ラーメンとうどん、一緒くたにしてない?
さて。
本作のスタッフにお尋ねしたい。
「ラーメンの麺って、どう作られているかご存じでしょうか?」
諸説ありますが、一番信頼度が高く妥当と思われる代表的なものを取り上げますね。
まず漢字ですと「拉麺」です。
これがどういう意味か?
この動画の2:40あたりからご覧ください。
手で引っ張って、伸ばす。
それが「拉」です。
うどんや蕎麦のように、生地をこねて包丁で切る麺は「切麺」。
最近流行してきた、包丁で削るものは「刀削麺」。
そういうふうに、中国では生地をこねたあと、どういう処理をするかで言葉が違うんですよ!!
その辺、ご理解されてます?
製麺屋かうどん屋か知りませんが、あたかも
【うどんの麺を、ちょっと工夫すればラーメンの麺になる】
という描写に驚きました。
原料も、製麺も、細かいところで違いますからね。
かん水さえ入れたら、ラーメンの麺になるとでも?
本作スタッフに料理経験がろくにないことは明白です。
だからこそ、スープの凝縮すら思いつかない。
卵の殻を混ぜる?
それって史実なんですか?
サルモネラ菌が怖くないんですかね。
ガマガエルで栄養食品と作ろうとするし、ここまで危険な描写が続くと、本気でBPO案件ではないかという気すらしてきます。
ほかにも……。
パスタでラーメンを作ろうとするわ。
ラーメンの作り方を、うどんを主としている製麺屋(それとも、うどん屋?)へ平気で聞きに行くわ。
何だか異常なまでにルーツである中華を避けている気がするのですが、どうしたことでしょう。
そもそもね。
手ごね製麺を習いに行く点もおかしい。
日本では、人の手で伸ばす拉麺はそこまで多くない。
なぜなら、ラーメンの普及と、製麺機の普及が重なっていたからです。
それを踏まえてまともなドラマだったら、そこでどう描くか?
提案しましょうか。
【中華料理店に行き、どういう製麺機がよいか調べる】
これでおしまい。
これでよい。
つまり、本作そのものが虚無への供物なんです……。
悪意なきジャパニーズ・ウォッシュってやつですか?
今日はまだ終わりじゃないよ♪
※この0:50あたりからくらいの気合いでいきま〜す
本作は、見る前からどうしてここまでゲスなのか、どういう心理状態でこんな酷いことが出来るのか、それが引っかかっていました。
たとえ面白い作品だとしても、人種差別に乗っかっている時点でアウト。
私はそう思っておりました。
倫理的に問題があっても、面白すぎて好き――でもそれを言うには思わず小声になってしまう。
そんな作品は確かにあります。
そういう気持ちのことを【ギルティ・プレジャー】と呼びます。
英語で書くと【guilty plesure】ってやつで、私にとってのタランティーノ映画なんてこのど真ん中ですね。
例えば『ジャンゴ 繋がれざる者』とか。
そんな面白さがない本作は、むちゃくちゃな描写で誤解される被害者が少ないところだけは良心的かもしれませんね。
しかし作り手としての良心は相変わらず欠如されており、私が台湾ルーツの削除や、中華要素の隠蔽に異議を申し上げるたびに、色々な方向から罵声が飛んできました。
「そんなことを差別だと言い張るお前こそが、差別主義者だ!」
「こんなほっこりきゅんきゅんを楽しめないお前こそが、邪悪!」
それ以上に首をひねったのは、むしろ台湾ルーツ削除を善意扱いする意見です。
「ホラ、彼は台湾ルーツを隠したがっていたから……」
というやつですね。
安藤百福氏が、地元や故郷と揉めたことは知っております。
チキンラーメンのオリジナリティ性について、あまり大事にしたくない要素があるといえばそうでしょう。
雞絲麵(ke-si-mī)。日本にインスタントラーメンが登場するはるか以前から台湾に存在する即席麺が雞絲麵(ke-si-mī)。 pic.twitter.com/wjsxBtLQ78
— go chiong (@gogochiong) 2018年8月18日
ただし、そうした個人的事情はあるにせよ、日本ではルーツを隠さないといけなかったという問題があるわけですよね。力道山なんかもそうです。
それを無視するということは、どういうこと?
それについては、日清関連で素晴らしい記事がありました。
◆大坂選手の「肌の色」や「発言」を悪意なく変えてしまう日本人の病理 | 情報戦の裏側 | ダイヤモンド・オンライン
この記事には、私が本作について言いたかったことが、ほぼ入っております。
一方でNHKの公式見解が以下の通りです。
※実在の人物をモデルとしますが、激動の時代を共に戦い抜いた夫婦の愛の物語として大胆に再構成し、登場人物や団体名は改称した上、フィクションとしてお届けします。
日本人視聴者がより親しみを持てるように台湾ルーツを消す。大胆に史実を再構成する。
悪意はないんです、視聴者の皆さんのためを思ってのことです、と作為バリバリの姿勢を見せ付ける。
本作レビューで、この作品が狙っているターゲット・オーディエンスについてこう分析しました。
あるのは【ファイナルオヤジファンタジー】ワールドだけ。そこから導き出される本作のターゲット・オーディエンス像は、なんとなく理解できます。
大坂なおみ選手の優勝に乗って騒ぎたい!
それと同時に、若い女の子がつたない日本語で喋る様子を小馬鹿にして「なおみ節」と呼んでニタニタしたい……そんな層でしょ?
若くてカワイイ女の子をジャッジして、パーッと盛り上がることができれば、社会なんてどうでもいい……そんなノリでしょ?
日清つながりで、ちょっと飛躍しすぎかなとも思いましたが、いい線いっているんじゃないですかね。
安藤百福氏から台湾を消すのも。
チキンラーメンを【日本人の、日本人による、日本人のための発明】にするのも。
大坂選手が直面した【ジャパニーズ・ウォッシュ】、【自国第一主義】が根底にあるんですよ。
そんな差別に、どうして視聴者がつきあわないといけないんですか?
関係ないニュースがうざいと言われましても、根底にあるものが一致しているからにはそりゃあ指摘の対象となりますよ。
先にあげた記事から引用します。
なおみ節だなんだと騒ぐのも楽しいが、クサイものにフタをするのではなく、なぜこのような「騒動」が起きたのか、なぜ海外にルーツを持つ人や外国人に「日本人らしさ」を強要するのか、という「病」の原因を考えるべきではないのか。
もし本作がこの病にメスを入れていたら、傑作になりえたでしょう。
差別を朝ドラに出すことは御法度じゃありません。
『半分、青い。』では、障害を理由に就職差別されるヒロインを描きました。
そういう差別を描かれると、激烈な反応を示す視聴者がいることも理解しました。
もう一度、先の記事から引用しましょう。
ということを口走ると、「そういうことを言う奴が差別主義者だ!」「人種差別のない日本では人の肌の色などいちいち気にするか!」と怒り出す方たちがたくさんいる。
中には、「大坂選手本人が気にしてないのに外野が騒ぎすぎだ!」と、この話題を口にしただけで不機嫌になる人もいらっしゃるが、こういう論調をミスリードさせたのが、もうひとつの「悪意のないミス」である。
ああ〜、既視感ありますねえ。
『まんぷく』で、味に異議を唱える相手をものすごい目で睨みつける萬平も彷彿とさせます。
けれども、そんなものに屈していては、この記事で指摘している【悪意のないミス】を繰り返して滅びるだけです。
そういう声を無視して、勇気を持ってドラマを作るしか、もう手はない。
さもないと、コンテンツが腐るだけです。
朝ドラは大丈夫ですか?
作る側だけじゃなくて、受け取る側も、何がコンテンツを殺すのか、考えてみる必要があるでしょう。そういう時代です。
本作は、もうこの勝負から恥ずべき脱落をしました。
私が期待を掛けているのは、『いだてん』です。
※スマホで『いだてん』や『八重の桜』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!
※コメントにつきましては、
・まんぷくここが好き!
・まんぷくここがアカン!
という意図でご自由に記述してください。
作品に関するものについては全て掲載しております。
攻撃的な書き込み等については、こちらの判断で削除させていただきますので、あらかじめご承知おきください。
「らしさを求める」の記述で思い出したのが、惣村(全てでは無い)では先住した年月が多い人間程尊ばれ、余所者や婿や嫁は「(敵対勢力の回し者では無い絶対安全な存在であるということ、村の秩序を乱して村落を崩壊させないことを証明し、村落共同体への服従を示すために)アイデンティティーを全捨て(時には村のメンバー全員と肉体関係を結ぶという『コミュニケーション』をガッツリ重ねる事で証明)し、村人との間に子どもが生まれたら『子どもという名の村落共同体の共有財産・労働力)を産み出し村に貢献した褒美」として、市民権を獲得した、という事でした。
こうした風習は実は世界にあり、それも原始的な生活を送っている所程、そういった傾向が高いのだとか。
まだまだ発展途上なのだと思い知らされます。