それは「奥様封筒」なのか?
剛男は正義感を滲ませて、キッパリ反対。
いわばワイロみたいなものですからね。
すると泰樹が登場し、そんなものはもらっとけと一刀両断です。
メーカーは公正に買っているのに、ナゼそれを信じんのか?
そう怒る泰樹は、このメーカー担当者が、牛の病気の時に獣医を呼んでくれるなど今までよくしてくれた上に、牧場を評価してくれている、その上での金銭の評価だから受け取れと言うのです。
彼から要求したことではありません。
極めつけはこうです。
「理屈の通らんことはこれまでなんぼでもあったー!」
うおっ、開き直ったー!
「その金で不二子が少しでも助かるなら、わしゃなんぼでも受け入れる! 開拓のことを思えば、綺麗事だけで家族を守れるかー!」
剛男はこう言うしかありません。
「汚いことは、やめましょうよ」
富士子は困りきった顔で、相手に金を返します。
「私の好きにしていいでしょ」
ちょうどそこへ夕見子が帰宅。
泰樹は納得できぬ顔で、その場を立ち去ります。
この場でよかったのは、夕見子が余計なことを言わなかったことぐらいですかね……。
上手だなぁ、と思わされるのは、
【両者の言い分それぞれに理屈がある】
ところです。
牧場はおやじさんそのものなんだべ
深刻なBGMの中、搾乳するなつ。
思い余って戸村父子にも農協についての意見を求めます。
おやじさんの気持ちはわかるし、農協のしていることもわかる。
それが二人の結論です。
農家は、値段交渉が苦手なもの。間に農協が入ることで、ホッとする人々もいるでしょう。
そこでなつは、こう問いかけます。
本当は、戸村父子も、自分の牛が欲しいのではないか? と。
戸村家にも畑があるのです。だったら酪農で独り立ちした方がよいのではないか、ということですね。
悠吉が身上を話し始めます。
彼は開拓一世の八男でした。時代背景からして、彼は生まれた時点で何も持てないと決まったようなもの。それなのに、泰樹のもとで働いて、狭いながらも自分の地べたを持てたのです。
これも、おやじさんのおかげ。
遠慮ではない。
おやじさんと牛飼いが好き。
そんなふうに、柴田牧場と自分たちを一体化させているわけです。
「この牧場は、おやじさんそのものなんだべ。だから、そう簡単に意思を曲げられないんだ」
息子もそう理解を示します。
これもジェネレーションギャップを感じさせます。
明治生まれの開拓一世や二世はそうでしょう。
ただ、その子の世代や、山田家のような新参者からすれば【古い】となってしまう。
世代間の価値観の違いをどう埋めるべきか。
これはいつの時代にも、考えねばならぬことです。
じいちゃんの背中
その晩のおじいちゃんは、食欲がないと早寝したのだとか。
なつが知る限り、初めてのことです
じいちゃん不在の食卓。さみしいですね。
照男も、泰樹の気持ちを思いやります。
農協はいきなりメーカーと手を切れなんて、そりゃ酷い。そう思いやるのです。
なつは、自分が問題をかき回したと謝ります。
剛男は自分のせいだ、もっと直接話し合うべきだった、傷つける前に、と反省。
泰樹の不在は大きいものです。
と、富士子がこう言います。
「大丈夫よ。あんなことでめげたりしないから。開拓一世は強いのよ」
しかし、イジワル軍師・夕見子は空気を読まずに、自分の見通しが正しいかをアピールします。
「これしきのことで、あのじいちゃんが変わるわけもありますまい」
おいっ!
こうして見てくると最悪の孫娘というか、一体お前はなんなんだとつっこみたくなるかと思います。
「嫌なことを言うなあ」
周囲もそう言いますが、諦めを感じさせるのです。
夕見子だから仕方ない。そういうもんだべ。
それに性格が芯から悪いというよりは、本音で語りたい、取り繕うのは嫌なのだ、という彼女なりの意思を感じさせますよね(雪次郎のことはさておき)。
実際、軍師の見通しは当たっているから困るんです。
じいちゃんは、自室で饅頭を食べています。
食欲がないどころか、空腹。
「お茶が欲しい……」
そうぼつりと語ったかと思ったら、もう一度
「お茶が欲しい……」
二度言う泰樹でした。
じいちゃん萌えを毎朝届けてくるぞ!
『真田丸』に続く、知略と調略と頑固さを混ぜたじいちゃん。
そんな草刈正雄さんはカワイイ、カッコいい、ともかくシビれろ!そう視聴者にぶつけてきます。
この背中は卑劣だ!
茶を欲しがるじいちゃんは卑怯なり!!
そう真剣に言いたくなるほど、素晴らしいにもほどがある。
毎朝新たな草刈正雄さんの魅力をお届け――これが本作の底力なのでしょう。
女性にエールを送る朝ドラ。
それが100作目で、全力でじいちゃん萌えを送りこみ、しかも、こうあれと全国のじいちゃんを叱咤激励し始めました。
どこへ向かうつもりだー!!
いや、だって、3週目でイケメン勢揃いと言っていたはずなのに、草刈さんの背中で全部かっさらっているじゃないですか。
強すぎるわ!
一般人が訴えられる時代
ますます好調の本作に対して、関係報道が面白くなってきました。
内容そのものに踏み込んだ意欲的な記事のことではなく。
数字狙いの陳腐なゴシップですね。
策が見え見えなんです。
相も変わらず古臭い論調。
どういうことか?
ちょっと見ていきましょう。
・まだミソジニー(女性嫌悪)やってんのかーい!
→要するに【女の敵は女】と煽っている記事があるんですね。例えば「朝ドラ経験女優が、主演を叩いている」とかいう類の中身のないもので、いつまでそんなこと書いてんだ? というやつです。
・媒体ごとに足並み揃ってないやんけ!
→結局、女優いじめの主犯は誰なのか? 出演者たちの「名前さえ書いておけば」数字が取れるからって、各社テキトーに書いてます。なので、メディア毎に論法がめちゃくちゃ。信憑性は低下するばかりでは?
・結局ネット媒体だけが主戦場なんだよな!
→「ネットde真実!」なんて言葉もありますが、それを信じているのは30代後半以降。ネットが席巻し、紙ではないこの場所にこそ真実がある!と、ビックリした世代だけのことです。
それ以下は、ネットは数ある媒体の一つに過ぎません。つまり、ネットは嘘だらけだと自覚し、情報を吟味精査していて、彼らは釣れません。
こうしたメディアが問題なのは、同調する一般視聴者も産んでしまうことなんですよね。
誹謗中傷記事に乗っかり、ここぞとばかりに持論という名の悪口を発展させて、SNSまで飛び込んでしまう。
ネットは匿名じゃありません。
メディアは訴えられてもある意味慣れっこですが、個人が訴えられたら悲惨ですよ。
訴訟沙汰になれば弁護士の請求によって書き込みした人の情報が明るみに出て、その後の裁判ともなれば数百万単位で賠償金が発生する事案も出ています。
こうしたメディアのデタラメ記事に相乗りして、罵詈雑言を並べて調子に乗っていた視聴者がいたとしたら、本当に危険です。
もう一般人が訴えられる時代なのですね。
実際、そうした動きは出ていて、誹謗中傷を連発していたnetgeekというメディアが訴訟案件になっています。
「netgeek」掲載記事についての名誉毀損などの損害賠償訴訟を応援してください – CAMPFIRE(キャンプファイヤー) https://t.co/Hw9uflS4hV @campfirejpさんから
— Isseki Nagae/永江一石 (@Isseki3) April 18, 2019
netgeekに釣られたのかどうか不明ですが。
上記の永江氏に対しては、個人で誹謗中傷する一般人も少なくなく、いずれそちらも裁判事案になる可能性を明言されています。
そうなったら100万だか200万だかの賠償金と共に、キッチリ責任を取らされるケースも激増するかもしれません。
楽しみっちゃ楽しみですね。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
>ガブレンツ奮戦様
ご指摘ありがとうございます!
修正いたしました^^
ならびに、いつも貴重なご意見ありがとうございますm(_ _)m
第16話のレビューが、何故か非分類になってしまっていて、「感想あらすじ一覧」に載らなくなってます。
「乳業メーカーに対して不利になりがちな中小酪農家を含め、極力大きな単位でまとめることで、乳業メーカーと対等に取引できるようにする」
これは、まさしく「指定生乳生産者団体制度」の趣旨でもあります。
その通り、この制度自体は一定の機能を果たしてきたもの。
ただ、あくまでも「弱い立場の酪農家の保護」が制度の趣旨であるので、競争力のある高品質乳などを生産する酪農家が、出来の悪かった分を売るのにだけこの制度を使うというのは趣旨が違う、それで、「出荷義務付け」があったり、補助金交付対象もこの制度を使う酪農家が対象となるようになっていた。ということだったようです。
このあたり、農水省や各団体等もWebに公開している資料があるようですので、ご覧になってみられるとよろしいかと思います。
その上で、規制改革会議の提言・答申や関連報道等を見ると、より理解に資するのではないかと思います。いずれの立場にせよ。
(※個人的な理解です)
農協の建物。武者さんの仰るように、とてもいい感じで、昭和20~30年代の農協の雰囲気がよく出ていると思います。
その後合併が進んで、今なら「支所・支店」レベルとなりますが、当時の単位農協はこんな感じだったことがわかりやすく描かれていると思いました。
農協側の考えが明らかになりました。
正に、共同出荷の目的はこれ。変に悪く決めつけた形にせず、正当に描いたことは好感が持てます。
泰樹の方はと言えば、むしろこちらの方が、開拓期に乳業メーカーから支援を受けた経緯、恩義…悪く言えばしがらみ? を無視できないのか?とも取れる姿勢。
とは言え、「綺麗事だけで家族が守れるか!」の言葉に、言い難いことが全て含まれていることを強く感じます。
表面的には理解しにくく、まだ消化不良感があります。明日このあたりが明らかになるでしょうか。
剛男さん、なんか真田丸の秀次様っぽい空気も出てきた気がします。繊細で風雅を愛するところ、優しいところ、娘に「父は強い人ではない」とか言われちゃうところ…
こじれにこじれて「切腹」とかなりませんように!!
このドラマは、敵側を一方的な悪にしていない点がいいと思います。
【両者の言い分それぞれに理屈がある】
武者さんの仰るように、なつぞらの脚本に信頼が置けるのはこういうところですね。
『無実の罪』で主人公を逮捕して拷問したり、あくどい手口で商売の邪魔をしたりの完全なる悪者が出て来ない。
登場人物たちそれぞれの考え方に理由があり、共感したり、考えさせられたりしています。
そして、家族にも隣人にも、愛情に溢れた人々を毎日見ることができて幸せです。