なつぞら3話 感想あらすじ視聴率(4/3)男らしさからの逸脱

【第3話の視聴率は23.0%でした】

 

なつぞら感想視聴率

おはようございます。

なつの牧場での日々は、数日が経過。
働くために手順を覚えようと必死です。

しかし、悲壮感だけではなく、好奇心と豊かな感受性で楽しんでいるということも伝わってきます。

本作の内村光良さんのナレーションは、視聴者代表といいますか、なつを見守るおじさんになりきっています。
心配している、励ましている――そんな気持ちがわかる! と毎朝言いたくなります。

「おはようございます!」

牛にも挨拶をするなつ。時刻はなんと午前4時!
酪農家の朝は、早いのです。

朝ドラ開始の4時間前ですね。通勤通学の前に見るもの、朝食のお供だと考えている人には驚きのことでしょう。

しかし、酪農家にとっては、一仕事終えたあとの楽しみというわけです。

おいしい牛乳をありがとうございます!

「元気いっぱい**してね!」

午前4時スタートのスケジュール。

まずは餌やり。
ここで注目したいことは、なつが牛を擬人化している、あるいは人と区別していないところです。

それから搾乳。
もっとあっさりしているかと思いましたら、かなり本気で出してきますね。

これは演技指導、鍛錬が大変だったことでしょう。本気です。

このあと、牛は放牧へ。

「いってらっしゃい! 元気いっぱい糞してね!」

この「糞してね」という言葉が大事だと思うんですよね。

・子供にありがちな下ネタウケ狙いではない

・女の子だから「糞」なんて言えないという羞恥心がない、ちょっとズレている

・牛にとって排泄がいかに大切なことか、しっかり学んでいる

・牛と人の区別をしない、豊かな感受性や想像力、思いやり

・「元気いっぱい」+「糞してね」をつなげる独特の言語感覚

極めて真面目に牛の健康を考えて、恥ずかしがらずに、女の子だからとは思わずに明るく叫ぶ。

なつの性格は、言動の積み重ねできっちりと示されています。
かなり個性が強い子ですよ。そして、感受性豊か、想像力たっぷり、創造性もある!

そんななつを、柴田家の子供二人は驚きながら見守りつつ、学校へ。

「乳出ないから力を出さないと!」

このあとも、なつの不思議言語ワールドが炸裂します。

戸村父子とともに、牛舎の牛糞始末を含めて掃除をするなつ。
寝てばかりいる牛になりたいかと気遣われると、こう返すのです。

「乳出ないから力を出さないと!」

これを聞いた戸村父子はちょっとびっくりしています。

確かに、子供離れした感覚があります。これを咄嗟に言えるなつは、確かにちょっと違いますよね。

ここで大人が、
「子供のくせに生意気なんだから」
「子供らしいことを言いなさい」
と言わないところ。

言う側のなつがパッと出してきていて、それが鋭い言語だと意識していないこと。

あー、なつは賢い子だね。
これが本物の賢い、センスのある子供だと思います。

この鋭さ、ちょっとずれたセンスを、アニメーターとして今後伸ばしていくのでしょう。

無責任だと嘆く富士子

そんななつを見守る、男たち。
そんな中で、富士子は気を揉んでいます。大人なのに無責任だと嘆くわけです。

しかし、剛男はそうでもありません。

「認めてもらおうと必死なんだ。その気持ちはよーくわかる」

かつて婿養子として義父に認めてもらおうと、頑張って来た過去が感じられますね。

ちなみにこの夫妻、公式サイトの登場人物紹介で、夫妻でなはく妻夫の並びなんですね。
婿養子だからかな。細かい配慮を感じます。

富士子は北海道弁で嘆きます。

「なして男って、自分の身に置き換えるの!」
「俺がついてる」
「だから心配だべさ!」

この夫妻の嘆き、なかなか重要ではないかと思うのです。

そうそう、ここで富士子に背負われた末っ子の明美が、父親を露骨に嫌がっているところに、リアリティを感じました。

年齢的に、出征前の父の記憶がないのでしょう。
そんな子供からすると、見知らぬおじさんがいきなりスリスリしてくるわけで、本当にただ、気持ち悪いだけなのです……戦後、あるあるなのです。

親子なら再会してわかるはず!
というのは、残念ながら思い込みですね。

新しいヒロイン像に挑む

なつは『ゴールデンカムイ』のアシリパと同じカテゴリの少女だと思えてきました。

彼女は、いわゆる「女の子らしさ」には無頓着に思えるのです。
夕見子と比較すると、それがよくわかります。

服装は動きやすさ第一、周囲にどう見られるか気にしていない。

「乳出ないから(=授乳は女性の象徴)力を出さないと!(=力仕事は男性の象徴)」
というセリフ。

男の中で酪農をしていても苦にならない。
成長してからも、メインビジュアルがスカートではありません。

これについてNHK東京は過去、失敗をやらかしています。

2016年『とと姉ちゃん』です。

仕事中、動きやすさ重視でスカートを履かなかったヒロインモデルであったのに、劇中だけではなくメインビジュアルでスカートを靡かせたのです。

これはモデル側の大反発を招き、
「あのドラマと我が社は無関係」
と批判されてしまいました。

◆朝ドラ『とと姉ちゃん』を、本家「暮しの手帖」が痛烈批判! 花森安治の反権力精神を描かないのは冒涜だ

追記と修正:スカート姿を批判されていたのは、花森安治氏についてでした。大変失礼しました。ご指摘ありがとうございました。

あの失敗を踏まえたのでしょうか。

2018年『半分、青い。』、2019年『なつぞら』では、パンツルックのヒロインをメインビジュアルに採用しました。
この二人は、服装だけが女性らしさから抜け出しているわけではありません。

鈴愛にせよ、なつにせよ、社会からみれば【男のやること・好きなこと】に興味を示します。

朝ドラといえば、働く女性を応援するものでした。
そこからNHK東京は踏み出し、性別の壁に挑むヒロイン像を模索しているように思えるのです。

これは前述の通り、『ゴールデンカムイ』のアシリパもそうなのです。
他のアイヌ女性と比較すると、明らかに男性的な衣装と装備、そして言動を選んでいます。

彼女らは何がなんでも男に勝つのだという気負いはありません。

アシリパはそのあたりがちょっと複雑ですが、そうしろと強制されたわけでもない。
感受性の赴くまま、好きな生き方を選んだ結果、女らしさから逸脱してしまう。

そしてその結果、女らしく生きろという圧力や、偏見とも戦わねばならないのです。

そういう新たなヒロイン像。

世界的な潮流でもあり、ディズニー映画やマーベル映画でも活躍しています。

※『キャプテン・マーベル』が代表例ですね

そんなニューヒロインらしく、なつは転んでもこう言うのです。

「大丈夫です、自分でやれます」

酪農だけではなかった!

牛の世話を終えたら、ちょっとは休憩できるかな?
と思っていたら、柴田家は豆とジャガイモも作っていました。

ここからは農作業。
北海道……どこまでもベリーハードだな。

他の家族が畑仕事をしている間、泰樹は集乳所まで向かっていきます。
馬車がなんともいい味を出しているんですね。準備、馬の世話だけでもかなり大変でしょう。

このあと、牛が放牧から戻ってくると、夕方にも搾乳です。
この搾乳を、なつはじっと見ているわけです。愛おしそうに牛を撫でるなつでした。

そして夕食へ。

今朝気づきましたが、この食卓の形が個性的なんですよね。
綺麗に四角く成形した木材ではなく、木の幹をそのまま使うタイプです。木のウロがあった場所はそのまま穴が空いている。

こんなものよく見つけてきたなぁ。
使い回しじゃないでしょ。北海道らしいなあ!

食べている食事も、実に北海道らしさが満ちています。

なつはなんと、食べながら居眠りしてしまいます。
それだけ疲れているということでもありますが、馴染んできたということでもあるのでしょう。

ここで富士子が、泣き出してしまいます。

「なしたの?」

「だって可哀想だべした! いい加減にしろ、この頑固ジジイ!」

出たぞ、頑固ジジイ!
泰樹に対して視聴者が薄々感じていたことを、実の娘がズバッと言い切りおったぞ!

しかし、娘の夕見子は面白くありません。
食事を食べ終えると腹立たしそうに立ち上がって、自室へ。嫉妬表現が巧みですね。

「どうなってんだ!」

オロオロするばかりの剛男。
彼のような婿養子は長男以外であり、強い長女である妻に対して、優しく頼りないくらいがちょうどよいとされたものです。
この夫妻はそんな典型例でしょう。

イビキがうるさい!

その夜中、夕見子が夫婦の寝室へやって来ました。
疲れ果てたなつのイビキがうるさくて眠れないのだとか。

じゃあここで寝ればいいと剛男は言うわけです。しかし、まだ両親にも苛立っているためか「じいちゃんと寝る!」と泰樹の元へと向かいます。

しかし、このじいちゃんも抜群にうるさかった。

本当に細かい話なんですけれども、この時の泰樹が来ている分厚い下着が、北海道のじいちゃん愛用の品ぽい!
いい仕事を感じました。

ちなみにイラスト担当者の小久ヒロさん曰く、
「NHK東京の朝ドラは、パターンがその時代独特のものであって、大変」
なのだそうです。

そんなところまで、きっちり気遣っているのでしょう。
イラストレーターさんには大変なことですけれども。

※編集「本日、布団までチェックするのを失念しておりましたが、北海道では寒くなってくると【丹前(たんぜん)】という着物みたいな掛け布団を使います。東北もそうでしょうかね。毛布の感覚に慣れていると、この丹前がヒンヤリして寒いのですが、逆に、地元の方たちは丹前がないと眠れないとも言っておりました※昭和40~50年代の体験談」

休めないそれぞれの理由

そして日曜日。
当然ながら牛にも酪農家にも休みはありません。乳牛は搾乳せねばパンパンになってしまうのです。

休みといえば、復員した剛男がいきなり働いていること。
これも当時のリアルです。

戦後日本は、復興第一でした。
復員兵、抑留者、被災者、被爆者、未亡人、孤児……そういった傷つき弱った人々を助けることは、後回しにされていたのです。

まずは生活を、戦争前にまで戻すこと。
そういう意味では、家族が牧場を守っていて被害が少ない剛男は幸運でした。

焼け跡で何もないところから、全てを始めなければならない剛男の戦友たちもいたことでしょう。

剛男は労働をしっかりこなしています。
肉体的な後遺症は少ないようです。ただし、PTSDについてはわかりません。

生きていくことに必死。
周りも皆辛い中、黙っているしかない。そういう現実がありました。
が、それは傷ついていないということではありません。

何十年も経って、ナゼそんなことを言い出すのか。
それは禁句です。

心の整理、時代の安定があって、ようやく語り始めることができる人も、たくさんいるのですから。
被害直後、大げさにジタバタすることだけが、痛みや苦しみの表現ではありません。

5 Comments

第279ザルツ空挺大隊

「むぎすけどん」氏の投稿に対しては、一度、反対意見が投稿されたのに、何故か削除になってしまっていました。
改めて読み返してみても、やはり「むぎすけどん」氏の考え方は怖いです。差別問題は、差別を受けたと感じた側の視点・立場に立ってその原因を考えるのが基本中の基本なのに、あろうことか、「ポリコレのせいで作品が影響を受けて台無しになっている」などと公言するとは。
それに、散々一方的な主張を展開しておきながら、その挙げ句に「ポリコレ云々の政治的な話をするのはやめましょう」と。
反論は封じようというのでしょうか。それはおかしいと思います。

これに対して、レビューの方では、性や人種その他の属性による固定的な考え方、無意識的な「決めつけ」から抜け出そう、という考えを基調に書かれています。大いに賛同できますし、勇気を与えられます。
このレビュー執筆の基調方針は、堅持していただきたいです。

三等航宙装甲艦

この投稿( ↓ )は、「ポリコレ」に対する著しい無理解ないし強い偏見が、顕著に現れていると感じます。

投稿では、「いったいぜんたい、黒人が受賞しなかったからといって、なんだというのでしょうか?」「今や黒人や女性を主要でカッコいい役に入れないと総スカン喰らう時代」などと仰っていますが、まさにその発想自体が、問題の根源、差別的発想の典型としか言いようがありません。

差別は、やっている側はそれと気づかない。差別されたと感じている側が何故そう感じたのかを、寄り添い理解しなければ、同じことが繰り返され、傷つく人は生み出され続ける。

「そんなのは差別じゃない」などという決めつけは、やってはならないことの筆頭。

こちらのサイトにおいて、あえてこのような投稿を掲載しているのも、考えがあってのことでしょうし、多様性は大切で、「間違っている考え方も、覆い隠すのではなく、『見たうえで、何故間違っているのかをそれぞれが自ら考える』」ということもあろうかとは思います。

それならば、反対意見の投稿も、掲載させてほしいと切に思います。

むぎすけどん

幼少期に乳搾りのエピソードを入れたのは、もしかしたら、後年、旦那とともにハイジ制作に関わってくるからかもしれないですね。

ポリコレの弊害によって制約が加わり生まれなかった作品を考えると良いことばかりとは思えません。
2016年のoscarsowhiteの運動も人を肌の色で判断する偏狭な思想から始まっています。
いったいぜんたい、黒人が受賞しなかったからなんだというのでしょうか?その年にアジア人は受賞したでしょうか?本当の多様性を考えるなら、移民の子であるレオナルドディカプリオが受賞したことに関して賞賛するべきではなかったでしょうか?肌の色で受賞を決めるのは誤ったやり方です。
今や黒人や女性を主要でカッコいい役に入れないと総スカン食らう時代になっています。そんな時代に本当に自由な作品は生まれるのでしょうか?
Netflix版聖闘士星矢で瞬が女性になった件もそうです。
気がつかないうちに様々な作品が影響を受けて台無しになっていきます。それが怖いところだと思います。

アメリカは変な制約で作品を縛ってしまえばいいが、日本は違います。

まぁ、何が言いたいかというと、この作品にポリコレが云々の政治的な話をするのはやめましょう、ということです。

匿名

リンクされているとと姉ちゃんの記事を読みましたが、
史実のモデルがスカートを履いていないのはヒロインではなく、編集長の花山のモデルであった花森氏と記載されております。
うろ覚えですが、女性のための雑誌を作るということで女性の気持ちを感じ取ろうと男性である花山がスカートを履くシーンが劇中にありました。
どちらかというと、「事実と違う俗説を採用しジェンダーに囚われない姿勢を強調しすぎたため」モデルサイドから抗議を受けたのではないでしょうか。
この抗議を肯定的にとらえることはこのコラムの主張とは正反対となってしまうと思われますので、訂正なされた方がよろしいかと思います。

ひろぶ

なつぞら、最高です!
初日から掴まれっぱなしです!

いきなりタンポポを愛でるでなく喰らうシーンに、アシリパさんを。
焼け野原の回想シーンに火垂るの墓の兄妹を。
草刈さんには真田昌幸を、それぞれ重ねて見てしまいました。
本日の放送で、さらに昌幸度アップ
(簡単には腹の底を見せない懐の深さ)

北海道弁も良いですね。
~かい?、~っしょ、自然に感じます。

家の昭和感も良い。
玄関開けたら、広めの土間にすぐ茶の間。
開墾時に出た伐採材を使ったであろうテーブル等の家具類。
農作業で使っている器具類。
画面から滲み出る当時の空気感がたまらん!

で、本日のなつのセリフ

「乳が出ないから力出さないと」

子供らしく無いのは、焼け野原を生き抜く為に早く「大人」になる必要があったから。
そんななつを、大人と言うか1人の人間として扱うじーちゃん。
まだ丁稚奉公の名残があった時代、田舎では幼児労働は割と当たり前。
学校よりも農作業優先。
同時に、学業優先で将来は都会に出て働くべきと考える新世代。
そんな過渡期が感じられます。

前作では出来なかった感情移入が、初日から全開です。
すでに、初日ラストの泣きシーンで、ここに来るまでの戦後ならではの背景や殺していたであろう感情の発露を感じ、ひと泣きしてしまいました。
今後に期待大です。

前作と言えば、
最近流れる焼きそばUFOのけたたましいCMに触発され、ついついコンビニへ。
まるちゃん正麺焼きそば買って帰りました。(笑
やはり、日清マークに手が出ない。

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