麺よりも製麺機じゃないですか?
個人的な話で恐縮ですが、私がしょっちゅう通っていたラーメン店に、大人気の名物メニューがありました。
その店の常連は、即座に座って定番のアレを頼む。そんな絶品でして。
チャーシューがたっぷりとか、珍しいトッピングまみれとか、そういう類のラーメンではない。
ごくごく普通の一杯なのです。
ただ、麺が抜群にイイ。
スープが絶妙にからみつき、もちもちとしていて噛みしめるだけで笑顔になりそう、そんな一杯でした。
萬平の開発している麺に、その手の工夫はあります?
材料ではない。
実は、その絶品店の話については、こんな続きがありまして。
あるとき常連さんとお話する機会があったんです。
私「名物の手打ち麺が本当に絶品ですね。食べ飽きるということがありません」
常「え、手打ちだと思っているの? 手打ちであんな食感が出せるわけがないでしょ」
私「ん? そういえば手打ちとは言ってませんね……」
常「あれは特殊な製麺機で作っているんだ。手打ちとしか思えない、絶品麺を作るスゴイやつだってさ」
マ、マ、マジか、そんなもん実在するんかーッ!
って、そのときは心の底から驚きまして。
萬平さんは、偉大な発明家なんでしょ?
福子が発明、発明ばっかり言ってますよね。
だったら【スーパー製麺機】を作りなさい、って話なのです。
しかし、本作ではそういった生の情報を活かした工夫ができていない。
ナゼか。
スタッフ、脚本家さんのリサーチが絶対的に足りていないんですよ。
実際に製麺する人や、ラーメンライターにでも聞き込みしていれば、どこかでそういう情報に当たっていたはず。それをドラマで面白く見せればいい。
しがないライターの私ですら、そういうラーメンの麺に関する話を持っているんです。
NHKの朝ドラを作るんだったら、必死こいて、そういう情報を探してきてナンボでしょ。
あんな原始的な手回し製麺機での量産は難しくありませんか?
どうして製麺機を作りませんか?
エロモデルも、おざなりなイジメも、『白薔薇』も、すべて時間稼ぎとしか思えません。
そもそもラーメン作りすら時間稼ぎに見えてきた。
アイデアの飛躍、そして発明というのは、知恵があってこそ出来るものでしょう。
しかし本作の萬平さぁんは、知恵や調査へのリスペクトがない。
妻の福子にパートをやらせ、そのお金でラーメンの食べ歩きして、結局、味わってただけでは?
何も活かせてない……。
「発明」は飛躍じゃない
発明家というのは、いきなり飛ぶものじゃない。
その点では、彼も同じです。
この2:10で、初対面のジョン・ワトソンに対して、シャーロック・ホームズはこう言うわけです。
「アフガニスタンか、イラクか?」
即座に帰還兵だと見抜かれ、ジョンはぎょっとする。
これも種明かしをすれば納得のいく理由があるのです。
シャーロックはとてつもない量の知識が脳にぎゅっと詰まっていて、思考回路を常にフル回転させて、相手を観察している。
だからこそ、人に見えないものが見えて推理ができてしまう。
魔法や飛躍のような推理の底には、頭脳と知恵があります。
萬平には、どちらもない。
彼にあるとわかるのは、セレブになってチヤホヤされたい、そんなゲス欲求くらいです。
福子にワトソン役を期待してみてはどうか?
これも、ダメでしょう。
引き立て役になっているとはいえ、彼自身も軍医で帰還兵であり、なかなかスゴイ経歴と頭脳の持ち主です。
かつ、シャーロックにはない長所もある。
福子には何かありますか?
萬平はセレブになりたいだけの人。しかも盗癖があるし、食事も平気で抜く。
福子はその信者。
そんな二人に、何を期待しろと言うのですか?
そもそも主婦の味方だっけ?
それでも萬平さぁんの主婦を思いやる気持ちは本物! とお思いですか?
これも史実を照らし合わせると、厳しいものがあります。
インスタントラーメンが救世主となった層に、主婦は含まれていたのか?
そう言われたらないとは言えません。
ただし、メインターゲットではない。
当時、この新商品に救われたとされる層は、若年層・未婚・男性・多忙と揃った人々でした。
受験や仕事で忙しい若い男性が、ささっと作ってずるずる食べる、そういうイメージです。
むしろ、主婦がインスタントラーメンに頼り切っていたらバカにされる。そういう感覚でした。
インスタントラーメンへのネガティブなバッシング背景にも、そうした事情があるのです。
まぁ、萬平のこの手の嘘は今に始まったことでもありません。
困窮した被災者母子を救うと言いながらダネイホンを高級病院食にした前科もあります。
言うこととやることがここまで一致しない方が主人公ってのも凄い話です。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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製麺機の件について
多分、まずは試作段階なので手回しで良いと考えているのではないですか?
一つづつ作って試食といい段階で、100食、1000食作ってもしょうがないですし。
それで、生産方法が確立されたら、大量生産を考えるんでしょう。
そしたら、機械やら工場やらの話になる事と思います。
お久しぶりです。ついに萬平サンが「ラーメンだ、福子、ラーメンだよ‼」と叫び出してドラマは佳境に?入ったらしいので、久々にちゃんと見てみてるんですが、(まぁぶっちゃけ、「ラーメン前」の今まで4ヶ月間は私には無意味な冗長な前置きだったとしか思えないが)
いやあ、即席ラーメン発明という《クライマックス》を迎えても、一本調子の三文芝居は見事に何も変わりませんねえ。本当に感動的なまでにあの同じ退屈さのままです。
今や日本発祥の人類食となったインスタント麺、その元祖であるチキラーを安藤百福が産み出すに至った史実は、それ自体がどんな創作にもまさる、手に汗握るドラマですよね。ちょっとした工夫でそれこそどんな面白いドラマにもアレンジ出来るはず。それを、どうやったらこんなにも徹底的につまらないドラマにしてしまえるのか。本当に摩訶不思議な《プロの》脚本家さんですよこの方は。
たとえば家族に試作品を食べさせて全員一致で良いと認めなければ完成品にしない、と勝負をかけるあのシーンにしても、誰もがただ「おいしい」か「まずい」と言うだけ。どこがどのように美味しいのか述べる発言はゼロ。いくら素人の家族たちだと言ってもこれはひどすぎです。やる気が全く感じられないこの脚本家の仕事ぶりは、人生をかけて即席ラーメンを創出した偉人安藤百福に対してあまりにも無礼ではないですかね。もうとにかくその一言しか私は出て来ません。
まんぷくと半分、青いを比べていつも不思議なのですが、なぜ鈴愛だけが「発達障害」だと呼ばれて、萬平さんや福ちゃんは呼ばれないのでしょうか。
鈴愛は確かにADHDっぽかったです(しかしそれを見事に個性として昇華していた)。
しかし萬平さんや福ちゃんも自閉症スペクトラムっぽいのに…。(萬平さんはジャイアン型、福ちゃんはのび太型)
不公平ですよ!!(しかもそれが個性として昇華されていないばかりか、ただのトラブルメーカーのように描かれている。)
このドラマ、いっそ中世が舞台であったらなぁと思いました。
それなら作中のイジメ対策も無理がありませんし。
ただしそのあと、暴力と下克上の連鎖が続き、最終的に「喧嘩両成敗」が誕生したというオチちしないといけませんが。