半分、青い。25話あらすじ感想(4/30)動き始めた物語

イケイケバブルに陰りが見えつつあった、平成最初の1989年。

岐阜県東美濃市で暮らす高校三年生の楡野鈴愛は、祖父の口利きもあって、やっと地元農協に決まりました。

そんなある日、鈴愛は大好きな漫画家・秋風羽織のトークショーに参加することになります。
羽織は鈴愛が差し入れした五平餅を気に入った羽織は、鈴愛を楽屋に呼ぶのでした。

 

秋風の色々なギャップ

差し入れを絶賛する羽織に、名前と製造過程を伝える鈴愛。
炊きたてご飯を使い、秘伝のタレを使うところがポイントかも。

「五平餅。聞いたことはあった。どこで作ったものですか?」
「うちです」
「すごいな! 美味しかった、これは売れるに違いない」
「くるみを一個一個潰して入れています」
「くるみ! いい仕事をしている」

興奮気味にそう語る羽織ですが、鈴愛はややポカーンとしています。

そういえば、このやり取りで思い出したのが、少女漫画家の山岸涼子先生です。
彼女は甘いものが大の苦手で、好きなお菓子はおせんべい。少女漫画家というと、おしゃれなケーキやクッキーが好きそうなのに、イメージに合わなくてすみません、とエッセー漫画に描いていました。

正統派少女漫画。
みうらじゅんに似たルックスの秋風羽織。
神経質なトーク。
そして好きな食べ物は、五平餅。

確かにギャップがありますねえ。

 

「写ルンです」で撮影

鈴愛は、羽織に頼んで写真を撮影することに。
カメラは当時流行していた「写ルンです」らしきものです。

使い捨てカメラという名前でも知られたこの商品(実際にはリサイクルしているので、使い捨てとは言い切れません)。

デジカメ、スマホ全盛期になって下火になったかと思っていましたが、現役です。
フィルムの風合いを好む、気軽に撮りたい層にはまだまだ人気なのだとか(富士フィルム公式サイト)。

 

「あれは紛れもなく真実の五平餅だ」
まだ熱く語りたそうな羽織。

楽屋を出て行こうとした鈴愛は、立ち止まります。

「あのっ、私、漫画描いています! 今日、持って来ているんです!」
そういうと、二作目の漫画『神様のメモ』を差し出しました。

断るどころか、真剣に読み始める羽織が……。
「質問いいですか? これ、スケッチブック破って描いたの?」
「はいっ! 開いて描いていたんですけど、手に引っかかるので」
「画用紙に鉛筆……ベタは何で?」
「ベタ?」
「この黒いところ」
「筆ペンです!」
「そこだけは奇跡的に合ってる」

そう言うと羽織は説明します。
「漫画はね、ペンで描くんだよ」
そう説明されても、鈴愛はまったく理解できません。

 

律「先生、大丈夫ですか?」秋風「タジオ、君は賢い」

ここで、羽織のアシスタント・ボクテによる作画過程の説明が入ります。

「もうひとつ、漫画はネームがあるんだけど。いきなり描いたの? 天才?」

思わず律が突っ込みます。
「秋風先生、大丈夫ですか? こいつが規格外すぎて、勘違いしていませんか」
「タジオ。君は賢い」

タジオとは、映画『ベニスに死す』に登場する美少年のことで、羽織は美少年をそう呼ぶそうです。

 

「そうなんです。東大行く予定です。あ、京大に格下げしますけど」
鈴愛がそうフォローすると、羽織は「いいね。私は美大中退だから」とつぶやきます。

ここで羽織は、鈴愛に興味が湧いたのか、名前を確認すると、こう言うのです。

「私の弟子になりませんか?」
な、なんと!

 

家族を説得するための作戦会議だ

場面はここで切り替わり、「ともしび」に。

「なんで名古屋まで行きながら、ここでお好み焼き食ってんの」
律はそう不満そうです。

鈴愛は、親を説得するための作戦会議をしたいのだそうです。
誰から説得すべきか? 歳をとってボケかけている仙吉からがいいかも、と、サラッと酷いことを言う鈴愛。

「晴おばさんは錯乱するだろうなあ」
それは二人の一致した意見です。
ここが最大の難関でしょう。律は懐疑的です。

「本当に東京に行けるのか? 弟子になれるのか?」
鈴愛は、秋風羽織の世界観に夢中ですから、絶対に行くのだと決意を固めているのでした。

「私は、漫画家になる! 今決めました!」
おお、重大な決意をさらりと。
どうなる、鈴愛!

「アホなんか天才なのかわからん。ウルトラCで和子さんを使う手もあるぞ」
懐かしのウルトラCなんて言葉を使い、そう提案する律です。

ナレーションの廉子さんは、自分が生きていたら何番目に説得されたかな、と考えています。

一度しかない人生、血脇胸躍ることがあってもいい、と語る廉子さん。正確に言うと「血湧き肉躍る」だっけ? でも胸躍るの方がよいじゃないですか、と語るのでした。

相変わらずナレーションがいい味を出していますね。

 

岐阜の猿を連れてきてどうするの?

東京の秋風事務所では……。
羽織のマネージャーの菱本が、岐阜から猿を連れてくるなんて、と不満そうです。

「まぁ見ていなさい。面白いことになりますよ」
不敵に笑う羽織。

とはいえ、鈴愛も結局は家族に言い出せないまま、1週間が経過してしまいます。

先週描かれた、あのあたたかい就職祝いパーティを思いだすと、そりゃあ簡単には言えませんよね。
それでもポケットには羽織の名刺を入れていて、お守り代わりにしている鈴愛。

そんなある日。
鈴愛は仕上がったスーツを、晴と幸子の前で試着することになりました。

嬉しそうな母親の姿に黙っていられなくなったのでしょう。

「私は農協に勤めん、東京に行く! 漫画家になる!!」
そう宣言してしまうのでした。

 

今日のマトメ「大きく動き始めた物語」

安定した就職先を蹴って夢探しといえば、2015年の『まれ』という失敗作がありました。

あの作品よりも漫画への憧れを描き、目指す師匠も見つかっていて、就職前ですのでうまくいきそうな気がしてきました。

そりゃあれだけのアットホームなパーティをされたら罪悪感はあるでしょうけれども、そこは仕方ありません。
地元のあたたかい善意が、夢を目指す上で障害になるという展開は、2013年『あまちゃん』も思い出しました。

さて、本日、基礎がまったくなっていない鈴愛が、秋風羽織に見出される展開はあまりにおかしいと突っ込んだ方もおられると思います。

しかし、これはむしろ「だがそれがいい」。
漫画チックな展開狙いであれば、むしろ王道中の王道です。

【本人も無自覚なのに、有り余る資質を持つ主人公。ひょんなきっかけであることを始めたところ、その天才性と資質がグングン伸び始める】
というのは、主にスポ根ものでありがちです。

天才性に自覚的だと嫌味になるので、無邪気でちょっと天然、天真爛漫な性格であることも、ありがちですね。

※「実は、中学卒業後、家出同然で東京へ出て、最初は公園で暮らしながら、ついにプロのマンガ家になった女性がいたんですよ。それに比べると最初にアシスタントを経験するであろう鈴愛の方がむしろリアルです」とは編集さん談。ペン一本で食おうという人は、現実的にそれぐらい思い切った行動をしても不思議じゃないのでしょうね

作中の舞台設定に近い年代ですと、この典型例が『SLAM DUNK』ですね。

告白した相手が、バスケ部エースを好きだったことでフラれた主人公。
バスケなんてむしろ嫌いだったのに、その女の子から誘われて試してみたところ、ダンクシュートを決めてしまう、意外な才能が明らかに。

とはいえ、高校生から始めたから、ドリブルのような基礎練習もしなくてはいけない、そういうお話でした。

 

こういうタイプの話は、主人公の目を通してその競技の基礎的な部分も学べるというメリットもあります。

ちなみに本当にこういうタイプのアスリートもいます。
現在、漫画連載中の『JJM 女子柔道部物語』のモデルとなったオリンピック金メダリストの恵本裕子さんは、このタイプでした。

本作の面白さは、ベタな少女漫画のように運命の相手と出会っているヒロインが、少女漫画を描く側に入り込んで行くことでして。
ベタな漫画のような展開は、むしろ本作の味になっていると思います。
リアリティがなくて漫画チックなのが、味なのです。

鈴愛は基礎はできていないものの、漫画家としての資質がある描写はちゃんとありました。

・幼いころから際立っていたデッサン力、画力
・父宇太郎の影響で漫画をたくさん鑑賞してきた豊かな想像力、イマジネーション

この展開は無理があるどころか、むしろベタで、大いにアリです。

物語が大きく動き出しました。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

2 Comments

ビーチボーイ

・ボケかけたお祖父ちゃんなら簡単に陥落できそう
・東大から京大に格下げする
・岐阜の猿を拾う
えっこんな表現しちゃって大丈夫?とギクリとした場面が15分間に3回もありました。NHKの看板番組の朝ドラや大河となると今後はちょっと回避しといた方が無難かなと制作サイドが気に留める可能性はありますね。いやもしかすると「平成30年の現在ではこれは確かに突っつかれるだろうが、平成元年当時ならなんら問題なくセーフだったのだ。これも正確な時代描写の一環だ」ということかも知れませんが。
誤解のないように。私はこれらの「差別表現」を批判してるのではなく、むしろ逆です。この程度のことでビクビクしてセリフに制約かけてしまうような「検閲ドラマ」にはなってほしくない。ぜひ今のまま、伸びやかなおおらかな本作の雰囲気をキープしてほしいのです。そこに本作がうまくいっている鍵の一つがありそうだから。世の中にはやたらヒマで神経質で底意地の悪いクレーマーが必ずいるので、NHKさんどうかそんなのいちいち取り合わないでくださいね‼って意味です。

しおしお改め、七歳上

わくわくしています。
脚本も緻密、しんっけんに観ています。

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