本作における五代友厚、実にノリノリ。
今井家にもサラッと入り込み、久太郎がルー語を使うようになったのも五代の仕業でした。
久太郎が使用している英和辞典は『薩摩辞書』です。
五代が大きく関わったもので、復刻版がアマゾンでも購入できるからびっくりぽんですね。フォントも大丈夫。
そういえば梨江は、謎の異国からの書状(第二週)が五代からのものということもわかっているそうです。
久太郎はすっかり五代に魅了されており、アメリカ留学する予定だとか。
銀行は人を救う
ご焼香のため正吉と新次郎も今井家にやって来ました。
あさは「なぜ銀行を勧めるのか?」と五代に質問します。
井上馨(『花燃ゆ』では石井正則さん)と今井の関係も出てきます。
この場面は、視聴者への説明にも想えます。
あさはここで、新次郎に聞かされたことを思い出したのか、金融業はよいものかどうかと口に出します。炭坑で地に足を付けて働く人々を見て思うところもあったのかもしれません。
金は人を救うと五代は返します。
使い方次第では薬にも毒にもなる。
銀行は志をある人を応援する組織なのだ、と。
そこへ正吉と新次郎がやって来ました。ほとんど正吉のセリフですが、新次郎の顔芸が面白いことになっています。
妻に忍び寄る不気味なストーカー=五代の異常性に気づいた――表情でわかります。
ちなみに五代は妻子から妾までいるので、あさに接近するのはどう考えてもNG。
ネタキャラに徹しているのはそのせいもあるかもしれません。
五代は熱心に銀行の説明をしますが、新次郎のあの表情が気になって仕方ありません。
久太郎は、自分にしてくれた話よりずっと丁寧だとツッコミ。
このお金への価値観で、あさは新次郎と五代にどちらにより心情が近いかを示したわけです。新次郎の影響で疑念を持ったものの、五代に説得されたらば思い直してしまいました。私生活のパートナーは新次郎でも、ビジネスパートナーとしては五代を選んだということです。
五代の存在が新次郎を描き出す
新次郎のモデルである史実の白岡信五郎はどんな人か。
実のところ、あまりよくわかりません。
商売に興味がなくふらふらしていたと言いますが、彼がどんな気持ちで妻を見ていたかは伝記でもあまり書かれていないのです。
本作は五代をあさに接近させることで、結果として新次郎の心情も描いています。
ビジネスパートナーとしては別の男にその座を譲ることになる新次郎が、どんな気分でいるのか。
そこを描くために五代は存在するわけです。
近代大阪成立を描くため五代を掘り下げるのかと思っておりましたが、そうした意味もあるのだと思います。
そしてついに新次郎と五代の会話に。
あさの代わりにと、新次郎がピストルを五代に返します。
ここでちくりと「やっぱり洋行帰りの方は、おなごに親切ですな」と釘を刺す新次郎。
それに対して誰にでもというわけではないと返す五代。
そのまま立ち去る五代を、ものすごい目で新次郎が見つめます。
はつもそんなやりとりを不安げにのぞいていました。
「たまには弱みを見せなさい!」
そして翌日。
あさ、はつ、新次郎、正吉は大阪に帰ることとなりました。
はつと梨江は母娘水入らずで話し合います。
梨江は貯めていたへそくりをはつにそっと渡すのですが、はつは受け取ろうとしません。
梨江は声を荒げ「たまには弱みを見せなさい!」と言います。
家を守れなかった自分を責めるはつと、娘が大店に嫁げばそれで幸せになれると思った自分が浅はかだったと責める梨江。
いやいや、だからそれは新政府のせいでしょう。
誰も悪くないんです。
その様子をじっと物陰から見守る忠興。台詞はありませんが、表情だけで複雑な心情を物語ります。
はつは、ちゃんと母から大事なものをもらっている、と、あの嫁ぐ時にもらったお守りを出します。
これさえあれば何とかなると、どこまでも気丈で健気。
肩を抱き合う母娘はここから台詞はありませんが、演出と演技で様々なものを語ります。
そして大阪の加野屋に戻ったあさは、とあるものを目にして驚きます。
あさの見たものとは?
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
※あさが来たモデルの広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます
【参考】
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