前回(第9話)までの『西郷どん』は……。
1854年3月、吉之助(西郷隆盛)の江戸生活が始まった。
江戸の芝にある薩摩藩邸。
約22,000坪という広大な敷地には1,000人以上もの藩士が常勤し、当初、吉之助は「中御小姓定御供江戸詰」という役職が与えられた。
藩邸で主君の雑用をこなすシゴトであり、上司・迫田友之進からは厳しく管理される日々。
到着して間もないころ、先に江戸詰の役割を与えられていた大山格之助(大山綱良)と有村俊斎(海江田信義)と品川宿へ遊びに出ると、そこにいたのはかつて薩摩の村から売られてきたフキであった。
再会に驚いていると、彼女を贔屓にしている「ヒー様」という客からお声が。
そんなことも露知らず、島津斉彬直々の命令をくだされた吉之助。
後日、水戸藩邸へ出向いて、斉彬からの書状を徳川斉昭に渡す。
と、そこにいたのは、品川宿にいた「ヒー様」だった。
「ヒー様」とは、一橋慶喜(松田翔太さん)、後の徳川慶喜だったのである。
俺は将軍になどなりたくない
徳川斉昭に書状を渡し、それがビリビリと破られことも含めて斉彬へ報告した吉之助。
斉彬はその様子を面白がり、さらにはヒー様こと一橋慶喜とすでに対面を果たしている吉之助を褒め称え、さらに仲良くなれと申し付ける。
吉之助は、ヒー様に会うべく、再び品川宿の磯田屋へ。
大山格之助(大山綱良)と有村俊斎(海江田信義)にからかわれながらも、一橋慶喜との再会を果たす。
慶喜は、会うなり西郷に言った。
「お前んとこの殿に、俺は将軍になどなりたくない。迷惑していると、そう伝えとけ」
事態がまったく呑み込めない吉之助。
戸惑っていると、部屋の外からフキ(高梨臨さん)の慌てる声が聞こえてきた。
どうやら同僚のタマが急に倒れたという。
吉之助たちが急いでその場へ走っていくと、医師という男がいた。
その医師に望まれるまま吉之助が短刀を渡すと「瀉血(しゃけつ)」と言って、体内から血を抜く医術を行う。
医師は治療を終えると、吉之助の短刀を意味ありげに見てから、すぐにその場を去った。
この医師こそが、福井藩の天才と呼ばれる橋本左内(風間俊介さん)であった。
父を喪った篤姫が失踪 品川の海で吉之助が……
薩摩藩邸に戻った吉之助は、慶喜の言葉を斉彬に伝える。
険しい表情を浮かべる斉彬。
「一橋様も、一筋縄ではいかないお人じゃ」
といい、西郷にそのまま慶喜の動向を探るよう命じるのであった。
そのころ篤姫に訃報が届けられる。
国許の父・島津忠剛(ただたけ)が亡くなったのだった。
哀しみのあまり、増上寺への参拝途中で行方をくらます篤姫。
品川の海で彼女を探し出したのが吉之助だった。
「篤姫様、悲しいときは泣いたらよか……」
この言葉で思わず泣いてしまう篤姫。
吉之助も思わずもらい泣き。
吉之助に付き添われて篤姫が藩邸に戻ると、斉彬がついに輿入れの話を伝えた。
相手は徳川家定(又吉直樹さん)。
徳川13代将軍である。
その補佐として近衛家から呼ばれたのが幾島(南野陽子さん)。
蛇足であるが、本来なら斉藤由貴さんが演じる予定だった、篤姫の教育係である。
千人ほどの女中がいる大奥。
そのトップが御台所(将軍の正室)であり、言葉遣いや所作、ほかに薙刀など、学ばねばならないことは山ほどあった。
そして西郷にも「篤姫様付用人」という役目が与えられる。
要は警護役であったが、御台所となる篤姫には、薩摩言葉を封じるためにも、吉之助とは会話をせぬよう、幾島からきつく命じられた。
ちなみに幾島の授業の中には、お世継ぎを残すための夜の教育もあり、枕絵(春画・男女の秘め事が描かれている)が使われた。
左内は福井藩の密偵だった
吉之助が部屋へ戻ると、そこに磯田屋で会った医者がいた。
橋本左内である。
左内は、表は藩医ながら、その実、自身が福井藩・松平慶永(松平春嶽)の使いであることを告げる。
「殿の密偵っちこっか!?」
その日、左内が持参した松平春嶽の書状には、一橋慶喜を将軍にするための策が書かれていたという。
それを聞いて混乱する西郷。
無理もない。
篤姫が13代将軍の徳川家定に輿入れすると決まったばかりである。
普通に考えれば篤姫との間に生まれてくる子供が次の将軍候補になるハズだ。
が、そうではないと左内が説明を続ける。
諸外国からの圧力が増している最中、今後、ますます幕府の対応は難しくなる。
かと言って海外事情に明るい島津家のような外様大名に、発言権はない。
むろん、今のままでは危機的状況に陥るのは目に見えている。
ということで諸藩が手を組み政治・外交を進めていうべきで、そのために次代の将軍には能力が求められる。
それが一橋慶喜というワケである。
徳川家定は生まれついての虚弱体質であり、子供ができるか不明。
生まれたとしても難局を乗り切るにはあまりにも心もとない――。
と、説明をした左内であったが、吉之助があまりに事情に疎いため、呆れてその場を去ってしまう。
吉之助は左内から受け渡された書状を斉彬に届けた。
満足そうな表情を浮かべる斉彬。
しかし、納得のいかない吉之助。
もう一刻の猶予もないという斉彬は、吉之助にこう伝えるのであった。
「於篤は……不幸になる」
文:編集部
【参考】
橋本左内
徳川慶喜(一橋慶喜)
徳川斉昭
幾島
篤姫
徳川家定
西郷隆盛(西郷吉之助)
有村俊斎(海江田信義)
大山格之助(大山綱良)
『西郷どん(前編)』
『西郷どん(後編)』
『西郷どん完全読本』
『西郷どん ガイドブック
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