時は不況まっしぐらの2008年、東京。
インターネットも広まり、写真は銀塩現像ではなくてデジカメと写メ全盛期になっておりました。
映画監督の夢を捨てられない涼次は家を出てしまい、妻の鈴愛は選択を迫られます。
夫婦の間には5歳の娘・花野がおるのです……。
監督の夢を諦めきれない涼次に「死んでくれ」とまで投げかけた鈴愛ですが、恋心も煌めいています。
しかし、涼次は妻子を見ようとしない。
恋心が、軋み、歪んできました。
【108話の視聴率は21.1%でした】
ごめんね、カンちゃん、よろしくね
まずはじめに、ご挨拶。
復帰レビューにコメントをくださった皆様、ありがとうございます。
最近の、ズレた報道には、私と同じくストレスを感じておられる方も多いみたいですね。
でもこれって、イイ意味で話題作なんだと思います。前作の薄い内容では、それがなかった。
スグに炎上だの何だの騒ぎ立てる昨今のメディア事情を考えれば、制作スタッフの皆さんもあまり大仰には受け止めてないかもしれませんしね。
私もこれまでのスタンスで取り組んで参りたいと思いますので、復帰後もまたよろしくお願いします!
さて本文へ。
涼次に向かって、まだ恋は続いてると言う鈴愛。
素敵ですよね。
雨の中、踊る鈴愛と涼次は今見ても煌めいています。でも、それは危険な魔法でもある。
涼次は、鈴愛に謝ります。
「カンちゃん、よろしく」
うおおおおっ、こいつ、娘の世話丸投げしおった!
まぁ、だいたい想像はついていたけどな。
「涼ちゃん、さようなら」
鈴愛は、続けて元住吉祥平に語りかけます。
「祥平さん、涼ちゃんをよろしく。涼次さんを……よろしくお願いします」
ねえ、こんな残酷な展開あり?
「空が青い」
男女間――それも子供までいる二人の仲がぼろっと壊れ、夢を追いかけるキリマンジャロ愛飲野郎の元住吉祥平が、涼次の真の恋人扱い?
「わかりました」
祥平もぺこりしてわかっとるし!!
そんな傷ついた鈴愛を癒すのは、空の青さでした。
マンションに切り取られた青い折り紙みたいな空を見て、しみじみ言います。
「空が青い」
あー、先生……こうやって名台詞、きっちり入れて来ますね。何もかもすべてを失った地方出身者の心に刺さります。
そう、空は青い。
排気ガスでくすみ、マンションコンクリートで囲まれていても青いものは、青い。特に冬は、空に透明の鮮やかさがあります。
でも、できれば、故郷の、何にも囲まれておらず、吸い込まれてしまいそうな、そんな青空も見たい。
上京以来、鈴愛の心に故郷への念を芽生えさせたのは、空の色でした。
それが、わかるんだよなぁ。
岐阜県の、織田信長も見ていた空。さぞやいい色でしょう。
木曽川の上の、青。
犬山城上の青空。こういうのが、きっと鈴愛の心をよぎったはず
なお、廉子おばあちゃんがナレーションで言っていた「空の青の青さ」って、「CHARAのSwallowtailだ!(歌詞)」と編集さんのテンションが上がっておりました。
単なる偶然の一致かもしれませんが、ステキな表現ですよね。
変人だけど敵ではなかった三オバ
桜が咲く季節。
鈴愛は三オバと田辺店長に別れを告げます。
それにしても三オバ。
結局、いいおばちゃんズでした。
こういう属性のおばさんキャラを、ただの憎らしい親戚ババアにしなかったところ。むしろクズはおばさんの甥っ子・涼次だったあたり、制作者の誠意を感じて、タマランのぉーーーー!!
あのね、こういう年配でキャラ濃い女性って、当然のように敵扱いされがちですよ。
でも三オバは、変人だけど敵ではない。
そんな三オバに、深夜バスではなくて新幹線で岐阜に帰る、娘はアイス、母はシャンパンを飲食しちゃう!
で、岐阜ではじいじに年金の範囲でおねだりするとはしゃいで伝える花野ちゃん。
くっそ、このドラマ制作者、地方出身者の声をリアルに伝えすぎじゃあ!
深夜バス使わないで、新幹線で贅沢気分って、わかりすぎや!
駅弁買ってしまうパターンやろ!
青空といい、こういう台詞がうますぎて、床の上を転げ回って拳を叩きつけたくなる。こういう地方から背伸びして上京した、そんな組を本作は的確に撃つ!
三オバは、鈴愛と花野を惜しみますが、鈴愛は笑って戻るつもりマンマン。
「はい、ママは強く生きて行きます。パパにふられても」
明るく宣言する花野。
この台詞、いい。朝ドラヒロインに求められるモノじゃないでしょ、これは。
恋をして、結婚相手として選んで、子供まで作った相手がハズレでも明るく生きて行く、という台詞。
吐かせていいのぉ?
いや、私は大歓迎、大喝采。でも反発する人いるんだろうなぁ、わかりやすくくくく。
脇役の少年野球監督までエエんや
そして舞台は、岐阜県へ。
派手なスーツのブッチャーが、例の草太のメレンゲカツ丼を食べています。
家業の西園寺不動産を継ぎ、名古屋・岐阜、つまりは中部地方テイスト全開のテレビ広告にも出ているんですって。
くうぅ~~~っ!
ブッチャーの使い方完璧すぎやろ! 広告映像が中部全開で爆笑!
しかもブッチャーの奥さん、ナオちゃんで一男一女に恵まれてハワイまで旅しています。
つくづく完璧だなぁ。
きっとハワイ土産はマカデミアンナッツチョコと、男友達にこっそりエロボールペンやろ?
しかもここで晴さん、うっかり「下の女の子は母親に似てよかった」と無神経発言するあたり、地方あるあるで笑いが止まりません。
本当に小さな台詞が光る!
帰省した鈴愛は「つくし食堂」の前に出来ている行列にビックリです。
「ここはどこ? 私は誰? 古いけど」
セルフ突っ込みする鈴愛に、野球のユニフォームを着た監督っぽいおじさん(モノマネ芸人の神奈月さん)が、「並ばないとイカン」と注意します。
店の人です、と鈴愛が切り返すと、おじさん、すぐに謝ります。
なんですかね。こういう脇役ですら、中部の野球部おじさんとして存在感パーフェクトなんですよ。
おじさんもカツ丼目当てでしょ?
試合で勝ったか、勝つための験担ぎに、おいしいカツ丼食べるんでしょ?
ブッチャーに続き律まで!?
店内へ入ると、家族全員が呆然とした顔。
正月すら帰らなかった鈴愛の姿に、両親や祖父、弟も全員でビックリしています。
じいじ、中村雅俊さんや宇太郎の経年メイクもちょうどいい。
満員御礼の客の前で、帰宅の理由を赤裸々に語る花野。
「あのね、ママはパパにふられたの。毎日泣いてかわいそうなの」
呆然とする楡野家をかばい、「奥で続きを」と割って入るブッチャー。
そんな彼に、花野はツッコミます。
「おじさん面白い顔!」
「おまえの母ちゃんは、スズメや!」
鈴愛が幼少期、ブッチャー呼ばわりしたばっかりに、龍之介ではなくブッチャーになったと言い出すブッチャー。
ええやん、キャラあっとるで。
そして昔懐かしの鈴愛とブッチャーの小競り合い。
つい最近まで東京でズタボロになっていた鈴愛が、地元に戻ってきて癒やされつつある姿を見て、視聴者が『よかった、よかった><;』と喜ぶ間もなく、今度は律までもが登場します!
うはぁ。ど、ど、ど、ど、どうなるんや!
鈴愛と律の第二章開始――と廉子さんも宣言します。
マジすか!
今日のマトメ「実家に戻ろうかなぁ」
今日もこんなニュースが。
◆NHK連続テレビ小説『半分、青い。』目まぐるしい展開に批判の声も20%超えの高視聴率|ニフティニュース
私個人としては、鈴愛と涼次カップルの展開が早いのは、涼次のクズっぷりの告白の気がします。
子供が5歳になっても、三オバにせっつかれても。
あのゆるふわっぷりの涼次はアホやから、と説明したいためかなと。
あと、恋心の経年劣化の強調かも。
いくらキラキラした恋心から始まっても、5年間進歩しなけりゃ、駄目になるもの。理由のあるテンポの速さなので、私は納得しています。
で、今日。
八月、お盆休み直前に故郷プッシュです。
本作を見て、思わず
『実家に戻ろうかな……?』
なんて切符を買っちゃったお方もおられるのでは?
岐阜の良さが「空」で説明されたの、もう、ぐっときました。
岐阜県。
織田信長と斎藤道三の国!
天下分け目の岐阜県!
その魅力は、青です。山城もポコポコある平野を割る川の流れ、その背景の青い空。
あの本物の青が見たくて、岐阜に行く。それはあるあるです。五平餅もええけどな!
で、戻った岐阜の魅力。
グッときましたね。
ブッチャーはもちろん最高です。あの広告見たさに岐阜帰りもアリですね
◆半分、青い。:ブッチャー、菜生と無事結婚していた! 子供はすでに2人…
野球部監督おじさんも、個人的にグッときました。
普段は、誰よりもフザけたモノマネばっかりやってる神奈月さんが、まさか起用されるとは……。
やっぱり原辰徳監督のモノマネが良かったんですかね~。
験担ぎのために、常連にならないかな?
ここまでで帰省万歳なのに、律ですよ。
しかも「第二章」予告つき。
昨日、恋心の経年劣化について書きましたけど、本気で謝罪します。
律との恋心は、いつ切り取ってもイキイキと新鮮!
涼次との恋心とは違うのだ。
来週も全力で見るぞ~!!
◆著者の連載が一冊の電子書籍となりました。
ご覧いただければ幸いです。
この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
>竹河巻様
作品が面白いと思えば褒め、ツマラナイと思えば批判する――。
すべては、そのとき放送中の作品をより楽しみたいがために記事を公開しており、
こちらのスタンスがフェアとかフェアじゃないとか関係ないと考えてます。
賛否両論の意見に目を配りつつ、
ツイッターの声などを拾ってニュースにする記事は巷に氾濫しており、
本サイトはそういう路線を狙ってもいないからです。
ずっと昔から、武者氏には自身が思うように書いて貰うようにしてもらってます。
提灯記事って、つまらない作品でもヨイショしてムリヤリ面白いように書いている記事ってことですよね?
そもそも作品を面白いと思っていたら、提灯記事でも提灯記事とは思わない可能性があります。
どの記事が提灯記事だったのでしょう?
どのツイートのことでしょう?
と、お聞きしたいところですが、
この種の議論は、ときに終わりが見えませんので、
一度きりの返信とさせていただきます。
朝ドラ(大河も含む)に対して愛情を持った上で、
個々の作品について好きか嫌いか、見るか見ないか。
それがすべてとお考えいただけましたらm(_ _)m
復帰されたのですね。
おめでとうございます。
さて、数ある提灯記事ではなく数少ない炎上を取り上げるのはフェアではないと思います。
スタッフが自分の思い通りの仕事をしないとツィートする脚本家についてはどうお考えですか?そのあと取って付けたようにスタッフを誉めるツィートに関しては?
武者さま、復帰おめでとうございます。
安心しました。
世間の批判は放っておいて、これからも
思いのこもったレビューを書いてくださいませ。
楽しみにしています。
おかえりなさい。
体調はいかがですか?
復帰されて本当に嬉しく思っています。
しかし、私が入院することになり本編が観れなくなりました。
なので、こっそりこのレビューを見て半分青いを感じてます。
ありがたいです。
いつも楽しく読ませていただいております。
私の場合、はじめは地元が舞台ということで正直なところ「どうせつまんないんだろうな…」などと思っていましたが…今ではすっかりハマり毎日楽しみになってしまいました(笑)
この作品に批判的な記事はどれも的外れな意見が多く、ちゃんと観ていない人(ゲームで言う動画勢みたいな)が書いているだろうなと感じるものばかりで失笑してしまいます。
社会風刺や散りばめられたさりげないセリフなど、少しでも見逃すと付いていけなくなるシーンも多いので仕方ないのかな、とは思いますが。
それにしても本日登場した神奈月さん、まさに東濃の土岐市ご出身なんですよね。
ちょい役でしたがベタベタの東濃弁全開!まんま近所のおっちゃんで、地元民としては最高でしたよ!
初めの頃出た農協のおじさんに匹敵する自然さです(笑)
あぁ、武者さまが、今日から完全復活だー。魂のこもったこの文章は貴方にしか書けません。北川さんもきっとお喜びと思います。クリエーターの方々が、ここまで身を削って作品を世に送り出していることを、この作品、このサイトを通じて初めて感じました。お二人とも素晴らしい仕事ですよ。ありがとうございます。