1990年(平成2年)の七夕。
この日は、楡野鈴愛と萩尾律の誕生日なのに、鈴愛は、律の彼女・清と大げんか。
「律は私のものだ!」
そう罵り合い、鈴愛は転んだ弾みに「梟会」の写真を破ってしまうのでした。
【61話の視聴率は21.7%でした】
知らない時間があるのは許せない
律に話があると呼び出されて、鈴愛は「おもかげ」に向かいます。
喫茶店の机に向かい合い、話を始める二人。
律は、梟会の写真を破ったのは鈴愛だと、清から聞かされます。
確かにそれはそうなんですけど、清の説明に悪意を感じますよね。
鈴愛が複雑そうな表情のまま、該当のシーンが映し出されることで律に説明したようなカタチとなり、律も、実は鈴愛を信じている様子です。
が、問題はそこではないようでして。
律は、梟会そのものを清が嫌っていると言います。
自分の知らない時間があると嫌なのだ、と。
「恋ってこわいね」
そう呟く鈴愛。
確かに清の恋は怖いですね。自分も怖くなったと言い出す鈴愛。
しかし、彼女は自分自身の恋心に恐怖は感じておりません。
正人にふられてあんなに泣いたのに、あのときは怖いとは思わなかったわけです。
この顔が、鈴愛が最後に見る顔だから
律は、俺は清でも鈴愛のものでもない、なんなら和子さんのものでもない、とキッパリ。そこでしたか。
鈴愛はいつのまにか岐阜弁になっています。
秋風羽織から標準語で喋るように注意されているのに、いつのまにかそうなっていたのです。
「これからは標準語で」
「俺を笑わせようとしているのか?」
律は鈴愛に冷淡です。彼は清を傷つけたくないのです。
鈴愛はいつもと同じようにお誕生日を祝いたかった。
ずっとそばにいたかった。
教室でも、川べりでも隣にいた律とずっとそばにいたかったのです。
それが……
「なんであの子が律の部屋におる?」
とまぁ、理不尽が炸裂しているわけですが、鈴愛があまりに幼すぎて、ちょっと難しいかな。
何を言っているんだこいつ、と突き放せない。
また岐阜弁になる鈴愛。
それでも律は笑います。
この顔が、鈴愛が最後に見る顔だから。と、笑顔でムチャクチャ残酷なことをサラリ……。
壁を越えたのは確かに鈴愛の方だけど
「ルールやぶったの、そっちじゃん」
鈴愛はいいます。
律がキレても怖くない。全然怖くないのだと。
無邪気さで、律との関係を壊して行く鈴愛。
鈴愛が悪かったのだ、ルール違反だと。
親友だったのに、壁を踏み越えたのは鈴愛なのです。
親友は恋人ではない。ちがうもの。
難しいことだけど、わかってくれよ、と。
もう今までみたいにいかん、律は私が必要じゃないの、と鈴愛は言います。
でも……。
ここで律が指摘する通り、鈴愛はパフェを作った正人に惚れておりました。それが恋に恋する十代特有の恋愛だったとしても、目の前で二人の恋のストーリーは別々に流れてしまっているのです。
「取り調べか? 意外と私、魔性?」
そうおどける鈴愛。
「こうして笑っていると」
「笑っていないよ」
「笑ってよ律、最後なんだから」
小学生のまま、おとなぶって話しているみたいだね、と鈴愛は言います。
でも、そうじゃないはずです。
もう、子供じゃいられないんだよ。
あらためて突き放す律の言葉に、鈴愛は、立っている地面がすっぽりなくなってしまうみたいで怖いとまで言うのでした。
3分だけど、やっぱり過ぎてしまったら
「おもかげ」を出て、街を歩きながら、思い出ごっこをするふたり。
糸電話
ゾートロープ
秋風羽織の漫画
ぼくたちは、記憶のお手玉をしていた……と、律のナレーションが入ります。
ともしび
鈴愛の晴れ着
卒業式
「ついちゃった」
「お誕生日おめでとう。3分過ぎたけど」
この3分がひっかかります。
たとえそれだけでも、ちょっとずれてしまったのだと。
「バイバイ、律」
これから律は、鈴愛と距離を置くため引っ越します。
10代最後の誕生日、生まれた時からつながってきた二人は別れを告げたのです。
背中を見せて、ハードボイルドな別れ方をしておどける鈴愛。
そして律は、鈴愛の短冊の一枚を手に取ります。
「律がロボットを発明しますように」
彼は夢を盗みました。
今日のマトメ「キッパリ離れ離れに……」
先週、土曜日のラストに投げられたモヤモヤ玉。
日本中から集まって、それはもう星を一つ二つ破壊するほどの逆元気玉となっていたわけで、『西郷どん』なんて見ている場合じゃねえ!だった週末。
そしてこの週明けです。
間違った選択をしたように思える二人です。
しかし、これもまた必要な回り道なのでしょうか。
まさかここまできっぱり離れるとは思いませんでした。
これも運命の力かな。
関羽レベルの剛腕で縁切りをする清パワーが、離れていても感じられますけど。
鈴愛と律は再会できると思います。
ただ、現実世界の場合、こういう別れ方をして、また会えると思った人と、結局再会できない経験のある方もいるのでは?
世の中は、ドラマのように運命の糸が張り巡らされていないことの方が圧倒的に多いものです。
恋愛でなくて、親友でも。
人の絆って寂しい。
だからこそ、せめてこの二人には……淡い期待を抱いています。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
>律は、俺は清でも鈴愛のものでもない、なんなら和子さんものもでもない、とキッパリ。
週の始まりに、15分間二人だけの会話劇。
清の本性に気がついて、鈴愛の元に帰ってくるかと期待してたのに。身体に溺れてますな、まあ若いから仕方がないね。あれは、関わってはいけないタイプの女ですぞ、律君よ。
二人の掛け合いは見応えありました。武者さんの表現によれば、好きと言わずに必死に好きを伝えようとした鈴愛を、あそこまでバッサリ切り捨てるか。別れるときはナイフのように、の正人の影響か?律だって、ヤキモチ焼いてたではないか。いいのか、律!!
しかし、しばらく律は登場しないのか?どんな展開になるのだろう、ワクワクするなー。