わろてんか74話あらすじ感想(12/26)安来節48じゃないんやから

大正時代の商都・大阪では「北村笑店」が台頭中。
南地を本拠地とし、抱える芸人は200名、寄席は10軒以上となりました。
まさに天下のお笑い興行元であります。

しかし、活動写真といった新たな娯楽が台頭する中、あぐらをかいてもいられません。

藤吉とてん夫妻は島根県へ出向き、安来節をブームにするべく、若い女性踊り手のオーディションを行うのでした。

 

安来節オーディションの合格者は4名

さて、オーディション開始です。
史実では契約金を目当てにぞろぞろと応募者があり、スカウトマンであった林正之助(吉本せいの実弟で風太のモデル)は、接待尽くしで楽しい旅だったようです。
が、当然、朝ドラでそれをやるわけにはいきません。藤吉の団吾接待は結構時間を割かれましたけれども。

応募者は以下の通り。

勝部なつ:踊りと器量が自慢、整った顔立ちとでスラッと長い手足がチャームポイント
小豆沢とわ:特にアピールポイントなし。大食いで甘い物好き
錦織アヤ:通天閣と大阪の生活に憧れている
安達都:審査員判断では、一番踊りがうまい。金をためて家族を助けたい

応募者は結構いたようで、この4人が合格。
契約金は120円、月給は20円……団吾と比較しても結構高いといいますか、物価の変動もあるのでしょうね。その辺の説明がないので、規模感がわからくなってきました。

参考までに、大正10年頃(1921年)の大卒初任給が40円です。
ということは、学歴のない女性の給金としてはなかなかよいのでしょう。

 

芸能の世界は見た目も才能の一つでは?

選抜において藤吉は見映えを重視するのに対して、てんはやる気を重視します。
「人を見た目で選ばないてんって素晴らしいね♪」という誘導を感じますが、裏方ならまだしも、ショウビズで見た目を重視して何が悪いのか、という気も。こうした職業は、問答無用で見た目も才能のうちであるはずで。

合格者は、なつ、とわ、アヤ、都の4人です。
他の3人はともかく、とわにはそんなに適性がないように思えます。面接で大食いアピールしてなぜ合格するんでしょうか。

ここで娘さんたち、ワーキャーと大騒ぎ。
そこへ、都の父が怒鳴り込んできます。
どうやら騙して娘を売り飛ばすような悪徳業者もいるそうで、そりゃ警戒もしますわな。

ここで都は抵抗しますが、父としては紡績工場で働かせたいそうで、連れて行かれます。

ここで藤吉とてんは、なぜか都を諦めません。
いや、あれだけ受験者いるなら都にこだわらんでも、補欠でええやんと思ってしまうのですが……。

 

あっと言う間にお父ちゃんを説得成功

てんと藤吉は浜辺を歩いてハネムーン気分。

「てんは、俺と結婚したこと後悔してへんか?」
「いいえ。藤吉はんと一緒にいられて幸せです」
なんてラブラブっぷりをアピールします。

ロケまでしてお金をかけた場面です。
このあと総集編でも、藤吉退場後の回想シーンにも、この場面は何度も出てくることでしょう。

公式サイトを見たら、胸キュン動画というコンテンツもありました(参照)。このビーチハネムーンなんか、渾身のシーンなんやろな。えろうすんまへん、オッサンはな、心ささくれだってて胸キュンできへんねん。

ここで藤吉は、
「てんの父親にてんとの結婚を頼んだ時の気持ちで、都の父を説得する!」
と気合いを入れます。

その気合い、なぜ、団吾のスカウトとか(第10週・第11週)、寺ギンとの対決(第12週)で見せてくれなかったのでしょう?
ほとんど黙って突っ立って帰ってくるとか、そんなんばっかりでしたので。
こう、田舎に来て、相手次第で交渉に臨む姿勢が変わってくるような、そんな印象を持ってしまいました(´・ω・`)

都を再度説得していると、彼女の父が登場。
藤吉は声をふるふるさせ、パパっぷりをアピール。
てんは芸人は家族、女子寮も作ると言い張ります。

放送時間ももうないし、都の父はいとも容易く説得されました。

年末で本来6日間ある一週間の割り当てが、今週は月から木の4日のみです。
そのぶん、圧縮気味に展開しておりますね。

 

今回のマトメ「安来節48じゃないんやから」

そういえば団真&お夕がちっとも出てこなくなり、公式サイトの登場人物一覧からも消えました。
残念でなりませんが、使い捨てかもしれません。
今週の「乙女組」もスグに出番が終わる可能性もあります。

◆今日の気になったところ・その1
オーディションにせよ、父娘の絆にせよ「どうでもええわ」と思えてしまいます。
都の父以外、島根訛りがバラバラで、そこを誤魔化すために裏声で叫ぶような場面が多くて、今日は耳が辛い回でした。
出番は短いし、そもそもメインキャストの関西弁もいまひとつですから、島根訛りを調整している余裕はなかったのでしょう。

◆今日の気になったところ・その2
とわのキャタクターが『ひよっこ』のメガネっ娘こと青天目澄子とかぶって思えたことです。参考にしたのかどうかわかりませんが、演技まで似ていたのは気になるところです。
それにしても、踊り子4人のキャラを強調したいのはわかりますが、よりにもよって年末の短い週にこんな展開せんでも、という気持ちが強くなります。今週と来初週は、お祝いムードのゆるい日常話なんかでよかったのでは。
澄子の場合、適性がなくても食べていくために就職せざるを得なかったから、あのキャラクターでも問題はありません。
しかしとわの場合、食べることしかアピールできず、踊りの適性がなさそうな人物が、なぜ高倍率のオーディションを合格できたのか、気になってしまうのです。

◆今日の気になったところ・その3
何度か突っ込んできた「興行元と席主は親子」。
雇用する相手が若い未婚女性ですと、この言葉も意味が変わってきます。戦前、遊女や料理屋の芸妓の場合、戸籍上は雇用主の養女とする場合がありました。
でも、それが好待遇につながったとか、美談とすべき関係かというと、そういうものでもないでしょう……。
先日も書いた通り、この安来節のお話は、田舎の娘さんを都会での舞台にあげて、ソフトなストリップをやらせるようなモンで、美談でもないと思います。
それを『あまちゃん』のような、アイドルを目指す若い娘をプロデュースするみたいな流れにしているのが、なんだか気持ち悪くて……『あまちゃん』にしたって、もっとシビアでしたしね。

別にフィクションだから何をしようと勝手ではあります。
しかし、それはあくまでゼロから創作ベースの話で、史実に基づく物語でしたら、先人たちにしかるべき敬意を払うべきじゃないでしょうか。

当然ながら朝ドラで「歴史をそのまんま描けない」のはわかっています。
が、ご本人たちの功績を踏みにじる、あるいは視聴者の歴史観を歪めるような、そういう描き方が見ていて辛いのです。
「えっ、『わろてんか』では、そう言ってたのに!」
と大きな勘違いが次々に生まれていったら、それはやっぱり不誠実な作品と言えるのではないでしょうか。

色々と調べてしまい、どうにも感じる違和感が辛い日々でありんす(´・ω・`)

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

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