スカーレット21話 感想あらすじ視聴率(10/23)別の道もあるんやで

「どないしたんや! なんやこりゃあ、おいっ!」

家の中は荒らされております。
これはあかん!

「買い物から帰ったらこんなんなっててん!」

「泣いてる場合ちゃう。見ぃ、そっち見ぃ!」

夫妻は揃って被害状況を確認するのです。

「ない! ないっ! あった!」

マツは、取っておいた喜美子の初任給の封筒を見つけます。
それをジョーが確認するのです。

「あほ! 空っぽやがな!」

「ほなお金……」

「あれへん。すっからかんや」

そう言いつつ、ドサっと座り込んでしまうジョー。
これはもう、あかんとしか言いようがない。

「お母ちゃん、うちのお駄賃もない! 取られた!」

直子も叫んでいます。

ここへ陽子が顔を出します。

「マツさんいやる? 筍もろてん、筍いらん?」

ここで、あかん状況を察知して、口をあんぐりとさせる。
そんな陽子の顔が素晴らしいとしか言いようがない。

いや、全員か。
ええ意味で、脚本通りなのかと思ってしまう。

【泥棒に入られた動揺を、思うままの関西弁で表現する】だけだとか。
アドリブでやってまえと背中を押しているとか。
そういう勢いを感じるのです。

信楽で生まれ育った陽子。
八尾のお嬢様出身のマツ。
コテコテの大阪出身者ジョー。

それぞれのテンポが違うのも、ええ味です。

お父ちゃんが前借りに来る

オゥさんこと忠信は、警察に言えとジョーに勧めます。

若いもん二人と連絡取れへん、おまけに初の無断欠勤。
これはそうとしか言いようがないわな。

そう迫る夫を、陽子が嗜めます。

「あんた……」

「そやけど」

若いもんのおばあちゃんは、具合が悪かった。
病院かかるにも、金がいる。

そう語っていたとか。

※医療保障制度は大事やで。社会の基礎や。さもないとこうなる……

「ほな、やっぱジョーさん!」

「いや……まだ誰かわからへんわ」

ジョーは苦笑します。
誰かわからんけど、申し訳なかったと言うて、返しに来るかもしれん。朝まで待ったろう。そう力なく言うジョーです。

アホや……ジョーはアホなんや。
相手の苦労や誠意、孝行心を知ればこそ、責められない。そういうアホなのです。あかん、こんなん泣くわ。

NHK大阪がベタな人情にまで戻りましたね。

同業者やライバルを時代劇悪代官レベルの演出で出す。主人公側は、相手を罵倒して怪我までさせかねない暴力を振るい大いばり。
――そんな昨年とは縁が切れたんや。

悪人にも、そうする理由はあるんやで。
くーっ、もどかしい!

しかし、朝まで金が戻ることはありませんでした。

そして、荒木荘の電話が鳴ります。
喜美子が取り、繋いでもらいます。通りすがりの雄太郎もご挨拶を。

「荒木荘でございますぅ」

「雄太郎でございますぅ」

ここ、雄太郎が出てくる意味ありますかね。
ない。おもしろければええんや。

電話のお相手は信作でした。

「初めてうちに電話や」

喜美子がそう喜ぶと、信作は受話器を奪われます。

「直子や」

「何掛けてんの。お金もったいないやろ。ちゃんとお母ちゃんのお手伝いしてんの? お父ちゃんに叱られてない? 百合子はどうしてる? あ、学校は!」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!」

濃すぎるやろ。
大阪のおばちゃんは、こういうマシンガントークと質問責めをする印象がありますよね。質問に答えないうちに、次の質問がくる。

あれは、おばちゃんになるとタイマー式でそうなるわけではなくて、少女時代からそうなのです。喜美子もそうです。

他の地域出身者が会話を耳にすると、喧嘩や詰問だと思って驚きかねないノリやで。
そして直子も負けていないと。

喜美子は出かける圭介に挨拶しつつ、電話を続けます。

直子に代わり、信作が説明。
喜美子の家にお巡りさんが来て、いろいろと取られたものを調べに来ているそうです。

置いたったお金。喜美子の仕送りまでもがない。
不満を見せる直子に気づき、信作はこう付け加えます。

「直ちゃんが洗濯して貯めたお駄賃なんかもな」

「泥棒やんけ!」

はい、泥棒です。

そのため、ジョーが朝から喜美子のところへ向かっているんだとか。
信作は学校行かなあかんからと切ろうとします。直子がここで、受話器を強奪します。強い。

「前借りや! お姉ちゃんのお給料の前借りしに行った。お父ちゃん言うてた。お金用意しとけぇ!」

果たしてジョーは、既に大阪へ来ているではありませんか。

地元・大阪にいるジョーを見たかったですし、当時の街並み再現は見事ではありますが、こういう用件でかいっ!

「えええ〜!」

喜美子は驚く。こっちも驚く。

どないなっとんねん!

雇用主の荒木社長出張中やん。
貯金をして自分の人生を生きる道が、また遠くなってまうで。

気になるぅ〜!

関西弁ドラマ王座に待ったなし!

これはあくまで想像ですが。
大阪出身の役者さんは、熱い目線を本作に送っておりませんか?

「カット! こらぁ、そこ、アクセント! 関西弁になってるだろ!」

「えろうすんません」

「だから関西弁やめろって。お笑い芸人じゃないんだからさ。東京なら標準語なんだってば」

「はい……」

そんなこと言われても……。

台本はいったんセリフを関西弁にして感情を込めて練習して、それをもういっぺん標準語に直すし。
関西弁イコールお笑いと言うけれど、もっと喜怒哀楽も人情もあるのに。
そういう不満を感じつつ生きてきて、役者として成功したけど、ずっと夢があった。

ありのままの関西弁で、全力の演技をしたい――。
そういう夢を抱いている関西出身者にとって、本作は輝いて見ているのではないでしょうか。

NHK大阪は、そういう関西弁ネイティブの役者さんから、全力を引き出す役割もあるんだろうな。
本作を見ていると、そう感じてしまうのです。

泥棒が入ったあとの場面なんて、迫真の演技でした。
標準語のドラマでは、どうしても全力が出せているようで、そうではないのかもしれないな、なんて。

あれだけ長いセリフがあってもこなせるのは、そういう言葉の力だと思います。

お金の問題で羽ばたけない

本作はアップダウンが激しいなぁ。

前半は【金より大事なもんがある】と示しておいて、後半は【金がないとあかんやろ】になりそうで。
こうなると、お給金の一点だけでもデイリー大阪でええとなりそう。

どうするどうなる!

社会で成功するって、どういうことなんだろう――そこへ踏み込んできていますよね。

何度でも言う。
きみちゃんはアホやないで。むしろ賢くて好奇心旺盛。
自分の意思もあるし、考えて結論を出す。流されへん!

新聞社で知識を身につけたら、いいとは思う。
けれどもどうしたって、家庭の事情に縛られてしまうんだな。

歯痒い。
でもこの歯痒さこそ、女性のリアルだと思うのです。

兄や弟の学費のために、女の子は進学できないとか。

できてもせいぜい同じ都道府県内までとか。

実家から通える範囲でなければいけないとか。

そういう家庭やお金ゆえに、羽ばたけない人はいる。男女ともにいるけど、女性の方がどうしたってそうなりがち。

男女平等。
女が社会進出できないのは女自身のせい。

せやろか?

医大入試問題はじめ、そういう構図はあきらかになってきた。

『なつぞら』のなつや夕見子、ヒロインたちが正面突破型ならば。

『スカーレット』の喜美子はじめ女性たちは、ちょっと違う。

縛られる姿で理不尽さを見せる。
自由に見える照子様だって、婦人警官は諦めて婿取りをする家庭事情に絡められております。

そういう、大阪ならではの戦い方と問題提起が見事な本作。

東か?
西か?
そういう関ヶ原図式は要らん。両者で問題提起をする、そういう力を感じます。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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