「ねえ、優ちゃん! ねえ、どうしてこういうことするの!」
『キックジャガー』の原稿の上に描かれて、なつは声を荒げてしまいます。
「優ちゃん、ママのお仕事手伝いたかったの……そしたらママ、眠れるから。ごめんなさい」
で、こう来た。
うううっ、辛い、辛すぎる。
子供の難しいところって、ここなんです。
善意で取り組んだことが失敗に繋がることも多々ある。自分の感情制御ができない子もおりますね。
黒豆を虫に擬態させて、純粋な悪意でもって祖母を騙していた――そんな根性がねじれたタイプとは違うのよ……。
子供だから、全部見逃せばいいわけでもない。
その逆でもない。
優の場合は、怒れないんですよね。
「いいの、いいの! こんなのなんでもない、ママこそごめんね。怒ってごめんね。そっか。手伝おうとしてくれたのね」
なつはそう反省します。
この子は天才、私は親バカ!
ここで、イッキュウさんがやってきて紙をめくり驚いています。
「君が描いたんじゃないだろ?」
なつがめくってみると、その絵は子供らしいものながらも、動画として見られるものでした。
「君の仕事を見て、いつのまにか覚えちゃったんだ!」
門前の小僧習わぬ経を読む。
そういう現象ですね。
「優、あんたは天才だ、うん!」
なつは怒るどころか、喜び始めます。
いいなぁ……こういう親子の描き方はいいと思います。
前作****教祖の**さぁんは、ともかく最終盤まで天才アピールが激しくて、息子や社員が「天才! 教祖は天才! ありがたや〜」と踊る様を見て、踏ん反り返っている印象すらあったものですが。
なんというか、院政が好きな価値観なんですね……。
泰樹はじめ、本作の人物は後の世代による継承と、乗り越えてゆくことにこそ喜びを見出しているのです。
出社後、なつは堀内に、優が描いた動画を見せます。
「偶然かもしれないけど……奥村なつも、親バカってことか」
堀内はからかっています。
中島も同意していて、微笑ましい光景ですね。堀内は、入社時のなつの画力に近いとも付け加えます。
そうそう、なつは画力が弱かった。
それから努力・経験を重ねてここまで来たんですね。
消して描き直すのか?
と聞かれ、なつは宝物としてとっておくと大威張り。
「急いで描き直します!」
張り切ってそう言い切るのでした。
『キックジャガー』、フィナーレ目前
格闘技が大好きで『キックジャガー』のファンである佐藤部長は、最終回がどうなるか気になって仕方ありません。
作画監督のなつに、プロットをそっと聞き出そうとします。
ファン心理ですね。
「『キックジャガー』、どうなるんだろうね〜」
マスクを取られた以上、正体は明かすしかない――そうでなければ終わらないだろうと、感慨深げなのです。
そのころ茜は、めいちゃんと優の手を引いて帰っておりました。
団地の描写がこの時代らしいんですよね。
何を食べたいかと二人に聞くと。
優はオムライス。
めいちゃんは餃子。
おおっ、これは結構厳しい。調理過程が違ってくるぞ!
餃子を一から包むとなると、大変なことではあります。当時の子供がいかにも好きそうなメニューでもある。
「どっちがいいかな? どっちも食べたいの?」
そう聞くあたりに、悩ましさと愛おしさがにじみでています。
渡辺麻友さんのこの演技よ!
そのころ東映動画では『キックジャガー』最終回の打ち合わせ中。
宿敵からマスクを取られた主人公はどうするのか?
担当の宮田は「去る」と言い切ります。
痛ましい姿を見せたくない。だからこそ、ただ去るのみ――。
孤児院の子供をあとにしてこそ【男の美学】だってさ。
しかし、孤児院にいたなつは納得できないのです。
帰宅して、なつは優に聞いてきます。
「もしキックジャガーに会えたら、何て言う?」
「もういいよ、って……もう戦わなくていいよって」
ボロボロになるまで、素顔になるまで戦った。
孤児のために戦った。
けど、もういいよ。そう言うのだと。
その言葉を噛み締めたなつは、チームに対しても、主人公は孤児院の子供達に会いに行くべきだと語ります。
素顔になり、子供達に向き合い、そこで初めて涙を流す。
「いいね……泣けるね」
佐藤以下、チームも関心しています。
そして素顔の中神拳矢として、リングが鳴って立ち向かっていく――これがラストカットだと決まるのでした。
「いい! それいいよ!」
「敗者の美学です……」
「素晴らしい、それでいこう!」
ここで『キックジャガー』のテーマとともに、ラストカットが流れます。このテーマを作るだけでも、なかなかの労力でしょうね。楽しい仕事ではあるのでしょうが。
マスクを取り、ゴングの中、キックを見せる拳矢。
【完】
おおっ、これはいい! 是非とも見たい!
最終回は盛り上がり、名作となったわけでした。
って、うまいはずですよ。
◆なつぞら:「キックジャガー」作画は「タイガーマスク」の大橋学さん! キャラデザも担当
作画だけでなく、声を吹き込んだ声優さんからもこんな投稿が!
ほんのちょっとだけだったけど『なつぞら』に声の出演させてもらって嬉しかったなぁ〜。キックジャガ–を愛する子供の心を持った大人の僕としては!!#なつぞら、#キックジャガー
— 真殿光昭 (@madonodono) August 28, 2019
『半分、青い。』でもプロの漫画家さんを使っていて、それになんだか批判もあったようですが。
プロの仕事でその魅力を再認識させることに、変な難癖をつける必要性をあまり感じません。
契約で揉めたりしたのであれば別。
露骨な特定企業個人宣伝であればこれまた別ですが。
※続きは次ページへ
>あの振る舞いは座長のやる事ではないですよ。
ー「うわ、抱っこ緊張する」と言う夫を「ガチガチすぎてウケる~」と笑う妻、という感じだろうか。(中略)ー
という他愛のないシーンだと解釈できるのに
細かな背景がわからない1本の動画の印象だけで簡単に非難の声を上げる人々の方がよっぽどどうかしている。
意味なき「主演女優叩き」をどうしても正当化したくてたまらない向きが存在するようですが、まあそんなものは放っとくとして。
「自分の目で作品と向き合う」という話。そのとおりだと思います。
これまで武将ジャパンさんのいくつかのドラマレビューを見てきました。
おかげでドラマを見るときの着眼点のようなものもわかってきました。
メディアで絶賛されているような作品でも、自分で納得がいかなければ、「メディアはメディア。自分は自分」として解することができるし、逆に、メディア上の評価が低い作品でも、自分の評価軸で合理的に納得できれば、気にせず楽しめる。
武者氏が途中で背を向けた『いだてん』も、私にとっては楽しめる作品です。おかげさまで。
『なつぞら』も、そろそろラスト一ヶ月あまり。
様々な観点での問題提起を試みてきた意欲作の結末を見届けたいです。
件の炎上動画ですが、広瀬すずさんは苟も座長ですからねえ。
あの振る舞いは座長のやる事ではないですよ。
優ちゃんはいい子だなぁと感動し、同時に居たたまれなくなりました。
私の子供の頃なんて「やるなよ!絶対にやるなよ!」と言われた事を
・重要性が理解できずに好奇心を優先してやる。
・回りの反応が見たくてわざとやる。
・怒られた腹いせにわざとやる。
なんて事をしょっちゅうしていたクソガキでしたから。
(そうして痛い目にあってようやく″何故ダメなのかを理解し、納得し、自分の意思でやめようと決意してから″やめる)