スカーレット61話あらすじ感想(12/9)三振なのに打席にしがみつくカス親父

帰してええんか? いかんでしょ

さて、二人きりになった二人。そう、二人きりや。
痛がる八郎を心配しつつ、喜美子は謝ります。

「うちの父がいきなり失礼なこと、すみませんでした!」

やっぱり痛そうな八郎に、見せてみいと迫る喜美子。八郎は恥ずかしくて拒む。

とことんお姫様やん……。

足を捻ったどころか、挫いたそうです。
お父さんにやっつけられたのではなく、そのあと起き上がって挫いたってよ。

川原さんのあと。追いかけて行って、頭下げようとしての負傷だって。そのことにジーンとしている喜美子です。

追いすがろうとして、信作が止めたんだそうです。
おぅ、信作ええよぉ! とても冷静ではいられないジョーのパンチがもう一発ありうるしな。

八郎はこう言います。

改めて頭下げにいく。お父さんにきちんと言う。
真面目な気持ちで川原さんのことを……そう言う八郎を、喜美子は止めます。

「結婚のことはええから。今はその……足を冷やしたほうがええんちゃう? 冷やすもん……」

ここで喜美子は気づくのです。
自分があげた絵が、飾ってあることに。

「うちの絵ぇやん! こんなん恥ずかしい! 知らんかった!」

「恥ずかしいことないよ、いい絵ぇやん!」

しかも、フカ先生の絵と並んでいる。初耳やん! めっちゃ動揺してる。

うーん、八郎よぉ。なんで初耳なん?
これが器用な奴なら、飾っていると言ってアプローチできそうなもんですが。

絵付け工房の一号さんと二号さんは、喜美子の絵がうまいということに苦笑していた。自分たちのように、受賞歴や学歴があるわけでもないわけでして。
それを、八郎は評価する。そんな八郎は、自分の気持ちは素直にぶつけてきます。

信作は、これで二人が結婚いうことになったらお父さんは大喜びだという。川原さんはせやないの?

そう切々と迫ります。

もうええやん結婚は……喜美子は逸らす。

八郎はずれたことを言い出す。
運動苦手やから?
鈍臭いのわかったからですか?
なんで結婚はええなんて言うんです?

そう子どものように無邪気に言う。とはいえ、作劇上ポイントではあると思うのです。

アスリートや武芸の達人役ならば、むしろプラス面として運動能力の高さをアピールします。
荒木荘のエロエロ医大生・圭介の場合、柳生一族エースになれるので、その点プラスでしょう。役者としてもアピールできるのです。

じゃあ、そこを鈍いとわざわざ強調するのはなぜでしょうか?
鈍臭いって、モテアピールではありません。

これは『なつぞら』のイッキュウさんもそうです。
中川大志さんは運動能力は高い。むしろイケメンがスポーツが上手ならばプラスになるでしょう。

それなのに、彼もバレーボールを頭にぶつけたり、牛糞でコケたり、食べ物をこぼしたり。危険だから搾乳しないよう、なつに止められるほどでした。
不器用で鈍臭く、運動が苦手なのです。

どうして二作連続、こういうイケてない要素ありの人物が、ヒロイン相手役なのかな? そこは考えていかな(アカン)。

喜美子は話を逸らすのです。

「脚冷やそ? なんか手拭いかなんか、濡らすもん」

「自分でやります。あの帰ってください。ここは丸熊陶業が借りてくれてる部屋です。嫁入り前の娘さんが……」

八郎は、どんくさいのでこれやで。止めない。引き止めてハグもできない。
うーん、この真面目さ。じれったいほどです。

「ほんまに帰ってええのん? もう会えんかもしれへんで」

ここで喜美子が、切なそうにそう言うのです。
今週もイケメン王子様や!

八郎は動揺します。

「なんで会えん! ひょっとしてお父さん? お父さんか? ほんまは何て言われたん?」

「帰りたくない……帰さんといて……」

喜美子が訴える。こんなん帰すわけにいかんやろ!

八郎と恋に落ちたろ

大激動の予感がすごい――。
そんな第11週。渾身の展開ですわ。

本作はキャスティングが見事なんですよね。

松下洸平さんの魅力がテレビではまだ未知数だから、視聴者も彼のことを知りたくてたまらなくなってしまう。そういう構図があるわけです。きみちゃんと気持ちがシンクロしてしまうんですね。

そしてこれこそ朝ドラを本当に女性のものに取り戻した流れのように思えてきた。

朝ドラといえば、主演女優が「理想のお嫁さん・彼女像」であるとは指摘されてきたことです。

でもそれって、男性目線ではありませんか?

本作のチームは、上層部に女性が多い。
女性が選び、女性視聴者が恋をするような目線で物語を作る。

これぞまさに朝ドラの改革であり、到達点ではありませんか?
女性の、女性による、女性のための朝ドラです。

役作りがともかく素晴らしい。
そんな戸田恵梨香さんの没入感と、視聴者の心がシンクロして、八郎へ向かっていく。そう言う一週間になりそうですが……。

そううまく行くかな?

助っ人・信作!

そんな二人の助っ人は信作です。

・幼なじみ

・実家は、雑貨店から喫茶店へ

→陽子はご近所へのインフルエンサー。陽子が二人の仲を知ったら……わかるやろ?

・忠信は「あかまつ」常連

→で、忠信は地域の集合場所「あかまつ」常連さん……わかるやろ?

流言飛語コマンドを使わせたら、ハイスペックですわ。いつのまにか外堀を埋めるのよ。

マツは頼りない、情緒ケアしか期待できない。
百合子は賢いけれども、まだ若い。

やっぱりここは信作の活躍に期待やで!!

ただ、八郎はそう言う噂が広まることを警戒していますので、そこが不安ではある。

壁はジョーカス!

そして壁や。ジョーやで。

本作は、主人公の能力値は高いのに、周囲に恵まれなくて辛い。
そういう難易度がある。

信楽のほのぼのカップル結婚でも、こうも盛り上がるのは?
壁が手強いからでもある。そういう意味ではジョー、ありがとうな。嫌味でなく。

ジョーのすごいところは、朝ドラ内部構造まで切り込むところ。『なつぞら』の柴田家と比べると残念さが際立つのもあるんですけどね。

昨年の放送事故、武士の娘と比較してもそうなんですわ。

・愚かで

・迷惑で

・感情的で

・理屈が通じなくて

・構って欲しさ全開で

・モデルよりも下方修正されていて

・コメディタッチで描写されていて

・クリエイターの道への理解がまるでなくて

・しっかりした勤め人との結婚をゴリ押しして

・異性の子(義理の子も含む)への執着心を持つ

これ、性別を入れ替えるとそっくりなんですよね。
昭和のダメな父親像としてカリカチュアライズされてはいるのです。

その受け止め方や!

報道を見ていると、武士の娘の方は深刻に受け止められなかった。
お笑い枠としてほのぼのとされている。それに、彼女自身を小馬鹿にするような扱いも目立ちました。生前葬がその極みでしょう。

一方、ジョーは毒親とも呼ばれて、洒落になっていないという受け止め方もある。
報道では、ちょっと遠慮があるというか、ジョーを批判しつつも「人情味」といった表現を使って、武士の娘と比べて配慮を感じるんですね。

同じことをしても、男女では周囲の受け止め方が違うのでは?

『なつぞら』でも感じたのですが、本作のスタッフも反応まで踏まえてドラマにしていると感じる。

視聴者の反応を反射板にして、作品を完結させる。
陶器を焼いて、届けて。その陶器に何を盛り付けて、どう味わうのか?

視聴者は、いわば本作が作り上げた湯呑みに、お茶をいれて飲む側。
そのお茶を飲む顔まで見届けてこそ、完成するんやろなぁ。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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