わずか数分で夫婦の複雑な関係性が滲み出る
はつは、うつむきながら、豪華な食膳を一人でじっと見つめています。
一瞬映るはつの食前は、秋の味覚があふれていてとてもおいしそうです。
季節感を大事にしています。こんなにおいしそうな食事でも、はつは箸を付けようともしません。
お付きのふゆが心配していると、惣兵衛が部屋に入ってきました。
座ることもなく立ったまま、ぞんざいな態度。
はつは何も食べずとも偽の手紙を書くことくらいはできますと、精一杯の抵抗をします。
それに対して惣兵衛は、
「おまえはこの家の子を産まなあかんのや、ちゃんと食べい」
と言います。
これはマズイですよ。
「おまえが心配だ」とは言わずに、あくまで子を産む存在、将来の子のために食べろというのは、傷つく可能性の高い言い方です。
ひどいとは思うのですが、それでも惣兵衛は本心で言っているわけではない。
本当は心配しているのだ――と擁護したくなりますね。
それというのも惣兵衛演じる柄本佑さんが、言葉に出さずに表情でいろいろなことを伝えているからです。
はつは心の中で笑うのがわかると先週言いました。
視聴者も言外にある惣兵衛の気持ちを読み取ろうとしてしまうのでしょう。
それがはつに伝わるのでしょうか? 夫に愛されていると実感できていたはつは、敏感に気持ちを読み取ろうとしました。
しかし今、心が弱ったはつにはできません。
嫁ぐ時に母からもらったお守りを手に、妹のあさに向かって「もう笑われへん」と語りかけるのです。
たった数分なのに、なんとも濃い場面です。
「なら相撲を取ろう!」
一方のあさは、新次郎の蔵書から「ビジネスに役立つものはないか?」と物色中。
新次郎はめんどくさそうな反応をしますが、それも一瞬で、あさにはとことん弱いのですね。
先週の時点では新次郎があさを掌で転がしていましたが、あさもだんだんと夫操縦法をマスターしてきたのでしょうか。
あさはさらに貸付金回収をやりたいと頼んだところ、それはあっさり断られました。
「なら相撲を取ろう!」
と腕力にものを言わせようとします。
上手投げでえらい目にあっている新次郎は断れません。
口も達者でパワーもあるし、土方に立ち向かったヒロイン……強い。
それにしても波瑠さん、この相撲をとろうと挑む顔いいですね。
芸歴の浅さもあって、演技力では周囲の人と比べるとまだまだなところもあるのでしょうけど、時折見せるこういう表情がバツグンです。
あさに根負けした新次郎は、正吉に話を持っていきます。
既に予習をしていたあさ。
期限切れでも払わない宇奈山家に狙いを定めていました。
宇奈山家のモデルは宇和島藩でしょう。
幕末四賢侯の一人である伊達宗城のもと西洋化と富国強兵を勧めていた藩です。
しかし、藩政改革には莫大な金がかかるわけで、貸付金も膨らんでいたと見えます。
幕末に改革を推し進める人々はとても魅力的ながら、その陰でこうしてお金に困る商人がいたかと思うと歴史の見方が変わりますね。
動いてないと死んでしまう秋刀魚や鰹だ
正吉は「やはりあさは秋刀魚や鰹だ」と新次郎に向かって言います。
常に餌を求めて泳ぎ回るあさに対し、小さな餌を毎日やり続けるよりは、大きな餌にがぶりと噛みつかせた方がよいと考えたのでしょうか。
ついに正吉は宇奈山家限定で許可を出します。
「やってみなはれ」
『マッサン』でおなじみ、日本で初めてウイスキー販売した鴨居欣次郎(鳥居信治郎)と同じ台詞ですね。
短い言葉ながら、この一言には、関西のイノベーションを感じますなぁ。
翌朝、あさはうめと亀助をお供に連れ、早速、宇奈山藩蔵屋敷へ。
さしものあさも門番二人に追い払われてしまい尻餅をつきます。
そこで闘志を燃やすあさに、声を掛けたのはふゆでした。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
※あさが来たモデルの広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます
【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]
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