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まんぷく事前予想~台湾ルーツ消失でマトリックスの【青いピル】はもう懲り懲り

更新日:

もしも『イチロー物語』という映画が作られ、生まれも育ちも日系アメリカン!として描かれていたら?

もしも『大谷翔平物語』という書籍が発売され、彼のスタートがエンゼルスからの話ばかりだったら?

「そんな暴挙が許されるワケないだろwww」
と、多くの方が笑い飛ばされるかもしれませんが、悲しいながら、現実的にNHK朝ドラという国民的番組でそれが起きてしまいそうです。

他でもありません、2018年後期『まんぷく』です。

ヒロイン・今井福子(まんぷく立花福子モデル安藤仁子)の夫となる人物は長谷川博己さん演じる立花萬平(まんぷくモデル安藤百福)です。
現段階では、どう見ても日本人でしょう。

しかし、モデルとなる安藤百福氏は台湾出身。
フィクションだからといって、そこを伏せても良いものでしょうか?

今回は、重い筆を震わせながら、事前予想を記させていただきます。

 

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ホワイトウォッシュに通ずる愚行

『まんぷく』の事前予想の執筆にあたって、現段階での結論を申しますと、残念ながらこうなります。

「0点」。

0には何を掛けようとゼロ。
たとえドラマが面白く盛り上がったとしても、根底にある価値観が0で変わりなく、私の中では点数が確定してしまいました。

出演者は豪華です。
しかし、どうしても制作者の良識を疑ってしまいます。

なぜ、台湾出身というコトを消してしまうのか。

「ドラマも見ないでそりゃないだろ! 前作への思い込みが強すぎるんじゃないか?」
そんな意見も頂きそうなので、あらかじめ申し上げたく存じます。

本作のやらかしたこと。
それは「差別ど真ん中」かつ「歴史修正主義」に通じます。

こういう概念を述べるとき、ちょうどいい言葉があります。
「ホワイトウォッシュ」です。

詳細は、こちらをご覧ください。

[sanko href="https://bushoojapan.com/world/europe/2017/06/13/100148" title="「ホワイトウォッシュ」を軽視するなかれ 歴史的な差別問題はこうして発生していた" site="武将ジャパン" target="_blank"]

要するに、有色人種の手柄を、白人種のものとすることです。

想像してみてくださいよ。

中国が、「雪舟は実は中国人なんです」というドラマを作る。
イギリスが、「カレーやタンドリーチキンを発明したのはイギリス人」というドラマを作る。
アメリカが、「ゴスペルやジャズは白人の作り上げた音楽」というドラマを作る。

冒頭には、今の方にわかりやすく野球選手の例を挙げましたが、もっと生活に深く根付いた文化等を他国のモノとされたら、そりゃあ誰だって怒るでしょ?

世界から
「日本ってこんな差別ど真ん中やるの?」
なんて、思われたら辛くて……。

今から本作が海外展開されないことを祈念。
特に台湾上陸だけは絶対に避けて欲しい。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』の草薙素子をスカーレット・ヨハンソンが演じてもなんとも思わない方は、
「いいじゃんそのくらい」
と言われるかもしれません。

しかし、この手の差別は時に人を殺します。

デュマ将軍の場合、活躍した戦いを描いた絵から抹消されました。
そして実生活では、困窮の中で亡くなります。

[sanko href="https://bushoojapan.com/scandal/2017/05/10/98959" title="猛将アレクサンドル・デュマの功績 ナポレオンに背いた英雄は、あの文豪の父だった" site="武将ジャパン" target="_blank"]

実力はあった。
しかし、肌の色ゆえにそういう状況に追い込まれたのです。

外国で、白人モデルが芸者コスをして炎上したことがありました。

「日本人はそんなこと気にしないよ。炎上するなんて差別、差別いいすぎて、ちょっと神経質なんじゃないの?」
と思う方。
これは、日本人の問題じゃありません。

その国で暮らすアジア系モデルにとっては、仕事の場を奪われることなんです。
切実な問題です。
アジア系の人にとっては、差別ど真ん中。
日本人が許せばいい、そんな話じゃありません。

 

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消えた台湾

『まんぷく』のドコが差別か、って?
それは前述の通り、実際には台湾ルーツを持つ安藤百福を日本人にしたことです。

これが百歩譲って、ラーメン制作者でなければまだ1ミリくらいは弁解できたかもしれない。

しかし、安藤の作ったインスタントラーメンは、彼の台湾育ちのバックグラウンドが背景にあったからこそです。

・台湾出身だからこそ、彼は当時の男でありながら、台所で食事を作ることが得意で好きだった
・台湾出身だからこそ、中華料理の知恵を生かした製品を作ろうと思った
・台湾出身だからこそ、小麦粉で作る食物ならば、ラーメンがブレイクすると確信した

それを日本出身にしてよいのですか?
しかも、ラーメンのアイデアを持ち込むのは日本人妻らしいのですから……うーむ(´・ω・`)

日系イギリス人でノーベル賞を受賞したカズオ・イシグロ。

BBCがドラマを作るとしましょう。

実際に出来上がったものを見てみたら、ジェームズ・クローリーとかいう名前の白人にされていた。
日本を舞台にした作品のアイデアは、白人妻が持ち込んだというストーリーにされていた。

こんなストーリー、どう思いますか?

制作サイドで使われがちな言い訳がこれです。
「いやあ、イギリス人は白人じゃないと興味持たないし」

どちゃくそむかつきませんか?
そんなレベルの話を、これから朝ドラでやってしまう。そのことに何とも言いようがない怒りや切なさを覚えてしまうのです。

「いやあ、日本人のほうが親しみを持てると思って」
なんて制作陣に開き直られたら、「今は19世紀じゃねえんだぞ」と言い返したい。
そう、それはかつてのホワイトウォッシュと同じレベルなのです。

安藤がラーメンを作ったことには、彼のルーツが関わっております。
それを省くということは、そもそもの物語が成立しない。

妻が主人公だから関係ない?
って、それを全部、世界で活躍する日本人に置き換えることはできないでしょ?

 

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時代考証の終了確定

だいたいですね。
主人公から台湾ルーツを省くと、時代考証も無茶苦茶になります。
妻がラーメンを勧めるのならば、もうますます終わっている空気が漂います。

昔のラーメンは肉体労働者や兵士、男の食べ物であって、女が食べるのははしたない――そんなイメージがありました。
それに、ラーメンの歴史とは、戦前戦後の日本史とも深く関わっています。

[sanko href="https://bushoojapan.com/theater/manpuku/2018/09/25/116369" title="ラーメンの歴史は明治維新後にスタート~日本の歴史と歩み、世界の食となるまで" site="武将ジャパン" target="_blank"]

例えば、日本三大ラーメンのひとつ、喜多方ラーメン。

始めたのは、中国から来た青年でした。
そしてその味をはじめに好んだのは、当時喜多方で働いていた中国人、朝鮮半島から来た人々だったのです。
それが日本人にも伝わっていった。

ラーメンの歴史を、日本人だけのものにするのは酷い話です。
そういう確かにこの国の歴史にいた人を消す。これはもう、歴史修正と呼べるのではないでしょうか?
ラーメンの拡大には、GHQの小麦政策も絡んでいたのですが、おそらくここもスルーされそうで……。

ナゼ、よりにもよってラーメンを選んだのか。

ラーメンほど国際的な食べ物もありません。
中国に起源があり、日本でアレンジされ、今は世界中に広がっている――そんな食べ物です。

大切な背景や時代考証を無視して、日本人家族の愛だけでなんかラーメンできました、わーい、ってNHKで放送されたら、多くの国民が信じてしまいそうです。

 

かつてはそうじゃなかった

戦前舞台の朝ドラは、時代考証にあやまちが多いもの。
特に気になっているのが、戦前日本にいたはずの、日本以外がルーツの人を描かないことです。
まぁ、これは朝ドラだけの問題では限りませんが。

かつてはそうではありませんでした。

『はだしのゲン』には、朴さんという朝鮮人の方が印象的な脇役として登場します。
彼のような、日本以外をルーツとする人はおりました。

彼らの子孫だって、日本には多く存在します。
日本が単一民族国家だと言い張るのは、ただの事実誤認です。

そしてそういう人々がいたからこそ、日本という国、歴史は成立している。それは確かなことでしょう。
本作のような姿勢、そう歴史修正とも言える作品は、否定するわけです。

台湾要素を抜いた人は、恥を知るべきです。

 

マッサンのウィスキーがエリーの手柄とされたら?

夫が飲食物を作り、妻が支える朝ドラならば、『マッサン』があります。

この作品が、マッサンではなくエリーの手柄でウイスキーを作り上げたら、どう思いますか?

作中ではむしろエリーは、ウイスキーを飲むことができない設定にされておりました。
本作で、もしも、夫のアイデアの背景には全て妻がいました――なんて描かれたら、そりゃもう怒りが湧いてくるでしょう。

確かに安藤は、妻の揚げ物調理を見てアイデアが浮かんでいます。

ただし、それは連想であって、妻の発想があってこそインスタントラーメンを作れたわけじゃない。

「確かにモデルは台湾ルーツですが、彼がそれを成し遂げられたのは、日本人妻のアイデアのおかげです」
となったら、それはもう国境をまたいだ簒奪にしか見えない。

「内助の功」を逸脱しています。

前述のマッサンとエリーで想像して、スコットランドが同じようなことを言うことを想像してください。

「確かに彼は日本人ですが、彼がそれを成し遂げられたのは、スコットランド人妻のアイデアのおかげです」
そういう卑劣な部分を、本作は「内助の功」でゴリ推しするつもりかもしれません。

 

クールジャパンはアンクール

かつて、クールジャパンという言葉が一世を風靡しました。
日本のアニメや漫画がもてはやされる。そういう時代があったものです。

しかし、今はもう、それが終わりかけている、あるいは終わったとも見える。

認めましょう。
今は中国や韓国のコンテンツの方が、高評価なのだと。

※『お嬢さん』なんか世界的大ヒットです

ハリウッド映画に出演するアジア系の俳優は、日本人以外が増加傾向にあります。今何かと話題のファン・ビンビンさんもそうですね。あとはドニー・イェンとか。
マーベル映画のような大作でも、韓国ロケをした作品も多い。

認めましょう。
クールジャパンは過去形です。
かつては日本人特有であったアニメやゲームの技術は、海外でも取り入れられるようになりました。

しかも、21世紀の視聴者にあわせた要素も入っています。

例えば『ベイマックス』。

 

日本風のアジア的要素が取り込まれていますが、女性キャラクターが異常なまでに露出度が高いコスチュームを着用してはおりませんし、キンキンした声で話すわけでもない。
日本にはまだ、技術はあるかもしれない。
けれども、21世紀に求められる価値観を排除している。

そうなれば、日本から学んだ技術と、21世紀の価値観を持つコンテンツに流れてゆくのは当然のことでしょう。

話を戻しますと、世界的には、白人一色のドラマなんてだんだんと時代遅れになっております。

BBC制作の『マーリン』におけるグィネヴィア。

 

BBC制作の『ホロウ・クラウン』シーズン2におけるマーガレット・オブ・アンジュー。

 

かつては白人のみがキャスティングされたこうした役に、有色人種が起用されることが増えております。
薔薇戦争をモデルにしたドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』には、福島リラさんが出演しました。

 

こういう作品のレビューに「白人以外を使うな」と書き込む人がいるので、個人的に日本のAmazonレビューは無視しております。
そういう批判をするバカタレには、J・K・ローリング氏がパンチをかましたので引用しますね。

黒人ハーマイオニー差別にJ・K・ローリング大激怒

「これまでにソーシャルメディアを使ってきたけど、おバカな人はおバカなことをするものね」

「何いってんだ、バーーーーーカ!」という趣旨の言葉をエレガントな言い回しで釘を差す。さすが作家さんですね。

しかし、どうしてこういうことが起こるのでしょうか?

世界は、様々な人種から成り立っています。
ところが、白人あるいは多数派以外はいらん、不愉快という差別的意識のもと、排除されてきたのです。

こういう差別のもと、歴史から消えてしまった少数派に目線を向けようという、そういう作品が増えています。

※黒人との血を引いていたイギリス人貴族女性を描いた『ベル〜ある伯爵令嬢の恋〜』。映画は素晴らしいのに、邦題が駄目。恋愛ではなく差別についてむしろ深く描いている

「人種差別はマジでクソ!」っていうのも、アメリカはじめトランプ政権のもと、クリエイターがその白人至上主義に反論をしているかのようでもあります。

人種差別主義者ってマジでクソッスよね、と訴えかける傑作ホラー『ゲット・アウト』

映画『クレイジー・リッチ!』がアメリカで旋風を巻き起こしたのも、それまで脇役だったアジア系を前面に出した要素があります。

 

世界的にそういう流れに向かっている。
なのになぜ『まんぷく』よ!
大切な台湾ルーツを隠蔽するんだ?

そんなんだから、アンクールになっちまうんだよ!

本作の修正で思い出したこと。それは、テニスの大坂なおみ選手のことでもあります。

「ハーフ」の記者が感じた、テニス・大坂なおみを巡る「日本人らしさ論」への疑問

大坂なおみの報道であなたが感じたモヤモヤ、それは「ハーフあるある」です

「こんな奴は日本人じゃない」
そんなモロ差別の罵詈雑言が、彼女の躍進で消えました。

そして躍進のあとで出てきたのが、クソ価値観の上塗りです。
「あの子には、今時の生意気女が失った大和撫子らしさがある、性格がいい!」
……意味がわからない。
人種的なルーツが異なる人間を、さんざん差別しておいて、活躍したら日本人として認め始める。

これ、モロに『まんぷく』もそうじゃないですかね。

安藤百福は台湾出身だけど、ここまで活躍したから日本人にしてあげましょう、って?
差別ど真ん中じゃないですか。

 

【青いピル】は懲り懲りだ

2018年は、NHKにとって恥さらしの一年になったとしか言いようがありません。

『西郷どん』と『まんぷく』。
共通点は、史実的な根拠がない、浅はかな歴史修正がまかり通っていること。

『西郷どん』は、戦前レベルかと思われるような、歴史修正がたびたび登場して閉口させられます。
何が悲しくて、70年以上前の基準で作品が作られているのでしょうか。

多様性や差別問題でもウソをついていますよね?
史実では奄美大島に対して差別的であった西郷が、ドラマだと差別をしない人間にされていたり。

[sanko href="https://bushoojapan.com/jphistory/baku/2018/05/13/112673" title="奄美大島のことを西郷隆盛はどう見てた?黒糖地獄に美談はムリあり……" site="武将ジャパン" target="_blank"]

愛加那とその間に生まれた子の扱いなんて、モロに差別的ですよね。

[sanko href="https://bushoojapan.com/saigo/2018/01/20/109104" title="奄美大島のことを西郷隆盛はどう見てた?黒糖地獄に美談はムリあり……" site="武将ジャパン" target="_blank"]

それを描くのは、仕方ないことです。
その時代の価値観にあわせて描いてこそ、誠意ある歴史ものですから。

しかし『西郷どん』では、不誠実にねじ曲げました。

差別する主人公なんてウケないと言いたいのかもしれません。
だからといって都合よく歴史修正するのはいただけない。
西郷のドラマで、奄美大島の島唄をOPに入れ込む無神経さに閉口させられました。

想像してみていただきたい。
黒人奴隷をコキ使った男のドラマに、彼を讃美するゴスペルが使われることを……最悪じゃないか……。

そして『まんぷく』。
なにやら無意識の悪意を感じる。
少数派を押しつぶす圧力です。

『西郷どん』は、戊辰戦争で負けた側がともかく悪い――そんな勝ち組視点からの傲慢さで描かれています。
奄美大島への差別からも、西郷を漂泊しました。

『まんぷく』は、多数派の日本人の都合にあわせて、ルーツが異なる人が消されようとしています。

どうしてこうなった?
まっとうな歴史を描くことはそんなに大変?
ならば、歴史を取り扱わなければよいじゃないですか。

この二作における修正を見ていると、どういう人を慰撫したいのか、なんとなく見えて来ます。

日本スゴイ!
インスタントラーメン作って日本スゴイ!
日本には差別なんかない!

こんなものは【青いピル】だ。

ぬるいコンテンツに浸かって外を見ずに生きていく。
それは『マトリックス』における【青いピル】なんですよ。

あの映画では、青いピルを飲んでいる限り、世界のリアルに気付くこと無く、プログラムされた日常の中でのほほんと生きていけた。

 

【青いピル】を飲むこと。
それは、流れゆく世界の価値観の変化も無視することであります。
この動きが主流化すれば、日本のコンテンツはどんどんアンクールになるでしょう。

私は、そんなピルを飲みたくない。
本作を見るし、批評は続けますが。

でも、本作を「0点」と評した理由がご理解できるでしょうか。
もしも台湾を隠蔽するなら、いつだって【青いピル】の弊害を訴え続けたいと思います。

※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

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