道行くお姉さんがワンレンボディコンだった、時はバブルの1990年。
人気少女漫画家の秋風羽織に弟子入りした楡野鈴愛は、遠く岐阜県からやって来たのにメシアシの日々です。
羽織に事情を尋ねると、なんと彼女は実力ある候補者の仲間をとりもつ
【潤滑油扱い】
だと知らされます。
しかし今更ノコノコ岐阜へ帰るわけにもいかない鈴愛は、漫画テクニックの一つ【かけあみ】に取り組みます。
一方で萩尾律は、ゆるふわイケメンの隣人・朝井正人と友人関係に。
二人で「おもかげ」という昭和風な喫茶店に入ると、側の席には羽織がいるのでした。
ナポリタンにノスタルジーは時代の流れ
ナポリタンを美味しい美味しい、と食べる律と正人の二人。
そういえば先日ちょっとショックを受けたのですが、ナポリタンの味にノスタルジーを感じるのはせいぜい律世代ぐらいまでだそうです。
今時の若い者は特に懐かしさは感じず、むしろ新鮮な味だそうで。
うっかり会社の後輩に、
「ナポリタンって懐かしいよな〜」
といってもただのオッサンなので、お互い気を付けましょう。
蛇足ですが……二人が通う西北大学のモデル・早稲田の近くには「エルム」という喫茶店があり、そこの【ピラフミート】なる商品が大人気だったそうで。
文字通りピラフとミートソースが一人前ずつ計2人前のっかっているという、学生の胃袋向けボリューム満点メニューが550円程度で流行っていたそうな。と思ったら、閉店を迎えていたようで、これまた時代の流れを感じますね(リンク)。
そんな二人と同じものをこそこそ注文する秋風羽織。
二人の会話に聞き耳を立てます。
「女の子は猫が見たいってくるんだよ。ミレーヌを可愛がりたい、って。でも俺にしなだれかかって、俺がナデナデしてあげているんだ。律は顔が綺麗すぎなんだよ。女の子より可愛い顔だから難しい」
そう語る正人。タチの悪い、たらしっぽさがありますね。
羽織も美しい律の顔が見たくてたまりませんが、ここは我慢です。
ディスコへ行くには心の準備が
「ディスコ行ってみない? マハジャロ」
SNSでもトレンドした「マハジャロ」。
実在した伝説のディスコ「マハラジャ」がモデルであることは明らかですね。
「心の準備が……」
そう渋る律。
確かにディスコで踊るお姉さんはちょっと怖いですね。
「ああいうところで踊る女の子の扇子ね。いい香りがするんだ。オーデコロンを一滴垂らすんだって。きゅんとするよね」
「そんなんだからモテるんだよ」
そうつぶやく律。
そういう小さな気遣いに気づいて、きゅんとする。そこがモテだよ、と。
律はそういうの鈍感そうですもんね。
「ねえ、犬を飼ったらさ。前の犬、捨てる? 増えていくじゃん。女の子で同じことしちゃダメなの?」
突如そう語り出す正人。
東京編になってから人のゲス度アップしているような。
思わず律は、犬と女の子を同列にするのはどうかなと突っ込みます。
「犬はいいのに? 両方愛があるよ」
聞き耳を立てる羽織は、思わずペンを落とします。
「その犬、俺が病院に連れていった」
「そういえばさ、犬で後悔していることがあるんだ」
そう語り出す正人。
なんと正人は、高校受験の朝、犬を救ったそうです。
道路で轢かれた犬を道端まで動かしたものの、受験のために置き去りにしたという……。
あの犬は死んじゃっただろうね、と懺悔するのです。
「それって海藤高校の?」
「なに? 後ろ、ついてる? 何か見えるの!」
守護霊でも見えるのか?とばかりに驚く正人。
いやいや、そうではないと律が答えます。
「その犬、俺が病院に連れていった」
そんな偶然があるんだ!
まぁ、海藤高校は、おそらく東海高校。
灘高やラ・サール等と同じく、県外からの受験生もいるでしょうしね。ギリギリで整合性は保たれているのかな。
ちなみに正人も、犬の罪悪感のせいで受験失敗。ワンちゃんは一命を取り止めました。
「ええ話や……」
思わず涙ぐんでしまうのは、愛犬家の羽織です。
匿名で二人にアイスを奢るのでした。
甘やかされてきたコトに気づくとき
鈴愛は事務所のスタッフに【かけあみ】を褒められています。
丁寧な作業で、印刷しても潰れないように描けているようです。
羽織はそう悪い人じゃないと思います。
かけあみだけで一週間待っているのは、彼なりの温情ではないでしょうか。
しかし、そんな鈴愛の進歩にユーコだけは不満そう……。
ユーコはその夜、岐阜の晴からの電話を取ります。
と、タイミング悪く、鈴愛は外出中。おにぎりとカップラーメンを買って帰ってきました。
お湯を沸かしている鈴愛に、ユーコが親から電話があったと伝えます。特に用件について尋ねない鈴愛をユーコは不思議がりますが。
「いつもそうなんです。声を聞きたいだけです」
サラッと流す鈴愛。
ここでユーコが意地悪を言い出します。
「あんたはあみかけのこと、チャンスだと思っているでしょ。違うわよ、引導を渡す口実を探しているのよ。なーんてね、知らない。私なら後者だと思うけど、あんたは楽観的だから前者だと思うんでしょ。あんたっていつだってそう。誰かが自分を助けてくれると思っている。私、出来ますって手をあげて、一番人のいいボクテを味方につける。可愛いから恵まれて生きてきたんだろうね」
「恵まれてなんかない! 左耳が聞こえなくて、小学校のころ伝言ゲームでいじめられた!」
「だから甘やかされたんでしょ!」
猛然と反論する鈴愛と負けじと返すユーコ。
山猿と呼び、取っ組み合いになりそうな喧嘩になります。ここ、結構な迫力がありました。
ボクテが「菱本にクビにされる! 喧嘩しちゃダメ!」と止めに入ります。
そうしないと周りの物とかを破壊しそうな勢いでした。
喧嘩の後、鈴愛は疲労感を覚えていました。
思わずマグマ大使の笛を吹いてしまいます。
実はユーコの言葉には痛いところを突かれていたのです。
確かに甘えがある、笛を吹けば律が助けてくれる、と思っていたのも、甘え。
律が窓から顔を出したのは、家まで来たから仕方なくではないか?
そう自己嫌悪に陥ります。
ボンヤリと笛を吹いていると、ノックの音が。
律!
思わずそう考えてしまう鈴愛ですが、そんなわけもありません。ボクテでした。
「もう夜中だよ、笛うるさいよ」
確かにこれは迷惑だ。そういうところだぞ、楡野鈴愛!
今日のマトメ「ユーコのツッコミ、確かに適切」
こんなニュースがありました。
どうやらロケ地も賑わっているそうで。
よいことですよね。私も、五平餅、食べてみたいです。
さて、ニュースの次はツッコミどころ。
東京編になってから、登場人物のゲスな面が出てきた本作。
特に主役の鈴愛のダメな子っぷりが炸裂するようになりました。
例えば漫画原稿脅迫事件。
漫画原稿の扱いは、お世辞にもよいとは思えないです。
自分の原稿はサンバランド宝物ファイルに入れたのに、しかも秋風羽織のファンなのに、原稿を人質にとってしまう。
それだけ怒ったんでしょうけど、これは流石にひどい。
ユーコへのブチギレ掴みかかりも、エキセントリックで危ない子だなあ、と思わせました。
興奮すると敬語もあったもんじゃなくなる、そういうところがあるんですね。
ただ、まあ鈴愛の場合、マイナス面だけではないというか。
今日のユーコのツッコミは確かに適切ですし、電話での反応を見るに、彼女自身は家族のサポートなんか無縁で生きてきたのでしょう。
可愛らしく甘えるのはむしろ苦手な方。
そういうユーコからすれば、鈴愛へのイラつきはわかります。
ユーコのツッコミが不快どころか、納得できるのは、鈴愛の痛い部分を適切に突っ込んできたからでしょうね。
主人公のライバルキャラが、主人公の持つ無自覚な嫌味っぷり、甘やかされっぷりにキレよく突っ込む描写は嫌いじゃないし、よくぞやったと言いたいところ。
そういう役目があった律とは再会できていませんし、ユーコやボクテが、鈴愛の甘えに喝を入れてもよいのではないでしょうか。
『わろてんか』でこのツッコミライバルを担当していた楓は、わけがわからないまま、まったくの別キャラにされました。
ユーコはこのキレッキレの味を捨てないままでいて欲しいものです。
視聴者がヒロインに言いたいことを代弁する立ち位置をキープしてくれ!
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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