半分、青い。70話 感想あらすじ視聴率(6/21)深淵半端ないって!

バブルの狂乱が過去のものとなった1995年(平成7年)。
楡野鈴愛にとっては24才の夏です。

漫画家デビューをして3年目である秋風塾の面々は、それぞれに転機を迎えていました。

鈴愛は、マンネリ化しながらも安定した人気で『一瞬に咲け』を連載中。
破門されたボクテは、別の出版社からデビューし、一躍時代の寵児に。
三人の中で最初にデビューしたユーコは、ブレイクを果たすものの、連載打ち切りの憂き目に遭ってしまうのです。

荒れるユーコを心配する鈴愛は、喫茶「おもかげ」でボクテに相談します。
そこへ、現れたのが師匠の秋風羽織でした。

【70話の視聴率は22.5%でした】

 

ボクテと久々の再会に優しい羽織

破門した師匠と弟子。
羽織は、今週のボクテの連載「3ページ4コマ目」のアングルが弱かった、もっとできるはず、単行本で修正しろと言います。

よいですね。
師匠として見捨てていなかった。それどころか才能を信じていたと伝わる場面です。

ここで「おもかげ」くんだりまで、と聞いた瞬間の、喫茶店マスター・シロウの反応がちょっと面白い。

そして話題は、ユーコのことに。
羽織は、ボクテが連載を持っている講談館に口を利いてやってくれ、と言います。

ボクテもそのことは考えていました。

しかし
「そんなに簡単にはいかないと思うが」
と懸念する羽織でした。

 

ユーコは鈴愛に合コンをすすめるが

「つくし食堂」では、宇太郎が鈴愛の『一瞬に咲け』があまり読まれていない、五平餅のしみひとつないことに気がつきます。

晴は、メイン客層が少女漫画を読まないからだと言います。
しかし、晴や、楽観的な父・仙吉よりも漫画に詳しい宇太郎は、重版がかかっていないことも心配しているのでした。

それよりも晴は、もうすぐ25になる娘が結婚しなくてもよいものか、と心配しています。
当時の結婚観は、今よりも年齢が若かったですもんね。

ユーコは自室で高級ブランドの服を見せています。

貸してあげるから合コンにいきなよ、とユーコ。
楽しいのか、何喋ったらいいのかわからんと戸惑う鈴愛に、ニコニコしていればいいのよ、と返します。

鈴愛も若くて売れるうちに、男をみつけなくちゃ、というワケだそうです。

ユーコの交際相手は、北欧家具のバイヤーをしている浅葱洋二というそうです。
この前一緒にいた男(東京03角田さん)と同じかどうかはわかりません。

仙台の老舗和菓子店の御曹司で、マンションの持ち主。そこで暮らしたい。
彼のお金で専門学校にいき、インテリアコーディネーターの勉強をしたい、と続けます。

私は美貌と若さ(言うほどではないかも、と謙遜するところが彼女らしい)で洋二さんを手に入れた、と言うのです。あぁ、このフラグはもう……。

 

ここではない……ここにいてはいけない

ユーコは洋二との結婚を決意しておりました。

漫画はどうなるの?と、尋ねる鈴愛に、もう私疲れちゃった、と弱音をこぼれます。

ゼロから話を作る。それよりも、何かを輸入し、選ぶほうが楽だ。
こんなことはもうやってられない!
服を買っても月に一度か二度着るだけ。着ないうちに四季が過ぎてゆく。喋るのは配達員のお兄さんだけ。架空のラブストーリーのために、いくつの恋を犠牲にしたのか。

興奮したユーコの言葉はまだまだ止まりません。

原稿に追われ、ドタキャンだらけで、次はない。
スケジュール帳は常に真っ白。何の予定もたたない。

そこで突如鈴愛が、口を挟みます。

「私は白い日が嬉しい!」
「それじゃオタクと一緒、ひきこもりだ、結婚できない、子供もできない、想像の世界の人になる」

ユーコ、なかなか厳しいこと言ってくれます。
そしてまだまだ止まりません。

何のためにこんなかわいい顔してる、何のためにこんな白い肌してる、着飾って街を出歩くためでしょ。
そのかわいい声をひとことも発しない日があるなんて、漫画を描く機械だよ、とユーコ。
それだけじゃなく、中年期以降は健康診断を受診しないがために厳しい、なんて話も。

もはや返す言葉なんてないんじゃないか?
そう思われた矢先に、鈴愛も再び言い返すのでした。

「機械じゃない。人を感動させるって、人生を超えている。世界は私のものになる。秋風先生みたいな漫画を描く日が来たらそう思う」

さらには
「ユーコ、がんばろう!」
と、励ましの言葉で、彼女はハッキリと悟ってしまうのでした。

私がいる場所は、ここではない。
ここにいてはいけない。

 

ティンカーベルから嫁に出なさい

ユーコは、羽織にも決意を伝えました。

未練はないかと最終的な確認をされます。

「ごめんなさい、ダメ人間だと思われてもいいです。私はもう苦しい」
「ダメ人間なんて思わないさ。菱本からちらっと聞いたけど、結婚するんだって? 一度家に戻るのか?」

自嘲気味に笑いながらそれはないと答えるユーコ。
羽織は、18から24までここに住んでいたんだ、その人を連れておいで、と優しく言います。

「小宮さえよければ、ここから嫁に出なさい」

うーん、このやさしさ、温情ですよ。
家に居場所がないユーコを受け止める、この度量。

羽織は、戦いに敗れ、力尽きた人にはとことん優しい。
この道が険しくつらいと知っているからこそ、優しく見送るのです。

 

そして創造性は、黄昏を迎えていた

ユーコは、自室でウェディングドレスのカタログを見ています。

そして単行本を手に取ります。
目元には、涙が光っています。

背景に流れるのは、『夕焼け小焼け』のインストゥメンタル。
そして周囲には、夕暮れのようなオレンジ色の光があふれています。

夜明けの光とともに、鈴愛とネームを仕上げていたユーコ。
三年を経て、彼女の創造性は黄昏を迎えたのでしょう。

その先にあるのは、暗い夜なのです。

 

今日のマトメ「クリエイターの深淵」

ぐぉぉぉ!
クリエイターを殺す気ですか!
と言いたくなるほど、厳しく悲しい話でした。

確かにクリエイターは華やかですし、酒を飲んでからラブストーリーのプロットを作るくらいの自由度があります。

が、それは「まっとうな社会人としての生き方」や「安定した収入」を否定しているということでもある。

平日昼間から外を出歩いてしまい、変な目で見られたり。
自分の仕事を明かせなかったり。
絶対に周囲からおかしいと思われているよなぁ……と、びくつきながら生きる、そういう一面もあるのです。

日本の社会人というのは、定時勤めしか想定していないようなところがありますからね。

ましてや18才から本格的にマンガを始めて、すでに6年目、24才という年齢のユーコです。
スランプのユーコです。
こんな人生もう嫌だと投げ出したとして、誰が責められましょうか。

だからこそ、創作活動について異常なまでに厳しい羽織も、あんなに優しく送り出すのでしょう。
これは、鈴愛がボクテにアイデアを渡したときに「いつかアイデアが枯渇するときが来る、プロの間で貸し借りは厳禁だ!」と激怒したことの裏返しでもありますね。

それにしても本当に、ほんとうに、朝っぱらからこんな業が深い創造の闇を描いてよいのですか。

鈴愛やボクテが漫画家として成功するとしても、ユーコが指摘したように、まっとうな人生は送れなくなるということでもあるじゃないですか。

『ひよっこ』の売れない漫画家コンビにはなかった、このダークサイド。
誰でも即売れっ子という『わろてんか』芸人には微塵も見れなかった、この深淵。

星野源さんの明るい主題歌から始まるのに、ドラマの中身ときたら、口の中に血の味がする……ハードパンチでボコボコにされた、八百長なし、ガチ拳のぶつかりあいって!

最近は毎朝、ヘビーすぎて言葉を失いそう。
それでも……いや、だからこそ目が離せないのです。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

5 Comments

管理人

>rokoさん
ご指摘ありがとうございます!
気軽にコメントいただければ幸いです(と言っても慣れないと心理的圧迫感あるかもですが)。
これより修正させてもらいますー^^

roko

先日から何度かコメントにチャレンジするのですが上手くいかず…もし、不都合があればお詫びいたします。

今後、気になったところはできるだけコメントしたいと思っていますが、修正されるなり御自分のいいようにとらえて下さいますよう…。
また、ご覧になった後は、コメント非公開にしてもらえるといいです。

一番最後
>それでも……いや、だからこそ目が話せないのです。

たまに「目が話す」時もありますが、こればかりは当事者の感覚ですから…。
こちらのサイトで過去の放送がわかり、大変参考になっております。
継続するのは大変なことと思いますが、いつもありがとうございます。

める

作品への愛あふれる感想、楽しく拝見しています。
今回の二人の会話劇はヒリヒリしました。本当は結婚に逃げたくない、でも漫画家として限界を感じている辛さがユーコにあんな尖った言葉を言わせたのでしょう。
ところで、劇中に「中年期以降は~」というセリフはありませんでしたが、初校に載っていたのでしょうか?

匿名

個人的には、鈴愛に苦しみを吐露するユーコの芝居がかった口調が妙に目につく回でした
その対になるのは、いつもの口調で漫画家として生きる喜びを表明した鈴愛のセリフで、ああ言われたらユーコもスパッと筆を置くだろうなぁと妙に納得できました……

なお

ユーコちゃん。
それで結婚して上手くいくのかな?と心配になりました。
相手の人のこと、よくわかってる?月に1、2回しか外出できないのに、結婚するお相手が見つかるって、ある意味すごい。
でも、おんぶにだっこで学校通わせてもらって、結婚してって、、。自分をしっかりもってる、ユーコちゃんタイプは物足りなくならない?!

ユーコちゃんのその後は心配だけど、見たくない、そっと幸せを願って見送りたいです

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