スカーレット37話あらすじ感想(11/11)家父長制なんて笑うわ

「せやさかい、これや、貯金箱や!」

マツは貯金を始めたと報告します。
まだ20円かと突っ込まれるけれども、いつになるかわからないけれども、貯めるというマツ。
こんなん、母の愛に泣くわ!

陽子もいそいそと協力を申し出ます。
しかしマツの願いは協力ではなく、管理でした。うちに置いとくと盗まれる。

「泥棒の心配?」

「それもあるけど……」

どんなに隠して置いても……ね? 陽子は理解します。

「ああ〜ああああああ! すぐにお酒に変えてしまう人がいはるもんなあ!」

20円も二滴の酒になる。
だから見つからんよう貯めたい。そうマツは頼み込みます。

「そういうことなら、まかしとかい!」

陽子はそう言い切ります。自分しか触れない、鏡台の下に貯めるそうです。

マツは変なことを頼んだと詫びつつ、いつかあの子が行きたいという学校に行かせられるだけのお金を貯めたいと言うのです。

陽子はこう言ってしまいますが。

「まだ20円やでぇ……」

小さなことから、コツコツと。辛いなぁ。
そうして信作のスーツも買ったんですかねえ。

信作よ……こんなええお母ちゃんの貯金を、調子こいて浪費したらあかんよ。
スーツはともかく、変な遊びをしたらあかんで。そう言いたくなる、そんな本作がおもろい。

工房に残る喜美子は、そんな母の思いを知る由もなく、絵付けに夢中です。

ガラスから差し込む夕陽が美しく照らしています。

お父ちゃんのお節介

その夜、ジョーは案の定飲んでくれておりました。
カスと呼んでも胸が痛まない。安定感のあるカスっぷりです。

「あかんあかんあかん、一人息子がなあそこ」

そう暴れるジョーカスに、オゥちゃんこと忠信は下の息子が生まれたと言います。
はい、ここで一名追加っと。

森さんとこのボンボンは?
結婚が決まってる。赤松というおっさんも会話に参加しています。

「早いなもう!」

ジョーがそう言うと、忠信はきみちゃんも早いと突っ込みます。

「早ないわ。男と女はちゃうねんてもう!」

信作に弟がいたら、オゥちゃんのところからもらうと言い出す。そんなジョー。

「喜美子の婿に来てくれる男……」

そう飲んだくれるジョーカス。
あかん予感しかない。今週もジョーが暴れる。

そんな父の思いを知る由もなく、喜美子は絵付けをしております。

何がVやねん! 弟子入りがジョーによって粉砕されそうです。

何がVやねん! 家父長制? そんなん笑うわ

はい、今週も月曜日からやりおった。

フカ先生は変人です。
てっきり
『頑固職人相手に苦労するのかな? それとも弟子の男尊女卑?』
と思っていたら、そうではありません。前任者はひっかけでした。

アットホームな絵付け工房に弟子入りです。よかったね。

面白い趣向です。
最近の朝ドラは、その世界への一歩踏み出すことが課題でしたし、盛り上げるところではある。第7週はそこがポイントでしょう。

これも最近の朝ドラによくあるパターンですが、主人公は正規ルート、専門教育を経ない特色もあります。

『半分、青い。』の鈴愛は、少女漫画をろくに読まないで育ったし、普通科卒業。

『なつぞら』のなつは、アニメを知って目指すまでの期間が短く、農業高校卒業。

『エール』も、史実通りであれば商業高校卒業で作曲家になります。

中卒の喜美子だって、子供のお絵描きだのなんだの、揉めそうなものですが、そうではなかった。

そう、前半楽しそうに弟子入りできそうで、喜美子の笑顔を見せておいて。

問題は後半です。

川原家パートになってから。

百合子はいいとして、既に不満がある直子。
マツには感動しかないとして、最大の壁になりそうなジョーカス。

思えばマツが貯める学費だって、ジョーの酒に消えた部分はあるわけですし。
自分の気持ちだけで暴走して、喜美子の進路をぶっ壊しかねないルートに突入しました。

夕見子の北大進学、なつのアニメーターを認めた柴田家は素晴らしかった。
ついでに言えば、あの家には長男・照男がいたことも重要です。

今週、何度そう思うのかな?

これが厄介なのは、根底に父としての愛があることなんですよ。
昨年のNHK大阪の放送事故では、さんざんこう突っ込んだ。

「三姉妹の家で、武士の家系だと言いながら、誰一人として婿取りを言い出さないのはどういうこと?(※モデル夫妻は婿入り)」

今年は『なつぞら』でも本作でも、そこは外しません。

ジョーにも考えはある。
父として、家長としての理屈はある。

・兄二人が戦死し、自分だけが川原家を継ぐ。川原の家を残さなあかん

・婿取って家にいてもらうのは、一番気に入っとる喜美子や! それで決まり!

・悪い男つく前に、婿を取る!

こういうことやろなぁ……。

しかし、そういう家の都合なんて、当人の気持ちを無視しているわけです。

「なんでや! なんで家の都合に進路妨害されなあかん!」

喜美子はそうなる。きっとそうなる。
ジョーはそういう家制度を擬人化した存在かもしれん。

朝ドラでも最大の敵【家父長制】やね。

‪◆Sexy Zoneマリウス葉が着た「家父長制とかウケる」Tシャツのメッセージ

本作は、モデルの一人とされる女性陶芸家と比較して、人種差別への取り組みが甘いという指摘もあります。

どうでしょうね。

この朝ドラは、メイン視聴者たる女性にとって最大の敵である【家父長制】との戦いをクローズアップしてきたのではありませんか。

だからこそ、ジョーはアカンカスでなければならない。

人種差別問題も重要ではあるけれども、他の差別に敏感な人でも、女性差別だけはザルという嫌な現状もある。
女性差別こそ、最後に残るという指摘もさんざんされてきた。

『なつぞら』のモデルのひとつとされるあの大手アニメスタジオすら、性差別への取り組みが鈍いと指摘されているところではある。

本作では、弱い立場の中卒女性が、身近すぎて目を背けたい父という敵と戦い、【家父長制】というあかんラスボスに挑む。そういう意図すら感じます。

ジョーはアカンだけなのか?
喜美子はどうするのか?

今週も目が離せません。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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