喜美子は言葉を選びます。
「洗練されてない、素朴な感じ」
「素朴! それや!」
盛り上がる二人に、信作も好きだとは言う。
ただ理論武装できないタイプなのか、地元だから好きだ、特別な思いがあると言うだけなのです。
そういうものかも。
地元の特産品って、むしろ由来を調べないかもしれない。生まれた時からそこにあるからさ。
ここで八郎は、川原さんはここ出身じゃないのか?と気にしています。
喜美子は明るく、9歳の時に父が借金取りに追われて逃げて来たと紹介します。悲壮感がなくてええね。
そして喜美子は、気になっていると言うシャツの雑な繕いを直すと買ってでます。
信作もこいつは手先が器用だと太鼓判を押す。
八郎はそれならばお願いしたいと同意し、喜美子は絵付け工房にいると立ち去ります。
このあと、信作と八郎は見つめ合うばかりなのでした。
おっ?
喜美子21歳、心ゆれる夏って。
これは八郎が将来の夫ちゃうか?
シャツの繕い?
いやいやいや……。
八郎は感極まってしまうと、喋れなくなってしまうタイプのようです。
言いたいことは胸に溢れているのに、言語化できずに苦労する。全国的に多くはないものの、大阪だともっと浮くタイプやろなぁ。
一方の喜美子は言語化スキルが高い。
幼い頃から、言いたいことをスッキリと喋ることができます。
初対面で、信楽焼を「素朴」とズバリと言い切った喜美子に、八郎は驚いた顔をしている。
女のくせに生意気とも思わず、むしろ自分の思いを言語化できる喜美子に感謝すらあるように思えました。
八郎が考えたことを、喜美子が口に出す。
戦国武将だと、上杉景勝と直江兼続系のコンビですね。
そういうエエ相性があると見た!
ちなみにこういう傾向は『なつぞら』のイッキュウさんと泰樹もありました。
イッキュウさんは、スイッチが入ると相手が理解しているかどうか放置して、思いをそのままスピーチする。
泰樹は「抹殺!」とだけ言い、パンチで相手を葬る。
イッキュウさんとなつもおもしろかった。
八郎と喜美子にも期待しとるで!
丸熊陶業でお家騒動が?
さて、社長室では。
和歌子が世代交代だと宣言しております。
夫・秀男は譲らんとは言っていないと苦い顔。
ここでキッパリと、船頭が二人いたら船は山に登ると和歌子は言い切り、加山に意見を求めます。
あのキッパリとした加山は、言葉を濁す……。
和歌子はむしろ跡目を譲りたい。
それで悠々自適、楽隠居になりたいわけです。
秀男は腹が立つと不満そうだ。どうやら改革路線がおもしろくないらしい。
ここで照子はお盆を持ってハラハラしているだけ。
和歌子が晩ご飯の支度に立ってようやく、父にこう切り出します。
敏春さんはお兄ちゃんじゃない。
敏春さんは敏春さん。
お兄ちゃんの代わりはもうやめましょう。
「やめよな?」
娘思いの父に、そう迫るのです。
どや。
これが昭和の【内助の功】やで。
寝室でゴロゴロベタベタして、よくわからんアイデアを叫びながら、神憑りじみたダンスをするのではありません。
こうやって、夫なり父なり、親族に見直しを求める。
助言をする。
和歌子も照子も、その役割を担っているのです。
照子は絵付け火鉢のデザインを父に勧めます。
敏春さんが採用したがっていると前置きして。
ただし、照子の限界でもあって、このデザインのどこがよいのか指摘しない。
敏春さんがええというからうちにとってもええ。そういうことです。
秀男はさらに苦々しい顔になって、こう吐き捨てます。
「誰が描いたか知ってて言うてんのか?」
どうしてそうなのか。
小娘のものだと注目すらしなかった、そんな目利きのにぶさを突きつけられたようで腹が立つのか?
照子の嫉妬を懸念しているのか?
本人すら意識していない、もやあ〜っとした何かがありそうではある。
照子は絵付け工房まで、デザイン画を背中に隠して持ってきます。
そこで喜美子にこう見せてこう言います。
「誰のデザイン?」
「うち。うちの考えたデザイン……」
「採用されたで! 新しい火鉢のデザインや!」
「えっ……」
驚くばかりの喜美子。
採用はええにせよ、その背後にある政治が問題やな。
お家騒動ゆえの採用だと判明すれば、大惨劇になりかねん。今朝も怖いわ……。
王道の先を目指してこそ
今日は、昭和の【内助の功】が出てきました。
大河ドラマでも、朝ドラでも、視聴者層の見直しが言われるところではある。
女性主人公だから【内助の功】路線にしよう――その代表作が、2002年『利家とまつ』であり2006年『功名が辻』であったと回顧されます。
戦国時代ではなく、当時の世相や価値観の反映でもあった。
女性に気配りしようといっても、夫を支える路線どまりだったのです。
その後、少女漫画路線のようなよくわからん迷走をする。
2008年『篤姫』はええとして、戦国焼き直し2011年『江』、2015年のアレで底に到達しました。
そして、2013年『八重の桜』、2017年『おんな城主 直虎』で【女自身が戦い指揮をとる路線】まで変化していったのではないかと思うわけです。
朝ドラは大河を遅れて追随する傾向がある。
2010年『ゲゲゲの女房』を成功例として、2018年の放送事故でこれも底に到達したと思うわけです。
じゃあどうするのか?
八重や直虎のような、自ら立つヒロインが朝ドラにも来るのか?
NHK東京が先行か?
ここもNHK大阪は辛かったしいろいろ考えたんやろなぁ。
本作からは人物造形や路線に、NHK東京先行気味だったいろいろな要素を、NHK大阪なりのやり方を考えつつ取り入れている気配があります。
王道回帰だなんて言いますが、かつてのやり方に戻るのであれば意味がない。
王道回帰って、そんなん所詮は同じことの繰り返しよ。
そうではない改革に挑んでいる。そういう気合いを今日も感じた!
具体的に言いますと。
王道【内助の功】の功罪を批判しつつ、新機軸を目指すあたりや。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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