ついに「しゃべくり漫才」を生み出した北村笑店。
経営者・藤吉は、最期の時を迎えようとしています。
愛する妻・てんと永遠の別離……そのとき、てんはどうするのでしょうか。
ちょっと何言ってんだか、本当に聞き取れない
藤吉は新たな「しゃべくり漫才」お披露目の三日後に倒れて入院。ここから、北村夫妻涙と感動の別れが始まります。
・藤吉「ボソボソボソボソボソッ、ボソッ、ボソッ」
・能面被ったおてんちゃん
・回想シーン
そういえば、藤吉だけが子役はなく、いきなり松坂さんでした。
回想シーンが松坂さんでなければいけないとかそんな理由なんですかね?
しかし、今見ても回想シーンの中身の酷いことよ(´・ω・`)
チョコ衛門だの柿だの、そんなことを感動的に押し出されても、どういうリアクションをしたらよいのか。やっぱり、藤吉ってマトモなことは何一つせず、くだらない笑いで誤魔化していた奴だな、と思わされてしまいました。
4ヶ月も放送して、渾身の感動の場面がチョコ衛門かよ、っていう。
しかもこれを聞いている時のてんの顔が、無表情。何を考えているのかわからない。これはサスペンス向きの顔ですね。
無言で包丁を取り出し、腹にグサッと。そういう顔。
おてんちゃんは、八の字眉毛で困る貫地谷しほりさん系のヒロインになれないかな、と思ったんですけど……夫が死に瀕していても、血のように赤い着物でジャパニーズホラー。
本作のヒロイン笑顔の頂点は、子役時代の新井美羽さん時代でしたね。
NHKの衣装担当者にこんなことを言うのは釈迦に説法かもしれませんけど、赤ってお祝い色の色です。
瀕死の夫を看取る妻が着ているのって、異常事態ですからね。
それにしても、藤吉のボソボソがうっとうしいのと、やたらと長いため、飽きてきます。時間稼ぎ?
というか根本的な問題で、チョット何言ってんだかリアルに聞き取れない!
夫が死んでも名前の連呼だけでは……
ついに藤吉が永眠。
作品としてはこれ以上ない場面ですが……
「とーきちはん! とーきちはん! とーきちはん!」
肝心の主人公が、やっぱり連呼の呪い。
いくら何でも、夫婦の別れですからね。ヒロインが喋らないなんてありえへん。
そこで亡くなるまでの台詞を拾ってみましたところ……。
「へぇ」
「(笑いの色を藤吉から聞かれて)茶色どす」
「とーきちはん!」
長年連れ添った夫婦の会話として、これで良いのでしょうか。いや、もう時既に遅しなんですけどね。
無駄な病院の場面で時間が押していますが、いよいよ藤吉の葬儀です。
「こんなに早う喪服を着ることになるなんて……」
トキがそうつぶやきながら、てんに着付けをしております。
その姿、未亡人というより、おじいちゃんの葬式に出る孫っちゅうか。若い未亡人を超越したサムシングを感じますね。
なぜ藤吉の葬儀に芸人仲間の泣き顔を映さない???
ここで死に装束を持って嫁げ、というしずの教えが挟まれます。
栞は心配したのか、ひょっこりと顔を出します。
それにしても、この葬儀もなあ。
藤吉の姉も、家族のようだと語られてきたリリコも、芸人仲間も、どこにも見当たらない。
集まっているのは、栞とモブ(※モブ=頭数だけのどうでもいいキャラ)の席主ばかりです。
本当に本作って盛り上げ方がおかしいです。
つまらない病院の場面をダラダラ流すくらいなら、藤吉の死を嘆く周囲の人々を描けよと。
「ああ、藤吉って全然いいところなかったけど、こういう人にとってはかけがえのない存在だったんだな」
ってなるわけじゃないですか。
こんなんで感動も何もないわ。
盛大な葬儀というわりには、狭苦しいセットで撮影された、代わり映えしない狭い道に、なんだかよくわからんモブが溢れているだけという。
「ナレ死」という言葉が大河ドラマで有名になりましたが、「ナレ賑わい」という言葉がこの朝ドラにはお似合い。
ナレーションで「すごく賑わっています」「盛大です」「事業拡大しました」と語るんですが、その肝心の賑わいは画面に出てこない。脳内補完にしたって限界がありますよ。
ヒロイン周辺が老けないのも問題ですが、この「ナレにぎわい」も、時間が全く経過しないように思える一因だと思うんですよね。
寄席が一軒の頃から、ずーっと狭苦しいセットの中でこちゃこちゃやられても……。
えっ、セットのお金がない? お金の使い方を間違えた、ではなくて?
ヒロイン用に真っ赤な着物を新調し、序盤、子役時代の京都ロケをするぐらいなら、もっと使いようあったんじゃないですか?
今日のマトメ「白い喪服の覚悟は?」
本日最大のやらかしは、白い喪服です。
なんかしれっと肝心の台詞が消えていませんか。
「喪服を持って嫁ぐということは、夫の死まで見送ること」
という点だけ強調されていて、喪服初登場の回を思い出してみますと(わろてんか23話あらすじ感想(10/27))
しず「貞女は二夫に見えず、藤吉さんに一生添い遂げるつもりでいなさい」
こちらの意味がしれっと消えていたように思えるのですが……。
日本の喪服は、伝統的な「喪」の色である白でした。
それが明治維新以降、西洋の影響で黒が主流になっていきます。
2015年『あさが来た』では、時代に応じて黒から白に変化しました。
ならばなぜ、白い喪服か。
大阪・船場の伝統では、白い喪服には意味がありました。
黒ではなく白い喪服を着るということは、再婚しないという意思表示です。
そのため、まだ若い吉本せいが白い喪服で夫の葬儀にあらわれたとき、参列者は驚いたのです。
決して円満とは言えなかった夫に操を捧げ、二夫にまみえず生きていくとは、たいした覚悟だと。
山崎豊子氏の小説『花のれん』では、白い喪服を身にまとったヒロインの覚悟が、見事に描写されていました。
それを本作では???
なんせ、本作では、この白い喪服を着た直後に、栞がのうのうと顔を出しますからね。
もう、色々とぶち壊しで……。
栞の気持ち悪さが頂点に達したと昨日書きましたが、それをぶっちぎりました。
「おてんさん以上の女性はいない」と直前まで言っていた栞をなぜ真っ先に家に来させる? なんでわざわざ誤解を招くような、あるいは狙いたいのかもしれませんが、スポットを当てますか。
普通にこんなシーンでいいじゃないですか?
↓
栞が他の参列者と一緒にてんを待っていて、てんの白い喪服を着て「あっ!」という顔をする。
『おてんさん、君はそれほどまでに藤吉くんのことを……やはり君たちの絆は素晴らしい!』
とかなんとか、スカした顔で遠巻きに言わせりゃ、それでOKですよね。
そのほうが政次っぽいし。
しかし実際には、藤吉とてんの絆が素晴らしいと言った舌の根も乾かないうちに、物欲しそうな顔で葬儀でまで自分の存在アピール。もちろん彼の心の中はそうじゃないのかもしれませんが、そう見えてしまったら意味がないのであって。
さすが夫が入院中の留守宅に、あがりこんで妻の肩を抱いただけのことがあるなぁ。そう思ってしまいます。
高橋一生さんのファンは、
『ホーホケキョやチョコ右衛門の藤吉役じゃなくてよかった、そこだけはマシ』
と思っているかもしれませんけど。
油断してたらあきまへんよ。
藤吉の死後、栞が藤吉ポジションになる可能性もあるわけで。
しかも栞のモデルは天寿を全うしているわけで。
しかも役員にも就任しているわけで(;゚Д゚)
ペッパー君相手にスカしたことをペラペラ喋る寒い展開だけは避けていただきたいものです。
★
最後になりましたが……。
藤吉というどうしようもない男を演じた松坂さん、お疲れ様でした。
悪いのは制作スタッフであって、どう見たって松坂さんは被害者です。
とりあえず、次の仕事は鬱憤晴らしにもってこいの役だそうで、私も嬉しく思っています。
藤吉を演じて溜まったストレスをガンガン発散してください!
豹変っぷりが凄すぎて、一瞬、誰だかわかりませんw
↓
◆殺人マシン松坂桃李「わろてんか」爽やか夫から一変
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
同じNHKが2015年に制作した『経世済民の男』第二部『小林一三』を見て感動した者としては、本作の「栞」について、「モデルが小林一三だ」などというのはどうにも許しがたいものがあります。同じ局の制作作品とは到底思えないひどさ。このレビューにおいて強調されているように、単に『おんな城主直虎』での高橋一生人気を極めて安易に利用しようとしただけの無意味なキャラクターに過ぎません。
そう言えば、『経世済民の男 小林一三』の脚本を担当されたのも、『おんな城主直虎』と同じ森下佳子さんですしね。脚本家の腕の違いは歴然です。
もう本作を流すのはやめて、『経世済民の男 小林一三』を15分毎に編集し直して流した方がはるかに面白いし、意味のある15分間になるとさえ思えます。
この朝ドラがつまらなければつまらないほどレビューの筆致が冴えて冴えて、思わず画面を見ながら笑ってしまうことがしばしばあります。
毎日楽しみにしてます。
長丁場ですが頑張って下さい。