スカーレット86話あらすじ感想(1/14)喜美子と三津の対比から見えてくるもの

喜ぶ三津。
途中で失敗して笑い、今のところを教えて欲しいと言います。

「喜美子から教われ。交代や。舌打ちすな」

八郎は厳しくそう言いますが、三津の語る団地奥様御用達ディナーセットの話は興味津々ではあるようです。

全品買い揃えたくなる。
一皿だけでなく、全部買いたくなる。

女心をくすぐるディナーセット!
そういうのどうですか? と、明るく語る三津に、

「女心……」

と返してしまう八郎。
結構洒落にならん。これはむしろ笑えん。

女心をくすぐるといえば、橘のコーヒー茶碗の一件で、この点は喜美子が上だと証明されているわけです。

八郎が、それをカバーするために三津の意見を必要としたら?
自分一人では勝てない喜美子に、自分と三津のコンビなら勝てると思ってしまったら?

ここで喜美子が来ます。

「三津、出かけてくるわな」

おつかいなら行くと三津は言うわけです。チッ、邪魔しやがって、とは思っていない。

喜美子は橘さんに会うからと、留守番とマツの昼食を頼みます。

ここで喜美子は三津のあげた手に、粘土がついていることに気付く。三津は慌てて洗いに行きます。

何気ないようで、緊張感がある。
今回で、三津はもうきっぱりと、喜美子の恋敵にはなったと思う。

本作は東京出身者が、異なるものをもたらす象徴性があると思うのです。

草間宗一郎の場合、精神性の豊かさや良心、転機を吹き込む要素ではあった。

けれども、三津はそうではない。二人は対照的になってきました。さあ、どうなる?

喜美子は三十過ぎて人妻で子持ち。

三津は二十代独身で未婚。

そういうエロなスペックでなくて、もっと深い違いが出てきている。

喜美子 三津
出身地 大阪 東京
家庭環境 貧しい家庭出身 比較的上流家庭出身
声質 落ち着いたアルト あどけなくて無邪気なソプラノ
ファッション 地味な服装 派手なヒッピースタイル
陶芸 自らの感受性と経験で突き進む 大学で学び、日本各地を回った知識を持つ
銀座の個展 反対 賛成
食器 川原家のちゃぶ台で使う食器 団地の妻たちが求めるディナーセット

さて、八郎はどうするのか?

【悲報】信作、ここぞという時にズレる

はい、「サニー」では。

信作に連れて行かれ、病院に行ったという陽子。ただの飲み過ぎだってよ。

「慣れん酒飲むからやで」

大野夫妻、揃ってそこまで酒に強くない模様。
それでもジョーにつきあった夫・忠信はマシではあるのでしょう。

「もう行く。昼まで行く言うてある」

無愛想なようで、実は親孝行な信作はそう告げます。ズレてはいるけど、こいつはええ奴だからさ。
忠信は、遅刻させて悪かったと言います。

けれども、陽子は感謝どころか深々とため息をついています。

「俺と百合子の結婚、嬉しいんちゃうの?」

戸惑う信作。昨晩は、万歳と言いながら、百合子と飲んでいたそうです。
そうそう、百合子視点からすれば姑が人格者というのはありがたいことですよね。親同士が親友でもありますし。

一夜開けて気持ち悪いのは、二日酔いだと言うものの、陽子はため息ばっかりついているそうです。

「おっ? これは一人息子をとられる母の嫉妬か?」

というのは、ありがちな御誘導でしょう。そういうん、やりすぎるとそもそもうっすらと気持ち悪いわ。これは父と娘もそう。

陽子はしみじみとこうだ。

「はあ……常治さんがいてくれたらなぁ」

えっ、なんで?
なんであのジョーカスを懐かしむの?

「百合子さんください言うあんたのこと。冗談やない、誰がお前なんかに渡すもんかと門前払いしてくれる。厳しいめにあわせて欲しかった……」

ほんま大丈夫か。錯乱しとらんか?
こっちもちょっと見たい。いや、そういうことでなくて。けど、そんなんほんまに見たかったんですか?

八郎の顛末を思いだすと、なんと言えばいいのかわかりません。
けれども、陽子としてはあの連続門前払もええ話らしい。

「何度も会いに行ってすっぽかされて。どんだけ頭下げたかわからん。あんたにも、常治さんの厳しい洗礼浴びさせたかったわ……」

いやこれ、ほんまどういう反応すればええんやろ。
なんでそんな「虎穴に入らずんば虎子を得ず」みたいな期待しとるんですか!

「わしがジョーさんに代わり、厳しいこと言うっ!」

そう張り切る忠信です。
って、そんなん無理やん!

信作も張り切り、川原家に結婚の許しをもらいに行く、けじめをつけると言い切ります。まぁ、マツ相手なら楽勝だとは思う。

その割に目をそらしていて、突っ込まれてはおりますが。

ここで喜美子が来店します。

「おはようございます、信作なんでいんの? 休み?」

「なんで、いてん?」

「会いに来てん?」

「俺に?」

また信作がズレとる会話をしよるのぅ。
喜美子は信作が出勤したはずなのにどうしているのか、最初に聞いとるやろ!

つまり、この時間に来ても信作がいることは想定外。会いにくるわけがない。

じゃあなんで信作は誤解したのか?
これは彼なりに、川原家の喜美子相手にけじめをつけなあかん。そう思っているからこそ、こういうズレたことを言い出す。なんか思考回路が混沌としてきたな、オイっ!

喜美子は困惑しつつ、橘さんに会いにきたと言う。
ここで信作は意を決したように言う。

「喜美子ぉ!」

大野夫妻も、息子の行く末を頷きつつ見守っています。

「うん?」

「またな!」

そう言い切り、出勤する信作。

「相変わらずわからんとこあるで……」

喜美子は困惑する。
うーん、幼なじみですらわからん、それが信作よ。

何度でも言う。
ここまでズレた奴相手にキュンキュンできるのか? できるのは、百合子が天使だから。百合子はスーパーレア。普通の相手は水掛けハンドバッグ殴打待ったなし……それが信作やで……。

気を取り直して、大野夫妻は喜美子を座らせ、仕事や最近の様子を聞き出します。
久しぶりと言っておりますから、あまり来られなかったのでしょう。

そこへ、橘がやって来ます。

大野一家の苦悩よ

信作は「相変わらずわからんとこあるで……」と喜美子から言われておりました。

これは一貫性があって、公式サイトでも幼少期から周囲のアプローチを理解できていないと書かれています。

「喜美子とは正反対の、気が弱く引っ込み思案な性格」(公式サイト)と言われるほどですから、親としてはなんとか殻を破って欲しいのだとは思う。

陽子の【ジョーカス暴虐指導】への期待感も、複雑なものがあるのでしょう。

信作を理解する伊賀祖母を「甘やかしぃ」と呼んでもいた。そんな陽子は、自分の教育のせいで息子はズレとるんやろか、甘いんやろか……そう悩んでいることはわかります。信作が女相手にうまく行かない時も、オロオロしていましたっけ。

信作があのゆりちゃんと結婚するなんて最高、幸せ!
せやけど……信作でええんやろか。頼りない信作のせいで苦労したら、川原家の皆さんにも申し訳ない!

そういう複雑な気持ちがあるんやろなぁ。

けれども、信作が今一番自己嫌悪に陥りつつ、出勤しているのだとは思います。

あ〜最低や、アホや、俺はなんでこんなあかんねん!
そうぐるぐる回りながら、申し訳なさに脂汗をかいているとは思う。あれはかわいそうな奴なのよ。

信作はなまじ、失敗が怖くて、やるならばきっちりと仕上げたいからこそ、弱気になってしまう。

信作は、気が弱いだけでなく、引っ込み思案なだけではなく。やる時は強気になる。本気出す。絶対成功させる!

そう気合が入りすぎ、ドツボに陥り、失敗すると自己嫌悪のあまり、地面にのめり込む。同じことの繰り返しよ……そういうめんどくささがあるのだとは思います。

信作と八郎は、男性像ということで考えてもわかりにくいとは思う。

彼らには、彼らなりのめんどくさい個性があるから。
割り切らない。煮え切らない。モテてうれしくないなんておかしい――うーん、そういうものを乗り越えた、彼なりのめんどくささがある。そこを理解したい。

だからこその百合子だとは思う。

失敗をおそれて落ち込む。俺は最低最悪やと凹む。いじけそうになる。酒に逃げるかもしれん。
そういう信作の隣で、おおらかに笑うゆりちゃんあってこそ。そういう『スカーレット』後半戦になるはず!

喜美子と八郎と三津も気になりますが、こちらも気になります。

あとは直子と鮫島もね。
週の後半が楽しみです。そう逃避したくなるほど、喜美子と八郎があかんのや……。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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