年号も時代も、大正から昭和へと変わった頃。
市井の技術革新もめざましく、巷では活動写真やラジオが人気を博しております。
商業都市・大阪では、お笑い興行元「北村笑店」が順調に営業を続けておりまして。
さぁこれから東京へ本格進出!
というところで、経営者の北村藤吉が中風で倒れてしまいます。
「てんてんてんごのおてんちゃんですよ〜」
藤吉の病室に、隼也が駆けつけました。
「早う、起きい!」
おーい、倒れたお父上に言う言葉じゃないんでは……。
てんは、
「てんてんてんごのおてんちゃんですよ〜」
と呼びかけ、能面のような笑顔を顔に貼り付けています。見ているこちらがいたたまれなくなるからやめてくれ……orz
「なぁ、わろてんか?」
意識のない人間に、さすがにその言葉は……。
風太とトキも見舞いに駆けつけるのですが、着いた途端に病室で怒鳴り散らします。
「おい、一生笑わせたる言うたあの約束忘れてへんやろな!? 約束違えることがあったらただですませんで!」
まぁ、彼なりに元気づけるというか、思いを伝えているのでしょう。
そう風太が叫ぶと、藤吉の回想シーンが流れます(わろてんか22話あらすじ感想(10/26))。
こんな非常識男、つまみ出されてしまいますよ。
しかし、てんは笑顔でニコニコと「心が軽くなったわ。おおきに」と来たもんだ。
トキもたしなめずに「アホ」。
誰か風太の尻に、ぶっとい麻酔注射を一本お願いしま~す。
狂ってる。何もかもが狂ってる……。
しかし、この狂乱の見舞客パレードは回り続けるのです(´・ω・`)
誰も彼もみな病室で妙なことばかり口走りよる
東京にいる万丈目以外の芸人たちと亀井が駆けつけます。
最近空気のようだった岩さんもいます。
看護婦が嫌そうに、家族以外は困ると言い出します。
まあ、病室で絶叫する風太を見たら、北村家関係者は出入り禁止にもしたくなるでしょうね。
「わてら家族です」
「5分だけやから!」
そう粘る見舞客。
亀井はまだまともなことを言うのですが、問題はキースです。アサリを指してこう言います。
「病気やったら、かわりにコイツが引き受けてやるさかい!」
まただ……。この手の冗談は、本当に気が重くなります。
病人本人がボケるならまだしも、見舞いに来た人が言って、周囲が気持ちよくなるセリフではない。
イジリとイジメは常に紙一重かと思うのですが、やっぱり笑いに変えるのって相当な技術だと思うんですよね。
テレビ画面の向こう側にある茶の間の雰囲気を読んで喋らなければならない。
その点、やっぱり本物のお笑い芸人さんは凄いワケで。それは、いざ藤井隆さんや内場さんにちょっとした笑いをやらせたところでもにじみ出ていますよね。
申し訳ないですが、キースとアサリのコンビでは何をやってもしっくりこない(アサリが別の誰かと組めば、もしかしたら上手くいくかもしれませんが……)。
リリコはドラクエの竜王かっ!
風鳥亭では、大番頭の風太と経理のトキが、従業員に気合いを入れ直しています。
風太までボソボソ口調になりました。
これはキースもそう。
藤吉のボソボソ口調もさんざん批判されてきましたが、どうも本作は「シリアスな口調=もごもご、ボソボソと喋らせる」だと思っているようです。ちゃうやろ。
風太はわざとらしく藤吉がいないとどうにもならないと言い出しますが、藤吉が有能に見えたシーンがこれまで一秒たりともないため、「いやいや、それはないwww」と力なく笑ってしまいました。
ここが今日の笑いのツボですかね?
病室にはリリコも乱入します。
紫色のケバケバしい服で、髪をアップスタイルにまとめています。
かつてはリリコファンだった本サイトの編集長氏も、さすがにこの格好を見て
「ドラクエの竜王が来た(´・ω・`)」と嘆いたそうで。
メイクは時代が変わってもずっと現代風、ファッションは謎。ともかく1920年代ではありません。
それを言うなら栞や風太の紳士服も1920年代らしくないし、てんの着物も……突っ込むのも徒労感半端ないのですが、どうしても珍妙すぎて注目してしまうのです。
演者に似合うようにアレンジするならともかく、それもフィットしていません。
リリコは頻繁に衣装が替わるのに、どれひとつ似合っていないのがある意味スゴイですよね。
リリコは、医者に絶対治せと掛け合ってくると言い出します。
いやいや、それはモンスター見舞客だっせ。
そして結局、
「あかんかったわ、金なんぼでも出す言うたけど」
と失礼にもほどがある交渉をしたようなコトを話し出します。
どいつもこいつも何やってるんでしょうか。
藤吉がいなくなって困る。
彼が必要なんだ。
と、藤吉への思いを強く表現したいのかもしれませんが、さすがに迷惑行為のオンパレードでは、当人たちの行動様式に疑問符ばかりが浮かんで来てしまいます。
リリコは「こんな時でも笑うてんはえらいわ」と言います。
えーと、これは、い、い、嫌味かな?
なぜ家に行く必要があるのか全然わからん
てんが家に戻って一息ついて、祝言の写真を見返していると、栞がやって来ました。
病院で「てんが家に戻った」と隼也に聞いて来たらしいのです。
いやいや、そりゃあ、どうなのよ。
家族が入院中となれば、付き添いの心身の疲労は極限にまで達するもの。
家に戻ったなら、病室に見舞いの品を置いて帰ればそれで事足りるはずです。なぜに家にまで行くのでしょう?
仮に押しかけるにせよ、玄関先に見舞いでも置いて帰ればいいじゃないですか。
それを家の中にあがって、なんだかんだ言いながらお茶を淹れさせてしまうのですから、高橋一生さんでもそうじゃなくても最低の男です。
あと毎回言っていますが、今日も言わせて貰います。
「栞はん、仕事しなはれ!!!」
先日放映の『ブラタモリ~宝塚編』では、栞のモデル・小林一三も紹介されたようですが、本作を見ていると「高等遊民」にしか見えないのでよいフォローだったと思います。
てんは過労のためか、台所でよろめいて座り込んでしまいます。
と、栞は後ろからそっと肩を抱きます。
こういうのを火事場泥棒と言うんでは?
夫が病気で入院中に、
女房一人の家にあがりこんで、
肩に手をノセるその所業、
ゲスの極み!!
と、ハマカーンにつっこみさせたいです。
「きっと疲れているんや。一生笑わせたると言われたのに、泣いたらあかん」
白々しい笑顔でノルマ的に笑うてんちゃん。
そこで栞は
「たまには泣いてもいいんじゃないかな」
とかなんとかキザったらしいことを言います。
なんでしょう、この陳腐すぎるセリフ。
いまどき、中二病の小説にも出てこないのではないでしょうか。
藤吉があんな状態なのに、この方たちは一体何を考えているのでしょう。
どう贔屓目に見ても栞が弱みにつけ込むゲスの極み野郎にしか思えなくなってしまいました。
これって綺麗な、美しい、シーンなの???
マジョリティ視聴者さんには、喜ばれているんすかね……。
今日のマトメ「見舞いしたことないんかな?」
今が旬の高橋一生さんにドキドキシチュエーションをさせようとするあまり、てん、リリコ、実母の志乃相手にまで、顔と顔を寄せ合ったりボディタッチさせる本作。
しかも、隼也失踪中にハグさせたり、藤吉意識不明中にこんなことをさせたり、タイミング選びが無茶苦茶です。
もう、ほんとうに。高橋一生さんの無駄使いが半端ない。
「恵まれた大河(『おんな城主直虎』)から、地獄のような朝ドラ(本作)への出演」
そんな言葉を思いつきました。
これもう、高橋さんへのお詫びのためにも、彼主演の大河を『直虎』スタッフで作るしかないのでは?
政次新録シーン満載のスピンオフでもいいんですけどね。
と、栞がダントツでカスだったのでここからスタートしましたが、よく考えてみれば
「見舞客、全員悪人」
の『わろてレイジ』になっちゃってるんすよね。
見舞いに行ったほぼ全員が、ヘタすりゃ出禁レベルの非常識行為をしちゃってる。
見舞いというのは、一に病人、二に付き添い、三に医療機関の皆さんへの気配りをするものでしょうが。
それを皆、自分のキャラアピールの場面と勘違いしているような身勝手な言動ばかり。
結局、震災が起ころうと、どんな状況だろうと、自分のことを構ってアピールする人にしか描けないため、ある意味、本作では自然な流れなんですけどね。
もう生死に関わる場面は入れない方がよいと思います。
先週は、作り手が震災をどう思っているのか不安になりましたが、今週は脚本家さんはじめ、誰もお見舞いや付き添いをしたことがないのかと思えてきました。
今にして思えば、儀兵衛の首吊り未遂誤認、新一の死の前後からそういう気配はありましたもんね。
30分でも、一時間でも。
病院の家族控え室でも潜入して観察してこい、とすら思ってしまいました。
とにかく見ていて辛いです。
楽しめる人が羨ましい。
私も十歩引いて見ようとしているのですが、「笑いは人を癒す薬」だなんて言われると、やっぱり毎朝怒りが湧いてきてしまう。もう堪忍><;
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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