スカーレット96話あらすじ感想(1/25)トーン・ポリシングごと焼き尽くせ!!!

八郎は喜美子を気遣い、しっかり寝たかと聞いてはくるものの、解決してはいない。

何がいけなかったのか。
温度が思うように右あがらないまま、五日目の朝を迎えました。

あれだけ用意していた薪は、残り僅かとなりました。

『どないしよう……もう一旦火を止めてしまおうか。ハチさんどないしよう……』

ナレーションが喜美子の心を語る。そう弱気になった喜美子は、工房に助けを求めるように入ってゆきます。

そこで目にしたのは、三津と寄り添うように眠る八郎の姿でした。

スプーンを重ねたような姿です。

寝ていて自然になるのではなく、演技指導がつく。それがドラマですからね。
こういう寝姿の二人というのは、互いに寄り添い守り合いたい、そういう心があるとは思える。

穴窯完成の宴でも、お酌をして回っていたのは三津。

一方で、喜美子と八郎は違うと思える。まさしく同床異夢。

喜美子は八郎の助言を求めず、引き返してゆきます。

バイオリンの音が高まる中、喜美子は窯に向き合っている。薪の束を運び、ばらし、投げてゆく。

そして目覚めた三津は、眠り姫のように無邪気な八郎の顔に、ゆっくりと口を近づけてゆくのです。

この場面のおそろしさは【#八郎沼】にはまっていた、そういう視聴者の心を滅多刺しにするようなところでして。

胸がほっこり、きゅんきゅんして。私も彼とキスしたい! そういう心理にある意味寄り添ってくる。

「せやな、叶えたるで!」

ホラー小説の悪魔じみたやり方で、この作品の作り手は実現する。

ちがう、そんなやり方で叶えて欲しくない!
やめて!!

そう叫びたくなるとすれば、喜美子の気持ちに感情移入してしまっているから。

夫婦という一つになった心を、残酷なまでに切り裂く。あんなにも八郎が魅力的に描かれたのは、この引き裂かれる痛みの前振りでしょう。

かつて八郎は、

「僕も男やで」

と言いながら、喜美子にキスをしました。彼も男。三津に迫られて、そうなってしまったら?

喜美子は八郎と三津の仲に、激しい怒りを燃やしているのか?
それとも無関心?

炎を受けて赤く輝く、そんな喜美子の顔。

キスをした時。

結婚を決めた時。

そんな時よりも、輝いていて美しい。

我が道を行くと決めたとき、人は、こんなにも美しく、残酷な目になるのだと――。

そう思える、戸田恵梨香さんの熱くなる瞬間でした。

喜美子がくる、炎を連れてくる

※勝利演説をするデナーリス

はっきり言ってどうでもええ。そんな私の仕事環境ですが、BGMは主題歌Superflyの『フレア』をかけております。

しかし今週後半は『麒麟がくる』のメインテーマにしました。困ったことに、それでスカーレットに取り組んでいても、特に違和感がない!

もう、戸田恵梨香さんはアレやろ。

【あの人が率いる謎の軍団に、故郷の村を焼かれたい】枠に、栗山千明さんと一緒に入ったわ。

『麒麟がくる』の染谷将太さんは、とりあえず、この戸田恵梨香さんに匹敵する目つきで、あれやこれやを焼くことを目指してほしい!(できますよね? 神っちで証明済だもんね?)

ほんまに喜美子は、朝ドラのデナーリス・ターガリエン(『ゲーム・オブ・スローンズ』)になりつつある。

ネタバレだと前置きします。

彼女は難しいヒロインでした。
家族の暴虐にさらされ、苦労を重ね、大切なものをいくつも失ってきた。視聴者はそんな彼女を応援してしまう。

正しい目的のために王座を要求する女王候補。それが……。

「そこまでやれとは言ってへん!」

炎を燃やしまくり、大惨劇を引き起こす。

愛する男が止めても、

「王座や! 王座、王座、女王の座や!」

と激しく主張を繰り返し、悲劇へ突き進むのです。

最終回まで見終えたあと、そういえばアレは主張のためならやたらと焼きまくる奴だったな……と冷静にはなれるのですが。

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喜美子もそう。
彼女にだって、第一回から自己主張の激しさはあった。ホウキ持って次郎を追い回す武力は、極めて高い。しかも、知勇兼備。

『半分、青い。』や『なつぞら』のヒロインを引き合いにだして、なんて素晴らしいええ子や、甘えない子ぉやと、ネットニュースでも評価されていたわけですが。

心の奥にある、真っ赤に燃える炎――リミッターが外れて、下克上を達成して、ここまで激しく燃え上がったら、それに耐え切れますか?
観る側までそこを試されている。

本作の低視聴率分析をする、そういうブログやネットニュースはある。
ざっと目を通しました。想像は尽きます。

「女はイケメンの八郎にメロメロで、疑似恋愛したいのに、それができなくなったのがあかん!」

「女が作っとるからあかんのよ。男優は頑張ってるのに、女優は足引っ張っとるわ。やっぱり視聴率の鍵を握るのは男やで〜」

せやろか?

【トーン・ポリシング】ごと焼き尽くせ

本作の敵は見えてきました。

【トーン・ポリシング】やで!

トーン・ポリシングとは?
→「保育園落ちた、日本死ね!」の一件を例にとりますと、待機児童の問題そのものに向かい合わず、「日本死ね、という言い草はなんだ!」と論点をずらす行為を指します

→「違う言葉を使おうよ」とか「冷静になろうな」と指摘し、【冷静なのは自分】というスタンスで相手の主張を打ち消す

→結果、主張する側と諭す側で価値観の差が拡大されてしまいます

【参照:琉球新報

朝ドラでこれに挑むことが、どんだけすごいか?

というのも、朝ドラこそまさしく【トーン・ポリシング】の砦でしたからね。

近年はそういう傾向が強烈で。2014年上半期『花子とアン』のモデル、村岡花子は女権運動に尽くした。

新紙幣の顔・津田梅子の教えを引き継ぐ、そんな思想を消し去ったのは本当に侮辱的だと思う。ついでにいえば、柳原白蓮の廃娼運動への貢献も矮小化しましたね。

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2015年下半期『あさが来た』のモデルである広岡浅子は、実像は厳しく、写真を見てもニッコリとはしていない。

ポスターはともかくとして、劇中のあさはエヘラエヘラしていた。子どもじみた「びっくりぽんのかっぱー!」を見た瞬間は絶句しましたよ。

五代友厚依存症も酷い。史実ではほぼ接点がないのに。

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2017年と2018年のNHK大阪ヒロインは、もう【知略をどれだけ下げられるかチャレンジ】枠なので、ここでは省きます。

朝ドラヒロインは愛されるかわいこちゃんじゃないと! そういう忖度じみた【トーン・ポリシング】が、ヒロインを縛りつけ、知略すら低下させられてきたのです。

気が強いヒロインは、言葉尻をとらえられて罵詈雑言の的にされる。前述のNHK東京ヒロインがぶっ叩かれ、未だにギャーギャー言われている姿をご覧ください。

朝ドラの話題を振るだけで、『半分、青い。』のヒロインと脚本家叩きを始める人は、統計を取りたいくらい出逢いました(しかも、ドラマそのものは見ていない人も結構いる)。

生意気な女叩きはスナック感覚の娯楽ってことです。

喜美子だって、既に「生意気で感情的だ!」というネットニュースは出てきた。作り手の方はニヤリとしていたかもしれない。最初から想定というか計算通り、だと思うのです。

そこを踏まえて、知勇兼備、NHK東京朝ドラヒロインすらかわいらしく思える、燃やす女・喜美子――。

NHK大阪の挑戦が、眩しくて、まばゆくて、朝から血圧があがって苦しいほどなのです。

◆‪中立的な立場に見える「トーンポリシング」に騙されない!モバプリの知っ得!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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