わろてんか23話あらすじ感想(10/27)会話が全く噛み合わず

明治43年(1910年)京都。
日本一の「ゲラ(笑い上戸)」娘ことヒロインの藤岡てんは、家を捨て、船場の米屋・北村屋の長男藤吉と駆け落ちします。

しかし、藤吉の母・啄子は既に許嫁の楓を用意しており、てんは女中として働くことに。

 

北村屋にしずが乗り込んできた!

楓はてんに「祝言の反物を選んで~」といけずを言い出します。啄子は算盤をはじき、祝言の費用を考えています。

いつも口だけの藤吉は、「おてんちゃんのために頑張っているのになんで認めてくれんの~」とグズグズ。
いや、その甘えが駄目なんじゃないですか。駆け落ちして新天地を目指さずに実家に頼るというのがなぁ……。

藤吉は、自分を一人前に認めさせるために仕入れた米を、番頭の又八に試食してもらいます。
味はよいようです。
目利きの腕を褒められますが、輸送コストを度外視したため、結局ダメです。
藤吉は生きている間に、てんではなく視聴者によいところを見せられるんでしょうか。

そんな折、北村屋にしずが乗り込んできました。勘当した娘のために乗り込むのも、ちょっと変なんですが……。

「質素倹約の奥様対絢爛豪華の奥様やあぁ~」
と、ここで頼子。台詞やナレーションで見ればわかるレベルの解説ってのが、ちょっと聞いてて辛いのです。

ふとしたところに出るこの手の陳腐さが、作品全体に影響を与えているような……。
なんせ、登場しているのは、鈴木保奈美さんと鈴木京香さんという二大女優であります。
演出でものすごい名場面のように盛り上げているのもわかります。が、脚本のおかげでイマイチ盛り上がらず。

まず、なぜにしずは、さほどにドヤ顔なのか。
娘がイキナリ転がりこんで来ているのですから、頭を下げて「うちの馬鹿娘がご迷惑おかけして……」じゃないのかなぁと。
たとえ腹の中が煮えくり返っていたとしても、本心を隠してそのくらいは言うのが商売人のような気がします。

更に彼女は、啄子に「連れ返しに来たのか?」と問われて、こう切り返します。

「あの子はうちが大事に育てた子。欠点はあるけど家の中を笑わせてくれた。藤吉といるともっと笑顔になる」

出、出たorz
昨日の啄子に続いて「謝罪の前にあの子はいい子なの」アピールだーッ!
こういう謝罪は、北村母子の性格的欠点かと思ったら、しずにもやらせる……つまりは、脚本の欠点ではないでしょうか。

こうなった以上、てんの性格は関係ありません。
嫁ぎ先でシッカリ頑張れる!というアピールをするのでしたら、てんの商売力や家事力あたりをプッシュする必要性を感じます。

2017年大河ドラマ『おんな城主直虎』で、何もアピールポイントがない奥村六左衛門を、井伊直虎と中野直之が「でも性格はいいんですよ!」「民には慕われてますよ!」アピールしていたのを思い出してしまいます……。
性格プッシュというのは、要するに「無能」の婉曲な言い換えですから、押し付けられた方の領主・近藤康用も困り顔でした。
ただ、このときは、六左衛門が「木材の切り出し」という技能があって、それが長篠の戦いで活用されたのですが。

脱線が長くなってスミマセン。
話を戻しましょう。

 

絶望的なまでに噛み合わない会話

しずの発言に対し、啄子は『何言ってんだ、こいつ……』という顔になります。
わかります。私も意味がわからない。

そして、笑顔だけで腹がふくれるならいいけど、と嫌味を返す啄子。
こっちの方が正論ですな。

ただ、啄子もなぜ楓のことを持ち出さないのでしょう。既に許嫁を用意していた――と、きちんと説明すれば、しずも流石に顔色を失い、対応も変わってくるでしょう。

「お腹いっぱいになっても、笑いがあらへん食卓はさみしおす」
「ひもじい思いをしたことがないから、そないなこと言われるんですやろなあ」
「私は、あの子を信じているだけさかい」
「それは、無責任というものやありませんか」
「若い二人は半人前同士。補いあって一人前。やっていけるかどうかは二人次第。親にはできることとできひんことがあるということです」
「わてが息子を構い過ぎだということですか?」
「私にも跡継ぎの息子がいて、死にました。で、亡くして気づきました。親が思っているより子は強い。高い結納品やるから受け取ってちょ」

会話が、絶望的なまでに、かみ合っていない……。

しんみりしたピアノが流れ、しずがいいことを言ったった扱いにしています。
しかし、要は、しずが話の論点を自分の方に引っ張り込んで、煙に巻き、相手があきれて黙り込んだら高そうな結納品を出して押しつけるという、なかなか悪どい手口のようにも見えてしまうのです。

「見とくれやす。ドケチな大阪商人には想像もつかへんやろ。京都の老舗なら、このくらい用意できるんやで。ありがたく受け取れや」
と、そんな見なされ方をしてもおかしくないのでは。

 

終始けんか腰で見ている方もハラハラさせられ

啄子は結納品を突き返そうとします。
が、その言葉をしずが割り込んで「てんはああ見えて父親に似て頑固者だから、一度決めたことはやり通す」と上から目線で言い放ちます。

ここでやっと、しずは「ふつつかな娘ですが、一人前に仕込んでください」と頭を下げます。
先にそれをすべきだったのでは……。

啄子はあきれ半分で、自分がどれだけ苦労して船場のごりょんさんになったかを語り始めます。
少々唐突ですが、苦労知らずで無茶苦茶なことを一方的にペラペラ喋るしずにカチンと来たのでしょう。

ここまで言われても、「かわいい我が子・てんをなんとかしてくれ」の一本槍と睨み付けるだけでなんとかしひょうとするしずも、ある意味すごいです。しずの悪いところをてんも受け継いだりして……?

しずはものにならなければ雑巾のように河原に捨てても構わない、と啖呵を切ります。
いや、だからなんでそんなに喧嘩腰なんでしょう。

ここで藤吉が、立ったまま襖を開けて止めに入ります。
もう藤吉に何の期待もしていませんが、さっきまで盗み聞きしていましたという態度のまま、客の前に立ったまま入ってきて「失礼します」もなしに、いきなり「お母ちゃん」は無礼ですぞ。

 

啄子は「いけずを遠慮無くやる」宣言をします。
藤吉は啄子に、なんでそんなに惚れたはれたが嫌なのか、と問います。
啄子は、藤吉の父親はいやいや結婚して、好きだった芸妓に金を貢いでいたからと説明します。親子で暮らしていて、藤吉はこうした事情に気づいていなかったんですかね。あるいは、芸人として家を出た後のこと?

 

白い喪服は「貞女は二夫に見えず」の証

しずはてんの荒れた手を気遣います。

てんは女中としてしごかれている割に、風太やしずと話す時間、りんからの手紙を読む時間ばかりで、いつ仕事をしているのかよくわかりません。

しずは白い喪服をてんに渡します。
東アジア圏内の喪服は伝統的に白でしたが、西洋化の影響で黒くなってゆきます。
『あさが来た』では、途中で白から黒に変わっていましたね。

てんの顔を見て連れ戻すか決めるつもりだった、と言う割には、立派な結納品や喪服を用意持参していたしず。

「貞女は二夫に見えず、藤吉さんに一生添い遂げるつもりでいなさい」
そう諭すしずです。

これは史実の吉本せいの逸話でもあるのですが、せいの設定をそのままで活かしていたらもっと感動的だったろうなあ、と思ってしまいました。

啄子に続いて、楓もいけずリミッターを外す宣言をします。
そう言われても藤吉は口を半開きにするだけ。

なんだかんだで、啄子も楓も優しいですよね。
問答無用でてんをたたき出し、しずにくっつけて京都に返せばいいのに、そうしないのですから。
いくら息子が連れて来た意中の女性とはいえ、北村屋の計画を狂わせ、泥を塗った挙げ句、見下してきた藤岡屋母娘に対して、本来ならこの程度で収まらない気もします。

その夜、てんは着物が盗まれたことに気づきます。
トキは「まさか楓さん?」と疑いの言葉を発するのでした。

 

今回のまとめpart.1

あ…ありのまま 今日 放送された事を話すぜ!
「迷惑かけた娘の謝罪に母親が来たのか と思ったら いつの間にかマウンティングして結納品を押しつけて勝ち誇っていた」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが
おれも 何をされたのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…

今日は今まででワーストというか、奥様対決は最低の出来であったかと思います。
せめて会話のキャッチボールをさせてください。
かみ合っていないうえに、一方的にしずが自分の事情をペラペラと喋ってマウンティングしていて、見ていられませんでした。
正直つらかったです。

それでもなんとなく重厚なのは、女優さんの力が大きいわけで。
ストーリーや会話内容は粗だらけ、崩れそうな展開を役者の力量でなんとかしている状態です。

朝ドラですから、気軽に眺めて、もっとポップな感想レビューに仕立てたいのですが、どうしてもザワザワさせられてしまいます。

ここで思い出したのが、『ひよっこ』です。
あの作品は、ヒロインの父親失踪が大きなポイントでした。
失踪していた父親は、人気女優に匿われていました。女優が早く通報すればもっと早く見つかったはずなのに、ヒロインの母親はそんな煮えくり返る気持ちをぐっとこらえ、まずは女優に匿った御礼を言います。

『ひよっこ』は、自分の言いたいことを言う前に、相手に御礼を言うとか、謝るとか。
そういう当たり前のことが出来ていました。

しかし本作は、その前に自分の考えていることを喋りだす人物ばかりです。
そこがどうにもならないものかと思ってしまいます。

 

今回のまとめpart.2

本作は今週、船場に舞台を移してからガタガタッと転げ落ちるように悪くなりました。
その理由がわかりました。

啄子の身の上話も、史実の吉本せいに近いのです。
苦労してごりょんさんになり、夫が浮気してもじっと耐えてしがみついてでも家を守る。
これぞまさしく吉本せいの前半生ではありませんか。

それに対して、苦労知らずのお嬢様育ち、入り婿とも仲良く幸せに暮らしてきたしずが、ズケズケと見下すような言葉をぶつけるわけです。
てんと楓との関係であった「史実のキャラクターを二次創作のメアリー・スーがぎゃふんと言わせて勝ち誇る」を、しずと啄子でも繰り返したわけです。

今日、ハッキリと気がつきました。

本作にとって一番不要であるのは、藤岡屋一家であると。
第3週まで京都が舞台であった頃は気がつきませんでしたが、本来、吉本せいの人生は船場から始まるもの。
京都老舗の薬屋の藤岡一家は、その物語にとっては「異物」なのです。

なぜヒロインを異物にしてしまったのか。
本来、主役である人を押しのける設定にしたのか。

この点がハッキリと示されなければ、本作は「メアリー・スーに乗っ取られた吉本せい物語」であり続けることでしょう。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

2 Comments

waratteiitomo1999

>パグ様
ご助言ありがとうございますm(_ _)m
ご指摘頂きました点、
できるだけフォローして参りますので
今後もご愛顧よろしくお願いします。
編集部

パグ

 前々から気になっていたのですが、メアリー・スーやマッドマックスなど、最初は説明があるものの、その後説明を省くことがありますね。読者はすべての記事に目を通して読んでいない可能性もあります。もう少し細かい配慮やことばの言い換えがあればな、と思っております。

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