あさが来た 86話「働く母が悪い」はもう勘弁

今週は千代による「なんでうちの母は他のところと違うの?」という疑問が出てきます。

正直、これについては『どうでもええわ』としか思えません。
あさもあさで、娘の疑問に答えられない自分はアカンお母ちゃんや、いとつぶやいたりするわけですが、いつまで同じ疑問の周囲をぐるぐる回っているんや、と突っ込みたい。

千代が赤ん坊の頃、炭坑に向かう際、よのから
「娘に背中を見せるつもりで行ってこい」
という趣旨のことを言われ、吹っ切れていたはずではないですか。

一体、何度『働く母は悪い母という刷り込みで悩むのか』と思います……あさのキャラクターにも合っていないんですよ。

幼い頃から型破りで、既存の女らしさから逸脱していることが彼女の個性であったはずです。

それがねちねちぐちぐちと、いつまで「普通のお母さん」になれないことで、なぜ悩まねばならないのか。

そもそもあさは明治の資産家でしょ

この「働く母や妻は悪いのか?」という疑問は本作だけではなく、ここ数年でも『梅ちゃん先生』、『花子とアン』、『まれ』でも繰り返されています。
吹っ切れていたヒロインはいたかどうか振り返ると、『カーネーション』までさかのぼらねばなりません。

何かノルマでもあるんでしょうか。もうウンザリなんですよ。
他の作品と比べてマシな点は、父親の新次郎も親子のあり方について再考するきっかけになっていることくらいでしょうか。

そもそもあさは明治の資産家です。

いくらでも子どもの面倒を見る使用人を雇えます。
この時代の資産家の母親は乳母に任せきりなんてごく当たり前。なぜこんなところで無理に今の価値観を入れてくるのか。

と、いうわけでこのあたりの葛藤は「いつもの朝ドラテンプレを参照してください」で、もう、よいかなぁ、と。
『朝ドラってそういうものよ』ということかもしれませんが、平成の菓子職人でも、明治の実業家でも、同じようなことをやられてもねぇ。

時代を超えた悩み――例えば「人の生死」とか「道ならぬ恋」とか、そういうのはわかりますけど、「働く母親と拗ねる娘」ってそうじゃないでしょ。

そんなわけで今週は五代を中心に見ていきましょうか。

士族や華族が流行に乗って銀行業

この頃、炭坑事業で経験を積んだあさは、人から助言を請われるようになります。

そんな折り、五代が加野屋を来訪。
あさは銀行事業を始めたいと相談しますが、タイミングが悪いと反対されます。

金融業に明るくないのに資産だけはある士族や華族が流行に乗って銀行業をスタート。

それも長くは持たないだろう、近いうちに政府の規制も入るだろうという五代です。
五代は、金融不安は銀行乱立のせいだと言っておりますが、西南戦争の戦費調達によるインフレも要因になっています。

これには榮三郎が納得するわけですが、しかし両替商のままでは乗り切れないと五代は言います。
五代はあさを励まし、大阪一の女実業家を目指せとハッパをかけます。

北海道のビジネスチャンスとは?

そして次に、北海道でのビジネスチャンスを切りだす五代。
五代は政府から、北海道開発を手伝って欲しいと持ちかけられたそうです。

フロンティア北海道に夢を見いだし、うっとりするあさ。

大阪商人の手で儲けを出そう、大阪商人の力を見せるええ機会と力強く言う五代なのでした。

颯爽と立ち去る五代ですが、そのあとを何か手帳を持った人物が追いかけています。
一方、あさには待ちに待った手紙が届くのでした。

さてここで、別の朝ドラを思い出しませんか。

一年前の『マッサン』でも、マッサンが北海道にビジネスチャンスを見いだしていました。

そのマッサンが北海道で出会った森野熊虎、その父が明治初期の北海道で苦労したと語られていました。
虎の父のように、幕府について敗北した藩の人々は、維新直後に開拓のために、あるいは屯田兵として北海道に移住させられました。

明治時代の北海道開拓はとにかく過酷~戦争敗者、屯田兵、元新選組、囚人、そしてヒグマ

そうした中で、熊虎の父ら会津藩士は、開拓使から託されたリンゴの苗を育てることになりましたが、農業のノウハウなど知らぬ侍たちです。
何度も失敗を繰り返します。

そうして試行錯誤をしたリンゴで、マッサンはジュースを作っていたわけです。

余市のリンゴ「緋の衣」と会津藩士たち 北海道移住の敗者は赤い実に未来を賭けた

そんなふうに末端の元敗軍の侍が北海道を開拓する中、それを取り仕切っていたのが開拓使です。

もともと十年計画であった開拓使が、赤字のまま引き揚げるということで、格安でその施設を譲ってもらったというのが、五代の持ってきたビジネスチャンスというわけなんですね。

熊虎の父が五代やあさの会話を聞いていたら、どう思ったのかなあなんて想像してしまいます。

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文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください

あさが来たモデル広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます

【参考】
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