雪次郎は、杉本の厳しい指導を受けています。
やる気があるのは返事だけだって。
そんな言葉に、戸惑う雪次郎に
「がんばれ」
と、なつは励ますしかありません。
鉄火肌の江戸っ子でぇ
さて、おでん屋「風車」では、誤解が色々グールグル。
牧場でコキつかわれ、学校すら通えず、乳搾りをしていた妹――そう亜矢美から聞かされ、江戸っ子らしく兄の咲太郎が怒り始めるわけです。
「ひでぇ……それじゃ孤児院よりひでぇじゃねえか!」
これも性格ですよね。
江戸前の鉄火肌でぇ。『いだてん』の播磨屋もこういうところがある。
『半分、青い。』の萩尾律なら、
「ちょっと待ってくれ」
とワンクッションあるはずだとは思うのですが、そうはならないんだな。岡田将生さん、なかなか挑戦的な役を受けたものです。
しかも亜矢美から、咲太郎の借金返済のために皿洗いをしているとまで聞かされるのでした。
「人間のクズだね!」
「わかってるよ。許せねえ、北海道め、許せねえ!」
どうやら江戸っ子、北海道に激怒しています。
おっおっ、どうなるんだ?
アンタは火野正平さんかっ!
なつが川村屋で店の片付けをしていると、咲太郎が飛び込んで来ます。
「お兄ちゃん!」
「迎えに来たんだ!」
ここで、ウェイトレスの佐知子が浮かれているのがいたたまれない!
咲太郎はこう言うわけです。
「妹すねてるから」
「すねてないけど」
こ、こいつ……相当遊び慣れているか、これから遊び人になっていく男だ!
さらりと息を吸って吐くように、
「俺を女どもが取り合うんだぜぇ〜〜〜!」
って振る舞う男!
普通の男がやったところで、ただの痛い奴なんです。
それが、愛嬌、艶っぽさ、ユーモアの三拍子が揃った男がやると、許せるどころかレジェンドに突っ込みかねないッ!
その典型例が彼です。
火野正平さんだよ!!
『にっぽん縦断 こころ旅』で、日本を旅する正平さん。
老若男女から動物まで、ウェルカムしています。これも人徳ですわ。
彼は相手の容姿を貶すようなことをしない。
モテる俺に親切にしてくれてありがとうな〜と自然に出来る。そして思いやりも溢れている。だから許される!
いや〜、そういう昭和レジェンド級のプレイボーイを、令和になっても見られるなんてねぇ。
火野正平さんは後継者がいないのか、いつまでたっても自転車で走るはめになるとこぼしているそうですが、これからこの手の後継者が出てくるかもしれない――そう期待したくなる演技です。
まぁ、そうはいってもなつには通じていないんですけどね。
佐知子はうっとりとして、なつは自分の妹だと思うと言い切るわけです。
優しいっちゃ、そうですけど。
「将来咲太郎さんと結婚したら、義妹だもんね❤︎」
という夢全開です。あのね、咲太郎、お前さぁ……。
「ちょっと待ってよ、お兄ちゃん!」
たまらずなつが突っ込みます。
マダムはクールに微笑む
「迎えに来たってどういうことなの?」
ここでマダムが野上を従えて登場。
不敵に微笑んでおります。
「借金と妹は関係ない! 阿漕なことをしやがって」
咲太郎はマダムに突っかかり、一ヶ月一万円返すから妹を解放しろと迫るわけです。
んー、やっぱりいいなぁ。阿漕ね。大森氏、いいですねぇ。
『半分、青い。』や『いだてん』でも感じるのですが、その時代ぽい言い回しを使うんですよね。こう言う細かいところ、グッと来ますよ!
そしてここ、比嘉愛未さんがクールでカッコよくて、もうたまらないものがあります。
チャイナカラーのドレスにアップスタイルの髪の毛。
んー、このまま全ての背後にいる黒幕系のボスを演じていただきたいなぁ!
「妹がいるとわかってて慌てて来たのね」
「連れていきます!」
「どうぞ」
ふてぶてしくクールに言い放つマダム。
そこにややこしい事に、雪次郎がやってきて、なっちゃんをどうするつもりだ、北海道から来たと告げるのです。
「北海度ウゥ? なんで追いかけて来たんだ!」
「やめてよ! 何勘違いしてんのさ!」
「お好きにどうぞ」
咲太郎は怒るわ。
雪次郎は驚くわ。
なつは止めるわ。
マダムは説明しないわ。
野上も見ているだけだわ。
もう何がなにやら。
乱世なら、既にこの時点で二人くらい死んでいると思います。何がなんでも乱世に持っていく大森氏ぃ〜!!
「連れて行って今度はあなたが妹を不幸にするの?」
何をして妹を養うというのか。
何をしてあげられるというのか。
どうやって生きて行くつもりなのか。
そう言い放つマダムに、今度はなつは食ってかかります。
「マダムは兄の何を知ってるんですか!」
そう言ったあと、マダムに謝り、しゅんとします。
「そうね、私は何も知らないわね」
それに対してマダムはクール。
「少しだけ兄と話をさせてください」
「どうぞ」
「戻って来なくていい」
マダムは野上ともどもクールに突き放すのですが、その鉄面皮にふっと寂しさがよぎるのでした。
比嘉愛未さんが絶品だ……もう日本のレナ・レディさんみたいですね。
全ての策が失敗するところを、見守って唖然とする。
そんな比嘉愛未さん、是非とも見たいんですけど!
本当に、よい脚本とは役者の能力を引き出すものですね。
北海道が染み付いた妹よ
なつは咲太郎に怒ります。
「マダムにあんなことを言って、話についていけないべさ!」
うん、ついていけなーい!
そんな妹を見て、咲太郎は北海道が染み付いたと言います。
言葉は仕方ないと言うなつに、言葉だけではないと言います。
「苦労が顔に滲み出ている」
それは失礼だとなつにたしなめられる咲太郎。うーん、ペースが狂っているでしょ?
あの魔性の江戸っ子、さぞや口八丁手八丁で女性を褒めるところでしょう。
妹にだってやろうと思えばできるかも……と思ったら通用しない。
彼なりに困惑している。テンポが違う。
知っていたなつではない。
東京の女のように、気軽に話せない。
何かが、なつの中にあるーーそれは北海道由来だ。無意識のうちに、彼はそう感じ取っているのでしょう。
ともかく、俺のせいで皿洗いをしている、そう勘違いしている咲太郎。
とりあえず話は家で、なつに会わせたい人がいると言い出すのです。
向かった先は、風車。
煙カスミに連れて来られた店だと夏は思い出します。
亜矢美は二人の姿を見ると、店じまいを始めました。
客はおりません。
そして、三人で話し合うことになるのですが……。
兄はどうなってしまったんだ
「待ってよお兄ちゃん! いい加減にして! こんな大人の人まで、一緒に暮らしてるってこと……」
なつは戸惑い始めます。
うっかり天陽にハグして照れる。そんななつには理解できるわけないでしょ!
「この人のために言うよ! 浅草の踊り子が、よろしくって。朝まで一緒にいるんでしょ!」
「マリーのこと?」
あっけらかんとした咲太郎。
それからなつは、土間レミ子の「心の操」のことまで持ち出します。
※続きは次ページへ
咲太郎の人となり・アウトラインが、おぼろげながら、少~しずつ出てきつつある感じではありますね。今のところ、見ている当方は、なつ寄りの受け止め・感想を持ってしまうのですが。
いずれ、なつが、今回のラストで咲太郎にぶつけた言葉を悔やむ時も来るのか。
亜矢美が腹中に抱えていそうな秘密の方は、今回は未だ進展なしという感じです。