スカーレット122話あらすじ感想(2/25)昭和おっちゃん 地獄の極み

「ほな、ほな昨日の晩ご飯は?」

「ハンバァーグ!」

伸ばさんといいです。そして次は?

「一昨日の晩ご飯は?」

「記憶にございません!」

百合子は、ほんまに忘れてるんちゃう? と突っ込みます。敏春も思い出せていないようです。一昨日の晩ご飯が思い出せないのは老化らしいで。そう言われて、ギクリとする敏春(と視聴者)。

「僕のこと気にせんと続けてください」

そんな敏春を背景に、第3問!

「冬の間にうちが巻いてたマフラーの色は? 次! うちらは結婚何年目?」

記憶にございません!の連続に、百合子はさすがにムッとしてくる。

しかも信作は、課長だから忙しいという、しょうもない言い訳をする。

なんやこの、典型的な無能上司は。それに、この特別編で見えてきたことがありますよね。

暇な専業主婦扱いをされている百合子は、きっちり店の手伝いをしている。働いていることがわかる。信作と百合子、どちらが忙しいのか? そういう話ですわ。信作、仕事中ぼーっと新聞読んで、部下に憎まれてへん? 大丈夫?

百合子はムッとしております。喜美子姉ちゃんは忙しくても覚えてるってよ。確かに彼女はそういう記憶力が抜群そうですもんね。

「強い女性がイラッととしてるでぇ〜」

はぁ〜しょうもない。そういうムカつくことを言い出す信作。あまりの生々しさに驚いてしまう。

こういう怒る女性を笑い者にして、茶化して、おかしいのはそっちや、何ムキになっとんねん、そうごまかす手口。典型的な【トーンポリシング】やな。トランプ大統領がグレタさんにやっとるわ。

林遣都さんというイケメンだろうと、ムカつく中身では無意味やと証明する本作。すごいで、なんちゅう受信料の使い方や! 最高ちゃうか!

「すんません、僕が余計な話をしたせいで!」

重い空気に耐えきれなくなったのか。ここで敏春が焦り、謝ります。百合子は、敏春さんのせいやない、誰かさんが「しょうもないことをしぃ」と返すんですが……。

「誰かさんって誰ですか」

信作が茶化す。ほんまにこいつら……。ジョーだったら「しょうもなっ!」と一言でぶった斬りそうではある。

女が強くなったと敏春は言いました。
そらそうやと思う。百合子の夫への反論は、マツ世代ではどうでしょう。陽子はできても、マツは?

あらすじを見ても、こういう誘導はされています。

【百合子が信作の女性遍歴に嫉妬!】

それこそが罠だとは思う。
百合子は、信作の過去にいる女性に嫉妬してはおりません。【女の敵は女】ではなく【女の敵は男、そや、そこのお前や!】です。

しょうもない態度を取る。自分に関心を払っていない。ごまかそうとする。そういう夫の不誠実さ、無関心に怒っているのです。

あるあるですわ……。

結婚記念日なのに、何もしてくれない。

子どもの誕生日なのに、飲み会を入れてくる。

風邪をひいた妻に対して、「俺の夕食どないすんねん?」と自分の心配ばかりする。

そういうことやぞ?

本作のニュースを追いかけていると、ひっかけが出てきます。

あらすじがおもろい。あらすじから予想した展開とずれるのです。しかも、その偏見はだいたい【女の敵は女】で説明がつきます。

そういう偏見があると、【主人公をいびる役で人気が出た大久保】という表現になってしまう。

大久保さんはそういう存在でないことは、普通に見ていればわかりますよね。

そういう状況を踏まえているとわかる。水島氏だけではなく、こちらの三谷氏もわかっている。そんな誠意を感じます。

信長・照子「濃い味付けの何があかんねん!」

はい、ここで次の人物が顔を見せる。照子が窓から文字通り顔だけ見せます。

敏春ーッ、敵が来ておるぞー!

そう言いたくなりますわ。【男の敵は女】やで……。

敏春は話を逸らそうとして、照子にコーヒーのいれ方を教えてやって欲しいと言います。

百合子はこうです。かまいませんけど、コーヒーくらいいれるんちゃいます? と、敏春にそれとなく聞き返す。インスタントならと渋い顔の敏春。この前、豆を分けてもらったのに、豆を挽かんとそのままお湯いれたと衝撃の告白をします。

思わずコーヒーを吹き出す信作。昨日の信作で「こんなん嘘やん!」と突っ込んだ方もおられるかもしれませんが。せやろか? 2人目や。実際、この年代はお茶汲みは全部女任せにしとって、驚くほど家事の知識がなかったりする。

この前、女性7人が県議にお茶出しのために雇用されていて、廃止した埼玉県議会のニュースがあったじゃないですか。

嘘やん!
そう叫びたくなるニュースではありますが、それが昭和でした。平成でも? ま、平成はしゃあない。

けど、もう令和や。そういうんはもう、絶滅させんとな!

照子の存在に気づかぬまま、敏春はすっかり愚痴モードへ入っていきます。

料理も苦手で。僕やお母さんのことを気にして野菜を作っているけれども、そもそもが照子の料理のせいで高血圧になったんちゃうんか。そう言っているそうです。

信作は、すき焼きにも醤油をバァー入れてたとすかさず言う。

ここは関西、しかも敏春は京都老舗旅館の子やし、いろいろ言いたいことはあるとみた。

関西人といえばこれやな。

「東京の、うどんの汁は真っ黒けや!」

これは塩分だけではなく、醤油の違いもあるのですが。ともかく関西には、おだしを利かせて薄味にする、そういう誇りはありますよね。

関西だけでもない。古今東西、田舎もんは塩分を濃くするとは言われます。肉体労働をすると、汗により塩分を失う。そういう体を動かす労働者は嫌やわぁ、オホホホ。そういう貴族目線ですわ。織田信長もそういう馬鹿にされ方をしておりましたっけ。

ですので、照子の塩分問題はかなりのハラスメントになりかねない、そういうツッコミ方は感じます。

カレーはルーを買うてくればできる。それでもあきまへん。そう言われる照子。

固形のカレールーの前は、カレー粉でして。そこからすれば、ルーなんて手抜きもええところ。便利やな! そういう目線は出てくる。

今でも、似たようなこととしてクックドゥ論争があるやないですか。彼女や妻がクックドゥ系のものを使っただけでマウンティングする。そういうしょうもねえ話ですわ。

げえっ照子!

ここで百合子は、昭和の主婦らしい知恵を言い出します。

カレーの隠し味にコーヒーをちょっと入れる。

リンゴとか、果物とか。Megaという無駄に気合の入った小道具担当者の存在を感じさせる、そんなチョコレートもいいってよ。このお鍋なら3つ。

敏春がどこで知ったのかというと、雑誌やテレビというあたりも興味深い。インド人経由ではない。

本作はほんまにおっとろしいわ。なんやこの、百合子世代が大好きなカレーの隠し味談議は!

女性が多く集まるインターネットスレッドでも、

「あんな隠し味ありえへん!」

「いやいや、うちでも入れるで」

と、何かと騒がしいアレや。そんなんアレやん、インドにないもんはおかしいんちゃうか?

令和に生きる人々は、ようわからんし、根拠のあるターメリックやチャツネを使うかもしれませんけれども、ほんまにあの世代はようわからんあやしげなもんをカレーに入れるのが好きで。

なんか記憶が刺激されるな。
カレー談義を昨年の今頃もした気がする。

そうそう、アレは確か「本場アメリカのカレーを超えた!」というセリフがあって。日本のカレーは、当時インドの宗主国しとったイギリス経由やで。インドはわかる、イギリスも。せやけどアメリカはなんやねん! どっから出てきた! 作り手に料理の知識ないのが丸見えて恥ずかしいわ!

そうようけ怒ったっけなぁ。NHK大阪には料理の知識があるとわかって、今年は最高です。

敏春は、そんなカレーを味見して満足そう。喫茶店のカレーはおいしいもんです。なのであんまり照子を責めんほうが……。

照子はそーっと、信作にだけ合図して、ドアベルも鳴らさずに入ってきます。

うん、違う、全然違う、プロの味! そう満足そうな敏春。迫る照子。

なんやねん、この『麒麟がくる』の連歌会襲撃事件めいた緊張感は。

敏春は調子こいてます。

「照子の作るカレーも色はおんなじなんですけどね。味に繊細さがないというか、大雑把なんやな。照子の性格が隠し味にあったりしてね!」

照子に気づいた百合子は、家庭菜園でおいしい野菜を持って来てくれると必死に誘導する。

しかし、それが逆効果。

家庭菜園で日焼けして、シミが増えた。土塗れで、丸熊の若い連中より土くさい。そう笑いながら言います。

「履いてる長靴からね、ほんまにこうすんごい……」

そうそう、こういう。肩に差し出されたゴボウを見てもまだ気づかない。

そしてついに、その時が来る。

「うわあっ!」

ジャーンジャーンジャーン、げえっ、照子!

関羽に出くわした曹操のような驚愕を見せる、そんな絶体絶命の敏春の運命は?!

明日を待て!!

※あの大島優子さんが関羽に見える日が来るとは……

関西の洒脱な雰囲気と、朝ドラHELL

久しぶりに、今日は中島らも氏のことを思いだしました。

ともかく多才な方です。
彼の作品を読んだとき、おもろいおっちゃんであり、かつ深い知識があると感じたものです。

軽妙なしょうもないギャグを繰り出すようで、その奥には知識や教養がある。鋭い目で社会を見ているからこそ、こういうものが書けるのかと思ったもんです。

今日の15分から、そういう関西の洒脱なものを思い出した。あの作風に通じるもんがあるで!

しょうもない特別編のようで、本作の底力を感じました。

手癖だけではない。水島氏の、作品を深く読み込んだ上で、そこにある批評精神や観察眼をきっちりと入れ込む。

登場人物設定や役者の個性をふまえることは基本。そこに応用として、いろいろな要素を詰め込んできました。それこそ、カレーの隠し味のように。

人間観察眼も秀逸です。そしてハバネロめいた地獄みがあった!

信作も敏春も、おもろいだけではない。妻の神経を逆撫でしていて、昭和おっちゃんの悪しきもんが出ていると思いました。自分を棚上げして、妻の料理や老化をけなす。直球のあかんおっちゃんや。

何度となく、本作は一定の年齢層のおっちゃんに豪速球デッドボールを当てる。そういう朝ドラHELLだと指摘してきました。

今朝はそういう地獄の極みを見た気がするで!

毎朝限界に挑む。おっとろしい作品やと思いますわ。ラストスパートも期待しとるで!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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