これはええ、期待の新人や!
このあと、八郎は作品案を描きつつ、試行錯誤してクシャクシャクシャ……。
喜美子は『まるまる太郎』の絵本を読んでいます。
雪女という敵を、団結して倒す流れですが。団結して倒す、ね。覚えとこ。
そこへ直姉ちゃんが帰ってきたと、百合子が飛び込んで来ます。
父の位牌の前で合掌するのに、スチャラカしたBGMが重なるのはなんだ?
直子は、なんか鮫島いう男を職場の熨斗谷から連れてきておりまして。
「兄貴ですか! 陶芸家の先生の兄貴ィ!」
挨拶する武志も、
「上手にご挨拶さすがですぅ! 先生も流石ですね、先生の作った茶碗の数々ほんまに素晴らしい作品や!」
「それ、瀬戸物や……」
おっ? カス打線期待の新人加入か? これはええカスの気配を感じます。
永久欠番ジョーが不在となると、ここは新人で補わんとあかんわけです。鮫島くんにはそのカスっぷりにも期待がかかります。
これはジョーカスの再来あるで。カス連呼してえろうすんまへん。
けれども、ゴマスリ満々ぽいし、美術鑑賞眼はない。
直子はなんだかんだで父と似たスチャラカ軽薄男に惚れた感があってつらい。
こういうんは「幇間」だの「太鼓持ち」だの「男芸者」だの呼ばれるタイプで。
アメリカのスクールカーストだと「ワナビー」「プリーザー」「サイドキックス」あたりかな?
今なら「コバンザメ」という蔑称もありか。
寄らば大樹の陰。長い物には巻かれろ。そういう言い方でもよいか。
彼らが悪いわけじゃない。
強いものに巻き込まれて成功したい――そのことは悪くないんですよ。
ムードメーカー、盛り上げ役、飲み会で乾杯音頭を取る陽キャ。
そう言い換えればすごくええ奴に思えるでしょう。
その、悪しきところをどう出すか。気になる。
でも、正門良規さんには決して悪いことにはならないはず。
おちゃらけてイライラするけど、どうにも憎めない。そういう難しい役を演じられると信じられていて、選ばれていて、支えられていて、力を発揮するのだから、キャリアに絶対プラスになると思うのです。
がんばってぇな!
おう、暑苦しかったな……
さて、その直子ですが。
ヘラーっとこうきました。
「大阪いくさけ、ちょっと寄ることにした」
こう聞かされた喜美子は顔にちょっと苛立ちを見せて、鮫島を外で待たせて内々で話すと直子を中に入れます。
直子は語ります。
電話は二回あった。一回目はいつもは同じ声。喜美子が帰ってこいいうかもしれんけどかえってこんでえええ。東京で働いとけ。
それは加賀温泉でかけたと、マツが言います。
二回目は秋口。
今度はちょっと弱っていたけれど、わざわざ帰ってこんでええ、お父ちゃんは大丈夫やからと言っていた。
強いお父ちゃんの姿だけをうちの心に残しかったんよ。
それぞ意地と誇りだとなんか言う直子ですが。
ええんか、それで?
いかんでしょ。
喜美子が突っ込む。
「何を悟ったこと言うとんの? 帰ってくるんのが子どもちゃうの?」
帰りたかったと直子は言う。
「会いたい思たに決まってるやん! 会いたかった 会いたかったで! ほやけど、お父ちゃんの言うことにさからって、いっつもいうこと聞かんかった。最後くらい、言うこと聞こう思たんや……最後はわざわざ電話したお父ちゃんの言うこと聞いてやろ思ったんや!」
ここで、走ってきた武志を八郎が抱いています。
こういうところがリアルでええのよ。
「堪忍や。ほなおかげで、心の中には元気なお父ちゃんしかおらん!」
おう、元気なジョーか。
ちゃぶ台ひっくり返したり、ふざけたことばかり言う。
「うっとうしい、暑苦しいお父ちゃんしか記憶にない!」
「ええなあ、元気なお父ちゃん」
喜美子はしみじみと妹にそう返します。
葬儀の後、および死亡の手続き最中に、直子不在がじわじわとムカついてくる可能性はありますが。まぁ、それはさておきまして。
なあ、直子よ。今日はありがとうな、こんな展開にしてくれて。
嫌味やなく。お父ちゃん不在の寂しさを上書きして、カスやったと再評価ができるわ。これでええんやで。
せやろか?
感動的ですが、鮫島は?
外でくしゃみしとるわ。
せめて「カフェサニー」でコーヒーあげたって!
「\アリだー!/」「穴を塞ぐ」「ええんか?」
「ええ加減にせえよ、クソビュアー。今朝も萌えたわ!」
そうなる展開やけども。
これ、結局こう言うことやとわかってます?
昔、『ロマンシング・サガ2』というRPGがありまして。そこで、サバンナの村に泊まると巨大なアリ襲来事件に遭遇します。
アリの巣穴に降りて行って、女王アリを倒すと一応はクリアになるんですが。
※\アリだー!/
最終盤、そのアリの卵がくっついていて、忘れたころに蘇ってまたなかなか大変なことになる。
なんでそんなレトロゲーの話を?
そんなんお前……解決してないからよ。八郎の提案は、問題の根本に全然迫ってない。
アリの巣穴を塞ぐように、喜美子の唇を塞ごうとしただけや。
なつとイッキュウさんみたいに、家事手伝いに茜を雇うとか、咲太郎オフィスに子どもを預けるとか。
負担軽減策を一つも出していない。
※不満の卵はいつか孵化する……
そういうことは昨年の放送事故でもやってましたね。
主演のセクシー拷問さんを、脱がせて風呂に入れて寝室で「さすがだ! ヒロイン!」と言わせるやつ。
そうすれば、プロットホールが見逃されて、ネットでは盛り上がって、昼頃には提灯記事が輝くシステムや。
そんなん、くノ一の入浴にホイホイつられるおっさんレベルの浅はかさやろ。
そういうエロで釣られて一人前だと喜ぶって、どういうことかな?
そう思っていたら、今年のスタッフ内にも、セクシーと萌えで釣って、火炎放射器ぶっ放す系の戦士がいるらしい。
何セクシーで許されると思っとんねん!
やったれぃ!
※緋色のドラカーリス!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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