わろてんか42話あらすじ感想(11/18)独演会頼りは手筋が違う

時は明治。
日本一の「ゲラ(笑い上戸)」娘ことヒロインのてんは家を捨て、船場の米屋・北村屋の長男藤吉のもとへと嫁ごうとするものの、藤吉の実家で姑の啄子からは認められません。
そうこうしているうちに、藤吉が詐欺に引っかかり北村屋は倒産。店も家を失います。

三人は売れない芸人が集まる通称「芸人長屋」に引っ越します。
藤吉とてんは、てんの実家藤岡家から五百円(現在の貨幣価値で五百万円)を借りて、亀井という男から寄席小屋を買いました。

さて、いよいよ夢の寄席が始まります。
しかし無残にも失敗。そこで大物落語家・文鳥に何とか頼み込んで一回だけ出てもらうことになるのですが。

 

文鳥師匠、どれだけ練習したのだろう……

本日はアバン(オープニング曲前の放送部分)なし。
主題歌が終わったら、出囃子の太鼓に始まって、ほぼ8分間の笹野高史さん独演会となります。

大ネタでも十八番でもないことに観客はザワつきますが、名人芸に引き込まれて笑っていきます。

途中で楓の姿がチラリと映ったりもしますが、15分間のドラマでほぼ半分を笹野さんの熱演で持たせました。
一体どれだけの稽古をしたのでしょう。その苦労を思うと、感動してしまいます。

7分経過すると感動的な音楽が流れ始め。
8分で目を潤ませて笑う藤吉と、能面笑顔のてんが映ります。

出番を終えた文鳥は
「うどんは熱いうちはうまいけど、冷めたらまずい」
と、うどんに譬えて一時のブームが去ったあとどうするのか、と釘を刺します。

親身になってその場しのぎではないアドバイスをしてくれる、本当にいい人です。

しかしてんはそんなことをあまり考えていないのか、うどんをまた食べたいと愛想を言う師匠に、満面の笑顔で「またうどんを用意します!」と笑顔。

一応、京都時代に花嫁修業していたものの、そこまで料理が上手設定があったわけでもないので、やっぱり違和感があるんですよね……。『ごちそうさん』の“め以子”ならばわかるのですが。

 

記者になった楓 取材で小屋へ来ていた

藤吉を前にして新聞記者たちは「『時うどん』とは意表を突かれましたわ~」と口々に言います。
これがもし、藤吉かてんに深い考えがあっての演目選択ならばまだしも、単に「藤吉が小さい頃から好きな演目だから」という理由ですからね。
真相を知ったら記者もズコー、ではないでしょうか。

というか藤吉は自称お笑いに詳しい人のはずですが、落語界の派閥争いをキースとアサリに説明されていたのがどうにも……。もしかしたら「時うどん」ぐらいしか知らなかった可能性もあるんでは?と邪推したくなります。

ここで、かつて北村屋でてんと花嫁候補争いをした楓が登場。
職業婦人として働きながら歌人を目指している、とのことです。

うーん、やっぱり楓の設定がよくわからない。
船場の米屋の分家筋だったら、おそらく義務教育ぐらいしか受けられないと思うのですが、結構、大手らしい新聞記者になれるだけの教育等はあったのでしょうか。
そもそも作中の時間経過がよくわからないので、そんなあっという間に大事な取材を任される記者になれるものかな?というのが気になってしまって。

もし第4週の、花嫁候補争いから数年間が経過しているのだとしたら、未だてんが宙ぶらりんな状態でいる藤吉はやっぱりダメだな、という気がしてしまいます。

ここはまあ、よくわからないけど楓がジェットストリーム級スピード出世をした、ということで。
楓が楽しそう、生き生きとしているのはよかったと思います。むしろこちらのドラマを見たかった、かも。

 

栞の予言から寺ギンの登場が早っ!

楓たちが記事にしたおかげで、風鳥亭の名は大阪中に知れ渡りました。

万歳をして喜ぶキースたち。
喜ぶのはいいですが、これは別にキースたちの手柄ではないわけで。多少でもプライドがあれば、複雑な気分になるのでは?

自分たちだけなら閑古鳥でも、大物が出た途端に大繁盛で、メディアも取り上げられる。
なんだったんだ、自分たちの芸は……と落ち込むはずでしょう。
無邪気に喜ぶだけでは、「冷めたうどん」になった後、立ち直れなくなってしまいますよ。文鳥がせっかく釘を刺したのに。

啄子も新聞を読んでびっくり。
寺ギンはくしゃっと記事を丸めて悔しそうにしています。

藤吉と栞は互いを褒め合います。てんもニコニコです。
いい場面だと思います。根底に「栞のコネ頼り」という要素さえなければ。

そして、ここで栞が、
「いてもたってもいられない男がいるはずだ」
と言うと、キザな笑みを見せて立ち上がります。

驚いたのはその直後です。
栞のセリフから一秒も置かないようなタイミングで寺ギンがやって来るのです。

早っ!!!
これ、吉本新喜劇なら笑うところでは?
マジメな場面なのか笑いの場面なのか、一瞬、本気でわからなくなってしまいました。

 

寺ギン「伝統派に庶民の味方ヅラされてはかなわん!」

後の展開からして、寺ギンの登場はマジメなシーンでしたね。
ならば、せめて……。

栞が帰る

二人でしみじみと今日のことを語り合う

誰か来る

「伊能さんが忘れ物やろか」と思ったら寺ギン登場

ぐらいの間が欲しかった。
笹野さんの独演で8分使ったから時間がないのはわかりますけれども。

寺ギンはのっけからテンション高く言い放ちます。
「伝統派に庶民の味方ヅラされてはかなわん! うちの芸人を出したってや!」

藤吉とてんは満面の笑みを浮かべます。
「おちゃらけ派の芸人さんに、ほんまは出てもらいたいと思っとったんです!」
「疲れた人に、笑って欲しいと思ってたんです!」

いやぁもう、ベタ褒めですよ。
昨日は「文鳥師匠しかおらへん!」と言えば、今日は「伝統派に出て欲しいと思ってました!」と持ち上げてました。

それがどうです、この表裏比興っぷり。
いや、いいんです。そういった顔を使い分けることも席主には必要でしょう。
両派にいい顔しているのがバレたらマズそうですので、その辺のサジ加減が、商売人としての腕の見せ所かもしれません。

しかし、です。
もしも何も考えずに、ホイホイと両者にイイ顔していたら、それは必ず問題になるハズで。
まぁ、そういったピンチもドラマの見どころになったりするかもしれませんね。

 

亀井がひょっこり顔を出し「雇ってくれへん?」

寺ギンは一方的にギャラの取り分を決めます。
7:3と言われ(寺ギンが7)、ボーゼンと何も言えない藤吉。

ここはお笑いドラマですから、
「そんな殺生な~、わてら飢え死にしてしまいまっせ~。せめて五分五分ですやろ~」
「いくら寺ギンさんかて、冗談きついわ~。そないに取られたら鼻血も出ませんわ~」
と、夫婦揉み手で、目だけ笑わない笑顔の交渉ぐらいして欲しいなぁ。

藤吉って、本当に大阪の、しかも商家の息子なんですかね。ナンボ途中で家を飛び出したと言っても、もう少しぐらいは切り返しがデキても……。

そこに亀井がひょっこり顔を出し、下足番として雇って欲しいと言い出します。
そうそう、この飄々として力の抜けた軽やかさ、内場勝則さんのこういうところを見習って欲しいんですね。

ここで次週予告。
風太とリリコが「ウルトラC」なんて言葉を使いつつ、「第四の壁」(フィクションである演劇内の世界と観客のいる現実世界との境界を表す概念)をやぶって茶々を入れながら説明するのでした。

ちなみに濱田岳さんと広瀬アリスさんは、テレビ東京のドラマ『釣りバカ日誌』の主役とヒロインです。
広瀬さんが「このバカけぇ!」と、濱田さんの頬を引っ叩くのは、同ドラマのいわば決めシーン。
それをNHKの朝ドラで見せるのですから、思わず微笑まれた方もおられたでしょうが、同時にこんな風に感じられた方もいたかも。

『この2人が藤吉とてんだったら、意外にハマってたりして?』

確かに濱田岳さんも広瀬アリスさんも愛嬌や悲哀があって、色んな笑顔ができそうです。
決して松坂さんと葵さんが役者として悪いのではなく、寄席の席主と妻だったら、そういう面白キャラをこなせる俳優さんに頼んだ方がよいのでは?と率直に感じてしまうのです。

濱田岳さんがダメ男で、広瀬アリスさんが寄席経営を引っ張るようだったら、応援したくなりそうですよね……。

 

今回のマトメ

今日よかったのは、15分の半分を笹野高史さん独演会にしたからでしょう。
笹野さんは素晴らしい。しかし、それって何かおかしくありませんか。

他の要素が駄目であるのを、役者の力だけでそれらしく見せる……そういうことですよね。
それは「手筋が違う」のではありませんか。

寄席が始まれば面白くなるかと思えた今回の週。
はっきりしたのは、本作は「手筋が違う」ドラマであり、これからも期待できそうにないということでした。

今週は、主人公夫妻と制作側の甘えた姿勢が見事なまでにシンクロしました。
どちらも寄席なりドラマなりの特色をじっくりと作ろうとはせず、演者や役者のパフォーマンスだけで誤魔化そうとする。
てんと藤吉は栞に頼ってばかりですが、制作側も栞を演じる高橋一生さんの人気に頼っていますよね。

乱闘シーンで髪を乱れさせたり、長いこと寝顔を映したり、胸キュンしそうな台詞を突拍子もなく言わせたり。
それってやっぱり「手筋が違う」んではないですか?

あと「色」といえば。
本作は、ヘタをすれば吉本せいと小林一三の持つ「色」を台無しにしています。

二人の異名は「女今太閤」と「今太閤」。
大阪ゆかりの人物であり、太閤こと豊臣秀吉同様、裸一貫からのし上がったというのが由来です。

それを二人とも、困った時は親だのコネだの頼る人物にしてしまった。
てんに至っては、京都出身にしてしまった。

一体その人や事業の「色」を何だと思っているのか。
問い直して欲しいところです。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

2 Comments

ビーチボーイ

震之助様の毎回の指摘は全て完璧に正しいと思います。全くその通りです。
ですけれども…この「わろてんか」って、要するに少女マンガ(しかも安手の)を実写化した程度のもんでしょ。大半の視聴者はそれを承知で受容してるはず。いや、本作だけじゃなくNHK朝ドラは全部そんなもんです。(評判高かった「ひよっこ」だって、結局リアルな人生や社会とは無縁なメルヘン、夢物語ですわ)
その少女マンガを相手に、あたかも三島川端大江の小説のごとき思想性や技巧を要求して、毎日毎日「ザンネン~」「ドン引き~」と叫び憤怒を燃やすっていうのはいかがなものでしょう…
とんでもなく無礼ではありますが(神様文鳥師匠に「また私のカレー食べたい~?」と微笑みかけるおてんと同レベルの無礼者ですね私はw)、率直に私はそう感じております。

朝どら大好きニャンコ

今日はこのドラマがスタートしてから初めて面白いと思いました。楽しかったです。
でも考えてみたら、面白かったのは文鳥師匠の落語であって、ドラマのストーリーそのものではないんですよね。
ラストの予告は先週までとガラッと変わったスタイルでしたが、唐突すぎて違和感がありました。
本編と違うところで受け狙いにきたようで…。

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