【本文】
なつはトレースに挑み、見事に己の未熟を悟ります。
ここで、お手本登場。
綺麗に重なり合っているように見えるのですが……トレーサーの西部が描いても、実はぴったり重ねられるわけではないのです。
ずれているから、命が宿る
一秒あたり24コマ。セル画一枚が12コマ。
漫画映画を描くには、それだけの枚数が必要になります。そしてその線が、うまく重なるようで微妙にずれていることで、動いているように見える。
なつが挑戦した“トレース”とは、動画の線を崩さないようにセルに写し取る作業のこと。トレースしたセルを何枚重ねてもズレない線を描くには、かなり練習する必要がありそうですね。#朝ドラ #なつぞら pic.twitter.com/ytabo4RgJa
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 11, 2019
それこそが命を与えること。
止まっているようで、かすかに動くから、生きているように見える。
そう富子から聞かされて、なつは目が輝いていきます。静止しているように見えて動いている。黙っている場面でもそうではない、演技の命なのでしょう!
なかなか面白い話です。
現在ですと、こういう原理が活きてくる技術といえば、モーションキャプチャです。
完全なプログラム制御であれば、左腕をあげるだけという動きができます。
ところが人間の動きでは、左腕につられて右腕や他の部分も動いてしまいます。
この無駄な動きをノイズとみなさず、そのまま取り入れる。
プログラム制御だけだとどこか冷たく、機械的な動きが、人の動き由来のノイズが入ることで、自然で生き生きとしたものとなるのです。
無駄なようで、そうではないものが世界にはたくさんあるのです。
強敵を見つけてワクワクする、それがなつ
このあと、噴水でなつとモモッチがパンを食べています。
モモッチは、なつが「富さん」の生贄になったとからかってきます。
富子をそう呼べる者は多くないけれども、お富さんとか、腹が立ったら富公とか、そうこっそり呼ばれているとか。
※お富さんといえば歌もありますね
「本人に言っちゃダメだよ」
と、念押しするモモッチは、続けて、初めてにしてはうまいとなつを褒めます。
なつは、乳搾りを見よう見まねでした時は、うまくいったんだけどなぁと回想します。
照男よりも、センスを見せましたからねぇ。そういう才能があるのでしょう。
「どんな仕事も、奥深い!」
落ち込むよりも、そう喜ぶなつ。
強敵を見つけて喜ぶ、そういう心理がそこにはあります。
逃げ切るんだ、おしゃれ泥棒
モモッチは、なつの服は自分のものか?と確認します。
「ううん、亜矢美さんの」
月給が安いと悩むモモッチにとっては、うらやましい話です。彼女は安物で工夫をしているんだとか。
なつはモモッチの色のセンスを褒めます。モモッチはなつの真似をしているだけだと謙遜します。
なつの影響で服が華やかになってきたモモッチ。カラフルで個性的な衣装の2人をパチリ。#朝ドラ #なつぞら #広瀬すず #伊原六花 pic.twitter.com/0HK1GOlgLP
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 9, 2019
本作の仕事って、丁寧ですよね。
絵が好きだから――と、なつほどカッチリとした動機なしで入社したモモッチ。そんな彼女にも、色彩センスがあると示しています。
しかも、なつとの交流で磨かれていく。そういえば衣装が随分と変わってきたなぁ。
実はなつの服装は、最初の一週間だけが亜矢美チョイスで、あとは自分で工夫をしているのだそうです。
ここで、割って入った元警察官の下山が、スケッチブックを片手に声を掛けてきます。
「同じ服装がないね。組み合わせを変えてる」
えっ、ファッションチェックされていたの? そう驚く二人。
「証拠がある」
霜山は嬉しそうにスケッチブックを見せてきます。
「同じならやめようと思ったんだけど……同じ服装なら逮捕するぞ! バンバン!」
二人は驚いています。それからちょっとムキになるのです。
「逃げ切ろうね、なっちゃん!」
おしゃれ泥棒コンビとして、そう誓い合う二人でした。
『なつぞら』で学ぶ「どこからがセクハラなのか?」
この場面は、考え抜かれていると思います。
下山のスケッチは、正直にいえば気持ち悪くなる一歩手前。
ギリギリで踏みとどまっている印象です。
・あくまでファッションチェックのみ。露出度、色気は考えていない
・スケッチのポーズもそう。性的な強調がない
・下心は感じない。センスだけを褒めている。その服が似合うかどうか、自分の好みを一切口にしない
これは、先週の茂木と比較しても興味深いところではあるのですが。
・なつのファッションの変化は、好きな男ができたからだと推察している
・そのうえで、なつの外見を褒めている
・とはいえ、職場ではなく酒場での会話
前者と後者、どちらもギリギリでセーフという印象です。
前者は、あくまでセンスチェックで本人の中身、下山の下心のようなものはない。
後者は、なつの恋愛感情を推察しているし容姿をジャッジしている。
とはいえあくまでプライベートの会話です。
なつとモモッチの服装を毎日観察していた、麒麟・川島明さん演じる下山さん。東洋動画スタジオの中庭で、2人の服装が描かれたスケッチブックを手に3ショット♪#朝ドラ #なつぞら #広瀬すず #川島明 #伊原六花 pic.twitter.com/4k0OZM06bO
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 11, 2019
両者ともに、性的な目線は感じさせないし、言っている本人からも、そこまで気持ち悪さが出ておりません。
もちろん、下山だって、茂木だって、なつ本人が
「気持ち悪いから、そういうことはやめましょう」
と思えばアウトです。
このあと、なつが川村屋に向かい、野上とこんな会話を交わしておりました。
「見るたびに安っぽい芸術家になっていきますね」
「服装はそうでも、芸術は安っぽくありません!」
これは、セクハラ以前に、嫌味かつ直球のファッション駄目出しですね。
なつはちゃんと不快感を口に出します。
愛想笑いでごまかしません。そういうなつには、強い芯と安心感があります。
なんだかめんどくせーなー。
そう思ってしまうかもしれませんが、そういうところを無視するとこうなります。
前作****主演女優の広告が、こんな形で残るとは……。
マダムがコケる、そんな可憐さ
さて、川村屋でなつはさっちゃんと懐かしい再会です。
思わず喜ぶさっちゃんを、野上がたしなめます。
川村屋はテレビを導入し、ますます商売繁盛なのだとか。
その小ささ、モノクロ、画質に驚いてしまいます。昔はそうでした。
このテレビの扱いも丁寧だなぁ。
いきなり茶の間にデンとあって、それを見ながら主婦がせんべいをバリバリしている。
おまけに、
「テ〜〜〜レ〜〜〜ビ〜〜〜〜やぁ〜〜〜〜〜!」
とヒロイン*ちゃんが奇声で頭のてっぺんから叫ぶ。前作****は何だったのでしょう。
ここでマダムも優雅に登場。
『人形の家』を見に行ったかとなつに聞かれると、ふっと憂鬱な雰囲気を出しながら、忙しくて見られないとこぼすマダムです、が……。
チケットは10枚買っているそうです。
「マダムはやっぱり兄を!」
「恋じゃないわよ!」
「応援しているんですねっ!」
※続きは次ページへ
セル画表現の中で、微妙な線のブレを味わいとして取り入れることはテクニックだと思います
が、左腕を動かした時に連動する肩や旨、右腕や腹、腰の動きを描くとことはテクニックというよりは必然の表現ではないでしょうか?(2D、3D、一枚絵、アニメを
問わず)
複雑な連動がノイズに見えてしまうのは単なる観察力不足、人体への無理解で、モーションキャプチャー云々の下りはちょっと首をかしげます
多少、懸念材料があるとすれば、
主演の広瀬すずさんのスケジュールは大丈夫なのか?というところ。
今朝の情報番組でも、広瀬すずさんが他作品(舞台上演だったか?映画だったか?)の主演をつとめるという話題が紹介されていましたが。朝ドラが続いている中で、スケジュールは確保できるのか?
東京制作朝ドラには、『まれ』という大失敗策がありました。****の先駆けかとすら思えるほどの内容の希薄さ・手抜きぶり。当時、主演をつとめていた人物は、やはり朝ドラの撮影が続いているなかで並行して複数の映画など他作品の主演もしており、それによる撮影スケジュールの確保困難化が『まれ』失敗の大きな原因の一つであるとする見方もありましたので。
同じ轍は踏んでもらいたくないです。
なつが北海道で着ていた、おそらく母さんの手作りであろう由美子とおそろいのカーディガンを着ているのにほのぼのしました。十勝編が無くなったら寂しい!って思ったけど、都会に出てきても故郷となった十勝を感じられて嬉しいです。なんて奥深く、温かいドラマでしょう。
久しぶりの川村屋。変わらず味のある野上に、これまた相変わらず咲太郎の話題を振られるとムキになるマダム。
いいなあ。何故だかホッとします。
そして、千遥のこと。
咲太郎も、やっぱり本当は行方を気にかけていたこと。
ホロリと来そうになってしまい…
どう展開していくでしょうね。