なつぞら26話 感想あらすじ視聴率(4/30)無意識のうちの微かな動揺

そして、もう帰ろうとする信哉。
これから、青函連絡船に乗るそうです。

それじゃトンボ帰りじゃないか! そう驚く剛男。

せめて一泊くらい、していってもねえ。ゆっくり話でもしようよ。
ちょこっとだけど、食べるものもあるべさ(と言いつつ大量にあるパターン)。

そう言いたい北海道流の人懐こさ、もてなしたい気持ちがあるのですが、信哉は断ります。

「僕が言うのも何ですが、なっちゃんのこと、よろしくお願いします」

ここでのなつの顔。
懐かしさもある。それだけではない、複雑な顔です。
広瀬さん、草刈さんを筆頭に、本作は無言でも顔に何かがにじむのです。

こいつもそうだ。
その晩、夕見子は家事手伝いをします。明美もびっくり。富士子も驚いています。

「あら珍しい。勉強はいいの?」

複雑な顔で、家事をする夕見子でした。
わかる……わかるぞ夕見子。

「あの信哉のように、勉強の時間が制限されている者でも進学は可能。勉強を理由に家事を断るこの私がッ! あの者如きに負けるだと? 左様なことはゆるされん!」

ピンクのスカートを履いたお嬢さんでも、中身はこのくらい負けず嫌いでしょ?

家事をしてでも北大に進学できる!
そして母、明美、その他もろもろを感服させてみせる!
それでこそ我が完全勝利だ……そのくらい、軍師ならば可能だと思っている。そうでしょう?

夕見子はほんとうに見ていて飽きないな。
毎朝、見どころがあるな。

普通、朝ドラは、モデルが負けず嫌いの勉強好きでも、キャラクターを丸める傾向があります。
実物は、もっとエッジが効いていると思ってください。
例外は『カーネーション』くらいですね。

「この私が、勉強で負けるわけにはいかんのよ!」
このくらい闘志バリバリのヒロインでも、ドラマとなると、
「私の知性で、世の中に尽くしま〜す!」
くらい、可愛い子になる。

嘘くせえ。
この時代、こんなにバリバリ勉強する女が、そんなお上品ぶったこと言うかよ。実際そうでもないし――。
何度そう突っ込んできたことか。

夕見子は、そうじゃないのが本当にいいですね。
『いだてん』の二階堂トクヨもそうですが、丸くない、とんがった秀才ヒロイン。
そりゃあ魅力的でしょうよ。

 

なつが変わっていくのか

なつはその夜、父の描いた家族の絵を見ています。

脳裏に響く、兄の言葉。
別れる間際に、彼は約束をしてくれたのです。

「大丈夫だよなつ、ちょっとの辛抱だ。手紙を書くから。しっかり働いて、必ずなつを迎えにいくから。千遥と一緒に迎えに行くよ」

そう言ってくれた兄。
キャンバスを見ながら、ちょっと寂しそうに微笑むなつです。

しかし兄は迎えに来ていない。
信哉のように、自分のことで必死なのか。どうしても、そうアタマをよぎってしまう。

その晩、泰樹はバターチャーンを磨いていました。

夢の象徴を磨くこと。
これは重要ではありませんか。

無意識のうちに、動揺しているのでしょう。

泰樹って、真田昌幸もそうなんですけどね。
動揺していても、それをはっきりとセリフで説明しないし、イライラしたりしないんです。

「クソックソッ!」
と、連呼なんかしませんね。

戸村父子の動揺と比較すると、わかりやすいと思いますよ。力づくでも止めると息巻いていた悠吉とは違う。

それは、彼が動揺しないということではないんです。
実際、顔にも、僅かに出ていました。

こういうタイプが、感情をあらわに表現するときは、感極まっているか、ピンチの証拠。
先週の、演劇鑑賞後がそうでしたっけ。

※昌幸パパがこう叫ぶ。本当に追い詰められてんのよ

泰樹は、バター作りを照男となつの代で実現して欲しい。
そんな夢があった。

ところが、なつは変化しつつある。

・天陽との接近

・絵を描き始める

・信哉が投げかけた兄の行方

そう感じるものが、きっとあるのでしょう。

 

なつを兄に会わせてやらねば

このへんは、脚本でも意識的に示されていると思います。

卑怯なほどに笑えた門倉番長。
あれも、ただのコミックリリーフではありません。

シャイな照男、その気があるかすら不明な天陽には絶対できない、ある役割がありました。

それは、なつは女性としての魅力が開花し、結婚相手として見られるように成長したと示すこと。
あの告白騒動で、そのことを示す役目。
適齢期になったということ。
そしてこの時代。

泰樹にはわかっているはずです。

なつを思い通りにできるのか?
孫のように愛おしい。開拓者としての適性がある。しかし、血の繋がりもないあの子を。

感情としては、もちろんそうしたい。
しかし、彼の知略99と理性は、そんな無体なことをゆるさんのじゃああ!

そんな父に「話がある」と、富士子がやって来ます。

なつの兄は、なつに会いたがっているのか。そう思うのか。確認しています。

「兄貴がどうあれ、なつが会わなきゃ、なつは一生忘れられんな」

そう重々しく語る泰樹。

本当はこう言いたいのかもしれない。

なつよ、行くな。兄のことはもういい。ここには家族があるぞ――。

でも、言えない。
彼の理性は、そう言うことは【過ち】だとわかっているから……。

なつは、自室で絵を描いています。
そこへ、富士子が話に来ます。

「なつ、ちょっといいかい。東京、行かない? 咲太郎さん、探しに行こう」

なつは静かに頷くのでした。

 

柴田きょうだい奮闘中

息子が、男性的な長所だけを選んで親や先祖から引き継ぐわけでもない。

娘が、女性的な長所だけを選んで親や先祖から引き継ぐわけでもない。

柴田家がこの一例です。

◆照男

母方から(泰樹・富士子):現実的な見通しをすること→一生涯を地元で生きても問題ない

父方から(剛男):おとなしく周囲と調和すること

=男ならば堅実な農家や自営業。女ならば専業主婦や農家のお手伝い。理想の嫁タイプ。

◆夕見子

母方から(泰樹・富士子):知性的で、すぐさま言い返す気の強さ

父方から(剛男):学び、飛躍させる大志

=男ならば町一番の秀才、大学卒業、エリートコース。女なら……理解されにくいタイプ。

何度も書いて来ましたが、これがむしろ男女逆であればそこまで斬新ではないはず。

北大進学志願も、家事を手伝わないことも、秀才だからと終わってしまうところでしょう。

「柴田家はじまって以来の秀才だべ!」

「父ができなかった勉学一筋の夢を、叶えてくれるのか」

そうアッサリと応援をされたはず。

そういう意味で、夕見子はより意地を張っている。そういうところもあると思うんですよね。

家事をやらないことも、
「女だからって、勉強の合間に家事をやれとな!?」
とムキーっとしていたのかもしれません。

意地を張っている。
だからこそ、雪次郎との恋愛をいじられると「ぐぬぬ……!」と動揺しちゃうのかも。

照男も、それはそれで辛いはず。

大黒柱として家を背負わなければならない。
けれども、どうにもじいちゃんの期待は、なつに向かっているような……。

柴田きょうだいの振る舞いには、男らしさ、女らしさにとらわれた人間の、根源的な悩みがあるように思えるのです。

わかりやすい悩みを投げて来ない。
脇役の時間稼ぎの定番である、恋愛を全面に出してくるわけじゃない。

自分らしく生きること。
その奮闘にこそ、ドラマがある。

そういうテーマを感じるのです。

 

泰樹じいちゃんもつらいよ

まだ若く、思春期の孫だけじゃない。
泰樹も、悶々と悩んでいます。

頑固オヤジ。背中で語る。
そういう昭和の頑固なじいちゃんであることに、別のひねりがあるようにも思えます。

「わしの言うことが聞けないのか!」

そういうマウンティング病に罹ったおじさん描写はあるあるですよね。

もしも、泰樹がそのタイプであれば、もっとなつを仕切ろうとするはずです。ともかく威張り散らし、相手が自分の言うことに服従することを喜びとする。

泰樹は、そうじゃない。
支配することも、支配されることにも興味がない。

先週のラストから今週冒頭で、結果的に総大将として農協につく結果にはなっておりましたけれども。
それは狙っているというものでもない。

それにあの決断に至るまでには、
「わしが愚かだったのか……」
という悩みや反省もあったもの。
マウンティングジジイならば、自分より年下で世話してやったなつや山田家のことなんて、受け入れないでしょう。

しかし、泰樹は違う。
知略99で柔軟性もあるから、過ちがあれば素直に受け止める。介入して感情の赴くままに支配する――そんな野暮なことはできない。

泰樹って、ほんとうにロールモデルとしてよくできていますよね。

誰からも慕われる、彼のようなじいちゃんになるためには、辛いことを我慢する必要がある。
思う通りにできなくて、悔しいこともある。相手を認めなければならない。そういうこともある。

踏ん反り返っているだけでは、たどり着けない理想のじいちゃん。
その辛いところも、本作は描いていくことでしょう。

理想的な存在になるためには、老若男女、誰もが努力をしなければいけないのです。

誰かのために何かをする。
協力し合う。
妥協し合う。
それでこそ、できることもあるはずだから。

【注】編集部より
5/6より本コーナーを武将ジャパンに移動して連載させていただきます。
突然で申し訳ありませんがよろしくお願いします。

※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

【参考】なつぞら公式HP

 

6 Comments

管理人

>わんわんわん様
ご指摘ありがとうございます!
修正させていただきました。
今後もご愛顧よろしくお願いします^^

わんわんわん

「函館連絡船」が気になって仕方がありません。「青函連絡船」ですよね?

ひろぶ

なつぞらの眼福っぷりに毎日やられています。
録画が消せないドラマは、いだてん共々久しぶりです。

草刈さんのナイスじーちゃんぶりは最高ですね。
実の孫よろしく大事に育てて来たなつへの複雑な感情が、表情一つ一つから読み取れるようで、たまりません。
ここへ来て初期の、
「それでこそ、赤の他人じゃ」
と言うセリフが効いてきますね。
血の繋がりだけではない、生活を共にして行く事で出来る絆もある。
だからこそ、いきなり今日から家族だというプレッシャーを掛けずに始める。
そして今では、目に入れても痛くない程可愛い「孫」に。
更には牧場の後継者とまで。
その一方で兄妹再会も叶えてあげたい気持ちもあり、、、

う~ん、たまらん!
やばい、早くもこの先に待ち受けるであろう泰樹ロスに震えが。

現実の世界もこう言う物ですよね。
必ずしも思った通りに事は運ばない。
ご都合主義のボタンプッシュファンタジーとは違うんです。
マルちゃん正麺をすすりつつ、今後も視続けます!

ガブレンツ奮戦

【訂正】
× 再開を果たした
○ 再会を果たした

失礼いたしました。

ガブレンツ奮戦

昭和30年の当時、信哉が東京から遥々と十勝を訪ねた旅路は、おそらく車・船中少なくとも3泊を要する長旅だったと思われます。青函連絡船の時代であるのは当然ながら、「特急」列車も多分まだなく、急行列車も苦学生の身では手が届き難い。長距離普通列車に揺られての旅路だったでしょう。

また、その僅か1年前の昭和29年は、9月に大きな台風海難災害の洞爺丸事故が発生していました。終戦後9年を経てなお多数の人命が失われた、死が未だ近かったとも言える時代。そういう意味でも、再開を果たしたなつと信哉には、「よくぞ元気で…」との思いが深かったことと思います。

904型

草原の中で、信哉の姿を認めたなつ。
今回はもう、見ているこちらはその冒頭から感情が溢れて止まらない。

柴田家に信哉が招かれる。そこで、早合点した夕見子らは戸村父子まで呼び込み、「連れ帰らないでくれ」と懇願。
その姿からも、なつがいかに大切にされていたか、信哉は全てを察したのでしょう。
もう、こちらの感情がもたない…

第一週以来、久しぶりに「考えるな。感じろ」に満ちた日でした。

そして、
信哉が帰った後の柴田家。それぞれの思い。
このラスト2分間ほどの間、しみじみとしたBGMが流れます。
こういう感じのBGMの入り方は、今までも何度かありましたが、いい感じの入り方だと思います。
イ・ビョンフン監督の韓国ドラマ『イ・サン』や『トンイ』、『オクニョ』等で、よく似た感じでBGMが流れるシーンがありますが、やはり効果的な使い方です。

某作のような「苦し紛れにBGMでごまかす」等とは大違い、と言うより、比べるのも失礼極まりない。

あ、やっぱりあれこれ考えてしまった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA