半分、青い。133話 感想あらすじ視聴率(9/3)平成のリアルは続くよ

離婚を経て、実家の岐阜で「センキチカフェ」を開いたかと思ったら、娘・花野のスケートのため再上京を果たす楡野鈴愛。

まずは業界人・津曲の会社「ヒットエンドラン」で事務員をしながら【おひとりさまメーカー】の起業を夢見ております。

一方、萩尾律は、渡米してスタンフォード大学とのロボット共同研究に従事することになりました。

新たな夢を抱き、新天地へ旅立つ二人。
どんな運命が待っているのでしょうか。

【133話の視聴率は21.8%でした】

 

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殺伐としたオフィスで部下に舌打ちされ

川べりで忘れ得ぬハグをして、それぞれの道へと旅立ってから2年。
時は2010年です。

律はアメリカから帰国し、東京勤務となりました。

ここで引っかかるのが、大阪の学校に通っている翼はどうなったか?ということ。
単身赴任だとすれば、出発前にやり直そうとした【より子との仲】はどうなったのか……と心配になります。

律の役職は経営企画部長でした。
部下に予算を2割カットしてくれと告げるや、なんと舌打ちされてしまいます。

うわー! なんだこの殺伐とした空気は。背後にうつる東京の景観は凄まじく大都会だけど、夢や輝きなんて感じられない。
ナレーションによると、律が担当するのは、予算を削ることや、ときにはリストラみたいなことも手がけるんですって。

「風の音が聞こえん」
外を見ながら、思わず呟く律。

うん、これがリアルですね……。
出世したからって、夢を追いかけられるわけじゃない。

それどころか、開発側の夢を削ぐような、予算削減をしなくてはいけない側に回ることもある。

 

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法律関係の出版社に勤務した正人

朝ドラの事業モノ作品って、いつも夢を追いかけっぱなしなんですよね。

再放送中の『マッサン』もその一例です。
ウイスキー考証は正確性が高く見応え抜群ですが、戦後の三級酒作りが美化されていました。
モデル・竹鶴の工夫や妥協は省かれ、シベリア抑留帰りの後継者に諭される――そんな史実とは異なる美化を盛り込んでいました。

『わろてんか』も、吉本興業の持つ冷酷な判断なんて、まるでありませんでした。
笑顔のヒロインとそのダーリンが、キラキラした夢を追いかけ、誰も傷つけることなく綺麗な夢を掴む。
そういう話ばかりなのです。

そんな律の自宅に、法律関係の出版社に勤務した正人がやって来ました。
いいねぇ!
やっぱりまあくんはいいなあ。お久しぶり!

正人は、川べりのこの物件を探してくれたんだとか。本当は正人が入りたかったのではないか?と律が気遣うほどのよい住居ですが、正人は律が上京すると聞いて即座にここを押さえてくれたそうです。

「めんどくさいもん」
引っ越しのことをそう言う正人。
いえいえ、律のためここを探すのだって、それなりの手間はかかったでしょ。そこは言わない、この癒し系っぷりよ。

 

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気遣う正人は何を気遣う?

正人はビールを持参しております。
以心伝心で、律も枝豆を茹でておりました。

このあと正人が飾ってある翼の写真を見ます。あれ、より子はいないのかな?

律自宅の住所は【風の谷】だそうです。植田町なんてごく普通のところよりずっといいよ、と微笑む正人。

そういえば風の音といい、律にとっては何か野キーワードなのでしょう。しかもここは、律と鈴愛にとって何かが動く川べりです。

ビールで乾杯する二人。
律はあまり喋っていないね、と正人が指摘しました。

アメリカにいたころは英語だったし、かといって英語ペラペラか?と問われると、読むだけで全然話せなかったと返します。

律は正人に、こう告げます。

「あんま気遣わないで」
さすが癒し系正人です。ナチュラルに気遣いが滲んでいました。

「風の谷とか悲しくなる。スナフキンかよ」
それはムーミン谷だよ、と正人に突っ込まれる律です。

ナゼ正人は気遣うのか?というのも気になりますね……。

 

菱松電機はロボット部門から撤退していた

チャイムが鳴りました。
玄関のドアを開くと、律の大学の恩師である宇佐川先生がロボットのかぶり物をして登場します。

ここで衝撃の事実判明。

菱松は、六月でロボット開発部を閉鎖したのだそうです。
どこのメーカーも保守的で、金食い虫のロボット開発は、切り捨て対象になっているのだとか。律がスタンフォードで学んだトルク制御は、もう出来ないのだと。

宇佐川は、律の研究は素晴らしいものだったと興奮しておりますが、それすらもう追いかけられないのです。

うーん、渡米がこんな風に無駄になってしまうとは……。これもリアルですよね。
リーマンショックのあと、こんなふうにイノベーションを削られて、停滞した日本の技術はたくさんあります。スマートフォンなんか、完全に出遅れています。

朝ドラの事業家モノが、戦前を舞台にしたものばかりなのも、こうした背景があるのでしょう。
大同生命、ニッカウイスキー、ファミリア、日清食品。
こうした事業が成功したのは、国が成長する時代と重なっていたこともあるでしょう。

平成の日本は違います。

【おひとりさまメーカー】のような、自由で小規模な成功はあるけれども、イケイケの時代ではもうないのです。
平成にあわせた成功像を模索すべきなのに、朝ドラはそうしないことが多い。かつてのイケイケ日本人のように保守的な家庭を築き、成功してこそだと言いたいような作品ばかりです。

しかし、これって現実逃避のような気がしてきました。

本作は、こういう目をそらしたくなるほど辛い現実や、人々の多種性を描きます。
だからこそ【綺麗な虹色ファンタジーだけ見たい人】からは執拗に叩かれてしまうのでしょう。

人、国、物――すべてのモノに、アップデートは必要なのです。

 

「ちゃんと振り込んだよ。あ、つば……」

ここで律の携帯電話が鳴ります。

「ちゃんと振り込んだよ。あ、つば……」
この一言で、ちゃんと聞いていれば何があったか理解できるのが素晴らしい。

離婚して、しかもより子は、翼に替わらないですぐに電話を切るほど仲がよくないとわかるのです。
養育費の確認電話、つまりは離婚したのだと……。

律に感じていた違和感がここで明らかになりました。
一人暮らしは単身赴任ではなく、バツイチ離婚者としてのものです。

アメリカ生活でストレスがたまり、一家は一ヶ月前に離婚しておりました。
土曜日にやり直そうと言っていてそりゃないよ、という気持ちもわからなくもありません。

しかし、人生ってそういうものかもしれませんよ。

それにしても本作は、表現のレベルが高い。

朝ドラはご飯を食べながらドラマを観る人に向けてユルくわかりやすくしよう、という意図を感じるものも多いもの。週をまたいだ展開をしない、伏線すら用意しないこともしばしばあるのです。
そういうユルい作品ならば、今日の冒頭ナレーションで律の離婚や挫折をざざっと説明するはず。

そうせずにモヤモヤさせておいて電話の会話で表現するのですから、素晴らしい!
本作には人を引き込む、高度なテクニックが散りばめられているんですね。

宇佐川は東京で仲間と集まって立ち寄っただけだから、そろそろ行くと去ってゆきます。ロボットの被り物は、忘れ物ではなくて贈り物だと言って置いていくようです。

そこへ、小川友美と名乗る女性が訪問して来たのでした。

 

海藤高校の受験で助けた犬が

そのころ、律の家のそばの川では、五平餅の屋台を引く人物がおりました。
なんと、鈴愛です!

ん? 津曲のもとで事務員をしていたのでは?

友美は、あの海藤高校受験の際に、律と正人が救った【柴犬チロ】の飼い主でした。

26歳という犬にしては超長寿だったチロは、ギネス記録に残ったのです。
そのパーティの帰りに飼い主の友美が立ち寄ったのでした。

チロ記念プレートを二人に差し出す彼女。途中で買ってきたという五平餅も、持参しております。

律とは、年賀状を送り合う交流を続けていたようで、友美は我が子が受験するようになって、愛犬のために受験生2名を邪魔したことの罪深さを理解したとのことで、謝ってきます。

そんなことよりも律は五平餅の屋台が気になったようで……川べりへ出向きます。

生ビールを二つ頼んで、ビールを運んできた店員をみると、鈴愛!

「え、お前、おばさんになったな」
間髪入れずにビールをぶっかける鈴愛!

来たっ! こういう織田信長の本拠地で育った戦国武将キャラがいいんだよなぁ。
一応スグに謝るところは丸くなったかな。

鈴愛は怒り方が上手です。
怒り方が下手だと、その場ですぐには言い返せないのです。秋風羽織が笛を投げた時も怒っていましたね。

そんな鈴愛に対してわがままといった批判もありますが、その一方で怒った後はすぐにスッキリ!という意見もありますからね。私も爽快感を覚えます。

「やだあもう」
「久しぶりね、律」
とか、そういうよい子ちゃんアルカイックスマイルは、鈴愛に期待すんなっつの。
信長にそういうキャラを期待しないでしょ?

 

「どうや、おばさんやない、美魔女や」

まぁ、律も悪い。
いますよね、こういう同年代の女性に対してだけおばさんといいつつ、俺はおじさんじゃないと思っている奴。律はそうじゃないと思いたいですけど。

律は生まれて初めてビールを浴びて、「野球の祝賀会の気分がわかった」と言いながら、自宅でシャワーを浴びたようです。
正人は鈴愛のことを知っていて、サプライズ再会を企画していたのです。
鈴愛と花野は、ディナーに呼ぼうとしていたのでした。

それなのに、五平餅のせいでこうなってしまったんですね。
本作は五平餅認知度アップに貢献するばかりではなく、運命の食べ物にしましたなあ。

正人に「鈴愛と付き合っているのか?」と聞く律。
即座に、別に「好きな人がいる」と返答する正人。そりゃそうですよね。鈴愛と別れた理由も、律と鈴愛こそ運命の二人だと思ったからでしたね。二人を取り持ってこそ、正人です。

正人は携帯電話でその好きな人を見せますが、律は驚いています。
誰? 誰なんだ?
ちょっと想像した人物がおります。その人ならばびっくりだな……。

鈴愛は、自室でめかしこんでおります。そしてチャイムを鳴らします。

「お前、どうした」
キメキメのファッションをした鈴愛に、思わず突っ込む律。

「どうや、おばさんやない、美魔女や」
腰に手を当て、そう得意げな鈴愛です。この美魔女メイクに、時間がかかったのか……。

 

今日のマトメ「平成のリアルは続くよ ドコまでも」

あの感動のハグからの月曜日。
苦い現実がつきつけられました。

前作とかもそうでしたけど、朝ドラで年代ジャンプする時って、
「こうしてナニナニは成功したのでした」
をかますじゃないですか。
より一層成功した中で微笑むヒロインカップルから週明けスタート。そういうのが多いわけです。

それが、どうやら二人とも乾坤一擲の賭けには敗れたようだと現実を突きつけられます。
律についてはその理由が明かされますが、鈴愛はまだ不明です。

これもリアルなんだよなぁ。物事は簡単じゃない。
しかし、朝ドラには新しい風となっている。時折例外はあるものの、階段を上るようにヒロインが成功への道を歩むものではないですか。

舞台は平成です。
そんな時代に、トントン拍子なんて嘘くさい。
高度成長期のように、頼りになる夫と結婚して子供を産み、事業が成功してニコニコ微笑むなんて、んなアホなwってなもんですよ。

律のロボットだって、介護現場での利用等を考えると本来伸ばすべきものなのに、あっさりと中止されてしまいました。
律の憂鬱を見ていると、会社員としての成功は何なんだろう?と切なくなってきます。

朝ドラの特別な絆を持つ二人が、ついにバツイチ同士になるって、本当にすごい話です。
結婚観も変化していて、両親の時代のようには生きてゆけないのです。
鈴愛から見ると、それは時折自由になるため鎖を放つかのよう。
一方で、律からすればとても寂しいものに見えます。

本作の描く平成の世界は、複雑です。
それを朝ドラで――もう、それだけで革命になるのです。

価値観をアップデートして、しっかりと面白く創られた作品が、今後も、もっと増えることを願ってなりません。
しかし同時に、この世界もあと一ヶ月なのか……そう思うと、今からホロリとしてしまいそうです。

◆著者の連載が一冊の電子書籍となっています。

この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
NHK公式サイト

 

4 Comments

roko

遅ればせながら、昨日気になった個所を…m(__)m

>そういえば風の音といい、律にとっては何か野キーワードなのでしょう。

める

こんにちは。
週明けからすごい急展開ですね。
え~!と思いつつ目が離せません。

1点訂正です。
律は経営企画部長ではなく、経営企画部技術課課長です。
部長だったらより子さんも喜んでくれたかもしれませんね。

和田聡文

今回の「チロの長寿」についての突然のエピソードは、過去にあった数々の未回収のエピソードやそれぞれの登場人物の未回収の思いが、これからそれぞれ回収されていくのだということ。この物語の一つの小さな雛形。大団円の始まりのファンファーレなのかもしれないなと思いました。
「スズメの過去に大納言の店長と語られた壁に向いた扇風機の挿話」、「映画監督になった涼ちゃん」、「恋愛が出来ない正人くん(とお相手)」もそれぞれ物語の大団円に回収されていくのでしょうか。

いししのしし

 いつもながら今日のレビューに共感でします。鈴愛が五平餅屋台を引いて登場したとき、大笑いしました。最高の登場です。やはりそう簡単には行かなかったんだ。でも頑張って戦っとるな、スズメよ!
 物語を数年飛ばして進ませる手法、また巷では物議を呼んでいるのですね。私には説明不足とは感じられず、違和感のない優れたテクニック、同意です。
 先週末に、やり直そうと言いました、でもお互い努力したけどダメでした。あの時点で根本的にすれ違っているのに、うまく行く方が不自然です。ギスギスした修羅場を描くより、視聴者には自由に想像してもらうもらう方が粋ですね。吹っ切れたリツを登場させる方が、それこそ朝には適しているでしょう。さて、お互いフリーにはなりましたが、すんなりと普通の関係には収まらないのがこの二人、本当に今後の展開が楽しみです。
 正人くんのお相手、私も同年代の二人が浮かびました。異性と同性の。後者だとよりフギョギョですな。

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