「めおとノート」を取り戻した松永三津。
そんな彼女におむすびを作りながら、喜美子は思うところがあるようです。
伸び悩むハチさんを心配するキュウちゃん
喜美子が台所に立っていると、マツが起きてきます。
喉が渇いたという母に、水を出そうとする喜美子。ここで百合子が起きてくると、百合子のことも気遣うんですね。
何気ないところですけれども、本作の生々しさはこういうところにあると思う。長女として、母や妹を気遣うことが、何よりも先に出てくるのです。
マツはそんな喜美子に感謝しつつ「眠れへん」とつぶやきます。ノート一冊でえらい騒ぎになって、眠れないのだとか。
不安ですよね。
施錠のことなんて日頃考えていないけれども、窃盗があれば冷や冷やしてしまう。
うーん、恐怖。これぞ人間の本性ってやつよ。いや、どうかな? 昨年の放送事故な。
「寝ている自宅に泥棒が入ってきたけど、イケメンだからむしろときめいちゃう未成年女子❤︎」
広告に出てくるエロ漫画広告じみた世界観やった……ま、ええわ。
百合子が、武志はケロッとしていたと言います。
男の子だから?
子どもだから?
ちょっと考えてみましょうか。
同じ頃の信作やジョーだったらどうでしょうね。喜美子では?
武志は父親に似た、マイペースなところがあると感じます。
ともかくノートは返ってきたと喜美子はホクホク顔。
松永さんが追いかけて取り返したと聞き、マツはびっくり、百合子は誰か?と問いかけます。
一番さんと二番さんが連れてきたと喜美子が答えます。
「ほやけど、ハチさんがな……」
あっ、考えてみれば喜美子はキュウちゃんですから、この夫婦は8と9ですね。
そのハチさんは、銀座の個展での目玉作品を考えているのです。
百合子が、銀座でやるから特別なのか?と尋ねると、それもあるかもしれんと認めつつこう続けます。
売れ残ったのが大きい――金賞から三年目、伸び悩んでる。
こないだハチさんが、素晴らしい作品て何やろなぁ、言うた。
どういうのを素晴らしい言うんや。そう言っていたのだと。
「そんなん言うたん初めてや。道迷ってんねん」
喜美子は「ごめんごめん、ちゃうな!」と深刻な話を遮って、松永さんのことを語ります。
日本のあちこちを旅していた。意欲的で研究熱心な人物。そう紹介します。
その頃、そのハチさんこと八郎は工房で作業中。
フカ先生の絵葉書に視線が向かいます。
喜美子は、三津のことを今のハチさんに必要、新しい風を吹かす存在だと言い、彼女を弟子入りさせたいと言うのです。
百合子は賛成。「多数決する?」と言います。
彼女は母親に似ていて協調性と情緒ケアスキル抜群、かつ【多数決システム】を取り入れた上位互換のようなところがありますね。
天使や、これぞエエ方の妹や!
芸術一家の娘
ボーンボーン。
と、ボンボン時計が深夜を告げます。
やっぱり うまいなぁ、本作は!
今はうるさいから避けられるし、スマホその他もろもろで時間なんかわかるし、ボンボン時計なんてもはや骨董品。
それを出すことで昭和らしさを演出し、もう夜中だとわかる。そういう高度な演出をみたで!
八郎は、もっと探したら他に弟子入り先はあるで、と三津に告げます。
それでもなお彼女は食い下がり、見つからなかったからここに来てるとキッパリ。
そうそう、ミッツーはこういう性格やな。
八郎は【頑固オヤジちゃん】だと三津の言葉を逆手に取り、明日帰りぃと念押しします。
こういう言質の取り方、ちょっと怖い。三津には通じないけど。
「はい、わかりました! 了解です!」
叫ばなええ、もう。八郎は呆れる。
三津の挨拶が大仰なところ、いきなり叫んでしまうところは注意してみていきたい。
そこへ喜美子がおむすびを持ってきます。
何これ、かわいい! そうはしゃいで、手を洗ってくると言い出す三津。このあと「いただきます」と丁寧に言うところも含めて、しつけはしっかりしている子ですね。
八郎は、新しい色を試しているようです。
ここで八郎もおにぎりを貰うと言うと、三津がこう言います。
「えー、全部私のもんかと」
「ほないりません」
「しゃあないな〜」
下手な大阪弁を挟みつつ、三津と八郎のそんなやり取り。
彼女は気遣いがちゃんとできて、お礼もするけれども、ちょっとズレちゃって厚かましく思えるところがある性格なのです。
ここで、三津子が別れた理由を話していたことが喜美子にもわかります。
一言で言うと、性格が合いませんでした! と、無邪気にまとめる。喜美子は突拍子もない三津の言動を見て、苦笑しつつ納得しそうではありますが。
昨日、今日とかなり怖い展開ではある。
八郎と三津が語った【才能が相手を傷つける】話を喜美子は聞いていない。
喜美子がマツと百合子に語った【八郎が迷っている】話を八郎は聞いていない。
夫婦の【ズレ】がそこにはある。
三津は、ぺらぺらと周囲の人間関係も語り始めました。
どうやら聞かれてもないことを語るところがある。
結果、彼女の家族構成が判明します。
別れた恋人ヒロシ:陶芸家
父:若い頃陶芸家、現在は画商
母:結婚前は美術教師、現在は絵画教室、書道教室の先生
兄:五歳年上、絵画修復家
うーん、なんという芸術一家だ、松永家!
とりあえず、松永父は出てこないものとして、吉田鋼太郎さん(※『麒麟がくる』松永久秀役)で脳内配役しとこーか。
だからこそ、三津のあばれ旅も許されたんやろなぁ。
そういえば、一番さん、二番さん、八郎にキュウちゃんで、三津は3やな。
でも、ちょっと考えてみてくださいよ。
ただの都合のええ説明セリフやろか?
『なつぞら』のマコも、美大卒で結構なお嬢様、夫もエリートクリエイター。
それでも彼女は、こういうことを一方的にぺらぺら喋りませんでした。
三津の口は軽いというか、聞かれてもないことを喋る傾向がある。
はい、ここで思い出した。
「鈴愛の口は羽根より軽い」
やっぱり『半分、青い。』の鈴愛に通じるものがあるなぁ。
仁義ある妻、仁義が通じない夫
喜美子は、父譲りの仁義あるところを語り出します。
うちらの大事なノートを取り返してもろて、お礼におむすびだけでええの? そういうことでええのか。そう迫るのです。
すごい。
戸田恵梨香さんがあの菅原文太さんみたいに思えてくる!
ジョーは男性性の権化のような存在だとは思えた。
男は解決脳で合理的で、スパスパキッパリしているのか?
※Amazon Primeにもどんどん入ってきた!
そういう方には、是非ともヤクザ映画を見ていただきたいと思います。
任侠はバリバリの男社会。
でも、仁義、人情、盃でがんじがらめにされている。
ともかく人脈が大事です。
そういう世界では、むしろ共感能力がないとあかんのです。
理詰めでやりすぎると「仁義がない!」と揉めるのよ。
ここは、仁義を見せなあかん。
ジョーが草間宗一郎を救ったような、命がけで戦友オゥちゃんを背負って中国大陸を移動したような。そういうもんが喜美子にもあるんやろなぁ。
余裕がないと冷たい八郎に、喜美子はこうです。三津も感謝します。
「お願いします!」
「あ……お願いします!」
「喜美子が……喜美子がどうしても言うんやったら」
「ああ、ああ、ありがとうございます!」
「ただし! 僕があかんいうたらすぐに辞めてもらうで」
この対比は大事や。
仁義ある妻、仁義の通じない夫。そして喜美子はジョーに似ている。
【ズレ】がある。極道でないからには、血は流れんけれども……。
でも、夫唱婦随でないというのは、よいことだとも思います。
山守夫妻みたいに、夫婦でタッグ組んでゲスに突っ走るのはあかんから。さあ、どうなることやら。
今日も信作はズレる
ギスギスした夫妻の【ズレ】の合間に、ほっこり信作&百合子の時間――。
百合子は松永三津について語ります。
住み込みで、部屋は同じ。同い年で気が楽。
明るくていい感じ。服装はなんや変やけども。
弟子といっても、炊事洗濯掃除、家のこともやらはる。
ほやから、お手伝いさん雇ったみたい。
ええ弟子や。
文句垂れとった前の二人よりええな。
これは百合子の天使のような性格もあるとは思う。結構三津は言動がきびしいからね。
「へぇ〜」
しかし、信作は気の無い相槌を打つばかり。ゆりちゃんの話に興味ないんか、ワレ!
百合子が天使だからなんとかなっとる。
が、普通の女だと、露骨に自分の話を聞かない、そういう態度に苛立ち、水掛けハンドバッグ殴打よ。
「へえ〜」
そして、信作が気もそぞろな、ほんまくだらん理由がわかります。
おみくじが五回連続「凶」で凹んでるってよ。アホか!
「おかしいやろ、あの神社!」
しかも百合子は大吉。
まぁ確率的に確かにおかしいとは思うけれども、むしろおかしいのは信作、お前や!
百合子はもう一回引いとこ、と言いますが、また凶だと一生立ち直れんと断る信作です。
大凶だけあって、おみくじの中身もすごいらしい。
「由損断」
「由損断頭材」の一部ですね。由(なお)頭材を損断するがごとし。
命と同じくらい大切なものを失うってよ。
「命と同じくらい大切なものって、なぁに?」
「いまやったら、百合子やなぁ」
ここでハッとする福田麻由子さんの顔が、素晴らしい。
だからこそ、信作のズレた態度にイライラする。
「腹減ったなぁ。何か食いに行くか。手ぇつないでくか」
「えっ、なんで?」
「……わかった」
信作なりに、考えてはいる。
自分がゆりちゃんが好きやと気づいた。
なんか恋愛マニュアルめいたもんもたぶん読んだ。
親か、友人か。誰かから話も聞いた。
おみくじデート。百合子が大事という。手繋ぎ。
そういうマニュアル対応をがんばって始めたことは、評価したい。
だが、褒められるんはそこまでよ。
なんでおみくじにこだわって、百合子の話にどうでもよさそうな態度取ってんねん!
そういうとこやぞ。
ゆりちゃんの話聞いて、心に寄り添わんからズレるんやぞ!
まぁ、凶を五回も引いたから。
フィクションの予言や占いは当たるもの。
信作はギブスを使うようなえらい目にあって、そこに天使百合子が降臨して、もう気持ちに嘘がつけんと年貢を納めるんでしょうね。
気張りぃや!
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