まずはニュースから!
◆漫画「ゴールデンカムイ」大英博物館に 漫画展シンボル採用:どうしん電子版(北海道新聞)
英国ロンドンの大英博物館は、来年5~8月に開く日本の漫画展のシンボルに、人気漫画「ゴールデンカムイ」に登場するアイヌ民族の少女「アシリパ」を採用した。5日から告知用の垂れ幕などに使っており、海外でも作品の知名度が高まるきっかけになりそうだ。
杉元あたりではなく、アシリパということもいいなあ、としみじみ。
日本だけではなく、海外の方にもアイヌの模様や意匠が伝わってゆく……これぞ漫画のなし得る最高の効果ですね!
本当に素晴らしい!
カムイチェッの季節だ
今週は、フチの唄から始まります。
「ホルルルルッ」という歌い方が独特なんですよね。
アイヌの言語は和人とかなり発音文法ともに異なりまして、こういう発音を聞くことが出来るだけでも、本作はスゴイと思います!
アシリパは、フチが今頃穀物を収穫していることだろうと思い出します。
そして秋は、鮭が遡上する季節です!
クッチ(サルナシの実)やノイチゴも、アシリパから紹介されます。
アイヌの言葉で、カムイチェッ(神の魚)、チペ(本当の食べ物)と呼んでいるのだとか。
ちなみにアイヌは、俎上してくる鮭を全部は捕りません。一部はカムイのために逃がすのだそうです。
こういう作物を取り尽くさない工夫は、実は和人にもあるのです。
東北地方の「鮭の大助」伝説です。
鮭の王者が遡上してくる姿を目撃すると急死してしまうというもの。その日は漁師を休むことになるわけです。
迷信のようですが、今にしてみるとこれは知恵だったと理解できます。
そうすることで、資源を保護していたのですね。
これがいかに大事であったか。
北海道の歴史を見てゆくと、そのことを痛感します。
入植した和人は、ニシンを猫すら食べなくなる“猫またぎ”と呼ぶほど取り尽くしました。
辺見和雄も、ニシン漁に従事する“ヤン衆”の一人。ニシン漁で巨万の富を得た“鰊御殿”も出てきましたね。
しかし、こうしたニシンは枯渇してしまいます。
2014年朝の連続テレビ小説『マッサン』は、ニシンが採れなくなったあとの余市が後半の舞台でした。
ニッカの余市蒸留所の創業開始は1934年(昭和9年)。
昭和初期には、もうニシンは枯渇していたということです。和人がニシンを取り尽くすまで、これほどまでに短い時間しか経っていなかったということになります。
もうひとつ考えたい、食料のこと。
アシリパが語るように、アイヌの主食は鮭はじめ動物性タンパク質でした。
その漁が北海道開拓使である和人によって禁じられたということを、もう一度考えてみなければなりません。
自然保護のためと現在は言われておりますが、明治の開拓使はそんな考えを持っていなかったことは、ニシンを見てもおわかりでしょう。
むしろアイヌの猟には、獲物を保護する知恵があったのです。
和人は、文明化と称してアイヌに農業を推奨したわけです。
結果、アイヌの食生活は大きく変化し、栄養バランスも崩れました。
明治以降、アイヌの人口は疫病拡大により激減します。和人の持ち込んだ病原菌に対して抵抗力が低かったことも一因ですが、慣れぬ食生活で栄養バランスが悪化したこともあるのです。
孤児となったチカパシの家族も、そうした病気に倒れたアイヌの人々なのです。
アイヌの鮭漁や食生活を本作で鑑賞しながら、そんな哀しい歴史についても考えてみたいものです。
ここで、あの強気なアシリパですらちょっと戸惑っています。
“のっぺら坊”はアチャなのか?
アシリパにしてみれば、アイヌを殺して金塊を奪った者が、父親ならばどうすればいいのかという思いがあるのです。
チタタプと求婚と
網走監獄手前では、谷垣とキロランケが鮭漁をするアイムを装って、潜入のためのトンネルを掘っています。
これも慎重な作戦の結果です。白石もこういうときは使える男です。
しかし、看守からすれば迷惑な話です。
あの豚の餌になりかけた門倉が止めに入りますが、鮭を渡す賄賂で見逃すからと交渉します。
ここで、アシリパの鮭料理教室です。
チタタプがやっぱり美味しいようで。
チカパシが、土方の和泉守兼定でチタタプをするというのが面白いですねえ。
土方の愛刀・和泉守兼定といえば最近は『刀剣乱舞』でも人気ですね。
フィクションでは「之定」、二代目のものとされることもありますが、史実は違います。
幕末期の会津兼定、十一代あるいは十二代である古川清右衛門の作とされています。
猪苗代湖の浜で採取した鉄を使っているとか。
会津藩士である白虎隊士の会津兼定も伝わっております。
「之定」よりも、会津の鉄で鍛えられて、会津からいただいた会津兼定の方が、土方にはお似合いですね。
当時のトレンドが反映されていてよいものです。
まあ、そうした由来はともかくとして、絶対に人を斬ったであろう刀でチタタプってちょっと怖い気もします……。
そしてここであの尾形も、やっと初チタタプ発言達成です!!
お粥にいくらを混ぜたチポプサヨ、ジャガイモに混ぜたチポロラタシケプも紹介。うーん、美味しそうだなぁ……ジュルッ……。
ここで牛山がインカラマッに気のあるそぶりを見せると、チカパシが気にしています。
女が男の家で食事を作り、男が半分食べた器を女に渡し、女が食べると婚姻が成立するとアシリパが説明します。
本当の家族になれば、というチカパシの思い。
しかし、谷垣はそんなチカパシをたしなめます。
まだちょっと早かったかな?
谷垣ニシパと未来へ進みたい
谷垣とインカラマッは、外で会話します。
インカラマッはまだウィルクを思っているはずだと、谷垣が聞いてくるのです。
こ、これはインカラマッさん、マタギに惚れてまうやろ!
谷垣は、まだ心に別の男がいるならば退くと確認しているわけです。
インカラマッは、ウィルクへの思いはむしろ心に区切りをつけ、前に進むためのものだと説明。
運命を変えてくれた谷垣と、未来に進みたいのだと答えます。
この感動的な話で、ちょっと気になるところも。
インカラマッと鶴見がいかにして知り合ったのか?
という点です。放浪するアイヌの女に、鶴見が接近した理由は?
どうしたって当時の和人で、しかも陸軍将校となれば、アイヌの女を一段下に見るはず。接触してくる鶴見の行動には深い意味があった気がしてなりません。
つまり、鶴見はウィルクやキロランケのことを熱心に調べ、どんな些細な情報であろうと余さず見つけようとしていたのだと。
そしてインカラマッという、ウィルクと少女時代に知り合ったきりの占い師にわざわざ接触して、情報を与え、泳がせているのです。
どうしたって鶴見の行動には、何かおかしな点があります。
鶴見とインカラマッ。
かたや指紋という科学調査、かたや占いという手段。
この対称的な二人の接触には、何か大きな意味がある――そんな気がします。
話を谷垣とインカラマッの恋愛に戻したいところですが、本作によくあるあのパターンを再度思い出しましょう。
【重大なヒントや伏線と、感動的であるとか、キャッチーな場面とセットになっている。そのため、ヒントや伏線を見逃し易くなる】
このあと、やることを終えたら改めて求婚すると語る谷垣は感動的です。
ただし!
その前の鶴見とインカラマッの関係も覚えておいたほうがよさそうですよ。
アイヌと和人の結婚。
谷垣とインカラマッの間には隔たりはないと思います。
が、それも谷垣が家族を捨てた二男であるという点もあるのかもしれません。
それというのも、現在に至るまで、アイヌと和人間の結婚にはどうしても差別感情がある。
家族が反対することがあるのです。
二人が、こうして接近してゆくこと。
本当に重要なことだと思います。
彼らを見ていて、
「アイヌと和人の結婚? そんなことはとんでもない!」
という奴がいたら。ぶっ飛ばしたくなるでしょ?
チカパシが白石をはたくみたいなことくらいしたくなるじゃないですか。
差別なんて馬鹿馬鹿しい――そんな感情を呼び起こす。本作の魅力でもあるのです(続きは次ページへ)。
※うわぁあああああああ、金カム、見逃してしもたっ><;
って、方はPC・スマホでゴールデンカムイ見放題のFODがありますよ
↓
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結婚差別で思い出したのですが、以前、書籍にて『結婚に反対している人に話を聞いてみると、意外にも彼らの中で差別感情を持っている人は、ごくごく少数だった。それなのになぜ反対するのかと問えば、彼らは一様に「世間には差別が蔓延していて、被差別者と縁ができれば、子供や孫が叩かれる。」「自分たちを恨んでいて仕返しされるかも。」と固く信じ、ひどく怯えていた。恐怖と猜疑にとりつかれていた。相手に無知な者ほど、その傾向が強かった。』という一文を読み、ひどく悲しくなると共に
「それならば、相手を知って、その”恐れ”を、なんらかの方法で取り除いてやれば、かなり過ごしやすくなるぞ!」
と前向きな気持ちになった事を思い出しました。
この作品がきっかけで、アイヌへのネガティブなイメージが、クールかつポジティブになった人々はかなりいると思うので、この調子でガンガン行って欲しいと願っております。