「サニー」の八郎は、自分の原点をねじ曲げていた結婚生活に気づき、もう自分を騙せないと気づいたのではないか?と思えました。
「かわはら工房」の喜美子は、自分が自分を騙していることを認められない。
人間は毎日嘘をついて生きている。そう言われたら、大半の人が動揺し、不快感を覚え、そんなわけがないと否定したくなるとは思います。
けれども、あなたも私も、そうなのです。
鏡に向かい、化粧をする。その化粧は疲労を隠すためかもしれないし、社会になじむためかもしれない。したくもないのに化粧をしているのであれば。
あるいはTPOにあわせて好みより地味な色を選んでいるのであれば、あなたは周囲をも、自分自身をも騙しています。
男の俺には関係あらへん!
それはどうでしょう。
こんな作業は無駄だ、失敗する。そう内心思いながら、上司の命令だからといやいやこなしている。
疲れて眠い。けれども、締め切りが近いからと休まず、栄養ドリンクを飲み作業する。
こんなことを書いていいのか、クリエイターとしてどうなのか?
でもアクセスは稼げる。そう思いつつ、キーボードを叩く。
正直なところ、以前ほどハマれないゲーム。けれども課金がもったいないし、同じジャンルのフォロワー惜しさに惰性で続けている。
これは、全て周囲なり他人なり、あなた自身を騙している。そういう行動なのです。
騙した結果、どうなってしまうのか?
それがNHKの追い求めたいことなんよ!
そう確信しとるで。朝ドラも、今年の大河も。
きみちゃんの育児教室「労働とその対価を知ろう」
「はあ〜期待を裏切らんやっちゃなあ」
喜美子は武志の靴下をつくろっています。武志は、つくろった靴下を友達は履いていないと抗議するのです。
「よそはよそ、うちはうち!」
そう叱る喜美子。武志は、履くからグローブ買ってぇと言い出します。
金銭感覚は、しっかり川原の血が反映されていますね。テレビよりはかなりお安くなりました。
うーん、この武志の望みを八郎は知らないわけか。テレビを買っても喜ぶと言えばそうだけれども、グローブを買う発想は出てこないかもしれない。ここは重要かも。
喜美子は返します。
「自分で稼ぎぃ」
どうやって?
そう言うと「お年玉あるやん」とも返す。さりげない会話ながら、目標価格が下落したとはっきりわかりますね。子どもが自分でなんとかできる範囲になった。
はい、ここから先が受信料の有効利用。
【きみちゃんの育児教室】始めるで。
「どうやって稼ぐ?」
「稼ぎたいんか。これつくろうたら12円やる」
「やる、12円! 何回つくろうたらグローブ買える?」
「計算練習にもなるなあ。ほな、教えてたる。裁縫は知っといて損はないからな。ほんでこの針にな、穴あるやろ。ここに通すねん」
ここの場面は重要ですし、役に立つ!
子どもにも、労働とその対価を教えなあかん。NHK大阪の良心ですね。
労働の尊さとともに、生きていくために必要なスキルを身につけさせる。男だからええとか。勉強だけしてたらええとか。そうではない、実に役立つ育児場面だと思えました。
『なつぞら』でも、泰樹がなつにアイスクリームを食べさせながら、労働について語っておりました。
働いても報われないのであれば、雇用する側が悪いのだと。
そしてこのドラマでは、十勝農業王国への蜂起、東映動画での労務交渉、マコプロの手厚い福利厚生までたどり着くわけです。
数年前の朝ドラは、
「熱意があることを無給労働でアピールします!」
というような、労働搾取美化が酷かったもんです。その訣別を感じるで。
※個人的に嫌いではないけれども、無償労働アピールはあかん
昨年の放送事故は、主人公が悪徳経営者そのもので、ほとんど東映実録路線レベルのあくどさでした。あんな『仁義なき戦い』の山守夫妻じみた主人公からは訣別せんといかんのよ……。
『麒麟がくる』の、ハセヒロさんにも期待しています!!
八郎に恋して、三津を愛でる。けれど喜美子は……
そのころ八郎と三津は、作品作りに向き合っています。
ここまで来たら、不穏な雰囲気で良いと思えるところですが。むしろロマンチックで爽やかなBGMなのが怖いのです。演出も演技もとても素晴らしく見える。
三津のイチゴがついたヘアピンが愛くるしい。
八郎の集中する顔は素晴らしい。
ここだけ切り取って見たら、陶芸男子に胸キュンキュンする、そういう作品に見えてしまう。
それで、ある意味正しいのだとは思う。
二人とも魅力的で、かつロマンチックな雰囲気が醸し出されている。
それに問題があるとすれば、台所で喜美子がおにぎりを作っているから。
喜美子はもう、このさわやかなふたりを引き裂く存在になりました。
騙し合いの果てに
本音を言い合わないと、心までしばれちまう――。
なして『なつぞら』からとよさんを出してくんのさ? 冬だからだべ?
そうなりますよね。
これも比較としてわかりやすいから。
本音をぶつけあう『なつぞら』では心はしばれないのに、『スカーレット』はズレが生じて崩壊への緊張感が高まっております。
八郎も、喜美子も。
川原夫妻として保つために、騙しあってきました。
そんなもん、騙し合いって戦国武将かよ。
『なつぞら』の泰樹の方がよほど騙してそうな顔をしている。そうなりそうですが……そういうことでもない。
※泰樹の前世か……
彼らのおそろしいところは、自分たちでもそう認識できていないところ。今日の「サニー」で、八郎は自己欺瞞の罠に気付いている気配は出てきた。
けれども、喜美子は違う。
騙すことなく、まっすぐに、八郎を見つめる。そんな存在は三津なのだと、妹たちの騒動が落ち着けば気がつくことでしょう。
これは見る側もそう。
あの八郎さんがそんなはずはない、あんなに優しく愛があった彼なのに。
喜美子に落ち度はない。喜美子はがんばってきた。
三津が悪い?
それはどうでしょうか。
三津が悪い、騙してくる女狐のように思えるのだとすれば?
それは彼女が騙せない、まっすぐな存在だからではありませんか?
泰樹の前世・真田昌幸を考えてみましょう。
彼は自分自身だけは、絶対に騙さなかった。真田郷を守るためには、主君に「武田は滅びませぬ!」と嘘をついてでも、有利な条件を得たかった。
真田郷を守るためには、徳川・北条・上杉を騙す。室賀正武は始末する。
あまりにまっすぐで、自分の心に嘘をつけない人。自分をまげて騙して世の中を丸く収めようとする側からすれば、そんな相手こそが厄介でひどい存在に思える。
泰樹周辺の転生先であった『なつぞら』ワールドは、騙し合いをしないですむ場所でした。
しかし、同時代でも信楽はそうでなかったようでして……本作はますます、ねじれてゆくのでしょう。
三津をともかく悪いとみなす、そんなサンプルがありましたので、紹介しますね。
彼女が魔女なのか? 疫病神なのか?
三津が叩かれるから、先に予防しておきたいとさんざん書いてきましたが。
当たりました。三津本人ではなく、演じる女優叩きです。
◆黒島結菜は疫病神!? 朝ドラ新キャストが『スカーレット』登場で視聴率が急降下
その一方、こんな記事がありまして。
◆博多大吉も歓喜!NHKの寵愛を受ける俳優の「スカーレット」登場
この方の演じる弟子は、逆恨みした挙句、師匠宅から窃盗を行い、撃退される噛ませ犬扱いでしたが。そんな扱われ方をしておいて喜ぶ博多大吉さんが根性悪いように思えるので、勘弁していただきたいところです。
特定の女優が疫病神で、端役が寵愛か……なんですかね、この現象って。
黒島がNHKにかわいがられているのは周知の事実だが、実は「赤津」こと永沼も朝ドラ「べっぴんさん」「わろてんか」「まんぷく」、大河ドラマ「いだてん」などに出演しており、かわいがられている役者の1人。今年は「スカーレット」を皮切りに飛躍の年となるか。
『べっぴんさん』、『わろてんか』、『まんぷく』、『いだてん』……この流れで、寵愛と言えるかどうか、ちょっと考えたいところでもあります。
どうにも、昨年の放送事故は異常。
赤津で騒ぐ投稿なんて、多重ありきの誘導ばかりでしたが、ナゼかネットニュースでは取り上げられる。
昨年の放送事故は、叩けば何か出てくると思えるのは、こういう動きが不自然すぎるからなのです。メディアコントロールを一年経過してもやっている?だとすれば異常だと思います。
これも誰かを騙したいのか。自分自身、配信する側自身を騙しつつのことなのか。そこまで考えてしまいます。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
スカーレット/公式サイト
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