なつぞら155話 感想あらすじ視聴率(9/27)終わりなき成長とは

昭和50年(1975年)8月――。

十勝は冷害と水害に襲われました。

◆北海道防災情報

日本一になるまで拡大する

柴田家では、照男と剛男が牛舎の今後について話し合っています。

じいちゃんはもう自分に任せた、と言う照男。
夕見子は今のバケットミルカーではいけないのか?  と問いかけます。

バケットを運ぶ手間が省けると、照男はメリットを説くのですが、本作の会話は双方向性があります。
兄である照男が、妹の夕見子に対して、黙っていろとは言いません。口塞ぎはしない。

「したけど……」

父・剛男の懸念は、費用です。
組合からも補助金を出すという名目はあるからには、断れない。むしろ推奨している。

柴田牧場が先頭に立つことで、他の牧場も続く。メリットは十分にあるのです。
照男は、自分たちが率先すべきだと使命感を抱いています。

剛男は、膨れ上がる借金が不安ではある。
照男は、だからこそ規模を拡張していくと言う。

照男の開拓は、じいちゃんの牧場を十勝一、日本一にすること――そう意欲を燃やしています。

ここで、イッキュウさんが気になってこう言い出します。

「規模を拡大すると、終わりが見えなくなるのでは?」

「イッキュウさん……」

なつがやんわりと抑えます。
こう言った発言に対して、冷たいだの理解がないだの、態度が悪いという反応は想像できます。

でも正解でしょう。

初対面のなつに対して、イッキュウさんの父・一直はひたすら考古学トークをしていましたよね。
父に似たイッキュウさんがこうなると、話がでかくなって混乱しかねないので、むしろ制御が正しいかもしれない。それがよい結果を生むこともありますけどね。

坂場の父・一直は、結婚生活云々よりも考古学語りを一方的にしています。

なつぞら114話 感想あらすじ視聴率(8/10)絵を描く則ち排泄也 なつぞら111話 感想あらすじ視聴率(8/6)反対派を動かした菊介の言葉に坂場の魂

あなたや、あなたの周囲が夫唱婦随ばかりだとしても、この世界に存在する全ての男女がそうとは限りません。

夫唱婦随は絶対ではない。
当人たちの信頼関係があるわけで、他人にそれをやたらと押し付けるのはよろしくないですよね。

彼等の話を聞いていた泰樹は、全てを任せ切っています。

「照男が開拓すりゃいい」

「わかった!」

これも祖父と孫の性格の違いはあるべな。
泰樹は周囲から「流石は柴田さんだべ」と一目置かれている。カリスマ性もリーダーシップもある。

とはいえ、集団を率いたり、支配することにあまり興味がなさそうに思える。

泰樹が飲み会に参加する場面って、本作でありましたか?
部屋で饅頭を食べたり、雪月でうれしそうに甘いものを食べるくらいでしたね。

社交が苦手なのでしょう。シャイなんだね。

嵐の夜に電気が消える

その晩、嵐がやって来ます。

朝方、目を覚ました泰樹が、電気の紐を何度も引っ張ります。

つかない……。

彼は電気普及前を知っているためか、それがなくなること、依存しすぎてあることへの警戒心があったのでしょう。

「わかった。電気はいらん。電信柱を引っこ抜け。明るいといろいろ見えすぎていかん」

なつぞら15話 感想あらすじ視聴率(4/17)No 調略 No Life

時刻は朝の7時。
しかし、停電は続いています。ミルカーは動かない。バルククーラーも。

そこへ皆が起きて来ます。
なつたちの「おはよう」に対し、夕見子はこうです。

「なしたのさ、みんなで!」

御行儀が悪いわけではありませんね。彼女なりに異変を察知して、警戒しているのでしょう。軍師として有能です。

皆の顔に焦りが見えます。
搾乳しなければ、乳房が張ってしまう。ここで照男が昼まで搾乳しなくても大丈夫だとは言いますが……。

目は不安げですし、実体験ではなく伝聞なのです。
つまり、確信しているわけではない。発電機を借りれるかどうか電話をするもののダメです。

そもそも停電はエリア単位で発生します。
発電機がある家だって貸せるとも思えない。

ここで、泰樹が叫びます。

「牛が鳴いてるべ! すぐ牛舎に行け! 牛をほっとくな!」

牛をほっとくな!

牛は信じてくれている。だから乳を出してくれる。
その牛を裏切っていいのか?

「牛を助けるんじゃ! こちらの都合で待たせるな、乳を搾れ!」

はじめこそ、錯乱したのかと見ていた周囲ですが、泰樹の悲痛な叫びが伝わりました。
なつは千遥に子供の世話を頼み、牛飼いの顔に戻ります。

「乳房炎になるべさ!」

◆乳房炎

皆で牛を助ける中、剛男は農協に行くと断ります。

彼も農家を助けたいのです。対策を練るのならば、彼は頼りになります。
頼りないと自嘲気味ではありますが、やる時はやる。それが剛男です。

「みんな行くべ! 着替えてこい!」

皆で牛舎に向かいました。
先にいた砂良と菊介に合流。菊介は分娩直後の牛から搾っていたと言います。

なつは乳房炎になった牛も優先したほうがいいと知恵を出す。

「なつ、ついてこい!」

泰樹のあとをなつが追いかけます。
引退していた悠吉もやって来ました。さすがだ〜!

夕見子とイッキュウさんも手伝おうとします。
教えてくれと頼まれて、泰樹は「見て覚えろ」と答えるしかありません。夕見子は、富士子に教えられつつ搾ることに。

一方でイッキュウさんは、なつから集乳缶を運んで欲しいと言われて従います。

はい、これも大事なんです!

【イッキュウさんは、どうして搾乳してはいけないのか?】

・不器用。非効率だし、牛にも不安感を与えかねない

・彼は危険性への認識が鈍い。そして牛は、なまら危険!

・行動が唐突で、いきなり立ち上がったりしかねない

ここで助手の青年がカチンコを鳴らそうとして、
【へこっ……】
と間抜けな音を立ててしまいます。

カチンコ一つ鳴らせないのか!と怒鳴られる、不器用な青年。

なつぞら70話 感想あらすじ視聴率(6/20)天才なんだと褒めたいけれど……

イッキュウさんと臆病な牛は、最悪の組み合わせです!
夫のプライドだの、男を立てるだのなんだの考える前に、止めないと。最悪大事故、死傷の危険性もあるでしょう。

なつぞら2話 感想あらすじ視聴率(4/2)大人が守り、育ててゆくもの

イッキュウさんは素晴らしい人だけど、欠点も多いし、超人ではないからさ。

私はイッキュウさんをくさしたいわけじゃない。けなすわけじゃない。
ただ彼を、彼みたいな人を、理解して欲しいと思う。

そこはきっと、なつだって同じですよ。

牛を助けてこそ、ともに生きてこそ

搾乳をクリアしても問題は残ります。
バルククーラーで冷やせないと、出荷できないのです。

照男は、富士子と砂良に「アイス屋を壊していいか?」と聞いています。

水槽を使って冷やすためです。
緊急事態の中で、照男はきちんと彼女らに断っている。所詮、おばさんたちの小遣い稼ぎだと小馬鹿にはしてはいない。

「地平、井戸水くんでこい!」

息子にも、そう指示を飛ばして作業を急ぐ照男は、今やすっかり頼り甲斐のある牧場主になりました。

ここで搾る中、夕見子がニンマリとしています。

「なんだ、私にも才能あるんでないの」

この非常時に何を言っているのか、となりそうですが。夕見子なのでそこは仕方ない。

幼少期から酪農にキツイダメ出しをしていた夕見子。
キツイ態度はいつものこととはいえ、ムキになっている気配はあったものでした。

牛乳嫌い、一生飲まん、あんなものを出す牛なんて嫌い!
臭いし、何の役にも立たないし!

なつぞら5話 感想あらすじ視聴率(4/5)私も怒っているべさ!

なんだか腑に落ちた。
彼女はもしかしたら、幼少期、周囲の誰かに才能がないとけなされたのではありませんか。
それで、自分の適性がない酪農なんて大嫌いだと意固地になっていたのかもしれない。この軍師は無駄に執念深いからさ……。

それが晴れて、心のトゲが抜けたようです。
まぁ、たぶん、夕見子にダメ出しした側はとっくに忘れてるべな。

イッキュウさんは、不器用だから若干こぼしながらも、牛乳を集めています。

搾り終えた牛乳をミルカーに入れて、水槽で冷やす。
そこまでが限界です。

「牛は助かった……」

乳房炎にはならないはず。と、一仕事終えて、皆ほっとしています。
しかし、照男はふっと自嘲気味です。
※続きは次ページへ

1 Comment

あしもと

今日、泰樹さんが農協に行く剛男さんに「頼む」と言っていましたね。感慨深かったです。

今週、どのお話もいいですが、帽子を飛ばされた朝日の中の泰樹さんが圧巻でした。どんな思いの中、朝日を見てきたのかと。この物語には、制作側が、伝える価値があるとちゃんと信じているものを書いていると、改めて思いました。

明日が最終回ですね。
最後まで、どうぞよろしくお願いします。

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