おはようございます。
コメント欄から、示唆に富んだ感想をいただいております。
皆さんの力もあって、レビューに力が入ります。ありがとうございます!
愛について、開拓について、OPについて
第2週、最終日ですね。
朝、牛舎で働くなつ達。
泰樹がおもむろに言い出します。
「今日、その土……見に行く」
「ありがとう、おじいさん!」
なつは頭をぺこりと下げます。これが心の底からのお礼ですね。
感謝は強要するものじゃなく、自然と湧き上がってくるものです。
「わかったらさっさと働くぞ」
そっけなく言うと、作業を続ける泰樹。
なつと天陽が学校からの帰り道、畑に寄ると、そこには泰樹が先に来ていました。
これではいくら耕してもいかん。
そう判断する泰樹。
しかし、彼には開墾の経験があり、なんとかできるかもしれないという示唆をします。
「まあ待て」
開墾を手伝おうにも、天陽との親とも話さねばなりません。
お礼を言うなつを前に、懐中時計を見て搾乳の時間を告げます。嬉しそうな顔の天陽をあとにして、馬車でなつと泰樹が帰っていきます。
懐中時計、馬車、そして草刈正雄さん。
これはもう西部劇ですわ〜。
日本で最も西部劇に相応しい舞台は北海道ですもんね。
『ゴールデンカムイ』もそうキャッチコピーにしています。
何も話さなくても、おじいさんのそばにいると誇らしい気持ちになる――。
なつはしみじみとそう思うのです。
わかる!
わかるぞ、それはそうだ!
泰樹じいさんの隣に座りたい――そんな視聴者が日本中で溢れかえっておりますね。
山田家で話し合おう
その晩、山田家に柴田家がやってきました。富士子はお土産を持参しています。
「ほんのちょこっとだけど」
・ニシンの干物
・ジャガイモ
・自家製バター
出た。
北海道名物「ほんのちょこっとと言いながら、食べきれない量の土産」だ!
たまたま作ったと言いながら、自信をにじませてじゃがバターを勧める。
これぞ北海道の女。
タミも大喜びです。
剛男は、東京から来て寒さによく耐えたと感心しています。
彼にはこういう人の苦労を思いやる、そういう優しさがありますね。
ここで正治の口から語られる、リアルな北海道の寒さ。
河原で拾った石を焼き、紙でくるんで抱いて寝た。
それでも背中は寒い。
朝起きたら、子供の背中に雪が積もっていたことも……。
もう今年は、この土地から離れるしかない。そう口にする正治。
東京の空襲から逃れてきたということは、もう頼るものも何もない。そんな孤独な身の上でしょうに。
ここで剛男が、牛の飼育を勧め始めます。
牛のし尿は肥料にもなる。
牛がダメでも畑がある、畑がダメでも牛がある。
そんなメリットを語ります。
これが彼の性格ですね。思ったことを、深く考えずにポンポン言い出すのです。
その牛の費用をどうするのか。正治からそう言い返されて黙る剛男。口にする前に、そこまで気が回らないんだなぁ……このポンポンした口には、イライラする人もいるだろうなぁ。
ここに柴田家が来たのは、子供である天陽の気持ちのせい。
親が真剣に話すことではない。そう正治は言い出します。
天陽にせよ、なつにせよ、子供の夢物語になんかつきあいきれない。
そういう諦念です。
ここで泰樹が声を張り上げるのです。
「なぜ、真剣になってはならん!」
子供の、そして己の怒りに向き合え!
泰樹は、なつの気持ちでここまで来たと言い出します。
わしの事情ではなく、なつの事情である。
でも、それの何が悪いのか。
真剣に聞いてやることがなぜいかん!
息子の言うことを真剣に聞け!
今年もあの土地では駄目。来年も駄目。
そうダメ出しする泰樹に、剛男は戸惑いを見せます。どこまでも優しいんだな、剛男は。
三年はかかる。五年はかかる。
泰樹はそう言い切ります。
「無茶言わないでください!」
大人たちがそう言う中で、天陽は言い切ります。
「僕はやりたい! それでも僕はやりたい!」
続いたのは、再び泰樹でした。
「事情なんてものはくそくらえだ! 大人の事情で、この子らはどうなった! 子供の怒りを、今こそきちんと大人が聞いてやるべきだろう!」
この言葉は、重たいものです。
思わず涙を誘われた視聴者さんもいらっしゃったでしょう。
兄の陽平もフォローするかのように続けます。
「天陽は農業をやりたいんだ。馬の死を一番悲しんだんだ」
そして極めつけは妻・タミから、夫・正治に向けられた言葉でした。
「本当はあなただってここにいたいんでしょう、家族のために諦めようとしたんでしょう。あれだけの覚悟をして、ここまで来たんだもん」
怒り。
苦しみ。
ずっと感情に蓋をしてきた、山田家の人々。
彼らの心が、また動き始めます。
開墾の総大将、君臨す
夜が明けました。
山田家の畑に人々が集まっております。
総大将・泰樹!
カッコいい!
自らが声をかけたのでしょう。
地域の開墾仲間たちが集まり、泰樹に目を向けます。
「切り株を取り除け! 川上から水を引いて酸を流す」
何年かかるかわからんが、と付け加える泰樹。
『真田丸』の真田昌幸の先にある人物であることは、見ていてわかります。
「何年かかっても、子孫に誇れる土地にする!」
あーっもう、カッコ良すぎて辛い><;
直視できない!
知略99。それに高い道徳心、義侠心を加えました。
完全に賢者ルート待った無しを突っ走っていて、見ていて目がくらみそうです。
『信長の野望』コラボ武将【柴田泰樹】シリアルコードつき『なつぞら』グッズがあれば、課金する準備は出来ましたぞ! 真剣にご検討ください。
「そんな、昌幸パパに道徳心がないような言い方は、やめてください!」
というツッコミがあるかもしれませんが……まぁ、無かったでしょ……。
息子の結婚式で「それが効率的だから♪」と黙れ小童暗殺をやらかす昌幸に、道徳心なぞ無かったでしょ……。
総大将の掛け声に続いて、天陽の父・正治も晴れやかな笑顔で深々とお辞儀をして、皆で切り株を取り除きます。
「そーりゃ〜! そーりゃ〜!」
この掛け声はだんじり祭りでも有名です。
北海道開拓民の出身地は、東北をはじめとする東日本、関西や四国などの西日本、広いエリアからやってきて混ざり合っていることが特徴です。
なつも、天陽も、タミも。
切り株を引っ張ります。
それがまるで歌っているように、なつには見えました。
開拓者の歌が聞こえてくるようだったのです。
なつよ、それは『ソーラン節』だ。ナレーション代わりにそう言いたくなります。
開拓者の歌は、今にも伝わっているのです。
本作はBGMも主張しすぎずに、それでいて熱く盛り上げて来ます。
切り株をごろりと転がした瞬間の、満面の笑み。
素晴らしい!
道民様
ご指摘ありがとうございます。大変失礼いたしました。
「思い込み」は駄目ですね。
反省しています。
904型さま
横から失礼します。あれはジャガイモの畑です。
畝の作り方、花の形ともソバとは違いますので録画しておられましたらご確認くださいね。
泰樹の、「川の水を引き入れて、土の酸性を洗い流す」という方針は、恐らく、土質の異なる上流の土壌を豊富に含んで流れてきている川の水を引き込み、酸性の土壌を押し流して土を入れ替えようとしている、つまり「客土」をしようとしていたのではないかと思います。
泰樹の出身地の富山県でも、このあと昭和26年から、黒部川扇状地で「流水客土」事業が大規模に始められます。こちらは、扇状地の水田の保水力の低さを改善するために、粘土質の土を用水路を通じて流し込むもの。
実際には、十勝開拓と富山県の客土事業に直接の関係があるのかはわかりませんが、この作品を見ていると、「古くから富山県で考えられていたが、実現には及んでいなかった手法を、泰樹らは応用していた」、あるいは逆に「泰樹らが実践していた手法が、富山県出身者を通じて富山県の土地改良に採り入れられた」等、作品世界中での経緯がいろいろ想像され、興味深いです。
泰樹おじいさんって、まるで、真田昌幸とチャールズ・インガルスを足して割ったような人ですね!
半青が受け入れられなかった理由は
「ヒロインは笑うべきだ」ではありません。
脚本の時点で
登場人物やヒロインに、表出した感情の根拠となる心象背景を演出する機会を充分に与えていなかったことです。
間違っても、役者自身の感情表出や、朝ドラとしてのパターンの問題ではないのです。
他の全ての箇所では大変深い考察をされているだけに、
この、半青との対比のさせ方だけはどうしても納得できなかったので、書かせていただきました。
初めてコメントします。
草刈正雄さん【ホワイト】柴田泰樹、【ブラック】真田昌幸、どちらも大好き!と叫びたい気持ちです。それぞれの人物が生きた時代の”怒り”をとてもよく表現していると思います。
“怒り”の発露は明日への希望に繋がるエネルギーとなる一方で、”怒り”を封殺した諦観は絶望に繋がる。怒れるということは幸せなことだ……『なつぞら』を第2週まで視聴して最も強く感じたメッセージです。
『半分、青い。』『まんぷく』と毎回欠かさず武者さんのレビューを拝読しております。これからもずっと応援しております。ご自愛くださいませ。
最後に言わせてください。文:武者震之助さん、絵:小久ヒロさん、どちらも大好き!
アイスクリームを食べて平和の味がするといった剛男と、バターを食べて新時代を感じた泰樹は、根本の感性が似ていると感じています。ロマンチストとでもいうのでしょうか。その大事な想いを心の奥に秘めている泰樹にとっては、ぬけぬけと口にしてしまう剛男は「そりが合わない」と感じても仕方がないかもしれません。剛男の素直さが羨ましいという気持ちもあるのかなと思っています。
「怒り」については、個人的にもここ数年とても大切な感情だと肌で感じるようなところがあり、なつぞら並びに本レビューはまさに、といった思いで見ています。
「怒り」が印象的なドラマとして2017の直虎がありましたが、特に33話、「鶴が忌み嫌われるためにいきてきたなどあるか」という直虎の怒りがとても好きでした。鶴の選択に訳知り顔をしない、個人の美徳で世界の理不尽を贖って良しとない、真っ直ぐな怒りでした。
さらには漫画版のナウシカも、大いなる怒りが描かれ、一方で全てを忘れようとする楽園も途中に用意されていました。「怒り」は、本当に興味深いテーマです。
日常的に発生する「怒り」と、人として(生き物として?)の根源的な怒り、その違いを私はまだうまく表現できず、他の方からのご教示や自己整理が必要な段階です。なつぞらや本レビュー、ご紹介いただくリンクを楽しみながら、また考えていきたいです。
※直虎の怒りについては個人ツイートのリンクをぜひご紹介させてください。メールアドレス欄に記載させていただきます。
ラストの見事なソバ畑。
日本有数のソバ産地になっている北海道ですが、それも開拓者の人々が文字通り切り拓いたものだったのですね。
ただ、
今回は、おそらく「御都合主義的」「演出過剰」という受け止めをする人もいるかも知れないな、とは思いました。
確かに、多少の脳内補完を要した=説明不足だったか、という点はありますので。話数や時間的な制約もあったのでしょうが。
それでも、「人々の努力にも関わらず、いくつかの幸運、好条件が伴わなければ、入植は叶うものではなかったこと。」それを表わそうとしたことは、伝わってきました。
泰樹が天陽の両親と話した後、地区の人達が集まって、天陽一家の入植地の整備を進めることになりましたが、おそらくこれは、天陽一家だけのためではなく、地区内で同じように開墾に失敗しつつある入植者の人達を説得して、皆で協同して先達の指導を仰ぎ、整備を進めることにしたのではないかと。集まった人達の多くも同じ境遇の入植者で、順次それぞれの土地の整備を行うのではないか。
作中ではそのあたりの描写はありませんでしたが、いくつかの開拓地の史実はそれを示しています。
泰樹は、「川の水を引き入れて、土の酸性を洗い流す」とも言っていましたが、それを進めるには一戸だけではなく地区全体で行わなければならないでしょうし。
そして、天陽は、「出世払い」という破格の条件で子馬を譲られます。多分これについては「そんな甘い話が…」「ドラマのための御都合主義」などと攻撃されかねないな、と感じたところではありました。
そういう批判があったとしても、逆説的ながら、ある意味においては的を得ていると言えなくもありません。何故なら、そのように不可欠の資産を好意的に提供してもらえたり、理解を示して懇切に協力してくれる先達の人に出逢えた幸運の話が、開拓地には伝えられている=そういう幸運に恵まれなければ、なかなか成功は覚束ない厳しい環境だったから、でもあります。
このあたり、農水省公式サイトの解説で是非とも補っていただきたいところ。今までの畜産部だけでなく、経営局あたりの守備範囲にもなるでしょうが。
「この土地で生きていきたい」という強い意思を持った人と、生きる術を伝えてくれる先達と、それぞれが巡り逢う幸運と。
そういう幸運にも恵まれて、ラストの9年後のシーンでは、天陽一家はソバ農家として大成していたようですね。やせ地・水利の悪さといった環境では、賢明な選択だったでしょう。
ホッとしました。