「雪月」にて――。
なつは、とよはじめ、皆と将来のことを語っています。
彼らは行動が素早い、鉄壁の布陣ですからね。
「川村屋」のマダムは、なつを歓迎していると確認済みです。
雪次郎は、なっちゃんが来てくれてよかったと喜んでいます。
ここでそんな頼りない我が子を、知将・妙子が叱咤します。お前が面倒を見る方でしょ、って。
妙子は知略が高いから、何でもお見通しなのよ。
なつの罪悪感
しかもあのマダムは、なつが仕事を見つけられなければ雇ってもいいと思っているそうです。
なんだかんだでお人好しじゃないですか。
人の世話になるのも悪くないと場が盛り上がり始めるのですが、なつにとってはこれがまた辛いんです。
なつは切なそうに、何か言いたげです。
仕事は見つけるとおずおずと言い出すと、逆に周囲は、そんなこと気にしちゃダメ、お世話になりなさいと言い出す。
何か言いたげで罪悪感がありそうななつ。
そんな彼女に、柴田家を裏切るわけじゃないと周囲は励ますわけです。
なつはおずおずと本音を語ります――そこまで引き出す、これぞとよババアマジックですね。
いつかは出て行かねばならないと思っていた柴田家。
それでも、酪農をすることが夢だと思っていたけれど。
雪次郎がそう語るなつに助け舟を出します。
なっちゃんが苦しんでいたなんて。
それがずるいのかと尋ねられて、なつはまだ言い切れないのです。
「本当は、自分勝手な理由で出たいと思ってる。じいちゃんを傷つけ、騙してる……」
なつはそう打ち明けるのです。
心までしばれてはいけない
東京に行くなら行くで、それでいい。そう周囲は励まします。
ここでとよババア、今朝の金言です。
「我慢して言い合えなければ、心までしばれる」
そして、脱線し、大興奮。
vs舅、vs姑、vs自分の夫の女癖&相場癖。およびその戦績までペラペラと語り出し、妙子にたしなめられる。さっすが歴戦の勇士だわ。
とよを演じる高畑淳子さん、本当に演技派です。
こういう早口のセリフを、コミカルに、ダーッと、しかも内容がわかるように言うのって、演技派でないと絶対にできません。
常にテンション高いし、知勇兼備だし。
これがわからないでハイテンションとか言う奴は、ちょっと吹っ飛ばされてこい。
ワンパターン口調としつこいほど同じ決め台詞。
それしか言わせてもらえないのか、言えなかったのか。そんなとあるベテラン朝ドラ出演女優さんと、どうしたって比べてしまうんだなぁ……演技というのは、脚本や演出によって引き出される部分も大きいとはいえ。
ここで雪次郎が、
「東京行くべ! 一緒にがんばんべ!」
とひたすら言っているだけなのも、なんだかキュートです。
母は知将ですから、そんな我が子が不安ではあるようでして。
「お前はお前で頑張れ」
そう容赦ありません。
妙子って知将ですから、言動がわりと厳しい。
本作の女性って、当たり前のおっかさんがいい意味でおりません。
なつはそんなやりとりに励まされ、決意を固めます。
「じいちゃんに話してみる」
脳裏に浮かんできたのが、天陽の言葉でした。
海を越えて一人で開拓を目指したじいちゃん。
彼こそなつの手本のはず。
やっぱり天陽は、特別な存在です。
ただ特別すぎて、地上を生きる人が到達できない境地へ先に行ってしまう。
泰樹も、なつも。
彼と自分の共通点を見出して信じているものの、そこまで一気には到達できないのです。
だからこそ、とよババア道場で鍛えなければいけない。
「雪月」、そこは地上と天を結ぶ異空間だった――朝ドラの喫茶店の使い方でも、なんだかものすごい方向に来たぞ、おいっ!
前作****のRPG酒場システムとは違う。
もう神殿クラスだ……。
家族だからできること
翌日、戸村父子はなつの東京行きに動揺を見せています。
家族のように思うからこそ、止める悠吉。東京から戻ってくるはずだと主張。泰樹の気持ちもわかってやれと。
「帰るんだべ? 帰るべ? 帰らなきゃ駄目だ」
そんな父をたしなめ、家族のように思うからこそ、待っててやればいいべさと言う菊介。
「おい、仕事しろ。ここにいる時は、牛のことだけ考えろ」
そんな彼らを泰樹がたしなめるのでした。
その晩の食卓にて。
「ごっつぉさん」
と告げて、泰樹が先に立ち去ろうとします。
「じいちゃん、ちょっと待って!」
なつが意を決します。
「ごめんなさい。私、嘘をつきました」
※続きは次ページへ
「まんが映画」という「新天地」を耕してくる、それと同時になつの中にある新しい世界、まだ自分でもわからない才能や技術の成長の余地、そういうものを耕して見つけて育ててこいという、いかにも泰樹らしい激励ですね。「耕す」という言葉も、脚本の大森氏が考え抜いて選び取った含蓄ある言葉なのだと改めて理解できます。なつのこれからの成長が楽しみです。
東京に出て、アニメ、いや「漫画映画」という当時はまだ海のものとも山のものとも知れなかった文化の作り手になろうとするなつ。
文化、英語で言えば’culture’の語源は、「耕す」’cultivate’と同じ。
これから新しい文化に挑もうとしているなつにとって、泰樹おんじの言葉は最大のはなむけになったと思います。
泰樹の来歴。
富山県から単身北海道に渡り、未開の地を自らの力で切り拓いて、耕すことのできる、実りを生むことのできる土地に変え、生きる場を自ら築いてきた。
そういう泰樹に受け入れられ、弟子として育てられてきたなつ。
単に、身につけた技を伝授されただけではなく、自らの力で生きる場を切り拓き、築きあげる精神を、泰樹から受け継いだ。
このことは、泰樹には、牧場を継いでくれるのには優るとも劣らない、いや恐らくは、継いでくれる以上に嬉しい、誇らしいことだったでしょう。
なつは、正に、東京に「開拓」に行く。そう表現するのに、何の不思議も違和感もありません。
一ヶ月半にわたって展開した十勝編は、十分な意味を持っています。
発想力、表現力を育て、磨きあげていくこと。
そうして、育った土地を離れて、自らの力で生きる途を切り拓いていくこと。
それこそを、まさに「耕す」「開拓」という言葉に例え、象徴して語られていたということ。
そういう読解力、想像力が、この作品の視聴には必須。
言葉の表面しか追えず、理解できない人には、この作品は不向き。
的外れで揚げ足取りにしかならない投稿をされるより、理解できないなら視聴を控えるのが良いでしょう。
東京に戻る、新宿に行くのに開拓とか耕せというのはいかがなものか どこかずれていないか?
泰樹さんが反省して学ぶことを、
びっくりしながら見ていました。
相手を思えば、年長者も成長できる。
遠慮ばかりしていていいのか、
逆に失礼だ!と叱られた気持ちでした。
幸せになれば親孝行なんだ、忘れるな!
の言葉は、心をひっぱたかれました。
視聴者の私まで救ってくれました!
なんでも言わなければ、心がしばれてしまう。これにもパンチを食らいました。
とよ婆ちゃん、ありがとう!
天陽君の励ましはもう。辛くないの?
なつはアニメの開拓者になるんですね。
開拓者達のドラマ、覚悟して見ます!
柴田家がついにここまで辿りついた!
目頭が熱くなるのに、清々しい。
そして、作り手の皆さんに感謝しながら視聴できることが何とも有り難く、朝から幸せでした。
ただ、思いを天上のものに昇華してしまった天陽はどうなるのか。
もはや神や精霊に近いように思える彼を人の世界に結びつけてきたのは、なつ。
迷いを抜けたなつは天陽と何を話すのか。
明朝しっかり見届けたいと思います。
ただ、少し時間を置いて、冷静になってみると、
なつの
「作れるかもわからない。どうなっているかもわからない。
でも、挑戦したい。開拓したみたいに、挑戦したい。」
という言葉。
十勝編で視聴者への真剣勝負に挑んだ本作十勝編スタッフの心意気も、このようなものだったかもしれないと思えます。
第27~31話の東京編スタッフは、心が咎めるのではないでしょうか。
今回は…
見ていたら、もはや、
胸が破れ、心が溢れ、涙がこぼれて…
こういう心の状態、感情を言葉で表現するのが、私は本当に下手で、何を書いても薄っぺらで白けてしまいそうで…
見終わったときは、軽い放心状態のようだったかも。
圧倒されました。
本日の「それでこそわしの孫じゃ」は、第1週の「それでこそ赤の他人じゃ」との対比ですよね。本日は、本作が(泰樹が?)「家族」と「他人」に宿す意味合いが知りたくなりました。
「家族」はポジティブな意味合いですが、対比された「他人」も本作においてネガティブな意味合いには思いづらく…
どちらにしても昨日の「それも親孝行」にしても、響く台詞ばかりですね。
「家族」にしても「他人」にしても、本作では相手の人格へのリスペクトが根底にあるようには思えます