スカーレット34話 感想あらすじ視聴率(11/7)手書きのお茶漬けレシピ

手紙にはこう書かれておりました。

喜美子には迷いがある。

二つある道、これが正しいのかわからない。

 

荒木荘で働き、仕送りをして、内職をして、学校に通う。

ジョージ富士川先生から新しい世界を教わって、好きな絵を描く。想像するだけで楽しくてワクワクする。

 

もうひとつは信楽に帰る道。

こっちはどうなるかわからへん。働くところはあっても、自分はどうなっていくか想像つかへん。ようわからん道を選んで歩き出すのは、えらい勇気がいる――。

 

勇気を出して、うちは信楽に帰る道を選びました。

自分で決めました。

自分で決めたんです。

 

そやから、最後にちや子さんに会いたかった。

新聞社辞めた聞きました。

大丈夫やろか?

心配やけどきっとちや子さんなら、きっとうちにいろいろ教えてくれたちや子さんなら。

 

そう思ってうちは行きます。

いつかまたちや子さんにお茶漬け作ってあげたい。

おしゃべりしたいです。

 

そしていつかこの道選んでよかったと、笑ってあえる日が来ますように。

 

今日にて荒木荘卒業させていただきます。

 

お世話になりました。

ほんまにありがとうございました。

ちや子は、喜美子が残していったお茶漬けレシピを元に、あの味を作ります。
そして泣きながら啜ります。

けれども、同じ味なのかどうか?
喜美子の笑顔とおしゃべりのないお茶漬けは、同じ味なのか?

このほんまに美味しそうなお茶漬けは、レシピが公開中や。
仕事ができるスタッフやで、ほんまに。Web担当者さん、痒いところに手が届く。

◆きみちゃんのレシピvol.06「梅山椒のお茶漬け」

しかも、ちや子がどういう状況で食べたか。
そこまで設定してある!

こんなもん……画面には出ない。Web環境がなければそもそも見ない。それでも設定してしまう。こういう氷山の一角の下に、深い設定があればこそ、出汁がきいたええドラマができる。

本気ですな。ほんまにええ仕事やと思います。

信楽の朝

さて、信楽での喜美子は――。

川原家から、エエ方の妹・百合子が出かけてゆきます。

「いってきまーす」

しかし、アカン方の妹・直子は姉からお弁当を差し出されても、無言です。めんどくせえ。

「何か言いなさい」

「……いってきます」

「いってらっしゃい、気ィつけてな」

そう送り出してから、喜美子は気合のポーズを決めます。

「よっしゃ!」

平穏無事かつ平凡な朝。
こういう平凡な朝に、きみちゃんみたいな女性がいたこと。

そのことを思い出させてくれる、よい作品だと思います。

誰にもできること、無駄なこと、地味なことはない

最近面白いなあ、と思ったのがこの本です。

◆「ぼそぼそ声のフェミニズム」書評 覇気のない「宣言」からはじめる

どうしてなんだろうか。
『スカーレット』から思い出すのはこういう概念なんですね。

エマ・ワトソンのスピーチにせよ。
上野千鶴子氏のスピーチにせよ。

すごく偉大なことだとは思う。けれども、コンプレックスも刺激されてしまう。

成功していて、美人であるとか。名門大卒の偉い先生であるとか。

ただのつまらんおばちゃん。飯炊きのおばちゃんが、権利なんて主張してええんやろか?

ここが『なつぞら』とも違うところかもしれない。

なつはアニメーター。
夕見子は北大卒。
明美はテレビ局記者。

あの姉妹たちは、エマ・ワトソンや上野先生のような強さがあった。マコあたりもそう。

それに対して、本作の女性たちはちょっと違う。

さだは家庭環境がかなり上だからこそ、ああして自立している例外枠。
上位に属するちや子ですら、ヒラさんが支えなくなったら、道が崩れかけてしまった。

喜美子と大久保は、下の方。
家の事情で、学校を諦めて働かなくてはいけない。
どれだけ頑張っても、誰にでもできる仕事と馬鹿にされる、そんなシャドウワークで搾取される。

こういう彼女らの声を、ちゃんと聞いてきたのか?

彼女らが生活インフラを支えているのに、一段下に見ていたのではないか?

そういう、ぼそぼそ声だからこその主張があると、本作は突きつけているんじゃないかと。

笑いでかなり軽くしているとはいえ、本作の喜美子周囲は見ていてしんどい。

喜美子が信楽に帰った時、飲んで騒ぐおっちゃんども。
あの人らの認識では、あれが【きみちゃんのため、きみちゃん大歓迎や!】なのです。

喜美子がそのせいでお酌して働いている。
むしろこんなんやめーや。そう思っていても、気づかない。

だって彼らは、ぼそぼそ声をつまらんものと切り捨てて生きてきたから。

これはかなり、お互いにとって不幸なことだと思うんだな。

今朝も脳内でジョーカスサンドバッグを殴った。
ついでにヒラさんサンドバッグも作った。

ヒラさんはまし。ジョーカスは、傷つけたことすら無自覚かもしれん。本作は地味だのなんだの言われているけれども、これも大変なことやと思うよ。

誰にでもできる仕事はないし。
地味な人生だのテーマだの言われる筋合いはないし。

ましてや荒木荘の三年は無駄やったと言われたら? これは絶対に許されんことかもしれない。

どんな人生だって、お姉ちゃんやおばちゃんやおばあちゃんの人生だって、それぞれ価値があって尊い。

そう突きつける本作はなかなか残酷だし、大阪のおばちゃん版『ジョーカー』かもしれない。

どこまで深く、そして大きくなるのか。
先が読めないドラマです。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

2 Comments

管理人

>あしもと様
ちや子さん、あんなに泣いてたら、茶漬けなんて食えないでしょ!
代わりにこっちで泣くから、ぐぉおおおおおおお(T_T)
って感じでした。
嗚呼、喜美子の境遇、決意を思うと心が痛い……。

あしもと

今日は大久保さんで泣き、雄太郎さんのギターで泣き(泣くとこですよね?笑い泣きです!)、ちや子さんで泣き、さらにこちらのレビューでも泣きました

本当に何人もの喜美子がいたし、今もいると思います。それが如何に罪深いことか。一見昭和の価値観を描いているようで、まんぷくの「支えるヒロイン」とどう違うのか。昭和の「フツウ」を男目線で美化してない、しかしちゃんと全員に陽を当てているのが分かるドラマですね。

ちなみにサイトのレシピも泣けますね、、登場人物への愛情があふれてます

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