スカーレット43話あらすじ感想(11/18)誰もが買うてくれるデザイン

昭和34年(1959年)、喜美子21歳。

運命が大きく変わる夏がやってきました。

絵付け工房弟子入り三年目

フカ先生の弟子となって三年目。喜美子は目まぐるしい日々を過ごしています。

喜美子は朝一番で工房に入っていることがわかります。
赤い色で熱心に絵付け――頑張っております。

なんでも、よその火鉢や花瓶を集めてきているんだと。
焼き物の不用品を、絵つけの練習用に集めているわけです。

ここで、ウンウン言いながらリヤカーを引っ張る喜美子が映ります。
お父ちゃんそっくりやな〜。本作は喜美子とジョーがそっくりで、本当にすごいと思う。父娘にしか見えへん。すごい!

はい、その父の反応ですが。
喜美子がわざわざ拾ってきたものを家に運ぶと、これですからね。

「ゴミばっかり集めよって!」

しかも喜美子から「踏まんといてや」言われた直後、足で蹴ると。

今日もブレないカスっぷり。
紙芝居を腹の足しにもならんと切り捨てた喜美子の幼少期から、まるで芸術に理解がない。『なつぞら』の泰樹とまるで違う。

これでこそカス打線の四番!
今週も安定感のあるパフォーマンスに期待が高まります。月曜朝からジョーのこういうダメなところが見たいと思っとった。

ジョーの鬱陶しさは止まらず、家族の寝姿が見える場面ですら、寝相が悪いのでした。どうせこの晩も飲んだからしゃあない。

寝静まった家で、喜美子はランプの明かりのもと、絵付けの練習をしています。

今日、本作チームが映像美を作り上げると気合を入れた箇所は、まさにここだと思うのです。

ランプに入ったアルコールの透明感。
灯りに照らされる顔。
そして筆遣い。

『なつぞら』では熱心に絵を描き、アニメに向かう出演者の横顔が本当に美しかった。
主演の広瀬すずさん以下、皆さん素晴らしかった。

『半分、青い。』の秋風塾。
律の集中する顔もよかった。

ニッコリ笑うだけではなく、顔芸をするわけでもなく、集中して物を作る。
そういう真剣な美ってあると思うんですよ。

「NHK大阪も、集中とものづくりの美を見せな(アカン)」

『カーネーション』でミシンを踏む糸子――あの美まで戻った。
原点回帰を見た!
そんな気がします。

 

金を稼げるようになるまでの道

ちょっと時を遡りまして。

昭和32年(1957年)の夏。
本作は時系列をシャッフルするので、難易度は高くなっております。ええチャレンジ精神やで。

秀男社長は、注文が増えているとフカ先生に言います。

これで間に合うのか。悩ましいところ。絵付け火鉢は絶好調でした。
とはいえ、ハンドメイドとなればいつ手元に届くのやら……そういう悩みがそこにはあるのです。

量産しない丸熊陶業、人手を気遣うその姿勢、ええよぉ!

「手が足りんのですか?」

「うーん……」

「誰かできる人いいひんやろか」

そんな会話を聞き、喜美子はアピールしています。

フカ先生を見て、頭を下げるのです。社長さんと一番、二番も見つめる。

本作の特徴として、この無言の動き、パントマイム的な場面があると思います。

戸田恵梨香さんのセンス、身体能力、現場の闊達さ、関西のユーモア。
自信を持ってこれならいける、見てもらいたいという自信が伝わってきて、毎回見逃せないと思うわけです。

しかし、劇中では通じないんだよなぁ。

「いてへんなあ……」

「そうでっか……」

「なんとかがんばりますわ」

喜美子は、もうここは口で言わないと通じないと悟ります。

「あの、うちにもできるんじゃないでしょうか、できる! いやできるか、やらせてください! お願いします!」

しかし、フカ先生はつれなかった。

「……いてへんやろな」

「ああそうでっか」

「なんとかがんばりますわ」

売り上げが上がっているのに悩ましい。そう話がまとまります。

残念、キュウちゃん。
四番から八番は、こういう流れについていけなかったんやろなぁ。

そして昭和33年(1958年)冬――。
川原家に戻ってきた喜美子は、フカ先生から「ようできるようになった」と言われるようになった!と母・マツに報告します。

父・ジョーは酔態を晒しつつ、寝ていた模様。なんやこの酔っぱらい安定感は。
休肝日はないのでしょう。あかん。

喜美子は喜び、そんなお父ちゃんをゆすって起こします。
背後ではマツが、素早くちゃぶ台からお調子とお猪口を片付けると。

この、流れ次第ではちゃぶ台返しに行くと想定した素早い動き。
マツさん、皆さん、ご苦労なさって……。ちょっとした言動から、ジョーがあかんことがわかってすごいと思う。

喜美子も、お父ちゃん対策はバッチリやで。

「褒められたちゅうことはどういうこというと、絵付けでお金がもらえるっちゅうことや!」

お金がもらえる……そう聞いた瞬間、ジョーは酔いもふっとんだ顔になる。

お金大好きや!
そんなん当たり前やん!

「ほんまか!」

「ほんまや!」

大声でエキサイトする父娘を、マツが「しーっ、しーっ!」と嗜めます。
ジョーは娘を外まで引っ張ってって、父娘でこうだ。

「あははははっ! ばんざーい! でかしたーでかしたー!」

年代が出ておりますね。ジョーは兵士でしたから、戦前は何かちゅうと万歳三唱でして。それが抜けません。

金儲けで万歳三唱。
なんかこう、関西らしさが凝縮されとってええと思う。

喜美子はこうして、ようやく絵付け師としてのスタート地点に立てました。

 

デザインとは何か?

そして時間はさらに1年経って昭和34年になります。
今年の夏、この時期になると新しいデザインを考案するようになります。

毎年デザインが変わる。
そうなりますと、コレクター魂も刺激され、当たり外れが出てくると。

今年こそ買おうとか。
あのブランドでもあの年のものは人気があるとか。そういう付加価値をつけてくる。

なかなか面白いことでもあり、日用品にプレミアがつく過程を見せられるようでもある。
こういう流れは『なつぞら』でも多数登場した、ボタニカルデザインの電気釜や電気ポットにも引き継がれるわけです。

喜美子はお茶をおきながら、今年のデザインを気にしております。

「どんなんやろ? 楽しみです!」

「見る? 新しいデザイン?」

「ええんですか、見ます見ます! 見させていただきます。失礼します!」

四季の景色を描いた山水画風で、ぐるりと一年が巡るような。
そんな素敵なものです。

何がすごいって、本作を見ていると絵付け火鉢という、そんなもんうちに絶対あわんものすら欲しくなるところですね。おそろしい!

「キュウちゃんもひとつやってみるか? 一番二番の背中に追いついきたようやし。残りはデザインや。二人は今年はやらんいうから」

ここでフカ先生はそう提案します。

一番と二番は、デザインはもういいと苦い顔をしております。
その理由は回想シーンでどうぞ。

番頭の加山がここで出てくる。

「お弟子さんのデザイン渡されても困るでよ! 社長の代わりにハッキリ言っておきますが、丸熊陶業は深野心仙先生以外のデザインを採用する気はありません!」

きついダメ出し。

でも、ここで注目したい伏線は、ここだと思うのです。

【弟子のデザインはダメ】

【丸熊陶業は深野心仙先生以外のデザインを採用する気はありません】

どういうこっちゃ?
弟子のデザインが劣っているとか。技術的に再現できないとか。他のものと酷似しているとか。

そういう具体的なダメ出しではない。
ここが重要ですよ。

喜美子はその現場を見ていましたから、懐疑的ではあります。

「採用していただけますかね……」

「打たぬ鐘は鳴らぬいうてな。やってみんとわからん」

そうフカ先生は言い、こう続けます。

「キュウちゃんはこれからどうするつもりか? 絵付けを一生の仕事としてやっていくつもりか? ほなやってみたらええ。ものづくりは一生修行や。デザイン採用されるまで何回でも取り組んでみたらええやないか」

「わかります、やってみます、挑戦してみます! ありがとうございます!」

喜美子はそう前向きに言い切ります。
そしてこうだ。

「今年はうちがお二人の敵をとります!」

「敵とってくれるん?」

兄弟子二人もビックリ。
おもろい。なんかこういう発言、中国武術もののフィクションで見た気がする。

妹弟子が仇討ちだ!
喜美子はちょっと得意げになります。

「中学の時、県の絵画大会で金賞を取りました。子どもの頃から、絵ェ描くんはうまいんです!」

これを聞き、兄弟子たちは苦笑してしまう。

一番さんは、二番が全国芸術大会で大臣賞を取ったと言います。

二番さんは、一番さんが美術学校主席卒業だと言う。

喜美子は恥ずかしくてたまらん。

やめてぇ!!!
【共感性羞恥】(※人やフィクションで恥ずかしい場面を見ると、自分まで心苦しくなる心理)を刺激するのやめーや!!

でも、これも今後何かにつながってきそうではあるんですよね。

フカ先生はこうです。

「絵がうまいから言うてできるとは限らん。何も一点ものの芸術品作るんちゃうで」

デザインのコツとは何か?
嫌な予感が積み上がってきました。

専門性のある賞歴がある。教育がある。いわば肩書きがある才能の持ち主。
それに対して、いきなりそのセンスだけで突破してきた才能が来たら、どうなるのか?

これはNHK東京がここ数年取り組んできているテーマとも言えます。

『半分、青い。』では、岐阜の山猿こと鈴愛が、漫画や発明に才知を発揮する過程が描かれました。
ボクテやユーコの見せる戸惑いがそこにはあった。

『なつぞら』のなつもそう。
酪農高校卒で技術はさほどではないものの、美大卒のマコたちを驚かせる才能があった。

『エール』の主人公も、商業高校卒業でありながら、風景を見るとメロディが頭の中に湧いてくる。そういうタイプ。

フィクションですと抜群にカッコいい。
定番の設定かもしれない。

けれども、現実にいたら?
わけがわからなくてムカつくかもしれませんよね。

エリートVS野生児。
そういう展開に、NHK大阪も数年ぶりに挑むのでしょう。

斬新なことではある。
ここ数年のNHK大阪朝ドラ主人公は、知的や文化エリート階級が多かったものですので。

そして、本作はそこをひねってきそうではある。
今週も楽しみで、ちょっと怖い。覚悟しとこ。
※続きは次ページへ

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