうに毎朝強い……大河も、朝ドラも、強い武将だらけです。

そして、そう語る喜美子はもはや止められないと、マツはわかっている。だからこそ、幼い頃、才能の煌めきを見出した草間を呼んだのでしょう。

草間は慶乃川さんのことも言っていたそうです。
彼も穴窯を持っていたと。

「そうなんですよ! 変な縁いうか」

喜美子は笑い飛ばします。
今のきみちゃんを慶乃川さんが知ったらなんて言うかね。そう言われ、喜美子は陶芸家は辞めろと言っていたと思い出します。

キキキキと笑うんじゃないか、アホやと言うんじゃないかと笑い飛ばすのです。

その上で、それでもやるのだと。

草間はそろそろ帰ると言い出します。
喜美子がお仕事がお忙しいところわざわざ来てくれたことに感謝します。草間は、思ったより元気だと安心しています。

お母さんどんなこと書いたんやろ。喜美子はちょっと気にする。そうですね、八郎のこともありますもんね。そのうえで、喜美子は話を聞いてもらえただけで励まされたと言います。

ここで草間は、こう言うのです。

「やっぱり渡そう!」

鞄の中から持ち出してきたのは慶乃川の狸。信楽を去る時、彼から草間へ渡したものでした。
喜美子は驚きます。

「小さな焼き物だけど、敬意を表して!」

「敬意を表して!」

見守ってもらおう――二人でそう言い、狸に頭を下げるのです。

「よろしゅう頼みます!」

本質へ遡ってゆく、喜美子の旅。

武志の枕元には絵付け火鉢。
めざすカケラは、荒木荘出発前に拾ったもの。
穴窯は、慶乃川も作っていたもの。

そんな慶乃川の残した狸が見守る。

そこにいるのは、幼い喜美子の紙芝居に才能を見出した草間。

彼女の人生をどんどん遡ってゆくと、あの頃から才能があったとわかってきます。

そしていったん別れを告げてさって行った草間ですが、あわてて引き返してきました。

「先生に礼!」

「お互いに礼……いやきみちゃん、そうじゃなくて!」

喜美子は土の配合を変えるという。そういえば慶乃川は土を掘っていた! あのとき、土を掘っていた!
草間はそう言い出すのです。

信楽の土と、本質を掘る

草間から聞いた重大なヒント。それを聞いた喜美子の顔に、喜びが広がります。

魔法瓶を持参し、汗を流し、リヤカーをかつての父のように引く喜美子。慶乃川の掘っていた土を集めます。その土には、確かに不思議な色がある。

「信楽の土はええ土や。何がええんでしょう」

そう問いかけられ、捨てていた幼い喜美子。あの少女が大人になり、かつて捨てたものを大事に掘り出すようになりました。

信楽の土は、ざらっとして手触りがあたたかい。

喜美子はこの土を使って、作品を作ろうと思いました――。

そう語られるのです。

喜美子は経験から見出す。地に足がついていると思います。

八郎が土を掘る場面はない。三津のように全国材料めぐりもしていない。三津とのやりとりで、柴田に頼めば研究所に材料はあると語られていた。八郎は信楽の材料で作り上げることが、自分の作風だとも言っていた。

けれども、こうして自分の手で掘る喜美子と同じと言えるのかどうか。

喜美子は信楽の土だけではなく、自分の本質も掘って、思い出からこれを見出しているのです。

大野夫妻の結婚写真と、八郎の悲哀

さて、前述の通り、クレジットで既婚だと判明している百合子ですが。

大野夫妻は写真撮影に感動したってよ。
退院した陽子は、でっかく引き伸ばして「サニー」に飾ると言っております。それはやめておきましょうか。

「それにしてもええ写真や。何回見ても涙出てくる」

そう語られる写真には、八郎もいます。

陽子はすっかり元気になった、悪いところは全部取ってええとこしかないとうれしそうです。

そのうえで、ちょっと不穏なことを言う。マツも健康診断受けろってよ。

陽子がこうも元気なのは、健康診断による初期発見がかなったからのようでして。ちょっと嫌な予感がしてきたような……。あっ、ジョーはそれをできなかったからああなったということか? そもそも、あの飲みっぷりではな……。

百合子はマツに長生きしてもらわんとと言い、気遣っています。

「長生きせえやあ!」

そう言いつつ忠信を陽子がチョップして「三秒縮んだわ!」とやりとりをするあたりもええですね。

ジョーとマツばかりを昭和の夫妻と紹介することには、違和感がある。忠信と陽子も昭和の夫妻ですよ。そして彼らもか。

八郎は、失礼しますと去ってゆく。
写真には入れても、団らんはできない。これは以前からそういうところがあったかも。

そんな八郎の理解者は信作です。

信作はすごい。
喜美子にはアホやと笑われるもんだと割り切る。八郎には寄り添う。そういう、なくてはならぬ人物になっています。

後についてきて、また武志を連れてどっか行こう、夏みたいに琵琶湖に行こうと、八郎が溺れる真似してからかいながら言うのです。

「頑張ってお父さんやってんやな。週に一、二回会うてる」

「お父さんは頑張ってやるもんやないで。頑張らなならんような関係になったらあかんで」

信作に向かって、真剣にそう言う八郎は。喜美子も武志も愛していて、夫であり父としてそばにいたいとわかる。

三津との関係が成立していなかったと、ここにきてますますわかってしまう。

不倫しないのは朝ドラの限界?
いや、むしろゆるぎない愛があるのに、それでも別れる方が、限界突破に思えます。

信作はここで、穴窯を手伝うよう言われたと告げます。なぜ信作まで? そう嫌な予感を覚える八郎に、こう告げるのです。

窯たきに二週間かける――そう聞かされ、思わず驚く八郎。そして……。
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