奈良まで山道を玉利まで向かったあさ。
留守番の守新次郎は『自分が行った方がよかったやろか』と悩みますが「山道は苦手やし」と悪びれる様子もありません。
その加野屋の前に立つのは、なんと五代友厚でした。
新政府なら攘夷を敢行できる!?
五代が新政府の一員として処理することになったのは、実は外国人殺傷事件であったりします(神戸事件、堺事件・劇中だと今週半ば頃設定)。
新政府を支持する中には弱気の徳川幕府ではできなかった攘夷を、新政府なら完遂できるはずと思う者もおりまして……そういう人もいた以上、案の定怒るべくして起こった事件であります。
その事件担当者が洋装というのは煽っているといいますか、結構危険な気がします。五代は外国にかぶれやがったスカした奴と思われていたと言いますか、結構敵が多かったりします。
彼がルー大柴語を使い、常に洋装なのは、劇中の表現として最先端を示しているからでしょう。
さてその五代、一体何の用件でしょうか。
新次郎もいぶかしげな顔ですが、五代の噂を聞いているようで出迎えます。
五代は今日も変人です。
新次郎がなぜあさを知っているか尋ねても、運命としか言いようがありませんなあ、ガハハ!と完全に答えがおかしい。それも五代だから仕方ない。
ここで新次郎、明らかに「あ、こいつおかしい」という感じでいきなり酒を出します。
おかしい上に新政府の一員って、まあそうするしかありませんわな。
一方で女中たちは、謎の登場、イケメン、しかも外国語を操るなんて何者なんやざわざわ……としております。
よのだけは新次郎とイケメンかぶってよろしくないと不機嫌な様子。
この女中の騒ぎ方、五代を演じるディーン・フジオカさんへの視聴者の反応とかぶりすぎていて、面白いことになっています。
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大道芸人たちの馬小屋に案内されて
一方、奈良の玉利邸宅でのあさはなんと、大道芸人たちが集まっている馬小屋に案内されてしまいます。
加子部屋以下の待遇に、あさもお供の亀助もびっくり。
しかしあさは猿回しの連れている猿にはしゃいでマイペース。なんと馬小屋掃除を始めてしまうのでした。
場面が変わると、五代が加野屋を去るところでした。
五代は何故借金しに行くのが旦那の新次郎ではなく、あさなのかと疑問をぶつけます。
新次郎のとぼけた答えに五代は納得のいかない顔ながら、新次郎に握手を求めます。
意味がわからない新次郎は、提灯が欲しいのかと勘違いして渡します。
この場面、実におもしろいですね。
イギリスで自転車に乗る女性を見て、日本の女性より大胆だと驚いた五代。
それでもあさなら自転車を乗りこなすだろうと彼は思いました。
そんな大胆な女性を見てきた彼ですら、あさが実際に取る行動は最先端過ぎるのです。
大阪の商家の女であるあさの方が、五代が見たイギリス人女性より大胆で進んでいるわけです。
握手を求める仕草でも示される、本作で最も進んだ五代。その五代すら理解できないのが、あさなんですね。
金を貸しても延命になるだけ
一方、京都に向かった惣兵衛とはつ夫妻。
惣兵衛はこんなことではつを里帰りさせてしまうことに罪悪感を抱き、妻を気遣います。
はつも惣兵衛を気遣い、自分一人で借金を頼みに行くと言います。惣兵衛は井戸転落事件から喋り方に抑揚がつき、表情も出てきました。明らかに彼の中で何かが変わっています。
久々に登場した今井忠興の前で、窮状を訴える惣兵衛。
しかし忠興は、返すめどはあるのかと厳しい態度で断ります。梨江は夫の態度に驚き、娘のためを思って貸せないのか訴えます。
梨江は母として、忠興は商売人として、この申し出を聞いているのでしょう。
嗅覚の鋭い忠興は、時代の風を読んでそこに乗ってきました。いくら金をここで貸しても、菊に頭のあがらない栄達や惣兵衛に事態の打開策はない、と彼には理解できていたのでしょう。金を貸したところで、延命措置にはなっても救命措置にはならないのです。
そのことを、おそらくはつや惣兵衛もわかっていたのではないでしょうか。
はつはどこかすっきりした様子で、金は欲しい一方で断って欲しかったと語ります。それにしてもはつを演じる宮崎あおいさん、完全に台本を読み込んでいるとわかる安定した名演ですね。
日本一の女商人になる!
玉利は、あさが馬小屋掃除をしていたと聞き、興味を抱き会うことにします。
おお、笑福亭鶴瓶さん、完全に大物豪商の雰囲気だ!
先週の山本耕史さんに続いての豪華ゲストですが、劇から浮かび上がらずスッキリなじんでおります。西郷どんの岩倉具視とはひと味もふた味も違います。
あさは金を借りる立場であるのにまったく卑屈さはありません。
惣兵衛のように頭すら下げずに相手をしっかり見つめます。
ここで【あさが世の中が変わると考えている、新しいビジネスプランがある】と堂々と語るんですね。
実はまだ何をするのか決めていないのですが、秘密だからと何かあるふりを通してしまうのです。
なかなかの策士、空城の計のようです。
あさのハッタリは成功し、見事に金を借りることができました。
しかもなんと、玉利から日本一の女商人になると太鼓判を押します。
能登の食材を食べていたから味覚が鋭いんだヒロイン様流石!とか馬鹿な理由で、馬鹿な主人公の持ち上げをされるとしらけますが、あさは土方とやりあい、大名から金を取り立て、銀本位制廃止で怒る群衆をなだめた猛者です。しらけるどころか。納得できます。
意気揚々と帰路についていたあさは、偶然はつと再会します。
お互い頑張ろうと語り合う姉妹。ほんの短い間でも、この二人が出会うとホッとします。
惣兵衛ははつにうちを恨んでいるのではないか、本当は加野屋に嫁いでいればよかったのではないかと語ります。
花嫁交換の話を知らなかったはつは驚きます。
総評
今週も見事でした。
大坂城炎上を呆然と眺める場面は、明治維新を表す映像表現として本当にお見事でした。
そんな中、あさはめきめきとレベルアップします。
借金取り立てていた週前半と、玉利と対峙する後半では明らかにレベルが違う! これまたお見事です。
一方で坂を転げ落ちるようなはつの運命。
しかし、井戸の底で惣兵衛と心を通わせる場面や、父から借金を断られて微笑む表情を見ていると、彼女が決して不幸なだけではないと思わせます。
はつははつで、自分の運命と向き合い強く成長しているのです。
四周目まで来た今、視聴者もぐっと姉妹の運命に引き込まれています。
あさの活躍を楽しみにする一方、なんとしてもはつと惣兵衛には幸せになって欲しい……そんな願いを抱く人が増えているようです。
そんな願いに応えられるのでしょうか、来週のサブタイトルは「お姉ちゃんに笑顔を」。
かつてここまで、見る側の願いに合致したサブタイトルがあったでしょうか。
お姉ちゃん、笑ってくれええ!!
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
※あさが来たモデルの広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます
【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]
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