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【スカーレット80話】
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信作の恋愛もめんどくさい
喜美子はそんなんええから、それ以外百合子と何を話しているのかと言う。
原付の免許だってよ。喜美子はイライラしながら、切り出します。
信作はめんどくさい
その6:話が微妙に通じない[/st-mybox]
信作、そのめんどくささの真髄はここからや!
「百合子とつきあってるんちゃうの?」
「はあ?」
「ちゃうの?」
「つきあってもええの?」
「そんなこと言うてへんわ!」
「アホ。向こうはそんな気、一ミリもないわ」
嘘やん! ええ感じやん! そう突っ込んだ視聴者のみなさーん!
めんどくさいよな、ホンマに。
劇中と限定すると、以前、百合子が信作に対して「ときめかない」とスルーしましたから、あれ以来、彼の中で「百合子とはない」と決まってしまったんでしょう。
信作が乙女ゲーにいたら、視聴者からクレームついておしまい。
存在そのものがバグや。何度デートしても親密度上がらんのよ。なんか厄介な手順がいる。なんだこいつは。
ほんとうにこいつは……二人きりでデートしても、親密度上がらないとなれば、水ぶっかけられてハンドバッグ殴打になるでしょう。
信作としては相手の心を弄んだ気はゼロですが、相手としては許せない。「信作被害者の会」結成できるとは思う。
殴るとか、金を盗むとか、ましてやわいせつ行為はない。ただ、心理的に踏んづけたことはあるんでしょう。
しかも、本人ですらなんで傷つけたのかようわかっとらん。
百合子に期待したいところは、まさにここ。ここでのやりとりを百合子本人が聞いたとしたら、最初はショックを受けても、
「信にいだから仕方ないわ」
と流せると思うんですよね。そういうスルースキルがこいつのためになる。
喜美子も呆れて、追い出します。あんな本質をアドバイスした親友なのに「帰れ帰れ!」やぞ。
うーん、これぞ信作の人生、同じこと繰り返しよ。
がんばってアドバイスしても、提案しても、無視。職場でも学校でもそうでしょうね。「お見合い大作戦」は、女を呼びたいわけでもなく、自分のアイデアが軌道に乗って楽しかったんでしょう。
ものすごいアイデアの持ち主が尊敬されているとか。感謝されるとか。そういうのはあくまで妄想の話です。昨年の放送事故がその典型。
本作の生々しさは、信作描写にもある。
鋭い本質をズバリという奴は、尊敬されるどころか、空気を読めないアホとして追い出されかねない。あるあるなんだよな……。
信作よ……ほんまにかわいそうになってきた。信作は本作でも理解が難しい人物だと思う。
「こんな男おらんやろ!」
「ホンマはモテてうれしかったんちゃう?」
「プレイボーイやなぁ」
「あっ、もしかして、同性愛者?」
そういう誤解はされると思いますが、彼は本気でいろいろと理解できていない。
彼みたいな人物は実在します。
いるわけないと思えるのであれば、それは観察が足りないか、信頼関係を構築することなく相手が本音を言わなかっただけのことでしょう。
年明けから、めんどくささにブーストがかかったようです。
めんどくさいだけで悪い奴でもないし、役立つので見守りましょう。期待しとるで!
もう素直になれない
喜美子はおにぎりに目鼻つけて、工房へ持ってゆきます。八郎が姉から習った料理は、どうなったんでしょう。
八郎は柴田が褒めた喜美子の皿を見つめています。
そしてこれを日本陶磁器次世代展に応募しようと言うのです。
新しい賞だから、女性陶芸家も受け入れてくれる、と。
八郎としても、気にはなっていた。二人でやっていこうと言うたのに、金賞とってから喜美子は八郎のことばっかり優先してる。
嫌やゆうても応募する。そう語る八郎はええ夫のようではある。
喜美子は喜美子でやりたいことをやったらええ。釉薬の調合のことも知りたい。勉強したいはず。
はい、ここでジョーのことを思い出したい。
ジョーならば、喜美子にこんなことを言うとは思えませんよね。柴田のように、ええ着物買うほうへ誘導しかねない。そういう意味では、八郎は一歩進んではいる。
ここで喜美子は、大阪の料亭から頼まれた花瓶の釉薬のことをどうするつもりかと聞いてきます。
夫の仕事を気遣っているのか。そう八郎は受け止めている。
落ち着いた感じの色がええいうてたから、深い緑色にしようと八郎は言う。
すると喜美子は、その色を出すための調合と温度までスラスラと言うのです。
長いセリフが多い本作らしさ、それだけではないものが出てきました。
「合ってる? 今言うたんで合ってる?」
八郎は合っているといい、そんなんいつの間に覚えたのかと驚きます。
勉強してん!
喜美子はそう言う。
十歩二十歩下がっていても勉強はできる。後ろからついて行きながら、学ばせてもらってた。テストピースのこと。頭にたたき込んだ。八郎さんに追いつきたかった。
八郎は驚きます。すごいと言います。たいしたもんやと褒めてはいる。
そして喜美子は、八郎の許可を得て釉薬の調合を始めます。
頭で考えるだけではダメ。やっぱりやってみないと。
ウキウキと調合を始める喜美子を見つめる八郎の顔は……険しいのです。
アホやない! めんどくさい信作と夕見子
※信作ならPossible!
はい、今朝、圧倒的な知略を見せた信作。もうこれは知略78、内政90です。
こいつそんなに賢かったっけ?
そういう疑問は湧いてくると思う。わかりにくいけど、彼は聡明なのです。前世はきっと石田三成なんだね!
信楽の高卒で公務員。そういうステータスが地味だけに、そうは思えないんでしょうけれども……。聡明ながら目立たない――というのは喜美子にもありますもんね。
これが『なつぞら』の夕見子やイッキュウさんですと、学歴があるから賢いと周囲にわかるのです。
今日の信作は『なつぞら』の軍師枠からでは夕見子に近いものがありました。
・黙って観察、いきなり答えを出す
→演劇部のなつと雪次郎が演劇トークをしていると、夕見子が雪次郎愛読書をふまえて演劇論を唐突に語り出します。そんなの読んでたって言ってよ、めんこくねえ! そうなりそうなところ。こいつらは、黙って観察していきなり答えを出すからめんどくさい。
・恋愛って概念を理解しとんのかワレ
→あれだけ雪次郎から恋愛オーラを出されても、スルーした挙句、駆け落ち寸前の高山と会わせる夕見子。信作数々のやらかし。こいつらにデリカシーを期待すんなって話です。
彼らとて理解できないわけじゃないけど、何かがズレているのです。
・バカなのか賢いのか、わからない
→夕見子の賢さがわかりやすいのは、学歴があるから。でも彼女って、意地悪な見方をすれば「バカ」になりますよ。
女で美形なんだから、おしとやかに行儀よくして、女の子らしさが一番だと身につければいい。
勉強はせいぜい中ぐらい。短大卒でおさえて、出来過ぎは可愛くないと理解したううえで振る舞う。
そしてデパートの御曹司・高山にご飯を作って嫁になるのが「賢い女」。
無意味に北大出てでしゃばって、雪次郎みたいな低スペ男に嫁いだ。そういう見方はできるんですよね。
彼女なりに、工夫して店を大きくして楽しく生きてはいるんですが、スペックでしか見られない世間からすれば「バカ」ってことでしょう。
信作も、なまじ「お見合い大作戦!」と叫んだりわけがわからないけれども、実は賢いのです。
彼らの賢さが理解できない世間があかんのや……。
・二人はフェミニストなのか? 上から目線なのか?
→この二人はフェミニストだからこそ、男女平等になっていない家庭に異議を唱えた――というのは陥りやすい誤解だとは思います。
両者ともに、フェミニズムを学んでいる描写は特にない。信作はちや子と比較すると、わかりやすいかと思います。
ちや子は女性が才能を発揮することを、女性新聞記者として苦労してきたがゆえに、期待しているとわかりますよね。
信作はそういうわけでもない。
夕見子も、自分の実力を発揮できればいいというスタンスで、妹の明美と信哉ともちょっと違うんですよね。
だからこそ、製菓業に進んだ姉には失望したと明美は漏らしてしまう。
この二人からすれば、人類皆平等なのに意味不明なルールで縛られるのは、非効率的でわけがわからないとなる。だからなんとかすべきだとガーッと展開するタイプなのでしょう。
夕見子は上から目線だと言われていましたが、マウンティングしたいわけじゃないと思うんですよね。
山の頂上から見下ろして、おかしいとなれば鋭く突っ込む。それだけのこと。
直感を信じて、おかしいとなれば気になって仕方ないと指摘してしまう。
そういうタイプですので、むしろフェミニズムのような特定の思想からは吹っ飛んだところを突っ走るのでしょう。
だから奴らはわけがわからない……むしろ、社会正義や思想をかざせば、理解されやすいだろうに。
北大卒ながら女性の夕見子。
男でありながら信楽で公務員をしていて、迷走する信作。
どちらが誤解されやすいのかな?
本人たちのせいではなく、周囲の無理解で混沌とさせているのが、『スカーレット』だとは思うのです。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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